突然だが自分が世界の中心だったら、とか。

自分の思い通りに世界が動いたら、とか。

思ったことはないだろうか?

ちなみに、僕は何度もそう思ったことがある。

自分を中心に世界が動いていたら、とか。

周りは全て自分のために用意されたものだったら、とか。

世の中全てが自分の思い通りに動いているたら、とか。

そんなことを思い描いたりした。

しかし、その半面、心の奥底では、

そんなことはありえない、とか。

自惚れるな!お前はただの1登場キャラクターに過ぎないんだ!とか。

現実逃避するな、凡人が!とか。

そんな否定的な言葉がこだましていた。

しかし、それでも、僕は思い描いた。

自分が世界の中心だったら、と。

思い描くその世界は、とても居心地がよく、まさに理想の世界。

自分が中心なのだから、いらないと思うものはすぐに消し、ほしいものはすぐに現れる。

苦労することもなければ、悲しいこともない。

そんな世界を・・・・。

無論、僕は17年間生きてきて、そんなことはありえないともう分かっている。

僕が世界の中心であるとか、他の人は僕のために用意されているとか、ありえないと。

もしそうならば、

僕は、中学時代に、あの暗黒時代を迎えたはずがない。

そう、つい数時間前まで思っていた・・・。

 

 

 

僕と君と世界の関係

 

 

 

ブゥーン ブゥーン ブゥーン

携帯のバイブ音が聞こえる。

カチャ ピッ

携帯を開きタイマーを止め、時間を確認した。

AM 8:21

・・・・・。

血の気が引きました。

現実が信じられず、何度も目を擦って時間を確認したけど、そこに映っているのは、紛れもない真実。

授業開始は9時からだけど、出席は8時40分には取られる。

そして、ここから学校まで、どんなに急いでも20分はかかる。

起きてすぐに走っても間に合いません。

「・・・・・寝よう」

どうせ遅刻なんだし、それなら今はこの眠気を退治したい。

と言うことで眠ることにする。

 

プルルルルル プルルルルル

そんな電子音が聞こえ、目が覚めた。

時計を見ると10時20分。

あれからまだ2時間しか経ってないじゃないか。

と言うことでもう一寝入りする。

プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル プルルルルル・・・

「ああぁ!うるさいなもう!」

どたどたどた ガチャ

「はいもしもし?」

しつこい電子音に敗北し、僕はイラつきを隠しながら電話に出た。

こんな朝っぱらからしつこく電話を掛けやがって!どこのどいつだまったく、と言う気持ちは抑えておく。

抑えられてるかは、分からないけど・・・・。

「起きてるなら、早く電話に出ろやボケぇい!」

・・・担任の教師でした。

「いや〜、今起きたところですよ。ところで何です朝っぱらから」

はっはっはっはと誤魔化す。

「はっはっはっは。朝っぱらからすまんなぁ。って言うと思ったか!さっさと学校へ来いや!消しゴムで消すぞボケ!」

「ひぃぃぃぃ。すみません、すみません。今すぐ学校へ向かわせていただきます」

どう考えても恐ろしさのかけらもないこの言葉。

しかし、この教師を知っている者なら恐怖を感じざらざる負えない。

過去にこんな話がある。

ある生徒が、今の僕と同じセリフを言われ、

「やれるもんならやってみろ」

と言っちゃったものだから、さあ大変。

この教師はそれを実行し、本当に消しゴムで消そうとした。

次の日、発見された少し色黒だったその生徒は、体中真っ白になり倒れていた。

もちろん髪も全て真っ白。

体中の色素が失われるとはどういうことか・・・。

そこでいったい何があったのか・・・。

みな疑問に思ったが口には出さなかった。

いや出せなかった。

そして、それを目撃した生徒はみな一同に同じ事を言った。

「消しゴムって、人を殺せるものなんだ」

と・・・。

ちなみに他にも逸話は残っているが、それはまた別の話として。

それ以来、この教師から文房具の名前が出るとみな恐怖した。

それでもまあ、みんなから慕われていたりする。

それは理不尽な理由で、強行手段に出ることがないからだろう。

「そうかそうか。じゃあ今から10分以内に登校しろよ」

すみません。ぶっちゃけ、理不尽の塊のような人でした。

「ええぇぇぇぇ!?無理ですよ!どんなに急いでも20分は掛かりますって」

「もし遅れたらコンパスの刑な」

コンパスの刑・・・両足を少し長めの鉄の棒に結ばれ、それを回転される。

                             この刑が執行されたあとには綺麗な円のあとが残されているという。

「それだけは絶対にいやです!」

「なら早く来いや。あと8分46秒しかないぞ」

「ちょ、ちょっと・・・」

「またな」

ぷつ プープープープー

うぉぉおい!

どうするどうする!?

ヤツは絶対に実行する。

そういう男だ。

何が何でも間に合わせないと・・・。

自転車・・・。そうだ自転車を使おう!

あれなら、指定時間どおりに間に合うはず。

この際、校則がどうだとか言ってられない。

命のほうが大事だ!

ということで、急いで部屋に帰り、制服に着替え、家を飛び出し、自転車に飛び乗った。

飛び乗ると同時に猛スピードで走り出す。

目指すは学校。

残り時間は5分強。

間に合うか?

いや間に合わせるんだ!

走り出して3分。

このペースで進めば、間に合う!

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ラストスパートをかけるべく、気合を入れて叫んだ。

「はいはい。そこで停止してねぇ〜」

ド・ガチャァァァァァァン!!

そんな言葉と共に、僕の気合と自転車は吹き飛ばされました。

「ぐぇぇええええええ!!!!?」

ド・ズズズズズズズズズゥゥー・・・。

滑りました。

それはもう氷の上を滑るように。

アスファルトの上を・・・・。

「あれ?思ったより運動神経ないなぁ」

「いや姉さん、普通の人はあれで死んでるから・・・」

うん。僕もそう思う・・・。

「えぇ〜。私はアレくらいじゃなんともないよ?」

「姉さんは普通じゃないからだよ」

これだけの事故をあれくらいで済ませるあの人は、化け物ですか?

「ひどいなぁ。それじゃあまるで私が化け物みたいじゃない」

「化け物とは言わないけど、そういっても支障がないような体してるじゃないか」

血だらけで倒れている僕を無視して会話を続ける二人。

「でも、あれくらい切り抜けられないで、本当にこの人であってるの?」

「間違いないよ。アリスが出した答えなんだから」

アリスって誰?

と言うか君たちなんなんだ・・・?

ああ、なんか目が霞んできたなぁ。

すごく眠いし。

「あ、姉さん!この人かなり危ない状態だよ!」

「うそ!?これぐらいで死んじゃうの!?ど、どうしよう」

なんか騒いでるけどもうどうだっていいや。

このまま眠ってしまおう。

「いやぁぁぁぁ。死んじゃう死んじゃうよ〜」

そんな叫びが町内に響いていたたが、

当の僕はと言うと、

あぁ、コンパスの刑決定か・・・。

なんて事を考えながら意識を失った。