九条の会・医療者の会(「九条の会」アピールを支持する医師・医学者の会)

「九条の会」アピールへの賛同の呼びかけ(転載) 2004年11月5日
「九条の会・医療者の会」発会記念講演会講演(抜粋) 小森陽一東京大学教授(「九条の会」事務局長)2004年11月5日
九条の会  九条の会・福山

『九条の会・医療者の会』呼ひかげ人(五十音順)

秋元波留夫(金沢大学名誉教授・元都立松沢病院院長) 天野恵子(千葉県衛生研究所所長) 碓井静照(医師・日本ペンクラブ会員) 小田徹也(大阪・医師) 笠原浩(松本歯科大学院教授) 鎌田實(諏訪中央病院保健医療福祉管理者) 川上式(医師・医事評論家) 岸田綱太郎(京都府立医科大学名誉教授) 黒川一郎(札幌医科大学名誉教授) 清水正嗣(大分医科大学名誉教授・口腔外科) 杉浦康夫(名古屋大学医学部教授) 丹治伸夫(IPPNW日本支部副支部長) 土山秀夫(元長崎大学学長) 朝長万左男(長崎大学原所内科教授) 中沢正夫(精神科医師) なだいなだ(医師・作家・老人党提案者) 橋本葉子(東京女子医科大学名誉教授) 早川一光(総合人間研究所) 堀口雅子(産婦人科医師) 肥田舜太郎(被団協原爆被害者中央相談所理事長) 箕輪登(医師、元郵政大臣・防衛政務次官) 宝生昇(全国保険医団体連合会会長) 毛利子来(小児科医師) 森昌彦(朝日大学歯学部名誉教授・王室医学会会員) 森本基(日本大学名誉教授・口腔保健) 若井晋(東京大学医学部教授) 若井俊一(佐久総合病院名誉総長)

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「九条の会」アピールへの賛同の呼びかけ(転載)

今年6月10日、井上ひさし氏、梅原猛氏、大江健三郎氏、奥平康弘氏、小田実氏、加藤周一氏、澤地久枝氏、鶴見俊輔氏、三木睦子氏による「九条の会」が立ち上げられ、アピールが出されました。今、日本では、第9条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭してきています。日本と世界の平和な未来のために、このくわだてを拒むことは、現代に生きる私たちの責任となっています。なし崩し的に有事法制の制定や自衛隊の海外派兵、多国籍軍への参加がすすめられ、さらには非核三原則や武器輸出の禁止などの重要な施策をも無きものにしようとようとする動きがひろがっています。

来年は、ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下と第2次世界大戦終結から60周年にあたります。第2次世界大戦ではアジア人と日本人2300万人の尊い命が失われました。こうした犠牲の上にたって生まれたのが第9条です。9条の存在こそ、半世紀以上にわたって平和な社会を築き上げてきた原動力です。そのために9氏によるアピールでは、「平和を求める世界の市民と手をつなぎ」、「あらためて憲法9条を激動する世界に輝かせ」ること。そして、「国民一人ひとりが、9条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくこと」と、「憲法を守るという一点で手をつなぎ、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始め」ようと呼びかけています。

私たちは、この「九条の会」アピールに応え、「『九条の会』アピールを支持する医師・医学者の会」(略称:「九条の会・医療者の会」)を発足させることにしました。「生命と健康を守る」という医師・医学者の立場と最も矛盾する行為が戦争です。「戦争をしようとする国」への動きに、最も敏感にならなければならない立場にある医師・医学者が「憲法9条」を守る一点で手をつなぎ、アピールしていくことが重要であると考えます。

731部隊の例に触れるまでもなく、過去の戦争では生物兵器などに医療・医学の技術が転用され、人種差別なども含め、大量殺戮に医師・医学者が加担した苦い歴史があります。医師のヒューマニズムさえ失われるのが戦争です。戦費や軍事優先のため、社会保障もさらに後退させられ、人権の制限にもつながります。また、9条の改憲とあわせて、25条の生存権保障を、国民の互助と自己責任の制度に理念を根本から変える動きもあります。

私たちは、「生命と健康を守る」ことを社会的使命とする医師・医学者として、憲法25条による生存権としての社会保障の充実を求めるとともに、あらゆる戦争政策、戦争につながる一切の動き、とりわけ憲法9条「改正」の動きに反対します。多くの医学者・医療担当者の皆さんに、この「九条の会」アピールに賛同して頂くよう、強く呼びかけます。

私たちは、「九条の会」アピールを多くの人々に伝え、賛同者を広げていくこと、そのためにポスターの作成、新聞などへの意見広告や学習会、シンポジウムの開催なども検討します。別紙ご案内の方法で、「九条の会」アピールにご賛同いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

2004年11月5日

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「九条の会・医療者の会」発会記念講演会講演録(抜粋)
小森陽一東京大学教授(「九条の会」事務局長)2004年11月5日
→「九条の会・医療者の会」発会記念講演会講演録

憲法が変えられるとどうなるでしょうか。空理空論ではなく予想することができます。1つ目は、集団的自衛権と称していますが、これは日米軍事同盟が強化され、アメリカの無法な戦争に日本が常に巻き込まれていく状態になるということです。2つ目は、連動して、現在は志願兵制度ですが、それでは間に合わなくなって徴兵の問題が出てきます。すでに、一部のマスコミでは取り上げられています。3つ目には、産業構造そのものが大きく変質し、軍産複合体という体制が敷かれます。4つ目に、アジアにおける外交の選択の幅が狭くなります。日本がアジアで孤立する。こういう4つの問題が、憲法9条がなくなったらどうなるか、ということから予測される事態です。

東側で戦渦が起きていないのはなぜか?それは一言で言えば、日本が憲法9条を持っているからであり、自衛隊が軍隊ではないからであり、従って日米安保という2国間軍事同盟に基づく集団的自衛権を行使できないからです。21世紀の現実の世界政治において、憲法9条は極めて実践的な、戦争の抑止力になっているのです。「日本が北朝鮮に攻撃される事態が予測される」という口実をつくった時、ユーラシア大陸の東側で、アメリカが武力行使する看板ができるわけです。これに道を開くことが、自民党の論点整理案の中で言うところの、「個別的・集団的自衛権の行使に関する規定を盛り込む」こと、つまり自衛隊を軍隊にすることの中心的な狙いだろうと思います。

25条は日本国憲法の根本的な考え方がセットで入っている条項なのです。国民の権利を規定しながら、「この国民の権利があるから、国をしばるのだ」と、国の義務規定があり、極めて重要な国民主権の内実を最も現している条項だと言って良いと思います。

日本で憲法がないがしろにされてきたのは、最高裁が違憲立法審査権を発動しなかった、そのことを、それを抑圧してきた歴代の自民党内閣が総括し、最高裁が自由な司法の判断として違憲立法審査権を発動するような体制をつくらない限り、どんな憲法をつくったって、駄目なわけです。最高裁を抑圧してきた自民党が、憲法改正案で「憲法裁判所」をつくると言ってもちゃんちゃらおかしいわけです。

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