(K19)KP6miniジェネカバTRX HF+50MHz SSB/CW/AM  

UP dated 2024.05.07 Rev.24.08.30

● (K19)KP6mini ジェネカバTRX HF+50MHz SSB/CW/AM +(OP-19) 6バンド HFトランシーバー3W

 HF帯に加えて 50MHzAMも可能。    右写真;右上に、タッチエレキー(K16-3 PIC12F1822タッチキー)を取付て7MHzCW運用
                                  写真右下貼り付けのパドルキー(K16-2)にしてもよし

HF帯(0.5-30MHz)+50MHzのジェネカバ受信機機能があり、HF帯7M, 10M, 14M, 18M, 21M, 28Mのマルチバンドトランシーバ(CW/SSB/AM)となるものを製作しました。
(K19)キットのみでは、出力0.5mW(-5dBm)ですが、その後段に(OP-18) J310GG Amp+RD00HVS1+RD06HHF1 のラインナップの miniTXリニアと組み合わせて出力3Wとなります。 

(K19)のみ0.5mWで QRPp交信記録に挑戦するか、(OP-18)と組み合わせ、携帯小型トランシーバーとするかは、自由です。
試作機は、タカチYM-200(200Wx150Dx40H)に (K19)と(OP-18)を組み込みました。
外部電源として 13.5Vx2A電源を準備します。 

仕様
 外形寸法 YM200 200Wx 45H x 150D
 重量 750g

 周波数範囲 受信バンド 0.5MHz-30MHz + 50MHz
        送受信6バンド 7M 10M 14M 18M 21M 28M (10M,18M,28Mは、LPF減衰域にかかるので出力≒1W)
        (LPFは基板に3回路あり、3.5-50MHzの任意の3バンドを組み込めます)

 電波形式 A1A(CW) , J3E(LSB/USB)、AM(出力は、1/4になります)
 周波数ステップ 最小50Hz および 0.5kHz, 9kHz, 10kHz
 アンテナインピーダンス 50Ω不平衡、 BNCジャック

 定格電圧 13.5VDC (回路を一部変更することで 19VDCで使用できます。その場合は、出力は約6W)
 消費電流 13.5VDC受信時 0.3A
     13.5VDC送信3W出力時 2A 、

 受信感度 0.25uV(-120dBm)以上  AMは、3uV程度
 スプリアス強度 -50dBc以下

 第1中間周波数; 64MHz 、第2IF;12MHz
 Filter帯域(-6dB) 2.4kHz(SSB/CW) ,5.5kHz(AM)

 Local OSC; DDS3逓倍により 64.5MHz〜118MHz 

TXとして動作させたとき、および ゼネカバ受信機の系統図は、下図のとおりです。


タカチYM-200に組み込んだ外観は、以下の写真のとおりです。
右側の親基板は、18mmスペーサで支持し、下側には、厚さ12mmのマイラースピーカー(秋月116023)を取り付けています。ただ、このSPは、386Dの出力では音が歪むので(SPコーンに抵抗リード鉄片が吸引付着していて歪発生)。できれば 少しでも音量を大きくするには、別のSP(秋月109013)が良い。ただし、これは厚さ17.5mmなので、ケース底板にφ50mmの穴を開けて、埋め込まないと収納できません。
   ケースをひとつ大きくして Y-M250にすれば、ゆったりと組み込めます。

前面パネルにはお決まりのAF-VR、Encoder、TactSW4個に代えて 両側はねかえりトグルSWx2個、Mic、Key Jack、Sメーター、TX_MonitorLED等。
 Tact SWは、Band切替、Step切替、Mode切替、Memoの4つがあります。 。

 フロントパネル右端は、エレキー速度VRで、その上部のテストピンジャック(黒、赤)は、ここにエレキーパドルを差し込むようにしました。

・(K19)KP6miniジェネカバTRX HF+50MHz SSB/CW/AM 6バンド KITをご入用の方は、◇PICの頒布のページをご覧ください。

(K19)KITのみでの出力は、0.5mWですが、OPTION-18/KP6miniTXリニアを追加して、出力3Wとなります。

周波数は、7セグメントLEDx6桁表示で、左端の「c」は、CW-Modeであることを示しています。エンコーダを回すとここには、周波数の数字が表示されますが、Mode-TactSWをちょい押しするとModeの「c」「U」「L」「A」が表示されます。長押しでMode変更となります。


下は、ケース内部の写真です。 (K19)も(OP-18)も両方ともに 基板サイズは、100x100mmで、そのふたつを YM-200(内法198mm)に収納しているので、お互いに高さをずらして、横方向では、3mmほど重ねて配置しています。 
 右半分は、(K19)親基板、左半分が、(OP-18)miniTXリニア基板です。



●KP6mini HF6バンドSSB/CW/AMトランシーバーの概要と性能

HF 7M, 10M, 14M, 18M, 21M, 28Mの 6Bandマルチバンドトランシーバ(CW/SSB/AM) RF出力3Wです。KP6miniと名付けました。

主な仕様は以下のとおり。
1)PCBは、KP6mini親基板(100mmx100mm)、J310x2 GG Amp(32mmx43mm)、KP6mini_TXリニア(100mmx100mm)、の3つの基板 より構成されます。

2)第1 IF=64MHz、第2IF=12MHz。局発は、AD9833_DDS(21.5〜39.33MHz) を SA602で3逓倍し、64.5〜118MHz を注入。
 DDS出力を3逓倍するというのは、スプリアスの観点から無謀とも思いましたが、挑戦しました。固定周波数ならば、トランジスタで歪増幅逓倍、BPFで目的信号を取り出す、というのが普通ですが、今回は、広帯域の逓倍でかつ、高調波のRX受信への影響を最小限にするために、可能な限り小信号で処理をしたい、という思いがありました。それで、過去にちょっと実験したことがある、SA602を用いた逓倍回路としました。 詳細は後述します。

3)送信信号Generator部は、DBMにNE602(送受兼用)を使用し、IFフィルターは、12MHz X'tal x6段のラダー型。それをダイオードDBMでIF64MHzに変換し、DDS3逓倍局発と混合し、3.5-50MHz信号を得ています。この12MHz⇔64MHz変換部は、双方向信号が処理でき、送受兼用です。
プロダクト検波部局発は、12MHz Xtalの発振周波数を可変して、USB/LSB/CW/AMに対応します。CW/AMの送信時は、NE602のPin1に微小電圧を与えて、キャリアを少し漏らし、搬送波としています。

4)親基板のTX出力部は、SA602による IF64MHzからの目的信号変換で、同調回路はありませんので、(K19)親基板では、目的信号以外、主にその高調波が、多量に発生しています。 これらスプリアスは、後段の(OP-18)の基板の同調コイルにより除去しています。
 親基板出力は、略-5dBmで、その後のJ310GGAmpで +3dBmに増幅し、RD00HVS1+RD06HHF1のminiTxリニアに入力しています。

5)RD00HVS1+RD06HHF1のRFリニアアンプ部は、33dBのゲインがあり、最終出力は約3-4Wです。 

左図は、CWモードでの各バンドの実測値。(ピンク)dBmは、J310x2 GGAmp出口を、(緑色)dBmは、LPF通過後の最終出力です。 そのWatt換算が、黒線です。

 7,14、21MHz帯は3Wですが、10、18、28MHz帯は、約1Wです。 これは、LPFが3回路分しかなくて、下のバンドのLPFを上のバンドで兼用しているためです。

例えば、7MHz用LPFは、その高調波を-50dBc以下にするぎりぎりの設計をすると、その上の10MHz帯が、-3dBcの減衰帯にかかるために、出力が減衰されてしまうためです。

 相当のRF電力を LPFで消費させることになっていますので、コアも加熱され、望ましいものではありません。上のBandで、本格的に運用するためには、それ専用のLPFを追加することを推奨します。
 蛇の目基板等で 専用LPFを作り、基板LPF部の上に 2階建構造でLPFを追加します。

6) 今回の試作機では50MHzを組み込みませんでしたが、(OP-18)のRD00HVS1+RD06HHF1のminiTxリニアは、50MHz帯でも、HF帯と同様なゲインを持っています。
 一方、(K19)親基板での50MHz出力は、約-12dBmで、これをJ310x2 GGAmpで増幅しても、-6dBmで、まだ不足ですので、J310GGAmp基板(32mmx43mm)内に Relay+50MHzアンプを追加して、+3dBm信号として、(OP-18)基板の入力とします。

●(K19)KP6mini ジェネカバTRX部回路図

回路図は3枚に分かれていますが、この3枚分回路が、1枚の基板100x100mmに配置されていますので、部品実装密度は、かなり高くなっています。
ジェネカバ受信機の構成ブロックは、上述のとおりですが、SSB/CWは、NE602でプロダクト検波をし、AMは、1N60Pで 包絡線検波としています。

・ロータリーエンコーダは、ノンクリック型で PIC-RB7をGNDに落とすと、4倍分解能となり、1回転あたり、50Hzx24x4=4.8kHzの偏移が可能になる。 試作機では、サトー電気で販売されている100PPRを使ったので、RB7-Openとして 1倍分解能で使用しています。

・RB0-タクトSWは、Stepを変える。押すたびに、50Hz(*)、0.5kHz(c)、9(_)、10kHz( )が循環する。
・RB3-タクトSWは、Modeを変える。長押しするたびに、(USB→LSB→CW→AM→が循環する。ちょい押しでは、Modeは変更されないが、そのときのModeの「c」「U」「L」「A」を 6桁LEDの最左端桁に表示する。 Encoderをまわすと、周波数表示に戻る。

・RB1-タクトSWは、BandSWでこれを押すと、押すたびに7→10→14→18→21→24.5→28→50→3.5→7 を循環する。RB6をGNDに落とすと、144MHz帯も追加される。 このうち送受運用できるのは、miniTXリニアに組み込まれた任意の3Band(基本)となる。

・RB2-タクトSWは、Memory。そのときの Band、周波数、Stepが、EEPROMにsaveされ、次回電源投入時に、その条件で起動する。

●特色のある個別回路の説明、製作留意点

●チップ部品 AD9833 (MSOP10)、SPDT-SN74LVC1G3157DBVR の半田付けの良否判断;

下記写真の左が (K19)基板裏側・・(OP-18)付属のJ310x2 GGAmp基板も便宜上、この基板に添わした・・で、極小SMDチップ、AD9833(3mm角に10本のピンがある)、SN74LVC(6Pin)x2個がある。
右側の写真2枚の上側が、SN74LVC(6Pin)、下側が、AD9833(MSOP10Pin)の拡大写真。
これら極小チップは、まず最初に、基板が水平における状態のうちに、半田付けします。半田付けの方法、半田付けの良否判断は、以下の Webも参照ください。

SPDT-SN74LVC1G3157DBVRは、これに+5Vを供給する78L05を取り付けた後に、電源ON状態で A-B1間、A-B2間のスィッチ切替状態も確認しておきます(製作要領にも記載あり)。 なお、このチップは非常に壊れやすいので、取り扱いには注意してください。

◇(K17)AD9833SG製作記事の AD9833半田付けの良否へ 
◇(K12)KP6D製作記事の AD9834半田付けへ

 また、あとほどDDS3逓倍の項目で 触れますが、52MHzXOのGNDパターン強化は、長楕円で囲んだ箇所です。


●局部発振器、DDS 3逓倍回路;

下図の3逓倍回路。右側よりLPFを通過したDDS信号が入力される。  DDS信号周波数(21.5〜39.33MHz)=DDS とする。
 Q32_SA602では、Pin6の信号、DDSがキャリアとなり、Pin1には、入力信号として、7pFで位相を少しずらした 強度約-25dBmのDDSが入る。 すると、Pin5には、混合信号の DDS +/- DDS 、即ち 2xDDS が出力される。

 Pin5の HPF(1uH+6pF)により、抑制された1次信号のDDSは更に減衰して、目的信号 2xDDS の-25dBcに抑えられる。 その 2xDDS信号は、次ステップのQ33_SA602に入り、キャリア=DDSと混合され、3逓倍の 3xDDS が、Pin4,5から出力される。

 その信号には、目的信号以外の DDS, 2xDDS, 4xDDS 等が-30dBc程度の強度で含まれているので、T11、T12の複同調BPFで除去する。 Q33の出力端信号強度は、-25dBm程度で、BPFを通過したあとは、-30dBm(18mV/330Ω)の微弱信号となっている。
 その微弱信号(18mVrms)を、局発信号として必要な、200mVrmsに増幅するのに、TD7104Fを採用した。TD7104Fは、本来8分周のプリスケーラだが、Pin N1=N2=Lとすると、1/1で 0.5Vppで出力する飽和アンプとなる。データシートでは、入力22mV以上であるが、実際には、10mV以上の信号にロックして、フル振幅(0.5Vpp)の信号を出す。

 SA602の出力は、周波数が高くなると、かなり変換効率が下がり、その出力は、小さく、またばらつく。 それでもTD7104Fがロックすると、フル振幅(0.5Vpp)の信号を出す。 この効果により、64.5〜118MHzの全域にわたり、ほぼ 0.5Vppの局発信号が得られた。

 T11、T12のBPFは、バリキャップの可変同調式であるが、さすがに64.5〜118MHzの広範囲はカバーできず、50MHz用(LO=114MHz)のときは、二つの1N4148をOFFにして、7pFを同調容量から外している。 50MHzバンド以外では、この1N4148をONにして 7pFを同調容量に加算している。 この1N4148のON/OFF回路は、基板作成後の変更となったので、小基板を部品面に追加し、空中配線をしている。

左写真は、7Mバンド用(局発=71.05MHz)として、バリキャップ電圧 Vt=0.84V を与え、そのときのT11, T12複同調回路の周波数通過特性。
 上図のように、T12出力コイルに 450Ωトリファイラコイルを接続し、(K9)AD9850SG +(OP17)逓倍器+(OP16)LCD Oscilloで測定した(既存回路は、DDS_LPF L7出力側を解線し、SG接続。Q33 SA602 Pin1は、10kΩGND接地しバランスくずし測定)。

 69MHz +/-5MHzの局発信号が通過してTD7104を駆動する。
 Band毎のVt電圧の切替は、3.5M(Vt=0V/Lo=67.5MHz), 7M(Vt=0.84V/Lo=71MHz)
10M(Vt=1.68V/Lo=74MHz), 14M(Vt=2.04V/Lo=78MHz), 18M(Vt=3.35V/Lo82MHz)
21M(Vt=4.19V/Lo=85MHz), 25M(Vt=5.04V/Lo=89MHz), 28M(Vt=5.87V/Lo=92MHz),
50M(Vt=12.6V, Diode_Offで7pF切り離し、Lo=114MHz) となるように PICが自動的に切り替えている。

7M以外のバンド 3.5M(Vt=0V), 10M(Vt=1.68V), 14M(Vt=2.54V),18M(Vt=3.35V), 21M(Vt=4.19V), 28M(Vt=5.87V)の T11-T12通過特性も下図写真に示す。



       7MHz用局発 (23.68x3=71.05MHz)           50MHz局発 (38.03x3=114.1MHz)

上図は、TD7104F 出力(局発信号)を 450Ωプローブ経由 GigaSt5で観察したもの。 450Ωを通しているので、電圧は1/10倍(-20dB)となり、元電圧も 500Ω負荷並列追加により7割くらいになっている。
左は、7MHzLO(23.68x3=71.05MHz)。 21.15MHz付近のヒゲは、GigaST5の内部雑音。 右側は、50MHzLO(38.03x3=114.1MHz)。

 なお、第2IF変換の 52MHzXO信号のGND強化をしないと、52MHzの漏れが、TD7104F入力に入り、-40dBc程度で52MHzが、この局発スペクトラムに現われてくる。
 「52MHzXO信号のGND強化」とは、52MHzXO出力側トランスT5の2次側コイルから、52MHz信号が出て、DBMのT4コイルに至り、そのGND側から、もとのT5のGND側に 52MHz信号が戻る GNDパターンを最短で、かつ太いパターンで戻すように、シールド板、線を追加することです。



●局部発振器、DDS 3逓倍回路の各ポイント@〜Gでのスペクトラム(18MHz運用時/局発27.37x3=82.11MHz)

@はDDS出力(J310_Gate)のスペクトラム。原発振27.37MHzで 68MHzのSuprは、DDSの折り返し、96M-27.37M=68.63MHzが見える。
Aは、LPF入口(DDS信号をJ310で7dB増幅した状態)。J310のドレインコイルは、4:1のステップダウントランスで、LPF(200Ω)に整合させている。

BはLPF出口で、折り返しの不要信号68.63Mhzは減衰している。
Cは、SA602による2逓倍信号で、「0.1uF+450Ω」プローブにより、約1/10の電圧がスペアナ入力となり、表示値-40dBmになっている。もとの信号電圧は約30mV/1.5kΩ程度で、Q33 SA602への入力は、≒-32dBmとしている。

Dは、T11,T12の複同調コイル出口の信号。ほぼ目的信号82.11MHzのみとなっている。(信号レベルは、約30mVrms)
Eは、TD7104F出口/LPF前の信号。

Fは、LPF通過後の信号、表示値-22dBmで、0.18Vrms。TD7104出力データは、0.5Vp-pなので、想定通りの出力を得られている。
Gは、Q3,4 SA602の1.2kΩチップ前の局発信号で、当然ながらFとほぼ同じである。SA602の局発ピンインピーダンスは約1.5kΩなので、1.2kチップとの分割で、SA602には、100mVrmsで局発信号供給している。



以上ポイント@〜Gは、基板上部(部品面)から探針できるポイントであるが、裏面からのみアクセスできるI〜Kポイントでも 以下のとおり、観察してみた。

Iは、Q33 SA602の出力ポート Pin5。3逓倍以外の不要信号は、もう少し低減されているであろうと思っていたが、DDS2逓倍波が大きく観察される。
Jは、T11を通過した後であるが、上述のDDS2逓倍波は、-30dB程抑制され、-70dBのラインに届くかどうかというところまで低減している。 これは、T11の選択度のみでは説明できない。 SA602では、「DDS信号27.3MHz(キャリア) +/- DDS2逓倍波」 の変換を期待している。 DDS2逓倍波は、SA602の Pin4 とPin5に現われるが、それぞれ位相が180°ずれているので、相殺しているのか??疑問です。

Kは、C27 2pFを通過後の T12入口信号であるが、左のJに比べ、信号レベルが下がり過ぎている。 2pFが小さ過ぎるのか?
Lは、C27を3pF(2pF に1pFを並列追加) にした、ポイントKと同じ位置での信号。減衰はそれほどでもなく、ほどほどのレベル信号となっている。 
C27は、2pF よりも 3pFが良さそうだ。


●(K19)KP6mini ジェネTRX単味での出力スペクトラム;

通常は、(K19)KP6mini の後段に (OP-18)miniTXを接続してトランシーバーとしますが、(K19)KP6mini ジェネTRX単味での出力スペクトラム0.5mWを確認しました。 fx=52MHzの単段LPFがあるだけなので、目的信号以外の Supr.が盛大にでているはずです。
下図左は、7MHz出力時、右は、21MHz出力時のスペクトラムです(それぞれ-10dB ATT挿入)。

7MHz出力では、2倍高調波が-28dBc、IFの64MHzが-28dBc、7MHzの映像信号の135MHzが-43dBcが見える、 他に12MHz・・経路不明であるが、64MHz-52=12MHzか?・・が-33dBcで認められる。

 この(K19)KP6mini ジェネTRX単味0.5mWで LPF等追加無しで、スプリアス基準をクリアするか?と考えると、法基準では、1W以下は、50uW以下なので、10xLog(50/500)=10dBm。 

 精神衛生上は、よくないが、法規制はこれでクリアする。0.5mWでどの程度の実用性?数百メートルは、届くか?・・等々興味はありますが。

            7MHz出力時スペクトラム                 21MHz出力時スペクトラム



●(K19)KP6mini +OP18miniTXでの出力スペクトラム;

OP18 miniTX 3Wと組み合わせたトランシーバの7,10,14,18,21,28MHz各バンドの出力スペクトラムは、下図のとおり。
各バンドの 2倍、3倍高調波が-30dBcと高く表示されているが、これは、GigaST5内で高調波が生成発生しているためで、OP18の実際の出力は、-55dBc以下で法規制を満たす。 
 7MHzのすそのが、ざわついている(-55dBc)のは、DDS=23.68MHz の折り返し信号96-23.88=72.12MHz によるスプリアス。
 28MHzは、局発信号92MHz と DDS XO96MHzが近く、それによるSuprが発生している。 OP18のT3のみでは、Supr除去が不十分なので、 J310GG Ampに 28MHz専用コイルを追加(リレーで切り替えて)する。



●アナログスイッチSPDT SN74LVC1G3157DBVR について;

この 極小SPDTチップは、下図の64MHz IFの送受切替箇所、と AFの SSB/AM切替の2か所に使用している。

下図のIF送受切替回路をもとに、Q5の動作を説明する。Pin5(Vcc)には、+5V(絶対最大6.5V)が加えられている。その状態で、PIn6(S)をL(GND)にすると、A〜B1間が接続され、PIn6(S)をH(+5V)にすると、A〜B2間が接続される。

そのピン間接続抵抗;7Ω、通過電流;100mA、最大周波数;300MHz、通過信号電圧は、-0.5〜5.5Vの範囲、が仕様で、50Ω系では、50mW、300MHzまでの信号をON/OFFできる。
 RFのスイッチングに使用するときに、注意すべき点は、このチップの各ポートの浮遊容量が17pF、ON時二つのポートを通過するので、合計で34pFあることだ。この浮遊容量により、RFが減衰しないように設計しなければならない。

下の回路で具体的には、64MHzコイルT1の上側には30pF接続、下側はCなし。ここには、Q5チップの34pFがぶら下がるので、T1は、30pFと34pFの直列合成容量により、64MHzに同調する。すると浮遊容量34pFは、共振回路のCに組み込まれているので、損失なく、64MHzRF信号は通過する(双方向)。

 また、通過信号の電圧は、受信時には、Q4 SA602 Pin5の電圧4.5Vを中心に、送信時は、Q3 Pin1(1.6V)を中心に +/-60mVのRF信号が、重畳されて、信号通過するので -0.5〜5.5Vの範囲内となっている。

このチップは、壊れやすいので取り扱いには注意を要する。第1に、熱に弱い。 6pinの両側を一度に半田ごてで加熱すると、だいたい壊れる。 次に、Vcc+5Vを荷電しないで、S端子に+5Vを加えると、瞬時に破損する。
壊れると、電源OFFの状態で DMMテスターで確認すると、Pin〜GND間抵抗が数十Ω、A〜B1 あるいは、B2間が数十Ωになってしまう、正常品は、それら全てが5MΩ以上なので、チェックできる。


●SSB/CW/AM Generator、NE602の動作 について;

左図は、Q7 NE602周辺回路で、受信時は、SSBプロダクト検波、送信時は、SSB(USB,LSB)、CW、AMを発生させる。

キャリア周波数については、;
・USB時;USB+ライン=+5V となり、Q13-ONで12MHz水晶は、直接GND接地で 11.998.9kHz発振(TC20pF調整)。

・LSB時;USB+ライン=0V(Q13-Open)、LSB+ライン=+5V(Q14-ON) となり、12MHz水晶は、T9コイルによる VXO発振。 T9コア調整により、11.996.1kHz発振となるように調整。

・CW受信時;上の「LSB時」と同様
・CW送信時;LSB+ライン=0V(Q14-Open) となり、12MHz水晶は、T9によるVXO発振であるが、バリキャップ1SV231の荷電電圧が 1.9V→8.0Vに変化し、12MHz水晶は 11.997.0kHz発振。

・AM受信時;TB+=12Vにより、Q12-ONとなり、Q7 NE602電源喪失により 水晶発振停止。
・AM送信時;上の「USB時」と同様。11.998.9kHz発振


マイク入力については、;
・SSB時;CW+ライン=0V により Q21-Open、Q22-ONにより、マイク入力は、Av≒1kΩ/100Ω(R15)=10倍で増幅。

・CW時;CW+ライン=+5V により、Q21-ON、マイク入力遮断。

・AM時;CW+ライン=0V、AM+ライン=+5V により Q21-Open、Q22-openにより、マイク入力は、Av≒1kΩ/(100Ω+330Ω)∵(R15+R16)=2.3倍で増幅。SSB時よりも ゲインを下げている。
 総じて マイクゲインが少し大きすぎるようにも感じるので、R15、R16は、もう少し大きく、220Ω、470Ω程度が良いかもしれない。AMでは、過変調で音声が少し歪んでいる。
 マイクゲインVRを追加するときは、R15 100Ωの片側をカットし、500〜1kΩのVRを直列に挿入する。


NE602 キャリア搬送については、;
・CW時;CW+ライン=+5V から「D4ダイオード+470kΩ」経由で NE602 Pin1電圧を 数十mV程度上昇させ、DBMのバランスを崩しているが、NE602の飽和点までは崩していない。だいたい飽和出力の40%(-4dBcポイント)のキャリア搬送となる。  飽和点の -4dBcポイントは、NE602のリニア領域の上限ポイントに相当する。

・AM時;Q23-ONとなり、NE602 Pin1 を940kΩ(左回路図ではR17=1.2Mだが最終調整で変更)で接地。 NE602 Pin1電圧は、数mV下がり、DBMのバランスが少し崩れ、CW時の 約-6dBcポイントのキャリア搬送となる。NE602の特性のばらつきにより、R17は、300kΩ〜1MΩの範囲で、調整する必要があるようだ。  


●単段LPF に空芯コイル採用;



局発出力部LPF、L10 と TX出力部LPF、L4 には、紙ストローφ6mm 空芯コイルを採用した。

 左写真が、作成時の写真で、上側がL4、下側がL10です。

 L4は、「UEWφ0.2 x4.5t(密巻) xコイル長1.0mm;0.18uH」で、直径方向に180°ずれた、間隔1mmの位置に 針穴を二つ明ける。そして 針穴を通して UEWφ0.2を 4.5t巻き、接着剤(セメダインスーパー等)で固定。


空芯コイルは、トロイダルコアに巻いたコイルよりも、Qは高いが、磁束漏れがある。 L10とかL4のような 単段LPFで 周辺に影響がないような箇所で使えば、コスパがよい。


●受信性能 、使用感について;

ダブルスーパーとしたためか、(K12)KP6D SSB/CWトランシーバと比較して、内部雑音が大きく、やはり、ところどころで 微弱ながらクロスオーバービートを感じます。
 電源スイッチを入れて、最初に微弱なビートが聞こえます。 Sにして0-1程度のレベルですが、時間とともに、ビート音調が変化していきます。 ANT端子に 7MHz DPを接続すると、その外来雑音により、まったく気にならなくなります。 

 この最初の微弱なビート音の原因は? DDSのクロック96MHz x5逓倍=480MHz と 52MHzXO x9逓倍信号=468MHzが ダイオードDBMの箇所で、480-468=12MHz信号を生成して、それが、12MHz IF段で増幅されてビート音になるようです。 高次の高調波同志の干渉なので、時間とともに水晶発振器の発振周波数の温度ドリフトで 音調が変化します。 96MHzと 52MHzの相性で、これが発生したりしなかったりするかもしれません。

 失敗作の初号機では、DDSクロックを 100MHzXOにしましたが、このときは、(100Mx3)-(52Mx6)=12MHzが生じて、AM受信の際、大きなビート音となり、実用的ではなく、100MHzXOを断念した。


● プログラムソース

プログラムソースは、マウス右クリックで「対象をファイルに保存」を選んで、ダウンロード。
PIC16F883用プログラム
 ◇ダウンロード GRTV.hex

●(OPTION-18) KP6miniTXリニアの詳細

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