7月21日のある地方の新聞の見出し
連続盗難魔現れる。
今月20日、県内の高校、中学校あわせ、十数校で盗難が起こった。
盗まれたものは、いずれも女子生徒の衣服で、なかには、下着も盗まれた生徒がいる模様。
いずれも彼女らが部活動に励んでいる間に盗まれていると見られ、数日の間、部活動は停止される予定。
犯人については、いくつかの目撃例があり、特徴として上げられるのは、
白い髪。浅黒い肌。赤い服ということだ。
警察は全力を上げて、目下捜査中である。

 

 

 


よし、とりあえず現状を確認しよう。
この部屋には私を含め4人の人間がいる。
一人は私。もう一人はアーチャー。
ここまでは問題ない。問題なのはここからだ。
目の前でご飯を食べている人物。どう見てもセイバーね。
じゃあ私の後ろにいる人物。これもどう見てもセイバー。
・・・・・・・・。
「なんでセイバーが二人いるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「落ち着け凛!」
「これが落ち着けるはずないでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「普通に考えろ!どちらかのセイバーは偽者で、敵とだと言うことだろうが。そんなに動揺してどうする!」
は!そ、そうだった。私が動揺してどうするの。どちらが偽者か推理しないと。
と言っても、どうするべきか?
「とりあえず、判断材料を増やすために、質問してみてはどうだ?」
とアーチャー。言われなくってもやるつもりだったわよ!負け惜しみじゃ無いわよ!!
そう頭の中で言い分けしながら、私はセイバー二人に質問した。
「士郎と食事。大事なのはどっち!!!」
「馬鹿か君はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
アーチャーが叫んだ。馬鹿はあなたよアーチャー。セイバーを見分けるにはこれが一番なんだから。
「シロウです!」
「食事です!」
ほらもうこれで分かったわ。
「た、確かに一発で分かったな・・・。まさか敵がここまで間抜けとは・・・」
「偽者は、シロウと答えたあなたよ!!」
と、私の後ろにいたセイバーを指差す。
「あなたは私の事どう思ってるのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「君はセイバーの事どう思ってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私に指を差されたセイバーとアーチャーが叫んだ。
「さっきの答えからして、どう考えても君の後ろにいるセイバーが本物だろぉぉ!!!!」
え、うそ?こっちが本物?私またやっちゃった?
「一発で分かるだろう普通は!」
「は、初めから分かってたわよ、それくらい。ただあなたを試しただけよ」
「汗をたらしながら言っても説得力ないわぁぁぁぁ!!!!」
今日のアーチャーはやけにハイテンションね。
「君の感想はそれだけか!」
まあいいじゃない。偽者も分かった事だし。
「と言う事で、アーチャーやりなさい。そしてこちら側の強さを、分からせて上げるのよ」
「拒否する!」
即答するアーチャー。
・・・・・はぁ!?何言ってんのよ!何のために自分がいると思っているの!!?
「この戦争に勝つためだ!」
アーチャーは、とても力強く言った。
分かってるじゃ無い!だったら戦いなさいよ!
「無理だ!戦えない!」
なんでよ!!
「武器がない!!!」
はぁぁぁぁ?何を言ってるのよ、こいつは。
前に、ランサーと戦ったときに出してたじゃない双剣を!
「前は出せたが今は出せない。俺が言えるのはここまでだ。それから先は死んでも言わん!!!!!!」
凄まじい決意を込めて叫ぶアーチャー。
何がこいつをここまでさせるのだろう?
「リン。ここは私に任せてください」
セイバーは、そう言って、私の前に立ち、敵セイバーを睨んだ。
そして、睨まれたセイバーはと言うと。
「アーチャー。この味噌汁の御代わりはもうないのですか?」
まだご飯を食べていた。なんて食欲!そして何たる緊張感のなさ!
あ、セイバーがプルプル震えてる。
「セイバー。あなたに食べさせるご飯は家にはないわ」
私は出来るだけ冷たく言った。
「む。何故ですか?」
いや、なぜですかってあなた・・・・・敵でしょ?
「いや、まあこの戦争のルールで見れば私はあなた方の敵になるわけですが、ご飯くらい恵んでくれても
ばちは当たらないでしょ?」
いやいや!ばちは当たらないかもしれないけど普通、敵にご飯なんて食べさせないでしょ!?
「私の生きがいはご飯を食べることだと言うのに・・・・。それは苛めですかリン?」
その言葉を聞いた瞬間、近くで、プツンと言う音が聞こえた。
言っとくけど、私じゃ無いわよ!?
「いい加減にしなさい!!!!私と同じ顔でぇ!同じ声でぇぇぇ!それ以上ご飯ご飯言うのはやめなさいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
堪忍袋の緒が核爆発したセイバーが叫んだ。
そして、その叫びが消える前に彼女は敵セイバーに向かって飛び出していた。
次の瞬間、
ガキィィィィィン!!ガキィンガキィンガキィン!
凄まじい金属音をならし、二人のセイバーは、戦闘を開始した。
セイバーは、凄まじい爆発力で相手の懐に飛び込み、切り付けようとする。
しかし、敵セイバーはそれを読んでいたかのように、魔力を爆発させ、後ろへバックステップし、その一撃をかわし、着地と同時に、
からぶった反動で隙の出来たセイバーの頭部へ不可視の剣を振り下ろす。
だが、セイバーもそれを読んでいたかのように、相手に体当たりをし、距離を離す。
二人のセイバー戦いは紙一重の接戦だった。一瞬で勝負がつきそうだが、つかない。
しかし、そんな二人の拮抗も崩れる時が来た。セイバーが徐々にではあるが、押され始めたのである。
同じ力を持っているはずなのに何故?と言う疑問が浮いた。
ぐぅぅぅ
・・・・・疑問はすぐに解消された。セイバーの空腹により拮抗が破れたのだ。
まあ確かに、昨日からセイバーは何も食べてないけど。
たった一晩食べないだけで力が出ないって言うのも英霊としてはどうかと思うわよ?
そんな情け理由ではあったが、状況が危機的である事は間違いない。
「まずいな。このままでは、セイバーはやられてしまうぞ」
分かっているわよ。てか、あんたが加勢したら何の問題はないのよ!
「それは出来ぬ相談だ!」
と言ってアーチャーはやっぱり動かない。
あぁ~もう、あれをやるしかないじゃない!ぶっつけ本番なんてホント最悪。
「何をするんだ凛?」
アーチャーが疑問を投げかける。しかしそれには答えない。
答えてたら間に合わなくなるかもしれないし、ぶっちゃけ、役立たずに答える義理はない!
私は、両手に宝石を持ち、右手に炎の魔力を。左手に氷の魔力を込め。
それらを組み合わせる。
ここ数ヶ月で私が出会い、そして私に一番適していると思われる、この魔術。
その名を。
メドローア
「そいつはポッ・・・・」
それ以上言うな!と言う目でアーチャーを威嚇する。
アーチャーが黙った所を見て、改めて、敵セイバーに標準を合わせる。
そして、セイバーと敵セイバーが離れた所を見計らってメドローアを放とうとしたその時。
「助太刀するぜ。セイバー!」
そう言って青い疾風が敵セイバーに飛びかかった。
「ちょ、ばか!離れなさい!」
私はそう注意を促したが間に合うわけもなく、青い疾風・・・・ランサーがこちらを振り向いたときにはすでに、
メドローアは放たれ、
「え!!?」
と言う間抜けな声を出し、ランサーは、敵セイバーの代わりにメドローアの直撃を受けてしまい、
「ちょ、ちょっとまって!俺の出番これで終わりか!?こんなの納得いかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
と言う叫びを最後に、閃光と共に、消滅した。
そして、当初の狙いだった敵セイバーはと言うと、
「ふぅ、あの全身青タイツのおかげで助かりました」
まったく無傷だった。


とりあえず叫びたい。
「ランサー・・・・。地獄へ落ちなさい!!!!!」
「確かに地獄へ落ちるべきだな・・・・」
珍しくアーチャーも同意する。
そして私たちの会話を聞いていた敵セイバーは、
「とりあえず今日の所は、私は帰る事にします。ここではご飯を食べられないようですし」
そんな事を言い出した。
まだ食べる気!?と叫びたいのを抑える。
私としてもメドローアは連発できるものじゃ無いし、それ以上に、これ以上この家が壊れるのを見たくないし・・・・。
だから、その言葉に同意した。
アーチャーも同じ意見のようだ。
しかし、ただ一人、セイバーは不服のようだった。
「敵をみすみす逃すのですか?」
不満の気持ちが、ありありと伝わってくる。まあ、不満なのは分かるけど、今のあなたじゃ勝てないでしょ?
「それはそうですが・・・」
となおも不満の声を上げようとするが、
「これ以上戦うと食事を作る事が出来なくなるがそれでもいいか?」
と言うアーチャーの一言で、あっさり承諾した。
やっぱりセイバーは、食欲第一なのね・・・・。
で、全会一致で、休戦する事となり、敵セイバーは玄関から出て行こうとし、
「ああ、言い忘れていました。私はセイバーではありませんよ。ライダーです」
驚愕過ぎる事実を暴露して出て行った。
それを聞いたとき私は思わず、
「ぅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?」
と叫んでしまった・・・。
今回の被害
遠坂家リビング及び調理場:半壊
ランサー:リタイア