Interlude
その男は小さな島国の貴族だった。
彼は幼い頃母親がとても好きだった。それはもう度が過ぎるほど好きだった。
今で言うマザコンだった。
しかし、その母は彼の前からいなくなってしまった。
彼は落ち込んだ。食事も喉を通らないほどだった。
しかし、そんな彼を立ち直らせるものが現れた。それは、彼の姉だった。
姉はとても母親に似ていた。そんな姉が彼は大好きだった。
そして彼はシスコンとなった。
それから年月が経ち、彼は、どんなに愛しても、姉を手に入れる事が出来ないと言う事を悟った。
彼はまたもや落ち込んだ。この世には救いはないのか?とさえ思った。
そしてさらに年月が経ったある日、彼は、ある場所で、川原で遊んでいる10歳ばかりの女の子を見かけた。
その女の子は、彼の姉に大変よく似ていた。一目で彼はその女の子に惚れた。
そして、さらって行った。
現在なら重犯罪である。しかし、その当時は権力こそ全てだった。
彼女の保護者は涙を呑むしかなかった。
そして、彼はロリコンと呼ばれる存在となった・・・・。
Interlude out
「とまあ、こんな所だ」
「な、長い戦いだったわ・・・」
アーチャーの話はとにかく長かった。
長すぎて時計が一周してしまった。
あの話全部を書き表すとハードカバーブックが5冊は出来るだろう。
それも、この頃のハリーッター並みの厚さになるだろう。
その上、終始情緒不安定だったから、話の内容のほとんどは、もう頭に残ってない。
だってほとんど今回の件に関係なかったし・・・・。
せっかく、せっかく答えを見つけたのにいぃぃ!!とか叫ばれてもどうしようもない。
むしろ何の答えよ?と突っ込みたい。
だから話の内容は割愛し、アーチャーの話で今回の件に関係あることのみを思い返して見る。
まず1つ目の疑問。なぜこの事態になったのか?
アーチャーの話では、元々一つだった世界の意思は、聖杯からの強い影響を受け、汚染され、
2つの勢力に分断されたらしい。
ひとつは、私やアーチャーのような比較的まともな(世界から見て)人々が所属する軍勢。
もうひとつは、聖杯の影響を受け、変異してしまった人々。この世界の士郎のような人々が所属する軍勢。
「なんでそんなことになったのよ!」
とアーチャーに問いただした。
ふつうありえないでしょ。世界の意思が分断されるなんて。
「そうなった原因は無数に存在する。が、あえて上げるならこれらの理由だろう」
と言って、彼は理由を語りだした。
まず第一に、第5回聖杯戦争はかなり特殊なものだった。
あの戦争には同一人物が、マスターとサーヴァントとして参加すると言う異常事態が発生していたからだ。
普通なら世界が修正をかけるはずなのだが、サーヴァントは、元々世界から派遣されているようなものである。
そのせいで、世界に修正されることなく存在する事となった。
その結果。世界はストレスを感じ、完璧だった世界に亀裂が入る事となる。
で、原因になった人物についてだけど、アーチャーはうまく隠して、話し通したつもりの様だけど、バレバレだって。
まあそこは彼の必死さに免じて、突っ込まないでおく。
で第二に、歪んだ聖杯がいくつもの平行世界で壊されずに残るか、この世界のように、大聖杯を壊せず、その
エネルギーを拡散させることが出来ないままで残っているらしい。
いくつかの大聖杯は破壊されたらしいが、破壊されず残ったものが多く、まったく抑制力になっていなかった。
そしてそれらは、ある事がきっかけで共鳴し、力をつけた。
それを聞き、私はとりあえず、いちゃもんをつけた。
「そのきっかけってなんなのよ!そのきっかけを作った奴さえいなければ、こんな事にはならなかったんでしょ!?
何処の馬鹿よそいつは!教えなさい」
「あ~。いいのか本当に教えて?」
なぜかアーチャーは私をちらちら見ながら言いにくそうにいった。
「なによ。もったいぶらずに言いなさい」
人間知らない方がいい事もあるって言うけど、私の場合はそんなものはない!断言できる。
「あ~。うん。じゃあ言うが、原因は君だ、凛」
は?何を言ってるの?この馬鹿は。私がそんなヤバ気な事を、やるわけないでしょ。
やった記憶もないわ。本当、何を言い出すかと思えば、馬鹿馬鹿しい。
「いや、それがな。君ではあるんだが、今私の目の前にいる君ではなく、平行世界の君が、後先考えず。
大聖杯の目の前で、バカスカバカスカ宝石剣を振り回して、結果、平行世界同士が繋がったと言う事なのだよ」
原因は私かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
と叫びそうになる。しかし抑える。それを言ったらなぜか負けのような気がしたからだ。
だから私は言った。
「あぁ~うん。凄いじゃ無い。宝石剣を作るなんて、平行世界の私と言えどもやるわね」
「いや作ったのは、衛宮士郎だ」
「・・・・・・・」
どぐぅぅ!!
「ぐふぅ!?」
とりあえず、憂さ晴らしに内臓を抉り取るように、ボディーブローをかましてみた。
「な、何故だ凛。私は何もしていないぞ?」
必死で吐き気を堪えた様子でアーチャーが言った。
本当に苦しそうだ。英霊と言えどもボディーブローは苦しいらしい。
その様子を見、ちょっと悪かったかなぁと思って謝ろうとした瞬間、ある事を思い出した。
宝石剣を作ったのは衛宮士郎だ。
宝石剣は士郎が作った。もし、彼が作らなければ、私は宝石剣を使っていない。
と言う事は宝石剣を作った士郎が悪い。私は悪くない。
そして、私が悪者のように言ったアーチャーは重罪である。
以上の理由により、我が遠坂法律相談所の出した結論は、私は謝る必要はない確率100%。
よって彼の発言はスルーする事にする。後ろめたい気持ちもすっかりなくなった。
「で、次の理由は?早く言いなさい」
「普通に聞き流すか・・・・」
「なに?まだ殴られたい?」
「先を続けさせていただきます」
すごく脱線しまくったが、とりあえず話を戻す。強制で戻す。
でだ、第三にして最大の理由、それは。
いくつかの平行世界で、悪意に満ちた聖杯ではなく、欲望に満ちた聖杯があった。
その欲望とは、もちろん現在の士郎のような人々が抱えているものである。
そして、それらの欲望に共鳴したそれぞれの悪意に満ちた聖杯は、それらの願いを歪めて叶えようとした。
しかし、それらは歪めてかなえられる事がなかった。叶えることが出来なかったのだ。
なぜなら、それらの願いは、思うだけなら問題ないが、実際やると重犯罪と言う極めて歪んでるものだった。
それはもう、世界中の悪意を集めても適わないほど強力なものだった。
そして、全ての聖杯は、欲望に満ちた聖杯に敗北し、全ての聖杯が、欲望に満ちた聖杯となった。
その結果、世界を浸食するほどの力を持つ事となった。
とまあ。これらがこんな状況になった原因らしい。
で次に、なんでアーチャーが現界しているのかと言う事。
ここからはどんどん飛ばしていく。
アーチャーの嫌味にも反応しない。
「それは君が勝手に思っていることだろ」
ドス。
「ぎゃぁぁぁ。目がぁぁ、目がぁぁぁぁぁぁ」
無言でじゃん拳のチーをかましてやった。
口は反応しなかった。よくやった私!!
で、アーチャーがばた狂っている間に話を続ける。
分断された世界はそれぞれ意思を持っていたが、元々はひとつの存在。
やはり一つに戻りたいと感じていた。
しかし、1つに戻るには問題があった。
それは、どちらの意思が全てを統合するのか?と言うことだった。
そして、それは話し合いで解決するようなものではなかった。
だから、世界はゲームをする事にした。そう、戦争と言う名のゲームを。
命名するなら、
真・第一次世界大戦
うん。これ以上にふさわしい名前はない!
文句があるやつは出てこい!ファイナルヘブンをぶちかまして上げるから!
例によってアーチャーは、いらぬ一言を言ったので、ちゃんとぶちかましてやった。
彼は、
「ヌゴフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
とか言いながら吹っ飛んで行った。
分かってても言うなんて、アーチャーはマヒストに違いない。
で、この戦争のルールは以下の通りだ。
1、それぞれのチームのリーダーを決める。ただし、リーダーは衛宮士郎に限る。
2、リーダーがやられればその時点でやられたチームの負けである。
3、それぞれ必要と思われる人物を呼び寄せられる。しかし、呼び寄せられる人物は、この聖杯戦争に
関係ある人物に限る。
4、サーヴァントと呼ばれる持ち兵を7人まで用意できる。
5、サーヴァントとは別に、英霊エミヤと呼ばれる存在をリーダーのガーディアンとして召喚すること。
6、エミヤがやられた場合自動的にリーダーもやられたとみなす。
このルールのうち、3,4,5はとりあえず私たちには関係ない。世界が勝手にすることだ。
問題は、1だ。
今までの説明から行くと、この世界の士郎はどう考えても敵側のリーダーになる。
そうすると、こちら側のリーダーとなる士郎は召喚されて、こちらの世界に来る事となるだろう。
さて、こちら側のリーダーはいつ、何処に召喚されるのだろう?
あぁ早く召喚されないだろうか?久々にまともな士郎が見たい。
それに、この頃、和食が食べたくなってたのよ。召喚されたら真っ先に作らせなければ!
そんな考えをめぐらせていると、目の前の空間が歪み、
そこから、赤髪の少年と、金髪碧眼の少女が振ってきた・・・。
タイミング良過ぎだっつぅの!
あとなんで、その娘が、一緒にいるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
ああ、ちなみに降ってきた先にはもちろんジャンケン、チーを喰らって、ばた狂っていたアーチャーがいた。
さすがラックEは伊達じゃ無いわね。