(OPTION-6)7MHz CW プリミックスTX 

2015.11.18 Updated 2016.04.25 Updated 2016.08.06

●7MHz CW プリミックスTX(CW 送信機)

プリミックスTXの基板付きキット頒布 を準備しました(2016.04.25)。

ご希望の方は、以下ページをご覧ください。
◇PICの頒布 (OPTION-6)7MHzプリミックス式 CW TX基板付キット


7MHz CW受信機(Radio)は、上述の製作記事のとおりですが、快適な受信ができます。
この受信機と組み合わせのTXとして、CW帯全域(7.000-7.030kHz)をカバーするプリミックス方式TXを製作しました。
VFOとして、水晶発振子VXOを採用していますので、周波数安定度も問題なく、一晩放置しておいても変動は、100Hz以内でした。

プリミックス方式のメリットは、基本水晶5.76MHzとVXO水晶12.8MHzを、一般に入手できる市販品の水晶のなかから周波数を適当に選ぶことにより、他バンドへも応用できることです。例えば、VXO水晶を13.0MHz近辺(VXO実発振12.910-12.960)とすると7.150-7.200kHzに対応でき、7.195kHzの10WAM送信器の励振段として使えます。

ケースは、タカチYM180(180Wx40Hx130D)に、受信機と一緒に組み込みました。
QSOに必要な機器は、全て組み込まれています。左側つまみが、TX Tuning、右側がRx Tuningつまみ、中央に、受信周波数直読、およびSメータ(上段8文字部)表示用のLCD。

下写真;内部プロトタイプ基板(TXは左側の基板、右側緑色基板は受信機;7MHzCW Radio) //



1) 仕様
バンド;7000kHz〜7030kHz
モード;CW
出力 1W(2SC2028 B+12V時)

全体構成
下図に、全体ブロックダイアグラムを示します。
Q1 NE602ANは、5.76MHz水晶コルピッツ発振器。Q2 NE602ANは、12.8MHz水晶VXO発振器(12.76-12.79MHz)兼ミクサーです。
これで7MHzの信号が発生(約-14dBm)しますので、2SK241-2SC1815-2SC2028の3段増幅で出力1Wを得ています。

出力部には、π型3段LPFを設置して、良好なスプリアス特性(対信号比-50dB以上)を確保していますので、このままアンテナに接続できます。 また受信信号切り替えのダイオード式ANT SWも組み込んでいます。
キーイングは、Q1 NE602 と Q3 2SK241を同時に ON/OFFしています。

本機は、トランシーブ機能を持っていないので、QSOの際には、本機TX周波数のキャリブレーション操作が入ります。50年前に、送受信機別々のリグで開局した当時の VFOを相手局にゼロインした、ノスタルジーがよみがえります。



●回路各部の特徴/調整の要点

DBM NE602 水晶コルピッツ発振器

本機の発振周波数は、5.76MHzですが、左図は、7.68MHzで実験したときの回路です。
Pin6、7に水晶発振子を接続するとN602内部で発振し、Lo=7.68MHz局発信号となり、このときPin1から信号fcを入力すると、NE602は、ギルバートセル型混合器なので、出力ピン4、5に混合出力 Lo±fc が出てきます。
左図では、Pin1を10kΩで接地しているので fc=0HzでDBMのバランスがくずれ、出力ピン4、5にはキャリア出力 Lo=7.68MHz(≒-15dBm)が直接出てきます。

7.68MHzの信号を得るだけならば、このような面倒な回路ではなく、2SC1815で発振させれば良いではないか、と疑問を持たれると思います。CWキーイングで、Key-Offのときにもチャピり防止のため常時5.76MHzは発振させておき、かつ受信機には、7MHz信号が聞き取れないようにするためです。

数値的に検討します。下図を見てください。
Key-Offのときには、Pin1の10kΩは、Openとします。するとDBMは、バランスが取れ、出力ピン4の出力 Lo=5.76MHzは、-60dBmに下がります。
Q1出力信号 5.76MHz(-60dBm)は、減衰器-15dB経由Q2 NE602に入力され、MIXゲイン+15dBで Pin4, 5 の7MHz出力は、-60dBmとなり、これに受信機への迷走結合漏洩率-80dBを加味すると、実際の受信機への7MHzの漏れ信号強度は、-140dBmとなり、これは、一般的な受信機感度 S9=-73dBm、S0=-127dBm を下回りますので、受信機では不感となります。
一方、Lo=5.76MHzを2SC1815で発振させると、KeyOff時にもこの信号のQ2入力強度を減衰することができず、受信漏れ信号強度は、-95dmB⇒ S5〜S6となり、実際に受信機IC-750で受信実験してみると S3で、しっかりと受信することができました。これを防止するためにNE602発振器を採用しています。

2SC1815で常時発振であっても、出力側へ遮断スィッチング回路を入れれば、当然ながら必要な減衰が可能ですが、遮断スィッチング回路で原発振周波数が変動しないようなバッファ回路等を組み込むと複雑になります。それよりは、IC1個NE602ANで、その機能を持たすのが賢明です。

おまけの NE602発振器のメリット

これは、横軸を 5から25MHzとしたときのスペクトラムです。左から原発振7.68MHz, 2次15.36MHz(-44dBc), 3次23.04MHz(-36dBc)です。

NE602は、DBMであるがために、回路が本質的に差動動作するアンプとなっており、偶数倍高調波の2次スプリアスは、低レベルとなります。加えて、Pin6, 7で構成されるコルピッツ発振回路は帰還量を少なくして、軽く発振させていますので奇数倍高調波も低く抑えられています。
無用な高調波レベルが低い、ということは、発振器以降の回路でのスプリアス防止がそれだけ楽になります。
同じ水晶発振子7.68MHzでの2SC1815コルピッツ無調整発振回路で、同様に高調波レベルを測定したところ、無調整発振回路の正帰還量によって大きく変動はしますが、通常の発振で 2次(-10dBc), 3次(-25dBc)のレベルでしたので、それと比較しても、NE602発振器採用のメリットは大きいと感じます。



DBM NE602 AM低電力変調

ここで寄り道。
左図は、NE602ANを使ったAM低電力変調回路です。Pin1の接地抵抗を上述回路のように10kΩとすると、DBMが飽和するまでバランスがくずれAM変調はかかりませんが、実験によれば、接地抵抗を200kΩとして、Pin1に-30dBm(38mV_rms@1.5kΩ)のAF信号を入れるとPin4, 5に100%変調のAM波が出てきます。 コンデンサマイクは、2mV程度の出力があるので、2SC1815x1段で軽く十数倍の増幅をして、Pin1にAM信号を入力すると、本機は出力数百mWのAM送信機になるはずです。(実機確認はしていません)
なお、 Pin1の接地抵抗200kを外し、AF信号を入れれば、DSBが出力されます。



ダイオード式アンテナ切替SW

アンテナ切替SWにリレーを使うとフルブレークイン操作をするときに、リレー音が耳障りです。本機に採用したダイオード式SWの実験をしました。

原理は、
・受信時;TRはONとなり、双方のダイオード1N4148には、10mAの直流電流が流れ、ダイオード抵抗は、10Ω程度に下がり、ANT受信信号は、10+10=20Ωを経由して受信機に入ります。挿入損失は、-1.5dBですので、ほとんど問題になりません。
・一方、送信時には、TR-OFFとなり、2本のダイオードは、電流ゼロで対抗しているので、片側のダイオードは必ず逆荷電となり、内部容量(≒0.8pF)で送信機終段と隔離されていることになります。
0.8pFの7MHzリアクタンスは、Xc=28kΩなので、終段出力(+30dBm)は、28kΩと受信機入力インピーダンス50Ωで分割され、-25dBm(S9+50dB)まで減衰し受信機へ入ります。RX初段アンプを破損させないレベルまで下がります。

ここで考慮しなければならないのが、ダイオードを破損させない、最大逆荷電電圧Vrです。1N4148は、Vr=100V、TR 2SC1815のVcbo=50Vなので、終段出力50Wまでは、このダイオード式SWが使えます。

このダイオードSWの接続場所は、上図のとおり、LPFの終段TR側に接続します。 逆にLPFのANT側に接続すると受信信号は、-20dB以上減衰します。これは、LPFのANT側からLPFを見ると、末端の終段TRは、受信時Openなので末端は、L(1uH)とC(510pF)の直列共振回路で短絡されているように見えます。受信信号は、LxCの共振周波数7.05MHzで短絡されていることになるためです。


終段増幅器 TR 2SC2028

終段TRとして最初、2SC3421(秋月で4個100円と安価、ft=120MHz)を使いましたが、前段より150mWで駆動するも1000mW出すのが精一杯で、諦めました。一応1W機として使えますが、やはりAF電力増幅用のようです。

C3421の効率改善は、将来の課題として、今回は、27MHz2W用途で設計された2SC2028の使用となりました。
ベース抵抗51Ωを入れても、B+12Vで楽に1500mW出ました。
2SC2028のベースの R3_により、アイドル電流を調整します。試作機では、0.7kΩ(1k+2.4k並列)でアイドル10mAとなり、B級〜AB級動作としました。CW信号増幅は、基本はC級で動作させますが、B級〜AB級とすることにより、2次、3次高調波は低減するはずですので、スプリアス規制が厳しくなるご時勢に合わせ、AB級としました。 
(Key-downしないで、Q6 2SA1015ベース側にあるセミブレークイン端子をGNDに落とすと無信号送信状態となるので、その状態でアイドル調整します)  


出力回路LPF π型3段

上図のとおり、π型3段LPFを設置しています。
一般市販インダクターコイル1uHを使ったLPFで通過損失1.5dB、
アミドンコアT37-#2(赤)に φ0.4UEWを16t巻いたコイルを使用したLPFでは通過損失0.5dBでした。

 この1dBの差は、出力にして25%差に相当するので、アミドンコアにすべきところですが、本機では、QRP機でもあるので、簡略タイプとして 市販品のマイクロインダクターを採用しました。
(損失分は、インダクタを加熱することとなりますので、10W機の場合は、インダクタは使えません。多分焼損します)

左図は、その市販インダクターコイル1uH使用LPFの通過特性です。(横軸スパン5〜15MHz)
7MHzの2倍高調波14MHzの信号は、7MHz信号に対し、 -35dBcの減衰特性となりました。


出力回路にLPFが必要であることは、説明するまでもないのですが、アンテナからの高調波スプリアスの輻射防止が目的です。
参考まで、左図は、LPFを外して出力を50Ωで終端して、その出力端のスプリアス特性をGigaStで観察した結果です。
基本波7MHz(-4dB)に対し、2倍高調波(-12dB)は、差で -8dBしかありません。
これでは、法規制値も守れないし、7MHzバンドでのQSO信号が、その倍の14MHzでも十分了解できるレベルの不要輻射となってしまいます。


出力回路LPFを接続している時のLPF前スプリアス特性

これは上記と同じく、2SC2028のコレクター部分から ピックアップした信号のスプリアスですが、2SC2028のコレクター部には、正規のLPFを接続し、その出力側で7MHz出力を50Ωで終端している状態です。
上記のLPFなし・直接出力のスプリアスに比較して、2倍高調波(-21dB)は、基本波7MHz信号に対して-18dBc低下しています。
 
こうして、2倍高調波14MHzスプリアス信号(-18dBc)は、LPF(2次-35dBc減衰)で減衰し、最終的に後述「●使用結果」のスプリアス特性のとおり、-50dBc以下となります。


トリファイラコイル T4

2SC1815と2SC2028の段間コイルT4、トリファイラの巻き方に慣れている方には不要ですが、参考まで製作写真を示します。
φ0.2UEWx11cmを3本よじって、フェライトビーズの穴を4回通します。それぞれ3本の端子に、@〜Eの番号を付けて、写真のように結線します。それを7mm角片面生基板(ランドが十字)に載せておきます。このようにするとPCBに組み込む時に、結線を間違えずに済みます。



12.8MHz水晶発振子VXO

12.8MHz水晶発振子VXOは、10kΩA型VRで0〜5Vを可変して、7.000-7.030kHzをカバーさせます。
VRの回転角度と周波数変化は、比例関係にするのが望ましいので、VRに10kΩ抵抗を並列にして、周波数変化を読み取ったのが、左図です。(でこぼこしているのは、読取り誤差)
VRには、安価な一般品φ16mmを使いましたが、そのためか、つまみに触れると、微妙にチャピリ(charp)ます。キャリブレーションで相手局にゼロインするときに、ピヨピヨとさえずりますので、対症療法ですが、10〜220uFを並列接続させて、ガリオームを均しています。つまみに触れなければ、周波数は安定しています。
10uFでは、まだかなりピヨピヨとさえずります。220uFとすると、VRをまわしてから周波数変化が追いついてくるのに時定数の遅れを感じます。

やはり通信用の高級VRを使いたところです。日本メーカのコスモス製品であれば、問題なく使用できます。一般に、A型は、B型より高価のようです。B型の場合は、抵抗10kΩの接続位置は、左図とは異なり、GND〜中点端子間に入れます。抵抗変化特性をA型とB型の中間位置近辺にします。



キャリブレーション時信号強度調整

キャリブレーションの際の信号受信強度は、左図2SK241のソースのR10_1kΩで調整します。受信機の性能、配置関係により異なるとは思いますが、概ね、1kΩでS9+20dB、4.7kΩでS9、10kΩでS6程度でした。 各自好みの信号強度に調整します。



●使用結果

保証認定後でないと、本機でオンエアーできませんが、受信機に上述の7MHzCW Radioを接続し、ダミーをつないで、動作確認しました。

GigaStでの0-30MHzのスペクトラム観察は左図のとおりです。
2次高調波(14MHz);-46dBc
3次高調波(21MHz);-53dBc
5.76MHz信号漏れ;-50dBmc ですが、それぞれ、もう少し低減しているはずです。

別の方法で、信号レベルを基準信号で校正しながら、受信機IC-750でレベル計測すると
5.76MHz;-55dBc
14MHz;-55dBc、21MHz;-65dBc以下となりました。


キークリック防止回路

 簡易キークリック・フィルター(2016.8.6)
エレキーでキーイング操作を行い、RXでモニターしたところ、かなり強烈なキークリックを感じました。 簡易的に左図のフィルターを、キーイング端子外部に接続すると、キークリックを低減できることを確認しました。 
この100uF+10Ωを2段直列とすると、更にキークリックを下げることができますが、受信音が鈴の音が響くような音となり、了解度が少し下がります。


 基板内組み込みフィルター(2016.8.6)
キークリック防止回路をTX基板内に組み込むときは、左図のように、
・NE602AN Pin1への1uF追加 (0.1uFの代わりに1uFchipとする)、
・2SK439のソースへの220uFの追加、
・2SA1015のコレクターに220uFを追加します。
 基板パターンにはないので、左図写真のように適当な位置にφ1mm穴を明け、取り付けます。


1Wでの実用性については、保証認定機を10Wに絞り、ANTとの間に抵抗式10dBアッテネータをつなぎ、実際のQSOを行いましたが、10W時と大差なく、交信ができました。1Wは十分実用的な出力であると感じます

●回路

全体回路図を下段に示します。

受信機7MHzCWRadioとの接続全体系統

7MHz CW Radioと接続する場合は、下図のように接続します。


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