府中西門ルポ 

「千鳥」 土曜非開催日編

 客層の濃さとサービスの良さが売りの店を発見。しかし、一番旨い食べ物が正規のメニューに無かったりする。


[2000年3月11日(土)]


 非開催の東京競馬場。私は場外発売されている馬券を買っていたが、メインも外れノーホーラ。最終レースに望みを託し馬券を買った。「馬券だけ買ってレースは西門の店で見よう」。そう思い競馬場内でばったり会った西門の飲み仲間と2人で、東京競馬場の西門を出てオケラ街道へと向かった。

 「今日はどの店にいこうか?」と思いながら飲み屋街を散策する。最終レースを見たいのでテレビ中継が見れる店というのが行き先の必須条件だ。今日は非開催日であり、まだ最終レースも始まっていないので、それほど客はいない。「ここにしよう。」そう思って千鳥という名の店に入った。西門の店の中でも特に狭い店なのであるが、客があまりいない時間帯だったので店内に入ることができた。

 店に入りテレビの近くに座り、とりあえずビールを注文する。2人でビールを飲んでいると「サービスです」と言って店員が温かいみそ汁を持ってきてくれた。「これでこのまま帰っちゃったらかなり安上がりだな(笑)」と思ったが、結局焼き鳥と揚げ茄子の煮込みと厚揚げを注文した。

 最終レースのスタートが近づくと、その店の客も増えてきた。どうもここは常連客が多いらしい。また、他の店にも増して「濃い」オヤジが多い。いい雰囲気だ。

 最終レースが店内のテレビで中継された。私の馬券はかろうじて当たった。その日の負け分を取り戻すには至らなかったが。「お前最終取ったか?俺は最終は取ろうと思えば取れたんだけどよぉ。あんまり当たらなくて資金が無くなったので1点に絞っちゃったから外れちゃったよ。」と一番元気のいい常連オヤジが、隣りにいたオヤジに話しかけているのが聞こえてくる。

 最終レースが終わると西門名物の野外のテーブルが出されたが、店の中の客は我々2人以外は常連客ばかりらしい。その常連の中で最もよくしゃべるオヤジの言ってることを聞いていると少なくとも競馬歴は30年以上らしい。メイズイとかそういう馬名が出てきていた。かなりのベテランであり我々の尊敬すべき大先輩でもあるわけだが、岡部をよく買うと思われるオヤジに向かって「お前は儲かってるだろう。岡部しか買わないからな。なんてったって2000以上勝ってるんだぞ。そりゃ、儲かるわな。」とどう考えても間違った理論を投げつけていたりもする。なかなか味のあるオヤジだ。

 やはり、こういう雰囲気が素晴らしいのである、西門の店っていうのは。特にこの店は私が今まで入った店の中でも濃さが際だっていた。かなりこの店が気に入ってしまった。店は狭いが、狭いからこそ常連のたまり場となり、こういう「まさに競馬場の近くの一杯飲み屋」という雰囲気を醸し出せるのだ。

 グリーンチャンネルが放映されているテレビを見ながら、オヤジ達の明るく元気な負け犬の遠吠えに耳を傾けていると店員が「サービスの揚げ餅です」といって揚げ餅なるものを持ってきてくれた。揚げた餅を海苔で巻いたものだ。これは非常に旨い。珍メニューのコーナーにもおすすめ品として掲載する価値がある。しかし、店の壁に貼ってあるメニューを見たが、揚げ餅というものは載っていなかった。これはサービス品として配るだけではなく、正規のメニューにしても絶対売れると思うのだが。カネを払っても食べる価値があるし。というか、この日食べた物の中で一番旨かったのがその揚げ餅である。

 さて、帰ろうとして席を立つと後ろのテーブルではオヤジが将棋を指していた。しかも将棋を指している2人のうち片方は客らしいが、もう片方は店員らしい。店のおばちゃんに「お勘定お願いします」といったらおばちゃんが「伝票つけてる?」と将棋を指している男のうち片方に聞いていたぐらいだから。結局伝票をつけていなかったらしく、将棋指しのうちの片方が将棋を中断して私がいたテーブルの皿の数を数えて精算した。将棋を指してる暇あったら伝票付けておいてくれ(笑)。それとも常連客の将棋の相手をするのも顧客サービスのうちなのかな?こんなアットホームな雰囲気を見て、ますますこの店が気にいった。ちなみに飲み代は2人で2千円だった。

 サービスでみそ汁と揚げ餅がついてこの値段とはかなりコストパフォーマンスがいい店だ。そして何よりも店の雰囲気が凄くよかった。「これぞまさしく西門」って感じだったし。常連のオヤジの濃さが他の店にもまして素晴らしかった。おそらく今まで入った店の中で一番だろう。店が狭いので今まで(特に店の中で飲みたいときは)敬遠していたが、これは穴場だった。(穴場といっても馬券購入窓口という意味ではなく、「あまり知られていないけどおすすめの場所」という意味ね。)非開催の土曜というもともと客が少なかった日だったので、店内に入つことができたし店側のサービスも良かったのかもしれないが、今度また行ってみよう。

 競馬では惨敗したが、この日の帰りの足取りは妙に軽かった。


[2000/4/2]追記

 この店が気に入ってしまったので、その後3回ほどその店にいったが揚げ餅は出てこなかった。残念。折角だから正規のメニューに加えれば大ヒット間違いなしだと思うのだが。


[2000/5/14]追記

 この日は府中で京王杯SCがあり、それなりに混んでいた。西門にも客が多かった。この店もサービスの味噌汁が出てこなかった。まあ、混んでいる日はしょうがない。サービス品は客の少ない日にのみ出てくるものだ。

 この日この店にいったら「本日より料金はその都度お支払いいただきます。 店主」と書かれた貼り紙が貼られていた。店を出るときにまとめて支払いをするのではなく、注文した食べ物が出てきたらその都度料金を払うのである。ついに伝票をつける手間も省くようになったか。割り勘で飲んでいると客のほうが合計支払い額を控えておかなければならないんだよな。


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