聖杯は歪んでいた。
いくつもの世界でその歪んだ聖杯は破壊されていった。
しかし、それ以上に破壊されずに残った聖杯が存在した。
それらの聖杯は共鳴し、いつしか世界を浸食し始めていた・・・・。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!開口一番に助けてくれってどう言うことよ!?」
なんでサーヴァントが私に助けを求めてくるのよ!
確かに私は、他の並みの魔術師に比べ、優秀で且つ知的で、さらに土地の管理者と言う権力も持ってるし、
さらに極めつけに、こんなにかわいいし、
「胸はないがな」
「じゃかぁしぃ!!!」
ドゴ!ゴキ!ボグゥ!ドゴーン!
「がはぁ!?」
変な口出しするから、顔面ドロップキックから、首狩り、ハートブレイクショットに繋ぎ、止めに零距離ガンドをかましてやった。
数分間のた打ち回ったアーチャーだが、痛みも引いたのか。ふらつきながらも立ち上がった。
これが、めがねだったら4ヶ月の重症だろう。
とまあ、このようにサーヴァントと人間には絶対的耐久力と戦闘力の差がある。
これだけの差があると戦闘ともなれば、居ても居なくとも変わらないわけである。
「君の場合はかなり戦力になると思うが?」
「人の心を読むな!」
ゴス!
「グッ!」
うるさいので金的をかましてやった。
アーチャーはのた打ち回っているがとりあえず無視する。
アーチャーやキャスターは、物理防御力、つまり肉体の耐久度が低いからダメージを与えられるが、バーサーカーのような化け物相手になるとまったく歯が立たなくなる。
これが人間の限界である。
そして、自分たちよりも脆弱な人間。つまりこの場合は、アーチャーが私に助けを求めると言う事。
こんな事絶対にありえないのである。
しかし、アーチャーは私に助けを求めてきた。
これには絶対わけがある。
あの思量深いアーチャーが無意味な事をやるとは思えない。
理由を聞かなければならない。
「だからさっさと言いなさいよ!」
「いや言っている意味が分からないんだが?と言うかこの痛みを知れ元マスター」
「だから、不本意だけど・・・なんで、人間である私に助けを求めてくるのよ!」
「先にそれを言うべきじゃ無いのか?いきなりさっさといいなさいと言われても、分かるわけがないだろ。
自己中にもほどがあるぞ。」
う。た、確かに私が急にあんな事を言われても意味が分からないわね。むしろ言ったやつにガンドかましてるわ。
でも、ここで謝るのも癪だから謝らない。
「そんな事どうでもいいのよ!」
「私はどうでもよくはないんだが・・・」
「そんな事よりもあなた切羽詰ってるんじゃないの!?」
「同じ表現を繰り返すと強調力が無くなるぞ。凛」
と言ったあと数秒考え込み・・・・。
「あ!!!!」
アーチャーの表情は、思い出した!!と言う表現が一番合ってる様な表情になり、次に顔が真っ青になり、泣き出し、
ついには笑い出してしまった。
アーチャー。何があなたをそこまでさせるの?
面白いから2時間ほどほっといてやろう。
というわけで、アーチャーが立ち直る前に、するべき事をしよう。
とりあえず、今日は休む事になりそうなので、私は学校に連絡をいれた、
そして、あることに気がつかされた。
「今日は祝日だったぁぁぁぁ!!!!!」
祝日を忘れるなんて不覚、知ってたらもう少し惰眠をむさぼってたのに・・・。
よし、こうなったら溜まりに溜まった積みゲーを終わらせよう。
遊びとかじゃ無いわよ。知識をつけるためよ知識を。
決して、試しにちょっとやって見たら、そのままはまって、家庭用、携帯用ゲーム機合わせて6個買ったり、それぞれのソフトを
10本ずつ買ったりしてないわよ!
あまつさえ、ゲームから派生して、アニメ漫画と続き、今では同人誌まで書いてるなんて絶対にないんだから!
「凛。さっきそこでこんなものを見つけたんだが・・・」
「あんたいつの間に復活したのよ!」
アーチャーは、いつのまにか飄々とそこに立っていた。
壊れるのも突然だけど立ち直るのも突然ね。
「ついさっきだが、まあそんな事はいい。それよりもこれは一体なんなんだ?」
アーチャーは私に一冊の本を渡した。それは本と言うより紙の束だったか、便宜上本と呼ぶ。
その本の表紙には、
ラク×カガ本(予定)
と書かれていた。
「そ、それは!!!!?」
私の書きかけの同人誌(18禁)だった。
「いや、わたしも人の趣味にはとやかく言うつもりはないのだが。その、女性がそのような本を書くのはどうかと思うぞ?」
私は顔が赤くなっているのが分かった。今まで全ての人を欺いて、欺きとおしてきた。それがこんな所で・・・。
「アーチャー・・・。忘れなさい」
「し、しかし凛」
「忘れなさい!!!!即刻忘れなさい!と言うか忘れさせる!」
「わ、忘れる。忘れるから口に宝石をねじ込むな」
アーチャーは快く忘れてくれるようだ。
良かった。これでアーチャーを殺さなくてすむ。
「って違ぁぁぁぁぁう!!!!」
「何が違うんだ?」
「あんたの話よ。あんたの話!さっきから全然先に進んでないじゃ無い!」
「そうだった!!」
そう言ってまた壊れそうになる。
このままでは永遠に話が進まないので、力ずくで呼び戻す。
「・・・・・・凛。酒をかけて火をつけるなんて正気か?普通死ぬぞ」
「あんたがすぐあっちの世界へ行くからでしょ!さっさと続きを話しなさい」
「う、うむ・・・・」
そうして、やっと、本当にやっと彼は語り始めた。