第五回聖杯戦争。
この回には、聖杯戦争史上例を見ないイレギュラーが発生した。
今までにも、小さなイレギュラーはいくつも発生はしていたが、今回は、群を抜いていた。
なぜなら、召喚されたサーヴァント全てが同じ人物だったのだから・・・。
第一次エミヤ大戦
「やはり全員考えることは同じか・・・」
前戦争の決戦の地。そこに、7人のサーヴァント全員が揃っていた。
「当たり前だ。我々は、考え方は少しずつ違うかも知れないが、根本を同じとするものだ。この地に集まるのは必然だ」
赤い騎士が述べた。
「しかし、ここまで自分がいると、誰が誰だかわからなくなるな」
そう、彼らが言うように、そこにいる人物は全て同じ人物だった。
彼らの名はエミヤ。
正義の味方を目指し、英霊になり、摩擦していった未来の騎士・・・のはず。
「名と見た目が、全て同じだと不便だ。一人ずつクラスを名乗りネームカードを胸に着けることを提案する」
一人のエミヤが提案した。
「そんななさけないことができるか!」
「そうだできるわけが無かろう」
「貴様一人だけで、やってろ」
三人のエミヤが、憤怒した様子で、その意見を拒否する。
「しかし、このままでは埒があかないだろ?」
意見を出したエミヤは、絶対に譲れんとばかりに、食ってかかる。
「識別は、ちゃんと、とっておいたほうがいいと思うぞ。そうしないと混乱してくると思うしな」
今まで、傍観していた一人のエミヤが、賛同した。
その意見にはなんとなく説得力があった。
「それにクラスがわかったほうが、戦い方も組み立てやすいだろ?」
「う~む。それは一理ある。仕方が、無い背に腹は変えられんな。よかろう。その意見で話を進めよう」
「「うむ」」
三人のエミヤは、しぶしぶながらではあるが、ネームカードをつける方向で賛同した。
「そうか、よかった。そっちの二人もその意見で通してもいいか?」
意見を出したエミヤが、残りの二人に聞いた。
「俺の意見なんて聞く気もないくせに聞くなよ。聞いた振りして安心させて地獄に落とすのが常套手段のくせに・・・ブツブツ」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「・・・・・・・・・・」
意見を出したエミヤは、二人に意見を求めたが、彼らから返答を求めるのは、不可能のようだったので、
話を進めることにした。
「それでは、それぞれクラスと自分についてのあらましを述べてくれ」
と全員に言い。
「それでは、言い出した私から言おう」
と発言者のエミヤが名乗り出た。
「私のクラスはアーチャーだ。あらましと言っていいか分からないが、死ぬまで正義の味方という信念を突き通し、
死後も信念に則って戦い続けている。そういう存在だ」
「む?ではお前があの聖杯戦争の時にいたアーチャーになるのか」
「そういうことになるな」
エミヤ改めアーチャーが肯定した。
「そうか。それで、ひとつ尋ねたいことがあるのだが」
一人のエミヤが尋ねた。
「なんだ?」
「お前は結婚してるのか?」
「は?」
アーチャーは何を言ってるんだという表情をし、
「正義の味方を目指して、生涯を全うした私が、結婚などしてるわけがなかろう」
といって呆れた。
「そうか。ちょっと憧れてはいたのだが、なんと言うか」
一人のエミヤが言い。
「「「「「寂しいやつだな!」」」」」
5人のエミヤが声をそろえていった。
普段ブツブツ言うだけのエミヤですら、声をそろえていった。
「ば、馬鹿が!私は、ちっとも寂しいとは思わなかったぞ!」
すごく慌てて否定するアーチャー。
実は、少し後悔しているようだった。
「ふ、まあいい。次は私だ」
と、また一人のエミヤが前に出た。
「私のクラスはキャスター。あらましとしては、そうだな。そこのアーチャーと闘って勝った経験がある」
とにやりと笑いながら、エミヤ改めキャスターが言った。
「あれは魔力が底をつきかけうまく動けなかったからだ!万全なら私が勝っていた!」
アーチャーは必死に抗議する。
「潔く負けを認めればいいものを」
キャスターは、アーチャーを嘲笑しながら言う。
「貴様ぁ!そういう貴様だって、お前のようにはならないと言いながらしっかり英霊になってるではないか!」
「くっ!これには深いわけがあるのだ!」
アーチャーの一言はキャスターの急所をついた!
「なんだ?私をあそこまで愚弄したのだ。言え」
「・・・・・・凛の借金を返すためだよ・・・」
「は?」
今なんと言った?借金?そんなものを返すために?
「そ、そんなもののためにお前は世界に自分を売ったのか!?」
憤怒しながらアーチャーは、キャスターを問い詰めた。
「し、仕方ないだろ!どんどん、どんどん宝石買い漁って。あいつ230兆も借金作ったんだ!230兆だぞ230兆!
某大国の国家予算を遥かに超えるほどだぞ!そんなもの一個人で返せるわけないだろ!
だからと言って、そんな負債、子供に残せるわけないだろ!」
泣きながら言葉を吐くキャスター。
「・・・・・すまん、私が悪かった」
アーチャーは反省し、ほかのエミヤは同情した。
なぜなら彼らは知っていたからだ。
あの赤い悪魔ならやりかねないと。
髪が、白くなるもの頷ける。
「・・・・あ~。衝撃的な話を受けた後だ。みんな次に、言いたくはないだろ。ということで私が指名する」
とアーチャーが言った。
「ああ。そうしてくれ」
ほかのエミヤが賛成し、
「というわけで次はお前だ」
アーチャーは一人のエミヤを指差した。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
指を指されたアーチャーは雄たけびを上げた。
「・・・・。みんな見てわかると思うが、あいつのクラスはバーサーカーだと断定していいだろうか?」
全員が頷いた。
「じゃあこいつはバーサーカーで、あらましは大方、イリヤに奴隷になるように言われて返事をしたんだろう。
それで、精神がやられ、このようになったと言った所だろう」
「へたれだな」
「ああ、へたれだ」
口々にエミヤたちは感想を述べる。
「ぐぉぉぉぉぉ・・・・」
図星だったらしく、エミヤ改めバーサーカーは落ち込んだ。
しかし、誰も同情はしない。
彼らはヘタレにはきびしいのだ。
「さて、ワンクッション置いたところで、次は誰がいく?」
落ち込んでいるバーサーカーを無視して話は進行される。
「私が言おう」
残り4人となったエミヤのひとりが進み出た。
「私のクラスはライダー。あらましとしては、大聖杯を壊し、桜を救ったものというところか」
エミヤ改めライダーが言った。
「そうか。それでなぜライダーなんだ?我々は乗り物に乗れると言ってもそこまですごくはないはずだが?」
アーチャーは疑問を口にする。
「ああ、私のところでは、ライダーが現界したままでいてね。彼女からいろいろな生物の乗り方を伝授してもらったのだよ」
当たり前のことだとばかりにライダーは述べたが、表情はその訓練のすさまじさを物語っていた。
髪が白いのもきっとそのせいだろう。
「そ、そうか」
アーチャーは、なぜ英霊になったのか?と言う事を聞くところなのだろうが、聞かないことにした。
もし聞けば、すさまじく悲しいエピソードを聞かされることが必至だったからだ。
「そ、それでは、次は誰が・・・」
すっかり進行役になったアーチャーが、残りのエミヤにたずねる。
「ああ、じゃあ、俺が言うよ」
そう言って、残り三人のうちの一人が進み出た。
「俺のクラスはセイバー。自分のあらましを言うとしたら、う~ん。
自分の世界へ戻って、その後、現代に、帰ってきたセイバーと結婚して、子供が3人いたってことかな?」
「「「「「セ、セイバーと結婚してただとぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」」」」
5人のエミヤが声をそろえて叫ぶ。
彼らにとってセイバーとは、アイドル以上いや、何と比べることもできないほど大切なもので、憧れだった。
そんなセイバーと結婚だと!?
なんてうらやましい・・・じゃなくて、なんてすごい偉業を遂げてるのだ!
誰もがあこがれ、しかし、手に入らぬものとあきらめた彼女と結婚し、あまつさえ子供が三人だと!
どれだけ運がいい男なのだ!
「いや~。本当に大変だったよ結婚生活は。セイバーはよく食べるし、子供は固有結界持ってる上に、
竜の因子もちだよ?竜の因子!その上、魔力炉も引き継いじゃって、本当に手がつけられないで苦労したよ」
「「「「「それぐらいの苦労がなんだぁ!!!!!」」」」」
またしても5人のエミヤが叫ぶ。
そんな、たかが知れた苦労は苦労とは言わない!
というかよくみたら、エミヤ改めセイバーは、ほかのエミヤとは違い。
髪の色がオレンジで、肌も肌色だ。
まったく苦労のあとがみれねぇぇぇ!
アーチャーは、素に戻って叫びそうになった。
しかし、それをなんとか押さえ、
「・・・・で、お前が英霊になったわけは何だ?」
平常心平常心と思いながら聞く。
「ああ、うちのかみさんつまりセイバーがアヴァロンに行くことになって、俺も付いていくことになったんだよ。
それで英霊としてここにいるわけ」
・・・・・・・・・・。
今すぐ殺したい。
ばらばらにしてすり潰して、爆破してやりたい。
しかし、今ここでやってしまうと負けを認めたことになる。
これ以上こいつに勝利を与えたくない!
エミヤ全員が、同じ意見だったらしく。
頭に血管を浮き上がらせてはいるが、攻撃を仕掛けようとするものはいなかった。
しかし、全ての紹介が終われば真っ先に全員セイバーを殺しにかかるだろう。
そう、全員が確信していた・・・・。
続く
あとがき
BBSに普通あとがき出さないだろとの指摘を受け、そうだったのか!と気づいてこちらにすることにします。
さて本題、
今回、短編の1話限りにするつもりが思いのほか長引き、前編という形になってしまいました。
次で後編となって終わってくれるといいなと思ってる今日この頃です。
近いうちに続きをアップしようと思います。
最後に、感想などいただければうれしいです。