夢を見た。

2月の上旬を何度も何度も体験し、しかし、一度も活躍する事のない。

悲しい夢。そうとても悲しい夢。

そして、私は決意した。

強くなろう。

誰にも負けない力を手にいれ。

目立ち。活躍する!

それがたとえ、どんなに許されないことであったとしても・・・・。

 

 

 

 

ギルガメッシュと言峰との最終決戦の地、柳洞寺への階段を登ろうとした矢先、奴は現れた。

 

 

「士郎~!こんな夜中にどこ行くのよ~」

「ふ、藤ねぇ!?なんでここに!?」

「タイガ!?何故ここに!?」

あせる俺とセイバー

「何でって、入院しるみんなが、早く良くなりますようにって、神様にお願いしに来てるのよ。ここはお寺なんだから当たり前でしょう?」

いや藤ねぇ・・・お願いするのは神社だ。お寺はお願いするとこじゃ無いぞ・・・

しかもこんなタイミングの悪い時になんで来るかなぁ・・・・

「あ~。セイバーちゃんも一緒にいるじゃ無い。なに?こんな夜更けにお寺でデートなんて、お姉ちゃん許さないぞ!」

「いや!?デートじゃ無いから」

「デートじゃ無いなら、なんでここにいるのよ」

「「そ、それは・・・」」

ハモる二人

「どうするセイバー?本当の事は言えないし」

「どうするもこうするも、タイガには帰ってもらわないと危険です」

「そうだよなぁ。でもいいわけどうする?」

「そ、そうですね」

と、二人で作戦会議をしてるうちに、

「士郎~。私もう行くからねぇ~」

と言って階段を登り始める藤ねぇ。

なんでこんな時に限って、いつもみたいに絡んでこないんだ!?

「ま、待て藤ねぇ。そっちに行っちゃダメだ」

「そうです。タイガそっちへ行ってはダメです」

「何よ~、士郎にセイバーちゃん、私の目的を果たさせない気?」

「いや、そうじゃ無いんだけど」

「はは~ん。分かったぞ~。士郎とセイバーちゃんが、私に見せたくないものがこの上に在るんでしょう。ふふ~ん。お姉ちゃんもっと行きたくなっちゃった」

ものわかり悪すぎだぁぁぁぁぁぁぁ!!

「ま、待て、藤ねえぇぇぇ!!!」

「そうです止まってください。タイガ!」

俺たちの制止もむなしく階段を駆け上る藤ねえ

そのスピードまさに神速。

あのランサーにも劣らぬスピード。

藤ねぇ。あなた本当に人間ですか?

「シ、シロウ!?どうするんですか!?このままだとタイガはギルガメッシュに殺されてしまう」

そうだった。あまりの非現実さに思考が停止してた。

「急ごうセイバー。早く藤ねえを止めないと」

「私が先行してタイガを止めてきます。最悪ギルガメッシュと対峙していた時は、わが身に代えてもタイガの命だけは救って見せます」

「すまないセイバー。でも、セイバーの命も大事だ。セイバーが死んだら俺が悲しい。だいから自分を捨ててでもなんて言葉は言うんじゃない」

「すみません。」

セイバーは、顔を赤らめながら答えた。

そんな顔されたら俺も恥ずかしいじゃ無いか。

「わ、分かってくれたらそれでいいんだ。頼んだぞセイバー」

「はい。では行ってきます」

言うが早いか猛スピードで駆け上っていくセイバー。

俺も早く追いつかないと。

 

 

 

 

そして、階段を登りつめた俺を待っていたのは最悪の事態だった。

「セイバー!」

「シ、シロウ・・・早くタイガをつれて逃げてください」

傷つき倒れるセイバーのすぐそばで、ギルガメッシュと対峙する藤ねえの姿があった。

「藤ねえすぐそこから下がれ!」

出せる限りの声を出し藤ねえに呼びかけたが反応が無い。

俺は馬鹿か!いくら藤ねえが、いつも傍若無人で最強と謳われていても所詮一般人なんだ。規格外の化け物を目の前にしてすぐに反応できるはずが無いじゃないか。

「くそ。ギルガメッシュ。藤ねえには手を出すな!」

「ふん。何故我が、雑種の言うことなど聞かなければならんのだ?」

「何!?」

ギルガメッシュは、俺の言葉にいつもの傲慢な態度で答えた。

「それにこの女、我に戦いを挑もうとしてるようだが?」

ちらりと藤ねぇの方を見ながら言った。

「な!?藤ねえ止めろ。そいつと戦うなんて正気か!」

「士郎。黙ってなさい。女の子をいじめるような男には一度痛い目にあわせないとダメなんだから」

何処からか竹刀を取り出し、正眼で、剣先をギルガメッシュに向けながら言った。

「そんなこと言ってる場合か。殺されるぞ」

藤ねぇは、規格外の化け物を目の前にして、怯むどころか果敢に戦おうとしている。

自分の信念を貫くために。

しかし、それは勇敢なのではない。無謀なのだ。

「ふん。どう考えているか分からんが我が見逃すとでも思ってるのか?」

ギルガメッシュはゲートから無数の剣を取り出し、腕を上げながら言った。

「止めてくれ。藤ねえには手を出さないでくれ!!」

俺は恥や外聞、プライドなど全てをかなぐり捨てて言った。

しかし・・・・、

「もう遅いわ!!」

そう言うが早いかギルガメッシュは、腕を振り下ろし、藤ねえに向けて無数の剣や槍などを飛ばした。

「藤ねえぇぇぇ!!!!!!」

無数の剣は全て藤ねぇに向かい。今まさに藤ねぇを貫ぬ・・・・かなかった。

「「なにぃぃぃぃ!!!!!?」」

ハモる俺とギルガメッシュ。

ギルガメッシュが驚くのも無理は無いだろう。

なぜなら、藤ねえは、手に持っていた竹刀で、すべての武器を叩き落としたのだから。

「このぐらいで私を倒せると思ったら大間違いよ。」

いや、普通は死んでるから藤ねえ。サーヴァントですら死ぬぞ今の攻撃。

「今度はこっちの番ね。今年の虎の力見せてあげる」

そう言うと、竹刀の剣先を地面につき刺した。

「な、何をする気だ女」

狼狽するギルガメッシュ。それもそうだろう。騎士王とも言われたセイバーを圧倒した攻撃が一般人に破られたんだから。

「体は虎で出来ている」

「「はぁ!?」」

何を言ってるんだ藤ねえは!?

「血潮は道場、心は竹刀」

突然魔力ともなんとも言えない気が、そう、言うなれば熱気。

それが、辺りを取り巻き、渦巻き出した。

「幾たびのエンドを迎え」

何なんだこれは!?場の空気が変わるとかそう言うものじゃ無い。

「一度の欠席も無く

       ひとつのレギュラーも無く」

藤ねぇが言葉を発するたびに、

「虐げられしものはここに在り

         ブルマ娘と温泉につかる」

世界が作りかえられている。

「ならばわが生涯にメインルートなし」

そんな表現が正しい。

表現は正しいが、何故か自分の特技を奪われたようで、凄くむかつく。

「この体は、きっと虎で出来ていた」

 

真名を口にする瞬間

何もかもが砕け、あらゆる物が再生された

炎が走る火は壁となり境界を作り、世界を一変させる

後には道場、どこかで見た事のある道場だけが存在していた

パクリ結界タイガー道場

「行くぞ英雄王。ブルマの貯蔵は十分か」

どこかで聞いた事のあるような気がする台詞を嫌な感じにアレンジし告げる藤ねえ。

なぜだろう?自分のきめ台詞を汚された。そんな気持ちになる。

それにしても、なんなんだここは?見た事の無いはずなのに全然違和感が無いぞ。

「シロウもそう思いますか?何故か私も覚えがあるんです」

心の中を読むなよセイバー・・・・。

と言うかいつの間に隣来たんだ?

まあとりあえずそれは置いといて。

「今まではなぜか死んでからしか来れなかった様な気がするんだよなぁ。ここ」

「そうですね。私もシロウを殺した時とかにしか来れなかった様な気がします」

殺したって・・・殺されたこと有るのか俺は!?

「師匠~。どうしたんすっか?」

いきなりイリヤ登場!?しかもブルマだし!?

「い、イリヤ!?なんでここにいるんだ?言峰にさらわれたんじゃないのか!?」

「な、なんでシロウがここに!?師匠、どういうことですか?首吊りシロウはどうしたんっすか!?」

く、首吊りシロウって・・・。

「ええ~い。うるさ~い。私はこの金ぴかを一から教育しないといけないのだ」

「弟子二号すっか!?マジっすか!やったっす。私にもついに後輩が!?」

「な、何を言ってるんだ!?王たる我を、弟子呼ばわりするなど万死に価いするわ!」

「ここでは私が神だ!!!!!!!!!たかが王、しかも金ぴかなんぞに負けん!」

ギルガメッシュって一応最強なんじゃなかったっけ?

「よく言ったっす師匠。早速弟子二号のちょうきょ・・・教育を開始するっすよ」

微妙に危険なこと言いそうになってるぞイリヤ・・・おにいちゃん悲しいぞ

「ふん。ブルマ娘風情が、我を教育だと?出来るものならやって見ろ」

そう言うとギルガメッシュは指を鳴らし無数の剣を出し・・・出し?出て来ないぞ?

「な、何故だ!?我がゲートオブバビロンが出現しない!?」

「ふっふっふっふっふ。当たり前っすよ。ここでは一切の魔力が使えない。よって宝具も出現できないっすよ。あ、サーヴァントの維持の魔力は大丈夫っす」

なんて都合のいい空間なんだ!

「さあ。ブルマ娘よ。ついてこれるか?」

「もちろんっすよ。師匠」

「く、来るな。我に触るなぁぁぁぁぁぁ」

哀れギルガメッシュ。宝具がなければ、ラックのみの最弱サーヴァント。

道場に転がっていた竹刀を拾い応戦するも、恐ろしく波に乗っている藤ねぇの前では、悟空にけんかを売るヤムチャ。負けは確定している。

そして案の定。

ドカ!バキ!ゴキ!

「がはぁ!」

「ふははははははは。虚無に還るがいい。このタイガー道場の中で」

「そうっす。デットエンドシュートっす」

何処からともなくシリンダーを取り出し、エネルギーを溜め、ぼろぎれのようになっているギルガメッシュに放つ藤ねぇ。

死ぬなギルガメッシュ。

イリヤ。弟子2号死んじゃうぞ?

ドフゥーン!

閃光に包まれるギルガメッシュ。

数秒後、閃光が晴れた先には、体が小刻みに揺れているギルガメッシュの姿があった。

さすが英雄王。思いの外しぶとい。

そして、目の前で、小刻みに震え、いつ死んでもおかしくないなぁと思える状態のギルガメッシュは、藤ねぇとイリヤに引きずられ、どこか違う場所に連れて行かれてしまった。

あんな状態のギルガメッシュを連れていくなんて・・・。あの二人は鬼か!?

「悲惨だよなぁギルガメッシュ。なあセイ・・・って、あれ?セイバー何処行ったんだ?」

隣に居るとばかり思っていたセイバーの姿はなく、辺りを見回しても何処にもいない。

「セイバーちゃんなら、ライオンに乗ってどこかへ旅立ったわよ」

「セイバー、ライオン好きだからなぁ・・・。って、何処に旅立つんだよ!?」

「遠い星のかなたよ」

この人に聞いた俺が馬鹿でした。

「そういえば藤ねぇ。ギルガメッシュのちょ・・・教育をしてるんじゃなかったのか?」

すでに死んでそうだけど一応聞いて見る。初登場のあの頃が懐かしい。

「あ~。そうそう教育の途中なんだけどねぇ。ど~しても士郎に伝えないといけない事あるのよ」

「え?」

何か嫌な予感がする。

聞いてはいけない言葉。

死の宣言。

「ごめんね~士郎」

「な、なんであやまるんだ?」

「ここは本来生きたままこれない空間なの」

「なんでさ!?」

「ここはバットエンドのために用意された空間なの」

「ナチュラルスルー!?」

「だからね」

あ。この言葉を聞いた瞬間全てが分かった。

分かってしまった。

俺は何度も2月上旬を体験している。

そして何度もここに来た事がある。

どおりで知っている気がしたわけだ。

「やり直してきなさい!」

そう言われた瞬間。

自分の存在が消えていくのが分かった。

これはどうやっても避けられない事項。

諦めるしかない。

しかし、一言だけ言いたい。

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!」

自分の叫び声を聞きながら俺の意識は闇に埋没されていった。

                               Died end

 

 

 

 

 

タイガー道場42回目

 

ドカ!バキ!ドグ!

「ほ~ほっほっほっほ。私の前に膝まずくっすよ弟子2号。目を潰された恨みはでかいっすよ!!」

バコーン!

「何をやっているかこの馬鹿弟子がぁぁぁ!」

「い、いきなり何をするっすか師匠!今は弟子2号のちょうきょ・・・・もとい教育中っすよ」

「視聴者の前で舞台裏を明かすんじゃな~い!」

「いつの間にヒントの部屋に!?す、すみません師匠」

「うむ、分かればよろしい」

「ところで師匠」

「む、なんだ弟子1号」

「偉そうに話している所悪いっすが、視聴者って誰っすか?」

「・・・・・。と言う事で、今回のルートの回避方法は」

「スルーっすか!?」

「弟子1号。人は知らなくてもいい事があるの。それとも知って、我が秘伝御剣流奥義地駆ける虎の閃きを受けたい?」

「あの秘奥義っすか!?そ、それだけはかんべんっす。どうぞ話を進めてください」

「うむ。分かればいいのだ」

「それじゃあ気を取りなおして。今回のルート何かおかしかったっすね。本来師匠があの場にいるはずはないし、あまつさえこの道場が召喚されるという非常事態まで発生してたっす」

「べ、別におかしくないんじゃない?普通だよ普通」

「師匠何汗かいてるっすか?」

「かいてないかいてない。そんな事よりもこのルートの回避方法を説明するわよ」

「な~んかおかしいっすね」

「気にしない気にしない」

「まあいいっすけどね。とりあえず、こうなってしまった原因は何っすか?」

「こうなってしまった原因は・・・・・。言えない・・・」

「言えないって何っすか!?それ言わないとここの存在意義がないっすよ!」

「ほ、ほら、たまには自分で考える事も大事って事を教えてると言う事で」

「いやいや、それを決めるのは私たちじゃないっすよ!あと事って言いすぎっす何焦ってるっすか」

「も~、我がまま言わないの」

「我がままいってるのはどっちっすか!?というか、今回師匠なにか様子がおかしいっすね?」

「な、なんのことかなぁ?」

「何か隠してないっすか?」

「か、隠してないよ!?こんなになった原因が私だなんて、隠してるわけないじゃ無い」

「あんたが原因っすかぁぁぁぁ!?」

「し、しまったぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「道理でさっきから様子がおかしいわけっすよ。ヒントを出す立場の人間がそんな事やって言いと思ってるんすか?」

「いいじゃない。私だって目立ちたいのよ!」

「開き直りっすか!?」

「そういう弟子1号だって何度も原因になってるじゃ無い!」

「私は良いんっすよ。話の中核をになってるし」

「えこひいきだぁ。私も目立ちたいの!虎球団のように強くありたいし、どこかの、気になっていた女性の、死んだと思われていた恋人が現れ、自分が知らないうちに失恋していた虎のような負け組みにはなりたくないよ~」

「それはエゴっすよ師匠!あと台詞の説明が長すぎっす!」

「私には目立つ権利があるのだよ」

「目立つ権利って何っすか!?と言うかもうグダグダっす。ヒントどころじゃないっす。落ちもつけられないっすよ」

「そんなときはあれよ」

「あれっすか!?あれを使うんっすか」

「やるしかないのよ」

「釈然としないけど。わかったっす。やるっす」

「それじゃ~。せーの」

「「その時イデが発動した!!!!」」

                                  完

 

 

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