人々に伝わった「歌に込めた想い」
熊谷めぐみさんの「うつ」を乗り越え響く歌声
熊谷さんの「ぴあ」2号に掲載した「愛読者プレゼント」の反響は大きかった。5名様に抽選で無料でお送りすることにした。早速CD希望者がFAXで殺到。「抽選に当たりますように!!」(埼玉のKさん)。「音の無い詩を読んで胸にじんときました。是非当たりますように」(北海道のSさん)等の熱いメッセージに、7名まで枠を広げた。また「ぴあ」を見た学会員から、「今は朝がつらいので、目覚めたら『人生をリセットしたいあなた』の宗像先生のCDをかけて毎日スタートを切り出しています。ほかに何かないかと探していました。熊谷さんの『きずな』はどうかと思いFAXしました」と熊谷さんの方へ連絡があった。その後6月18日、大田区の区民プラザでミニ音楽会を開催、人々に多くの感動を与えた。その時のことを、熊谷さんの文章と、中学時代の友人であり、同じヘルスカウンセリング学会員でもある黒谷知子さん(歯科医師)に伝えていただこう。
音楽会を終えて
熊谷めぐみ
図らずも、私は「うつ病」を経験したことがきっかけで詞を書き始め、その詞に曲を付けて歌うようになり、去る6月18日大田区民プラザで、病気の経験から生まれた自作の歌とともに、私が家族に支えられながら、どのように病気と向き合い、それを乗り越えていったかを語る初めての音楽会を開いた。テーマは「家族の絆」。母親として娘に残したい歌を中心にプログラムを構成した。中でも、24年前まだ6歳だった娘に両親の離婚という重過ぎる経験をさせてしまった一人の母が娘に向けて「よく乗り越えてくれたわね」という想いを綴った「きずな」は私の歌の原点である。他に、かつての私と同じ病気で苦しんでいる方の心の安らぎになってくれればと、病気で眠れなかった時のこと、不安に押し潰されそうだった経験を元に作った「励ましの時」や、どんなに傷ついた心でも、幼い頃の「母」の温もりに包まれる時に人は癒されるだろうと信じて作詞作曲した「聞こえますか、お母さん」等10曲を歌った。
「うつ」の犠牲者が年々増え続けるばかりか、長期間、この病気から抜け出せずにいる方が多いと言われている中、私は、このコンサートを通して、必ずや「うつ」は治るというメッセージを伝えたかった。実はこの想いは、今年の3月に実施された当学会のセミナー(ベーシックコース)を受講したことで、より一層深まったのだった。過去の記憶が如何に大きく現在のその人の行動に影響を与えているか、そしてその記憶が、たとえネガティブなものであっても、後からそれを、より良いイメージに修正して体験することで人は立ち直れることを学んだ。そのことを思い起こしながら、プログラムの構成と曲選びには特に気を配った。そして、もしできるならば、私達の心の奥にしまい忘れた大切な想い出を見つけて、それを一つ一つ摘んで小さな花束にして、参加して下さった方達に差し上げることが出来ればいいなという願いを込めて、音楽会の題名を「想い出の花束」という意味の「Bouquet of Memoirs」と決めた。
東京は小雨模様のこの日、百名を越える方達が出席され、熱心にトークと歌に耳を傾けて下さり、会は盛況のうちに終わった。夫が毛筆で書き、大田区民プラザの入り口に立てた「『うつ』をこえて ブーケ オブ メモアール〜歌はいつの日にも」の看板は、これからの私の人生に更なるエールを送っているかのように思えた。
以下はコンサート後に、私のもとへ寄せられた感想の一部である。
- 昨日は、素敵な歌の夕べをありがとうございました。本当に心のこもった歌は聴く者の胸に響き、その思いが伝わるものなのですね。安らぎのひとときを終え、気がつけば、かけがえのない“思い出の花束”を手にして家路につきました。
- 素敵なメッセージが、染み渡るように私のハートを揺るがしました。歌は魂の表現ですね。深く学ばせて下さりありがとうございました。
- 感動的なコンサートでした。過ぎ越し方を振り返り、再出発の意思を歌った創作歌は言うまでもなく、最後のアメイジング・グレイスは英語の歌詞のarticulationが美しく、これまでに聞いた二、三のnative singersの歌唱よりすぐれていると思いました。
- コンサート本当によかったですよ。涙出ました。変な言い方ですが、どっちが上手?と聞かれたら、一緒に出られた先生の方が上手だと思うのですが、人に感動を与えるのは「上手であること」だけではないということを実感しました。
- 「亜麻色の髪の乙女」から始まって、グーッとメグミ・ワールドに引き込まれました。欝という病気を通して、病に屈するのではなく、それを一つの経験として見事に立ち直られましたね。ご主人様の「あなたが側にいるだけでいいんだよ」の言葉に胸が一杯になりました。
まだまだ多くの温かいメッセージを頂き、勿論自分としての反省点は多々あるものの、この音楽会を通して「想い」を多くの方にお伝えできたという充実感が今、私の心に溢れている。
“すごい”“よくやった”と感動
黒谷知子
この度、熊谷さんから送られてきた6月18日のコンサートのビデオを拝見し、正直な話“すごい”“よくやった”と、感動いたしました。特に、「うつ」という病気を通して熊谷さんが味わった精神的苦痛や肉体的苦痛、ご家族の苦難というものは想像を絶するものであったことを改めて確認させられ、トークの一言一言に聞き入りました。しかし、不思議にも、その経験を淡々と語られる口調からは、苦しみよりも希望、即ち、この病は治る時が来るという希望が感じられ、癒されるのでした。また、その希望が、熊谷さんの歌を通して尚一層強く心に響いてくるのでした。
聞くところによると、このコンサートは今年2月頃から、全てをご自分の手作りコンサートにしたいという思いで準備を始め、チラシやプログラムのデザイン、打ち込み、印刷などに取り組み、ようやく実現したそうです。そんな熊谷さんの熱意に是非協力したいという友人や地域の方々が当日には、受付やお客様の誘導、進行、場内アナウンス、照明など全てをボランティアで行って下さったそうです。
その後は、“勇気を頂きました”、“励まされました”、“癒されました”との反響が圧倒的に多いとのことです。熊谷さんのように病気を克服して、その体験を歌にして社会に還元している前向きな生き方を、私は是非、来る9月の大会の際にお集まり下さった方々にも知って頂きたい、そしてその歌を聴いて頂きたいと思っております。大会では「ニート」の問題が大きく取り上げられるようですが、こうした問題を抱えていらっしゃる方々のお心にも、熊谷さんの歌は、きっと安らぎと癒しを与えてくれるものと信じております。
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