ある日の漁港

「ランサー、楽園は戻った・・・ってまた増えてるぅ!?」

元ランサーの楽園だったそこには、もう壊れる寸前のランサーと、

俺から見ればもう逝っちゃってる赤い釣り人と、

子供の群れに埋まる初めからおかしな金ぴかと、

もう一人・・・、

赤い布を持った銀髪の少女・・・・カレン・オルテンシアその人の姿があった。

彼女は、普段の法衣服・・・ではなく、戦闘用法衣を着込んでいた。

正直、突っ込みたい。

しかし、今はその時ではないと頭の中で木霊する。

「ヒィィィィット!」

バシュッ!びちゃびちゃ

赤い布が魚を漁獲する。

俺のときはフィッシュだったのにな・・・。

普段は、あんなに人の心を暴くのが得意なくせにこう言うときは、まったく察知しないで、

カレンは、赤い布で一心不乱に魚を獲り続ける。

ランサーの楽園だったこの場所は、このひとつのファクターにより、更なる混沌を迎えていた。

 

 

無言でいること数十分。

かもめの鳴き声と波のさざめきのみが聞こえる。

子供たちも彼女の異常さに気がついているのだろう。

先ほどから一言も喋らない。

良い判断だ。

しかし、俺はそうもいかない。

俺は、ここに無言でいる理由がない。

だからと言ってこのまま無言で帰ろうとすれば、あの赤い布で連れ戻され、ひどい眼にあうことだろう。

よし、決心は付いた。

俺はこれから彼女に話しかける!

「ここで、なにやってんだよあんた」

一心不乱に魚を獲っている彼女に声をかける。

さあ、いつでも来い。

俺はどんな言葉にだって耐えて見せるぞ!

だから物理的攻めは、止めてください。

「あら、こんなところで出会うとは奇遇ですね」

「奇遇といえば奇遇だけど、そんなことよりもあんたはここでいったい何をやってるんだ?」

「見て分かりませんか?」

カレンは、こちらに視線を向け、

ふぅやれやれ、これだから(バキューン[自主規制])は・・・。と呟きながら、

「漁港に来て、魚を釣っている・・・これだけの事象から、私は釣りをしていると推測してほしいものですね」

イヤイヤイヤイヤ。

誰がどう見てもあなたのやっているその行為は釣りではなく、漁獲です。

素手や銛で獲っているのと変わりません。

と、口に出して言いたい。

けどいえない。だって怖いから。

すでに遠坂によってこの手の人種に対する絶対的な服従を余儀なくされている俺。

「それで。話は済みましたか?」

「え?ああ、もう一つだけ」

え!?何を言ってるんだ俺は!?

もう言うべき事は言っただろ?

これ以上、彼女に話すべきことなんてないじゃないか。

早々にここを立ち去ることを考えろ。

「ふう、なんですか?私も忙しい身なのです。早々に用件を述べやがれ(バキューン[自主規制])野郎」

今、また相当汚い言葉を言わなかったか?

しかも結構でかい声で・・・。

ここには子供いるんだぞ!?

仮にも司祭か!?

と言いたいけどいえないこの悲しさよ。

いつからそんなに弱くなった衛宮士郎!

と、自問自答する。

答えは簡単。

遠坂凛に出会ってから。

と頭の中で言葉が響く。

「聞こえなかったのですか?私は早く用件を述べよと言ってるだよ○○野郎!!!」

うわ〜。もうお前、絶対ヒロインとかなれねぇよ。

とそんなことは言えるわけもなく、

「あ、ああ、すまない」

そう言って、一呼吸置き、

「なんで戦闘用法衣なんだ?それじゃあ、スカートをはかないで外を歩いているのと変わらないだろ?」

地雷であろう言葉を述べてしまった。

しかも全身にダイナマイトを巻いて・・・。

何をやってるんだろう。

まさか○○なのか?俺は・・・。

こんなことを言ったら絶対・・・。

「ここは戦場ですよ?ならば戦闘服を着てくるのが道理でしょう」

ほら、罵声のオンパレー・・・・えぇええ!?

「それだけ!?それだけなのか!!?」

「?それ以外に何が?」

カレンは、他に何があるのだろう?という思案顔で言葉を述べる。

まあ俺だって同じようなことを言われれば同じ反応をしているだろう。

だが彼女の場合は・・・。

「普段のあんたなら、ここで、放送禁止用語のオンパレードで罵倒するか、人の心の傷を抉り出すかするだろ?」

心の中で思っていたことをそのまま口にしてしまった。

なんで、一番言わなければならないことは言わないで、別に言わないでもいい事は言うかなぁこの口は・・・。

「そうですか。あなたは私のことをそんな風に思っていたのですね」

なんかカレンの周りから瘴気というか殺気というか。

とにかく何か良くないものが渦巻き始めているのですが・・・。

一言で言うと・・・。

ヤバイ!

これは彼女にスイッチが入った時の兆候。

このままここに居ては、彼女の激しい攻撃により、心がやられて廃人になってしまう!

そう思うが早いか。

きびすを返し走り出す。

しかし、

「この私が、むざむざと逃がすと思いましたか?」

バシューン ぎゅるぎゅる

突如目の前が真っ赤に染まり、

ずるずるずる

「もごもごもがもごもがもが(いや〜堪忍して〜)」

叫び声を上げようにも布で口をふさがれて、まともに喋ることがまったく出来ない。

その光景はまさに釣り上げられる寸前の魚。

比喩的にはあまり怖いものではないが。

実際にその光景を見ればその恐ろしさが分かるのだろう。

その光景を見ていた子供たちは震え上がり、

怖いよ〜ギル〜、と言いながら、

金ぴかにすがりつき、

赤い奴は、皮肉そうな表情を浮かべ、

ランサーと金ぴきは顔を引きつらせ、ちょっと震えている。

あの二人を震えさせるなんて・・・どんな恐怖なんだ!?

というか、ソコの赤いの!あとで覚えてろ!

そうして、引きずられること数秒。

俺は、人生の終着点になるであろう。

カレン駅へ到着した。

カレンは、ニコリと笑顔で、

「それでは衛宮士郎。最後に残す言葉はありませんか?」

と俺に問う。

「じゃあ、一つだけ」

こうなれば自棄だ。

言いたいことを言って散ろう。

「スカートくらい穿いてきやがれ!このド○○!」

それがゴングとなり、俺の地獄の時間は始まったのであった。

 

 

 

後日、目撃者は語る。

赤いお人は、

「あれには英霊ですら耐えられないだろう。衛宮士郎はドの付く○○に違いないな」

と語り。

金色な人は、

「聞くな聞くな聞くな!我は何も知らぬ。何も知らぬのだ!だから思い出させるな」

となかったものとし。

青い人は、

「もうあそこはヘブンじゃなくてヘルだ・・・」

と本心を語った。

 

 

 

後書き

ちょっとやってみたかった話です。

漁港にカレンが現れたらランサーたちはどうするだろう?

と思い作ってみました。

結果、ほとんどランサーたちは喋ることなく終了。

次こそは・・・。