四天王と愉快な妖魔たち


■その1:ジェダイトの場合。

四天王随一のお坊ちゃま・ジェダイトは張り切っていた。何せダークキングダムの地球侵攻作戦の、栄えある第一号を任されたのだから。
「ジェダイトよ、時は満ちた。必ずや幻の銀水晶を手中に収めて見せよ」
「はっ!」
喜色満面、いとしのベリル様の足元へ膝まづくジェダイト。

さて、銀水晶→宝石→ジュエリーショーに行けば見つかる!と単純極まりない(というか製作側に都合がいいというか、な)思考回路を持ったジェダイト君。早速、手近なジュエリーショー(なるママ主催だったのは、もちろんただの偶然。)に潜り込むことにした・・・アルバイトとして。
ちなみに使った偽名は大東 慈英(だいとう じえい)である。
「ふっふっふ、この中に幻の銀水晶が・・・」今回のショーで使われる宝石を並べた陳列台に手を伸ばすジェダイト。
「おいバイト、大道具運ぶの手伝え!」「は、はい今行きます!」
ああ哀しや、四天王末っ子として身についた下っ端根性は、そう簡単には抜けない。

「アレ、先輩何やってるんスか?」
休憩時間中、ジェダイトは空いている楽屋部屋に何やら持ちこんでやっているバイトの先輩を見つけた。
「おう、ドラ○エだよド○クエ。俺今更ハマっちゃっててさ」
見ると先輩は、テレビにゲーム機(なんてのは見たことが無いので、実はジェダイトはわかっていない)をつないで、どうやらテレビの中で勇者としてモンスターと戦っているらしい。
・・・モンスターとして勇者と戦う方がいいんじゃないかな、と思ったジェダイト君だったが。
「あーくそ、マドハンドうぜー。まだギラも覚えてないのにー。・・・あ、また仲間呼びやがったー」
見ると、マドハンドというのは画面にいる地面から生えた泥で出来た手の形をしたモンスターらしい。
どうやら複数体で登場し、1体やられたら仲間を呼び、やられたらまた仲間を呼ぶ・・・を繰り返すモンスターらしい。

『マドハンドCはなかまをよんだ。マドハンドDがあらわれた!』
『マドハンドFはなかまをよんだ。マドハンドHがあらわれた!』

・・・素晴らしい・・・。
ジェダイトは思わず見とれてしまった。無論先輩勇者の悪戦苦闘振りでなく、マドハンドたちに。
(1体1体は弱くても、こうやって仲間で助け合う、そんな戦い方もあるのか・・・!)
うるうるうる。ジェダ吉君、感動の涙。
「あー、だいまじん呼ぶなよ?呼ぶなよ?・・・うがーっ!呼びやがった!やられたー」
ふとジェダイトは思い出した。ベリル様から宿題を出されていたのだ。
『今回の妖魔の作成はお前に任せる。デザインは好きにしていいぞ』
・・・これだ・・・!

というわけで記念すべき実写版第1回妖魔は、謎のCG妖魔・マドハンド君となったのだった。残念ながらセーラームーンとかいう小娘にやられてしまったが。
「ベリル様、申し訳ございませんっ!!」土下座するジェダイト。
「うむ、まぁよい。なかなかの戦いぶりであった。次回はがんばるように」爪の手入れをしながら応対するベリル様。
「・・・じゃがな」「はっ」「もう少し"費用対効果"というものを考えた方がよいかも知れんな」「・・・は?」
ベリル様には言えなかった。1体のCG妖魔を作るのに、ものすごーく手間と制作費が掛かってしまっていることを。
ダークキングダム(ていうかCBC)も、財政は無尽蔵とまでは行かないのであった。

というわけで、次回からは着ぐるみ妖魔となったのである。だけど人間文化に至極興味を持ったジェダイト君。その次の妖魔は「はに丸とひんべい」でしたとさ。

■その2:ゾイサイトの場合。

ヒゲの剃り跡が青いのをひそかに気にしているゾイサイト、今日もダークキングダムのピアノ室(つーかあれどこ?ダークキングダムって洞窟の中なのに)で、今日も作曲に励んでいました。
「傑作だ・・・!」

さてAct.35。うさぎ(=月のプリンセス)と衛(=エンディミオン)の仲を引き裂くため、ゾイサイトはセーラーヴィーナスと手を結ぶことにした。
ヴィーナスに手渡した自作のオルゴール箱。
「この曲を聴いたものは、想う相手の事を全て忘れる。これをプリンセスに聴かせるのだ…」

さっそくうさぎを食事に誘いこむヴィーナス=美奈子。
『さぁ、今だヴィーナス、箱を開けろ!』
えいっとばかりにオルゴールを開けるヴィーナス。どこか物悲しい曲が流れる。その様子を隠しカメラ(いつの間にそんなもの用意したんだ)でダークキングダムピアノ室からじっと見つめるゾイサイト。
『・・・?』様子が変だ。
オルゴールを開けたまま、美奈子は硬直している。
「・・・あれ?、私こんなところで何やってるんだろう・・・。
あ、ちょうちょが飛んでる・・・あはははは〜・・・」
そのままふらふらと、どこかに行ってしまう美奈子。
『しまった・・・』歯噛みするゾイサイト。
『開ける時は耳栓しろって言うのを忘れていた・・・』

■その3:クンツァイトの場合。

四天王最強の戦士として覚醒したクンツァイト。今日も剣の稽古に励んでいます。
彼の得意技の一つは、自分の髪の毛を使って人間を操り、妖魔にすること。今日もセーラームーンに向けて自分の髪を一筋抜き、その首にまきつけてきた。髪の毛は首に吸収され、セーラームーンはなすすべも無く妖魔にされてしまう・・・はずだった。
が、結局セーラームーンは不可思議なパワーで、クンツァイトの力を退けてしまった。
「何てことだ、妖力が足りなかったか・・・?今度は、髪の毛の本数を少し増やしてみるか」
一人作戦を練るクンツァイト。と、そこに人影が近づいてきた。
「クンツァイト・・・」
「ん、何だゾイサイト。お前の忠告は聞かんぞ」
「その攻撃はもうやめておいた方がいい・・・」「忠告は聞かんと言ってるだろうが」
そこでサッと、無言で手鏡を差し出すゾイサイト。
「・・・・・・髪の毛の抜きすぎだ。そろそろ、生え際が危ないぞ・・・・・・」

クンツァイトがこの攻撃を使うことは、その後なくなったそうだ。

■その4:ネフライトの場合。

ベリル様に裏切られ、人間界に落とされたネフライト。その後元基に拾われ、今はカラオケ・クラウンに住み込みバイトとして働いている。
「おーい、ネフ吉くーん」
「その名で呼ぶなといってるだろうがー!!」がしゃーん。
「あーもうだめだよーまだお皿割っちゃってー。給料なくなっちゃうよ。なー亀吉」
「・・・貴様、俺に亀と同じ名前をつけているのか!?」再び怒り心頭のネフ吉。
「え、いいじゃんかわいいんだしー」「そういう問題じゃない!」
「それにな・・・こいつも、お前とよく似た境遇なんだよ」水槽の中の亀吉を眺め、ふと寂しそうな表情になる元基。
「・・・なんだと・・?どういうことだ」
ウィーン
「あ、いらっしゃいませー」元基は応対に行ってしまった。一人残されたネフ吉。
「・・・こいつと、俺が・・・?」つぶらな瞳でネフ吉を見つめ返す亀吉。
「まさか、こいつも元は妖魔か何かで、今はこんな姿に変えられてしまったのか?」
否定も肯定もしない亀吉。
「くっ、そうか・・・かわいそうにな・・・」思わずネフ吉号泣。
「くじけるな同志。きっといつか元の姿に戻してやる・・・さぁ、お近づきの印だ」近くにあった、おつまみの残りのビーフジャーキーを差し出す。
がぶっ。「あ痛!」噛まれてしまった。
「こ、こいつー!」怒り心頭で水槽を壊そうとするネフ吉。
「・・・いや、こいつも俺と同じで、今の境遇に怒りに満ちているのだな・・・。俺も落ち着かなくてはならんな」微笑し、亀吉の頭をそっとなでるネフ吉。
以後、彼も少しずつ大人しくなったということだ。お皿を割る回数は減らなかったけど(単なるぶきっちょさん?)

ちなみに、元基の言葉の真の意味。
「亀吉はな、昔捨てられちまってたんだよ。よく人を噛むからって」
「ふーん」興味なさげに聞くうさぎ。
「でも俺がよーく言い聞かせて、今は噛まないようになったんだよ。えさあげるときだけちょっと気をつけないといけないけど。食い意地張ってるからこいつ」「へぇー」
食い意地も、もしかしたら似ているかもしれない。絶対働き分より多く食ってるからネフ吉君は。

(終)
'04.09.26 by かとりーぬ

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