Interlude

走った。

何かを振り切るように、何かから逃げるように。

あそこにはセイバーが、まだいたかもしれない。

いや、実際まだ、あそこにいたのだろう。

でも、俺は、怖かった。

あの英雄王やバーサーカーにすら死の恐怖を感じながらも立ち向かえた。

でも、あれはそんな次元じゃない。

声を聞くだけで体中の細胞が死滅するような感じが・・・。

あれではまるで・・・・。

バカなそんなわけあるはずがない。

そんなことよりも俺には大事な使命があるじゃないか。

この懐のものを熟読するという使命が・・・。

Interludeout

 

 

 

キュピーン

「どこかで私の陰口をたたいてる奴がいる!」

「突然何を言い出すんだ凛・・・・」

アーチャーが、あきれたように言った。

私にしてみれば、あんたの回復力の方があきれさせるものだと思うわよ。

「何をしてるのです!早くシロウを探さないといけないと言うのに!」

セイバーが怒鳴る。

いや、まあそうなんだけどね。

どこに行ったかわからないじゃない。

「大丈夫です。私とシロウはレイラインで結ばれています。それを辿れば見つけられるはずです」

あれ?あなたたち、すべての令呪を、使い果たしたんじゃなかったっけ?

「何を馬鹿な。シロウはまだ1度しか令呪を使用してませんよ」

私が聞いた話とずいぶん違うわね。

同じ展開の聖杯戦争といっても、細部は違うということね。

 

 

「とりあえずだ。衛宮士郎は今どこにいるんだ?」

「え~と。彼は、今、すごい速度で移動してますね。目的地は・・・・衛宮邸のようです」

なんか魔力をたどるって言うよりも、衛宮士郎の現在位置を検索、現在位置検出、目的地を選出

出力します。って言ったほうが適切なような気がするわね・・・。

まあそんなことよりも、

「まずいわね」

「ああ、まずいな」

「なぜです?」

セイバーは首をかしげて聞いた。

れ、冷静になれ私!かわいいからって悶えてちゃ、話が進まないわ。

ていうかよくそんなので男じゃないってばれなかったわね・・・。

ああ、でもでも、実はばれているのにセイバー、一人だけばれて無いつもりで接してたって言うのも

また萌えるわ。

「今の衛宮邸には、別の衛宮士郎がいるからな。それとの接触は非常にまずい」

もだえ苦しんでいる私の変わりにアーチャーが答える。

あれに耐えろというのが無理な話よ。

だから私は悪くない!

「世界からの修正を受けるということですか?」

「そんなつもりは無いけどね」

とっさに答える私。

「え?なぜリンがそのようなことを言うのです?」

あれ?何でだろう?脳内会議に没頭してる私が答えるなんてありえないのに・・・。

「・・・・・・・・・」

アーチャーが何か哀れなものを、見る目で私を見る。

「何よ!私はボケたわけじゃないのよ!ただなんとなく言ってみただけよ!」

「あ、ああ。君はボケたわけじゃない。それに間違ったことを言ってるわけでもない」

なによ?私を擁護したつもりかも知れないけど、言ってる意味がわからなくなってるわよ。

「そんなことよりも、早く衛宮邸に行かなくて良いのか?」

そうよね。まだいろいろ気になることはあるけど、今は士郎を救出しに行くことが先決ね。

  

 

Interlude

走ること十数分。俺は案外簡単に、自宅へと戻ることができた。

どうやら俺がいた場所は近所だったらしい。

俺は、門をくぐると一直線に自分の部屋を目指して走った。

道中、見覚えの無いものがいくつか転がっているのが見えたが、気にしない。

どうせ、藤ねぇがどっかから持ってきたものだろう。

それよりも大切なことは、この懐のものを、じっくり、ねっとり、なめまわす様に見ることだ。

それには誰にも邪魔されない静かな場所・・・俺の部屋でなければならない!

そんな思いを胸に俺は部屋の扉を開けた。

開けたその先には、異質な空間が広がっていた。

何もおいてなかったはずの机の上には、PCがセットされ、

畳の上には大量のCDケースが散乱し、本棚には大量のゲームパッケージと見られるものが並んでいる。

そして、壁には大量のポスターが・・・・。

ガラー。

俺はとりあえず襖を閉めた。

入る家を間違えたかなぁと思い周りを見回す。

そこは間違えなく俺の家だった。

そして、俺はもう一度自分の部屋の襖を開けた。

そこにはやはり、先ほどと同じ異質な空間が広がっていた。

・・・・・・・・・・・・・・。

ここが俺の部屋だなんて認めたくなかった。

しかし、それでもそこは、紛れも無い自分の部屋だった。

俺は放心しながらも、なんとなく本棚にあるゲームパッケージを手にとって見る。

そこには、

はじめて○おるすばん

という題名が書かれており、どう見ても小学生にしか見えないような女の子に・・・・。

だめだ。この部屋にいてはいけない!

このままじゃ頭がおかしくなってしまう!

俺は部屋からの脱出を試みた。

そのとき、

ダッタッタッタッタッタ

ガラー

ボグゥ!ボカ!

「グフゥ」

泣きながら桜が突進してきた。

あまりに突然で、俺は桜を支えることができず、後ろ向きに倒れた。

「先輩!私・・・、私やっぱり、やおい系なんてなれません!」

やおい系ってなんだよ?

「先輩。私、私・・・!」

「お、落ち着け桜!」

俺が唖然としているのにも気にせず、桜は俺の首根っこを持ってガクガク揺らす、

「私やっぱり、マッチョが好きなんです!マッチョ以外愛せないんです!」

「ぐぅ・・わ、わかったから、わかったからその・手・・を外・し・・・て・・・・・・・・・」

桜に、段々と首を締め上げられ、意識が薄れ行く、

「テニプリじゃ萌えないんです!北斗の、北斗の拳のほうが萌えるんです!!!!」

北斗の拳で萌えられる奴は桜くらいだろうと思いながら、俺は意識を失った。

Interludeout

 

 

 

「ここに士郎がいるのね」

私たちは、現在の敵陣とも言える衛宮邸に足を踏み入れた。

「気をつけてください。ここは敵陣です。いつ敵が襲ってくるかわかりません」

「ええ。わかってるわ」

でも一番身の危険を感じなければならないのは、セイバーなのよねぇと思いつつ、

「とにかく、中に入るわよ」

「ふむ。そうだな」

「わかりました」

衛宮邸に入り、居間の光景を見たとき、私は眼を疑った。

大量に詰まれた同人誌。限定版込みのげんしけん全巻。スクールランブル、つばさ豪華版、舞姫、ネギま・・・。

その他、大量の本が、部屋中に散りばめられていて。

壁には、デモンベイン、シャッフル、デ・ジ・キャラット・・・・、さまざまなゲームやアニメのポスターが張っている。

そこにいると私はとても安らかな気持ちになれた。

「凛。やっぱり君は・・・」

「リン・・・。あなたは・・・・」

2人が哀れなものを見る目で私を見る。

「そんな、そんなかわいそうなものを見る目で、私を見るなぁぁぁぁ!!!」

わたしだって、私だってアニメ漫画ゲーム好きなんてなりたくないわよ!ただちょっと、私の願いが、日本の法律じゃ認められてないから・・・。

「そうか、ならばこのポスターを切り刻んでみろ」

そう言って私に一枚のポスターを手渡した。

「い、いいわよ。それくらい楽勝よ」

私は,自前のナイフを、手に持ちそれを切り刻もうとした。

「どうした?手が動いてないぞ?」

出来なかった。それは私のプリ・・・だった。それを切り刻むなんて、私には踏み絵も同然だった。

でも切り刻めないと私のプライドは・・・。

「ぐぬぬぬぬぬぅぅぅぅ」

私は、凄まじいジレンマにさいなまれていた。

その時、

ガタガタガタ

近くで何かが揺れる音がした。

音の正体が気になって周りを見回す。決して、ポスターを切れなかったことを誤魔化すためじゃない。

ガタガタガタ

また、聞こえた。

私は音が鳴った場所を見た。

そこにはちょっと大きめのタンスが置かれていた。

この大きさなら、小さな人ぐらい引き出しに入りそうねと思いつつ、ガタガタ揺れている一番下の引き出しを開けた。

そこには、ロープで縛られ、口をふさがれた、イリヤが入っていた。

「本当に入ってたぁぁぁぁああああああああ!!!!!」

このごろ、よく叫んでるなぁ私・・・・。