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1960年8月
(最終更新2014.01.13)

8.1(月)

ワーグナー:楽劇《ローエングリン》全曲

オーセ・ノルモ・レーヴベリ、アストリッド・ヴァルナイ(S)ヴォルフガンク・ヴィントガッセン(T)グスタフ・ナイトリンガー(Br)テオ・アダム(Bs)、ほか
ロリン・マゼール指揮バイロイト祝祭o、同cho
祝祭劇場、バイロイト(バイロイト音楽祭)
[GOLDEN MELODRAM;GM1.0072]

  この年デビューのマゼール(1930生)は、バイロイト音楽祭に登場した史上最年少の指揮者となった。ヴィントガッセン(1914生)はヴォルフガンク演出の《ニーベルンクの指環》ではジークフリート役を外れて楽になったため、ジークムント、ヴァルター・フォン・シュトルツィング、ローエングリン、エリックを歌った。この年の演目の主なテノール役で歌わなかったのは、ジークフリート以外ではパルジファル役だけという大奮闘である。



8.1(月)

ヴェルディ:歌劇《ドン・カルロ》全曲

セーナ・ユリナッツ(S)リジャイナ・レズニック(Ms)ユージン・フェルナンディ(T)エットーレ・バスティアニーニ(Br)ボリス・クリストフ(Bs)ほか
  ネロ・サンティ指揮ウィーンpo、ウィーン国立歌劇場cho
フェルゼンライトシューレ、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[BELLA VOCE;BLV107.405]

  1958年にカラヤン指揮で初演された制作の2年ぶりの再演。指揮者のほか、配役も数人が変更されている。エボリ公女を歌ったレズニック(1922生)の熱唱が話題となった。



8.1(月)

ベッリーニ:歌劇《清教徒》より〈あなたの優しい声が〉

ジョーン・サザランド(S)
バージル・キャメロン指揮BBCso
ロイヤル・フェスティヴァル・ホール、ロンドン(プロムス)
カセット〈House of Opera;ALD2880S〉



8.不詳







義太夫『烏帽子折茡源氏(えぼしおりみばえげんじ)』より、伏見の里の段

豊竹つばめ大夫(浄瑠璃)野澤喜左衛門(三味線)
新橋演舞場、東京(ライヴ商業録音)
[ビクター;VZCG-8139~49]

  11枚組『竹本越路大夫 義太夫選集』所収。つばめ大夫(1913生)とは後年の人間国宝、竹本越路大夫のこと。近松門左衛門作の義太夫のライヴ録音。
  8月の新橋演舞場では3日から27日まで、菊五郎劇団が市川海老蔵(十一世市川團十郎)とともに歌舞伎の昼夜公演を行なっている。この録音はそれ以外の日なのだろうと思われる。この頃のビクターはステレオ録音に懐疑的だったらしく、世に出ているのはモノーラルのみ。

  順調に行けば10月頃の発売なので、芸術祭参加レコードの可能性もある。
8.2(火)

ヴェルディ:歌劇《仮面舞踏会》全曲

マーゲリータ・ロバーティ(S)オラリア・ドミンゲス(Ms)ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(T)マヌエル・アウセンシ(Br)、ほか
レナート・チェリーニ指揮メキシコ国民歌劇o、同cho
ベラス・アルテス宮、メキシコ・シティ
[GIUSEPPE DI STEFANO RECORDS;GDS21039]

  毎年夏に行なわれるメキシコ・シティでのオペラ・シーズンから。



8.2(火)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番

ヴィルヘルム・バックハウス(p)
カール・ベーム指揮ウィーンpo
新祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ORFEO;C 796 091 B](2009)

  新祝祭劇場(現在の祝祭大劇場)における、開場後最初のオーケストラ演奏会から。他の曲目はモーツァルトの交響曲第34番、ベートーヴェンの交響曲第7番。



8.2(火)

シェーンベルク:歌曲集《架空庭園の書》、歌曲〈夢の人生〉op6-1、歌曲〈森の太陽〉op2-4、ピアノのための組曲op25、《ナポレオン・ボナポルトへ寄せる頌歌》

グレン・グールド(p)
ケルスティン・マイア(Ms)ドナルド・ブラウン(語り)ヴァンクーヴァーSQ
国際映画館、ヴァンクーヴァー(第3回ヴァンクーヴァー国際祝祭)
[WEST HILL RADIO ARCHIVES;WHRA-6038](架空庭園の書のみ、2011)(他は未レコード化)

  6枚組『GLENN GOULD IN CONCERT, 1951-1960』所収。年初以来、左肩痛で休演が続いていたグールドは、自国カナダで行なわれたストラトフォード祝祭とヴァンクーヴァー国際祝祭で本格的に復帰した。《架空庭園の書》以外も、カナダ放送(CBC)に録音が残っているらしい。



8.3(水)

パーセル:歌劇《ダイドーとエネアス》全曲

テレサ・ベルガンサ、ジェーヌ・ベルビエ(Ms)ジェラール・スゼー(Br)ほか
ピエール・デルヴォー指揮パリ音楽院o、同cho
大司教館、エクス=アン=プロヴァンス(エクス=アン=プロヴァンス音楽祭)
[WALHALL;WLCD0326](2010)

  7月9日~31日に開催されたエクサン・プロヴァンス音楽祭のライヴ。会場は大司教館の中庭。プーランクの《声》(プレートル指揮)との2本立て。なお、『OPERA』誌には上演日が7.23と28の2回とあるので、8.3という日付は、あるいは放送日かも知れない。



8.3(水)

モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》全曲

エリーザベト・シュヴァルツコップ、レオンティン・プライス、グラツィエラ・シュッティ(S)チェーザレ・ヴァレッティ(T)エバーハルト・ヴェヒター、ヴァルター・ベリー、ロランド・パネライ(Br)ニコラ・ザッカリア(Bs)ほか
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーンpo、ウィーン国立歌劇場cho
旧祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ARKADIA;CDKAR225.2]

  《ドン・ジョヴァンニ》は新祝祭劇場での上演が予定されていたが、回り舞台の確実性に不安があるというカラヤンの主張により、旧祝祭劇場に移された。このために本来は旧祝祭劇場で上演予定だった《コジ・ファン・トゥッテ》が州立劇場に押し出されている。
  旧祝祭劇場は1963年に祝祭小劇場と改称され、さらに2006年に改築されてハウス・フィア・モーツァルトとなっている。



8.4(木)

『パーセル:弦楽オーケストラのための4つの組曲』

フリッツ・マーラー指揮ハートフォード室内弦楽オーケストラ
ブッシュネル・メモリアル公会堂、ハートフォード(セッション商業録音、ステレオ)
[VANGUARD CLASSICS;OVC4044]
  オリジナルLP[BGS5032]所収は劇音楽《アブデルザール》《結婚した伊達男》《ゴルディアスの結び目は解かれた》《貞淑な妻》の組曲。
  F・マーラー(1901生)はグスタフ・マーラーの従兄弟の子供にあたる。ハートフォードは北米コネティカット州の州都。オーケストラはハートフォード交響楽団のメンバーによるもの。
  日付は上記CDに従ったが、4月録音(4月8日?)とするCDもある。



8.4(木)

戯曲『THE CARETAKER(管理人)』

ドナルド・プレゼンス、アラン・ベイツ、ピーター・ウッドソープ
ダッチェス劇場、オルドウィッチ、ロンドン(ライヴ商業録音、ステレオ)
[EMI;0946 3 70542 2 2]

  『THE CARETAKER』は、劇作家ハロルド・ピンター(1930生)の代表作の一つとされる不条理劇。ロンドンの安下宿に住む兄弟と、そこに闖入した老浮浪者の計3人によって演じられる。ドナルド・プレゼンス(1920生)が浮浪者デイヴィスを演じた。演出はドナルド・マクウィニー。1960年4月27日にアーツ劇場で初演され、1か月後にコヴェント・ガーデンの劇場街にあるダッチェス劇場に移り、444回上演されるヒットとなった。1963年には映画化もされている。

  録音を担当したのはパーロフォン(HMVなどと同じEMI傘下のレーベル)のプロデューサーで、後にビートルズとの仕事で有名になるジョージ・マーティンだった。マーティンは戯曲のライヴ録音を好んでいたが、上司の許可が出なかったためにお蔵入りしたという。ピンターが2005年にノーベル文学賞を受賞したお陰か、2006年に初発売された。



8.不詳

山田耕作:歌劇《黒船》全曲

伊藤京子(S)柴田睦陸(T)立川澄登(Br)、ほか
森正指揮(山田耕作総指揮)東京so、二期会cho
杉並公会堂(セッション商業録音、ステレオ)
[東芝;TOCE-9432・33]

  日付不詳。月と会場は当時の朝日新聞の記事による。東芝レコード(まだEMIとは契約していない)は邦人録音に熱心で、ステレオ初期の59年から60年にかけて山田(1886生)のほか團伊久磨や黛敏郎、芥川也寸志などの作曲家、そして二期会などと専属契約を結んでレコードを制作した。
  《黒船》は1940年初演。日米修好100年を記念して4月15日から17日にかけて、大阪国際音楽祭で山田自身と朝比奈隆(1908生)の指揮により上演されたばかりだった。伊藤(1927生)と立川(1929生)はそのときも出演していた。



8.不詳

中田喜直:6つの子供の歌、三好達治詩集より、宮本正清詩集より(計12曲)

伊藤京子(S)川村深雪(p)
文京公会堂(セッション商業録音、ステレオ)
[キング;KICG3095]

  CD『さくら横ちょう』所収。オリジナルLP『中田喜直歌曲集』は、この年秋の文化庁芸術祭の奨励賞を受賞した。



8.5(金)

独唱コンサート(7曲)

ユッシ・ビョルリンク(T)
ニルス・グレヴィリウス指揮エーテボリso
コンサートホール、エーテボリ
[MYTO;1MCD953.130]

  ビョルリンク(1911生)の生涯最後の録音となっているもの。正規盤はRCAで出ている。《エウゲニー・オネーギン》《マノン・レスコー》《ローエングリン》からの独唱曲と、シベリウスとアルヴェーンの歌曲4曲。
  この時期のビョルリンクは度々の心臓の発作に苦しめられていたが、この日は調子がよかったという。歌曲の朗々たる歌いぶりが見事。このあと20日にストックホルムで歌ったのが最後の公開歌唱で、9月9日に心臓発作で急逝することになる。



8.5(金)

メンデルスゾーン:交響曲第3番《スコットランド》
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
アン・カーチュナー:トッカータ
ワーグナー:歌劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第3幕より前奏曲、徒弟たちの踊り、終結部

ルッジェロ・リッチ(vn)
シャルル・ミュンシュ指揮(カーチュナーのみ作曲者指揮)ボストンso
ザ・シェド、タングルウッド(バークシャー音楽祭)
〈未レコード化〉

  偶然ながら、別々に日本公演を行なったばかりの独奏者と指揮者及びオーケストラによるタングルウッドでの演奏。



8.5(金)

モーツァルト:歌劇《偽りの馬鹿娘》よりレツィタティーフとアリエ〈Ich wünsch’mir einen Mann〉

エディト・マティス(S)
ベルンハルト・コンツ指揮ザルツブルク・モーツァルテウムo
レジデンツ中庭、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ORFEO;SF017]

  ザルツブルク音楽祭で上演されたモーツァルトの22の劇場作品のライヴ録音を抜粋した音楽祭記念盤『MOZART 22 / ARIEN UND SZENEN 1951-2003』所収。全曲上演の録音からの約4分間の抜粋。
  大司教居館レジデンツでの公演で、この日を初日として15、19、24日と4回上演された。マティス以外にはビアンカ・マリア・カソーニ、インゲボルク・ハルシュタインなどが出演した。



8.6(土)(?)

モーツァルト:歌劇《魔笛》全曲

マルガレータ・ハリン、ピラール・ローレンガール、ドディ・プロテーロ(S)リチャード・ルイス(T)ゲライント・エヴァンズ(Br)ミハイル・セーケイ(Bs)、ほか
コリン・デイヴィス指揮ロイヤルpo、グラインドボーン祝祭cho
グラインドボーン歌劇場(グラインドボーン祝祭歌劇)
[WALHALL;WLCD 0323](2011)

  CDには7月とだけあるが、この日あるいは14日の公演の可能性が高い。当初はビーチャムがグラインドボーンに初登場して指揮する予定だったが、体調不良のため降板し、コリン・デイヴィスが代役となった。
  日付推測の根拠は以下の通り。BBCによる同祭の他演目の中継は土曜か日曜の公演が選ばれている。7月28日から8月16日まで10回公演の《魔笛》で土曜日か日曜日の公演は、7月30日と8月6日の土曜日と8月14日の日曜日の3公演。さらにBBCは他の公演では初日やその直後を避けて数回目以降の晩を選んでいるので、2晩目の7月30日は可能性が低く、8月の2公演のどちらかと考えられる。



8.6(土)

ベートーヴェン;チェロ・ソナタ第5番

パブロ・カザルス(vc)ジュリウス・カッチェン(p)
聖ピエール教会(?)、プラード(プラード・カザルス祭)
[DOREMI;DHR-7936](2010)

  「JULIUS KATCHEN Vol.1」所収。フランス西部の寒村プラードでのカザルス祭から。カザルスの演奏は、7日後のメンデルスゾーンの三重奏曲もCD化されている。



8.6(土)(?)

R・シュトラウス:歌劇《ばらの騎士》全曲

エリーザベト・シュヴァルツコップ、セーナ・ユリナッツ、アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)オットー・エーデルマン(Bs)、ほか
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーンpo、ウィーン国立歌劇場cho
新祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
〈未レコード化〉

  この音楽祭中に撮影された映画版の元帥夫人はシュヴァルツコップ(45歳)だが、実演ではデラ・カーザ(41歳)が歌った。しかし6公演のうち、この日だけシュヴァルツコップが出演している。単一の配役を原則とするザルツブルクでは異例の交代で、病気降板などではなく、シュヴァルツコップの強い要望によるものだったという。
  この年の新祝祭劇場で上演される3演目のうち、シュヴァルツコップはカラヤンの要望で《ドン・ジョヴァンニ》に回った。ところがその《ドン・ジョヴァンニ》が直前になって旧祝祭劇場に移されたため、新祝祭劇場への出演機会がなくなってしまうことになり、妥協策としてこの日の出演となったらしい。また、映画版撮影のための準備ともいわれる。

  この日の録音の存在がいくつかの資料にあるが、どのようなものかは未確認。ラジオ放送用とすると、7月27日の開幕日にすでに放送した演目を、ORFが別に放送するだろうかという疑問がある。シュヴァルツコップがカラヤンの指揮で歌った1964年ザルツブルクでのライヴ録音を、この日の録音と誤認している可能性もある。



8.



R・シュトラウス:歌劇《ばらの騎士》全曲

エリーザベト・シュヴァルツコップ、セーナ・ユリナッツ、アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)オットー・エーデルマン(Bs)ほか
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーンpo、ウィーン国立歌劇場cho
新祝祭劇場、ザルツブルク(映画用セッション、カラー&ステレオ)
DVD〈RCA;74321 840379〉 〈ドリームライフ;DLVC-1183〉
 VHS〈東北新社;VZ-1228〉

  パウル・ツィンナー監督による有名な映画版。音声を先に録音、それに合わせて声量を抑えて(表情を過度に崩さないため)演技を撮影した。8月制作とあるので、連日の公演の合間をぬっての収録ということになる。
  VHSは日本で公開されたフィルムと同様にモノーラルだが、DVDはステレオ録音である。そのため後者を疑似ステレオと考える説もあるが、定位の良さ(第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンがきれいに左右に分離している)などの品質からみて真正のステレオ録音である可能性が高い。同時期のハリウッド映画などではステレオ録音がすでに実用化されていたし、各国の放送局でも行なわれていたから、その技術がここでも使用されたと考えるのが自然である。ただし日本に存在するフィルム版がモノーラルであることを考えると、ステレオのマスターは試験的なものだったのかも知れない。
  また6日の公演のライヴ録音とする説もあるが、ライヴ部分は公演前のざわめきと前後の拍手だけで、本編の音声は別にセッション録音されている。歌手の声が移動せず、衣ずれなどのステージノイズがまったくないことからそう判断できる。

  同時期にユーロビジョンによるテレビ用抜粋(モノクロ、デラ・カーザ主演)も撮影された。初日のテレビ生中継をカラヤンが拒否したため。(参照7.26)



8.7(日)

歌曲リサイタル(3曲)

ユーグ・キュエノー(T)
ロワイヨモン修道院、シャンティイ
[INA;262020]

  キュエノー(1902生)によるマショーの《心とろかす美しき婦人よ、どうか》などの中世の無伴奏歌曲。パリ北方のロワイヨモン修道院は13世紀に創建されたもの。



8.7(日)

ヴォーン=ウィリアムス:タリスの主題による瞑想曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
ブラームス:交響曲第4番

レオン・フライシャー(p)
ピエール・モントゥー指揮ボストンso
ザ・シェド、タングルウッド(バークシャー音楽祭、ステレオ録音)
CD-R〈KAPELLMEISTER;KMS 1012〉(ブラームスのみ。モノーラル)〈他は未レコード化〉

  シェドでの演奏は半野外のせいか、のんびりした演奏が多いが、ブラームスの第4番は例外的に雄渾雄大な名演。モントゥー(1885生)のこの曲は、これが唯一の録音らしい。前半の曲目には鳥の鳴き声と飛行機の爆音がある。



8.7(日)

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番、ピアノ三重奏曲第5番《幽霊》

グレン・グールド(p)オスカー・シュムスキー(vn)レナード・ローズ(vc)
祝祭劇場、ストラトフォード、カナダ(ストラトフォード祝祭)
[WEST HILL RADIO ARCHIVES;WHRA-6038](2011)

  6枚組『GLENN GOULD IN CONCERT, 1951-1960』所収。演奏会では、ほかにシュムスキーとグールドによるヴァイオリン・ソナタ第7番が演奏された。



8.7(日)

落語『てれすこ』

二代目 三遊亭円歌
文化放送、東京
[ポニーキャニオン;PCCG-00073]

  このCD『二代目 三遊亭円歌 名演集(二)』には7月とあるので、7月末頃に収録されてこの日に放送されたものか。CDには同年1月の『七草』も含められている。



8.8(月)

モーツァルト:喜遊曲K.138

ルドルフ・バウムガルトナー指揮ルツェルン祝祭弦楽合奏団
聖ピエール教会(?)、プラード(プラード・カザルス祭)
[LYRINX;LYR CD102]

  ルツェルン祝祭弦楽合奏団がプラードのカザルス祭に出演した際のライヴ録音。



8.8(月)

モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》第3幕抜粋

イルムガルト・ゼーフリート(S)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)
カール・ベーム指揮ウィーンpo
旧祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ORFEO;C335931B]〈全曲は未レコード化〉

  1957年の制作の再演。伯爵夫人が初演時のシュヴァルツコップからデラ・カーザに代わっている。約11分間の抜粋。全曲の録音も残っており、デラ・カーザ、ルートヴィヒ、クンツ(1909生)などが出演している。



8.8(月)(?)







ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番
ベートーヴェン:《エロイカ》の主題による変奏曲とフーガ(収録日不明)

レナード・ローズ(vc)グレン・グールド(p)
ストラトフォード(?)、カナダ(カナダ放送によるテレビ用録画)
VHS〈SONY;SHV48412、48402(分売)〉

  翌1961年2月6日にカナダ放送(CBC)が放映しているが、青土社発行の雑誌『ユリイカ』1995年1月号に掲載されたレナード・ローズのインタビューによると、チェロ・ソナタは7日午後にストラトフォード祝祭劇場で行なわれた演奏会のあと、CBCのプロデューサーのフランツ・クラーマーが楽屋を訪れて収録を申し込み、翌朝に行なわれることになったという。背景は簡素なセット以外は暗闇で、劇場の練習室などを用いたのではないだろうか。
  テレビではエロイカ変奏曲も合わせて放映されたが、セットが違うので別の日の収録と思われる。7月29日のヴァンクーヴァーでのリサイタルで演奏されているから、こちらはその前後の収録だろうか。

8.9(火)
 &10(水)

バーンスタイン:ミュージカル《ウエスト・サイド・ストーリー》映画版サウンドトラック(全18曲)

マーニ・ニクソン、ジム・ブライアント(Vo)、ほか
ジョニー・グリーン指揮の管弦楽団
MGM、ハリウッド
[SONY;SK48211]

  翌年に封切られて、アメリカばかりか全世界で大ヒットすることになる映画版のサウンドトラック。ビルボードのアルバム・チャートで54週間も1位を獲得する不滅の大記録を打ちたてた(マイケル・ジャクソンの《スリラー》が37週間でこれに続く)。60年代前半はまだポップスの売上げがシングルに偏り、アルバムではブロードウェイやハリウッドのミュージカルが有利だった時代で、また家庭用ビデオの登場前なので、その代用品という性格も強かった。
  しかし、映像の力が凄いので気がつきにくいが、音楽だけ聴くと編曲も指揮も小細工を労する傾向があって、簡素で清新なブロードウェイ初演盤にくらべて一段劣る。主役の歌手2人は画面で演じた俳優とは別の吹替え。マーニ・ニクソンは、映画『マイ・フェア・レディ』のヘプバーンの歌の吹替えでも知られる。



8.10(水)

パガニーニ:《モーゼ》の主題による変奏曲

ピエール・フルニエ(vc)ウルス・フェーゲリン(p)
モーツァルテウム、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[FOYER;1-CF2089]

  『OMAGGIO A GIOACHINO ROSSINI VOLUME 1』所収。フルニエ(1906生)のリサイタルから。他の曲目はベートーヴェンのソナタ第3番、バッハの組曲第3番、オネゲルのソナタ、ショパンの序奏とポロネーズ。
  フルニエは8月13日にルツェルン音楽祭開幕公演で、アンダ、シュナイダーハンとフリッチャイの指揮するスイス祝祭管弦楽団とともにベートーヴェンの三重協奏曲を演奏する。この曲はオーケストラをベルリン放送交響楽団に変えて、5月31日と6月1日にDGに商業録音していた。



8.10(水)

漫談『暑さに負けるな』

九代目 鈴々舎馬風
文化放送
[ビクター;VZCG-298]

  日付は放送日。馬風(1904生)はこの1か月後に脳溢血で倒れ、3年後に亡くなる。



8.11(木)

ベートーヴェン:歌劇《レオノーレ》全曲

ヒルデ・ザーデク、ゲルダ・シェイラー(S)アントン・デルモータ(T)パウル・シェフラー(Bs)ほか
フェルディナント・ライトナー指揮ウィーンso、ブレゲンツ祝祭女声cho、ウィーン国立歌劇場男声cho
コルンマルクト劇場(?)、ブレゲンツ(ブレゲンツ音楽祭)
[OPERA D'ORO;OPD-1210]

  ブレゲンツ音楽祭は7月23日頃から8月20日頃まで開催された。ウィーン交響楽団はそのホスト・オーケストラ。
  《フィデリオ》の原型を復元したこの作品は3幕構成で、序曲は《レオノーレ》第2番が演奏されている。演奏会形式による1日だけの特別公演(音楽祭の主要な演目は湖上舞台の《ウィーン気質》とコルンマルクト劇場での《バクダッドの理髪師》だった)。ウィーン国立歌劇場の古参歌手が多く、国際化の一途にあるザルツブルクとは対照的な陣容である。



8.11(木)

落語『しの字嫌い』

三遊亭小圓朝
東京(TBS)
LP〈CBSソニー;15AG-95〉
  日付は放送日。



8.12(金)

ベートーヴェン:交響曲第2番
リスト:ピアノ協奏曲第1番
ストラヴィンスキー:バレエ《火の鳥》組曲(1910年版)

ホルヘ・ボレー(p)
ピエール・モントゥー指揮ボストンso
ザ・シェド、タングルウッド(バークシャー音楽祭)
〈未レコード化〉



8.12(金)

ヴェルディ:歌劇《運命の力》全曲

グレ・ブラウエンスティン(S)ミニョン・ダン(Ms)リチャード・タッカー(T)アルド・プロッティ(Br)ノーマン・スコット(Bs)、ほか
フェルナンド・プレヴィターリ指揮ブエノスアイレス・コロン劇場o、同cho
コロン劇場、ブエノスアイレス
[WALHALL;WLCD 0310](2011)

  7月28日初日の《ラ・ジョコンダ》に続く、コロン劇場のシーズン5つめの演目の初日のライヴ。14、16、19、24日と上演された。



8.12(金)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番

マイラ・ヘス(p)
マルコム・サージェント指揮BBCso
ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドン(プロムス)
[BBC;BBCL4028-2]

  ロンドン夏の風物詩、プロムス(プロムナード・コンサート)のライヴ。1960年の第66回プロムスは7月23日から9月17日まで、日曜を除く連日行なわれた。プロムスのホスト・オーケストラであるBBC交響楽団の当時の主席指揮者はルドルフ・シュヴァルツ(1905生)だが、プロムスについては前任のサージェント(1885生)が大半を指揮している。
  ヘスは31日にも同じ曲をエディンバラで演奏する。



8.12(金)

モーツァルト:歌劇《魔笛》全曲

エリカ・ケート、リーゼロッテ・フェルザー、グラツィエラ・シュッティ(S)フリッツ・ヴンダーリヒ(T)ワルター・ベリー、エバーハルト・ヴェヒター(Br)ゴットロープ・フリック(Bs)、ほか
ヨーゼフ・カイルベルト指揮ウィーンpo、ウィーン国立歌劇場cho
旧祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[GOLDEN MELODRAM;GM5.0044]

  1959年の制作の再演。指揮がセル(1897生)からカイルベルト(1908生)に代わり、配役も大きく変更されている。



8.12(金)

カントリー・ラジオ番組『ザ・ペット・ミルク・グランド・オール・オプリ』より《ルーズ・トーク》《クレイジー・ドリームズ》

パッツィ・クライン(Vo)、ほか
WSM放送局スタジオC、ナッシュビル
[MCA RECORDS;MCAD-42142]

  『PATSY CLINE LIVE AT THE OPRY』所収。これは通常のオプリのライヴではなく、ラジオ局のスタジオでの公開録音。



8.13(土)

アリア・コンサート(3曲)

ジョーン・サザランド(S)
マルコム・サージェント指揮BBCso
ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドン(プロムス)
[BELLA VOCE;BLV107.001]

  サザランドによる《アルチーナ》のアリア2曲と《ルチア》の最初のアリア。



8.中旬(?)

『プリマ・ドンナの芸術』(全16曲)

ジョーン・サザランド(S)
フランチェスコ・モリナーリ=プラデッリ指揮コヴェント・ガーデン王室歌劇場o、同cho
ロンドン(セッション商業録音、ステレオ)
[デッカ;UCCD-6009/10]

  日付不詳だが、上旬にはグラインドボーン、下旬にはエディンバラ国際祝祭に出演しているので、合間のこの時期の録音と推定される。
  ヘンデルからドリーブにいたる、18、19世紀のさまざまな歌劇などのアリアを集めたもの。カラスを起爆剤として広まったベルカント・オペラの復活ブームは、サザランドたちの登場で60年代にさらに拡大されてゆくが、その予告編ともいうべきアルバム。



8.13(土)

レハール:喜歌劇《メリー・ウイドウ》全曲(イタリア語版)

エッダ・ヴィンチェンツィ、ロマーナ・リゲッティ(S)フランコ・アルティオリ、レナート・チオーニ(T)ジュゼッペ・ヴァルデンコ(Br)、ほか
ティート・ペトラリア指揮ナポリ・サン・カルロ劇場o、同cho
アレーナ・フレグレア、ナポリ
〈未レコード化〉

  夏のイタリアでは、ヴェローナ・アレーナやローマのカラカラなど野外でオペラが公演される。ナポリのアレーナ・フレグレアでは、オペレッタを中心に上演した。



8.13(土)

ラヴェル;バレエ《ダフニスとクロエ》第2組曲
ムソルグスキー(ラヴェル編);組曲《展覧会の絵》

アンドレ・クリュイタンス指揮フランス国立放送o
RTF放送局、パリ(スタジオ録画)
DVD〈EMI;DVA4901259〉

  クリュイタンス(1905生)によるテレビ録画。日付はおそらく放送日。



8.13(土)

メンデルスゾーン;ピアノ三重奏曲第1番

カール・エンゲル(p)シャーンドル・ヴェーグ(vn)パブロ・カザルス(vc)
聖ピエール教会(?)、プラード(プラード・カザルス祭)
[MUSIC&ARTS;CD-1113]

  フランス西部の寒村プラードでのカザルス祭から。カザルス(1876生)は7月にはマールボロ音楽祭に初めて参加して指揮を行なっていた。このあと8月末にはスイスのツェルマットでチェロのマスタークラスを行ない、そこでジャクリーヌ・デュ・プレ(1945生)を指導することになる。



8.13(土)

シューベルト:歌曲(全20曲)

エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)
ジェラルド・ムーア(p)
モーツァルテウム、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ORFEO;C826 103D](2010)

  3枚組「ELISABETH SCHWARZKOPF 1953-1963」所収。ザルツブルク音楽祭の「歌曲の夕べ」(全5回)の第4夜。オール・シューベルトによる。



8.13(土)(?)

R・シュトラウス:歌劇《平和の日》全曲

ヒルデガルト・ヒッレブレヒト(S)ローレンツ・フェーエンベルガー(T)ヨゼフ・メッテルニヒ(Br)マックス・プレープストル、クルト・ベーメ、ハンス・ヘルツン・ニッセン(Bs)ほか
ヨーゼフ・カイルベルト指揮バイエルン国立歌劇場o&cho
プリンツレゲンテン劇場、ミュンヘン(ミュンヘン音楽祭)
[Walhall;WLCD0357](2012)

  年度の誤り。実際は1961年8月13日の公演。つまり「ベルリンの壁」が築かれたまさにその日に、ミュンヘン音楽祭で新演出初演された《平和の日》のライヴ録音。演目は全くの偶然なのだろうが、歴史の神の大いなる皮肉という気がする、ドキュメント。〈PLA 100〉というプライベートLPで出ていたが、そのLPも1960年と年を誤っていたという。
  1年後のこの上演はカイルベルトの指揮、ルドルフ・ハルトマンの演出で、モーツァルトの《タモス》とともに上演された。



8.13(土)

ヘンデル(ハーティ編):組曲《水上の音楽》
ショパン:ピアノ協奏曲第1番
コープランド:交響曲第1番

ゲイリー・グラフマン(p)
シャルル・ミュンシュ指揮(コープランドのみ作曲者指揮)ボストンso
ザ・シェド、タングルウッド(バークシャー音楽祭)
〈未レコード化〉



8.14(日)

ベルリオーズ:《ファウストの劫罰》

エレノア・スティーバー(S)ジョン・マッカロン(T)マーシャル・サンゲール(Br)ほか
ミュンシュ指揮ボストンso、祝祭cho
ザ・シェド、タングルウッド(バークシャー音楽祭)
〈未レコード化〉

  バークシャー音楽祭最終日の演奏。小澤征爾(1935生)が合唱に加わっている。



8.14(日)

モーツァルト:交響曲第38番《プラハ》、ヴァイオリン協奏曲第3番、交響曲第41番《ジュピター》

ウィリー・ボスコフフキー(vn)
カール・シューリヒト指揮ウィーンpo
モーツァルテウム、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[EMI;CDH7 64904 2]



不詳











レバノン民謡『バールベク国際祝祭1960』

サバー、ワディ・アル=サフィ、ナスリ・シャムセッディン
バッカス神殿、バールベク(バールベク国際祝祭)
[A.CHAHINE & FILS;VDL CD579/580]

  日付不詳だが8月頃のライヴと思われる。
  レバノンの廃都バールベクにある神殿は、巨大で保存状態も良好なローマ時代の遺跡。その中のバッカス神殿を会場とするバールベク国際祝祭は1955年から75年まで毎年夏に行なわれ、その後1998年に再開された。欧米の富裕な観光客を対象とした催しで、西欧の演奏家や劇団が招かれており、この年はシュトゥットガルト室内管弦楽団が参加している。これはそれらに並行して行なわれたレバノン音楽の晩のライヴ。

  レバノン、というよりアラブ世界全体の歌姫ファイルーズ(1935生)はこの祝祭の中心的スターとなっているが、この年は妊娠中で休んだ。なおファイルーズは、この年のシリアの首都ダマスカスのフェスティヴァルにおけるライヴ録音を残しており、CD化されている。作詞作曲は無二の協力者であるラハバーニ兄弟で、兄の方はファイルーズの夫でもあった。[VOIX DE L'ORIENT;VDL CD652]



8.15(月)









VEL2006
マルタン:歌劇《キリスト生誕聖史劇》全曲

テレサ・スティッヒ=ランダル(S)リジャイナ・レズニック(Ms)ヴァルデマール・クメント(T)オットー・ヴィーナー(Bs)、ほか
ハインツ・ワルベルク指揮ベルリンpo、ウィーン国立歌劇場cho
新祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
〈未レコード化〉

  舞台版世界初演。オラトリオ形式では59年12月にアンセルメ指揮によりスイスで初演されている(CASCAVELLE;VEL2006でCD化)。このザルツブルク公演も、当初はアンセルメが指揮者に予定されていた。
  ベルリン・フィルがピットで演奏した、当時では希少な例。ベルリン・フィルをザルツブルクのピットに入れることはカラヤンの念願の一つだったが、ウィーン・フィルの抵抗が予想された。そこで、新作オペラをウィーン・フィルがやりたがらないことを利用して、彼らの拒絶を口実にベルリン・フィルを入れたのである。7年後にはこの劇場で復活祭音楽祭が開始され、ベルリン・フィルが毎年ピットに入ることになる。
  なお『LE MYSTERE DE LA NATIVE』のMYSTEREを「神秘」と訳すものもあるが誤り。「神の物語」というような意味であり、ここでは「聖史劇」と訳す先例に従った。



8.中旬(?)

談話「マリア・カラスへのインタビュー」

マリア・カラス
アテネ
[DIVINA;DVN-4]

  『MARIA CALLAS / THE UNKNOWN RECORDINGS VOL.Ⅱ』所収。先月13日と15日のEMI録音で8か月ぶりに活動を再開したカラスは、7月21日にベルギーのオーステンデの演奏会で実演にも復帰する予定だったが、直前にキャンセルした。その後は7月末から母国ギリシャに帰り、8月21日からアテネのエピダウロス古代劇場で行なわれる《ノルマ》公演(セラフィン指揮)に備えていた。
  これはその時期にアテネで行なわれたラジオ・インタビューで、日付不詳だが15日以降とする説がある。ギリシャ語なので内容は不明。
  《ノルマ》は初日が雷の襲来で中止されたものの、24日と26日は無事上演された。しかし楽日の28日は降板中止となっており、カラスの体調の不安定ぶりがうかがえる。



8.15(月)
 -22(月)









バッハ:シンフォニア第3、4、9番
ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第3番、弦楽三重奏のためのセレナード
シューベルト:弦楽三重奏曲第2番

ヤッシャ・ハイフェッツ(vn)ウィリアム・プリムローズ(vla)グレゴール・ピアティゴルスキー(vc)
RCAスタジオ、ハリウッド(セッション商業録音、ステレオ)
[RCA;BVCC-37118](バッハ)
[RCA;BVCC-37119-2](ベートーヴェン)
[RCA;BVCC-37122](シューベルト)

  15日から18日まで続けて各曲を録音、20日と22日に手直しの録音をしたようだ。



8.16(火)

ベートーヴェン:歌劇《フィデリオ》序曲、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第8番

ジョゼフ・シルヴァースタイン(vn)
アーサー・フィードラー指揮エスプラネード演奏会o
ザ・シェル、エスプラネード(ステレオ録音)
〈未レコード化〉

  夏のボストンでは、5月と6月にボストン・ポップス、そしてバークシャー音楽祭を挟む7月初めと8月半ばに計3週間ほど、エスプラネード演奏会が行なわれる。ボストン市を流れるチャールズ川の河畔で行なわれるエスプラネード演奏会は、1929年にアーサー・フィードラー(1894生)が創始した無料演奏会。シェルと呼ばれる半球型の覆いのついた野外舞台で、1万5千人もの聴衆が聴く。
  当時は、ボストン交響楽団からトップ奏者を抜いたのがボストン・ポップス(ただし1960年の5月と6月の場合はボストン響が日本など極東とオセアニアに演奏旅行していたから、まったく別編成だったのだろう)で、そこからさらに2、3番の奏者を外し、エキストラを多く加えたのがエスプラネードだった(現在はボストン・ポップス・エスプラネード管弦楽団という別のオーケストラになっている)。
  独奏のシルヴァースタイン(1932生)はボストン交響楽団員で、2年後にコンサートマスターとなる。鳥の声、車のエンジン音や警笛、子供の泣き声に飛行機の爆音などがそこかしこで聞こえる。フィードラーのこうした曲目は録音では珍しいが、曲想のわかりやすい自然な演奏。シルヴァースタインの音も滑らかで美しい。



8.16(火)
 -22(月)

シューベルト:歌曲《湖の上で》《岩の上の羊飼い》
ブラームス:四重唱曲《愛の歌》

ベニタ・ヴァレンテ(S)ハロルド・ライト(fl)ルドルフ・ゼルキン(p)
ベニタ・ヴァレンテ(S)マリーナ・クライン(A)マンウェイン・コンナー(T)マーシャル・サンゲール(Bs)ルドルフ・ゼルキン&レオン・フライシャー(p)
マールボロ音楽学校、ヴァーモント(セッション商業録音、ステレオ)
[SONY;SBK48176]

  シューベルトは16、17、22日、ブラームスは19、22日に録音。マールボロ音楽祭は7月2日から8月7日まで開催された。これらの曲も音楽祭中に演奏されている。



8.

シューベルト:歌曲《岩の上の羊飼い》

ベニタ・ヴァレンテ(S)ハロルド・ライト(fl)ルドルフ・ゼルキン(p)
マールボロ音楽学校、ヴァーモント(セッション録音、ステレオ)
[BOSTON RECORDS;BR1024CD]

   『HAROLD WRIGHT - RECITAL No.2』所収。上記のCBS(SONY)盤とは別演奏。感興がより豊かで演奏ノイズなども多いので、あるいは音楽祭中の録音だろうか。音楽祭では7月13日と8月6日の2回演奏されている。



8.17(水)

シューベルト:劇音楽《ロザムンデ》序曲
ベルク:ヴァイオリン協奏曲
ブルックナー:交響曲第9番

クリスチャン・フェラス(vn)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮ベルリンpo
新祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[TESTAMENT;SBT2 1472](2011)

  同じ録音がORFEOからも同時に発売された。



8.17(水)

ベイズン・ストリート・ブルース

ミルス・ブラザーズ(Voグループ)
芦田ヤスシとメローノーツオーケストラ
ナイトクラブ「ニューラテンクォーター」、東京赤坂
[WHITEHOUSE RECORDS](2010)

  『NEW LATIN QUARTER PRESENTS: THE JAZZ & BLUES COLLECTION VOLUME 1』所収。ミルス(ミルズ)・ブラザーズはジャズ・コーラスの草分けで、この年初来日。4人兄弟でデビューしたが当時は3人兄弟+ギター1人という編成。8月13日から15日まで有楽町の産経ホールで公演、続いて17日には赤坂のKRテレビ(現TBS)の特別番組「ミルス・ブラザーズ・ショー」に出演した。そしてその17日から19日まで、同じ赤坂のナイトクラブ「ニューラテンクォーター」に出演している。そのときの公演から1曲を、クラブの保存音源からCD化したもの。
 ニューラテンクォーターは1959年12月に開店した、日本を代表する超高級ナイトクラブ。ホテル・ニュージャパンと同じビルの地階すべてを占め(経営は別)、300人の客を入れることができ、本場アメリカ並みの豪華なショーが最大の売り物だった。



8.17(水)
 &24(水)

ジャズ『リーダース・アイディア』(8曲)

渡辺貞夫(as、fl)宮沢昭、松本秀彦(ts)福原彰(tp)東本安博(tb)八城一夫(p)金井英人、小野満(b)白木秀雄(ds)
文京公会堂、東京(セッション商業録音、ステレオ)
[THINK! RECORDS;THCD-068](キング原盤)

  雑誌『スイング・ジャーナル』とキングレコードの提携により、同誌読者の投票でメンバー、選曲、アルバム・タイトル、ジャケット・デザインのすべてを決める形式で制作された。「ファー・イースト・コースト・ジャズ」という副題がある。オリジナルLPの番号はSKC2で、7月に録音された八木正生のモンク・アルバムに次いで若い番号。



8.18(木)

リートの夕べ(シューマン:歌曲集《女の愛と生涯》ほか、30曲)

イルムガルト・ゼーフリート(S)
エリク・ヴェルバ(p)
モーツァルテウム、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ORFEO;C398951B]

  ザルツブルク音楽祭の「歌曲の夕べ」(全5回)の第5夜。ゼーフリート(1919生)はリート歌手としてもウィーンを中心に高い人気があった。



8.19(金)

一人芝居『MORE OF HAL HOLBROOK IN MARK TWAIN TONIGHT!』

ハル・ホルブルック
41丁目劇場(?)、ニューヨーク(ライヴ商業録音、ステレオ)
[COLUMBIA;SK86228](「PROBLEMS OF MISSIONARYING」のみ)
LP〈COLUMBIA;OS2030〉

  『マーク・トウェイン・トゥナイト!』は、俳優のホルブルック(1925生)がアメリカの国民的作家マーク・トウェインそっくりに扮装して、その随筆などを元にしゃべる一人芝居。1959年4月からオフ・ブロードウェイの41丁目劇場で大ヒットして22週間続演され、同年7月のライヴ録音盤も好評を得た。これは1年後の続編。
  1959、60、67年の録音を編集したベスト版CD『THE BEST OF HAL HOLBROOK IN MARK TWAIN TONIGHT!』に、「PROBLEMS OF MISSIONARYING(伝道の問題)」のみが収められている。アメリカではミュージカルはセッション録音されるが、コメディ物は聴衆の反応を重視してか、ライヴ録音される。コメディ物は録音日不明の盤が多く、これもオリジナルLPには記載がないが、CDでは日付が明記されている。



8.19(金)

落語『八五郎出世』

三代目 三遊亭金馬
東京(ラジオ東京「お笑い帆掛船」)
LP〈CBSソニー;SOGZ-66〉 CT〈テイチク;TETR-20053〉

  日付は放送日。



8.下旬(?)

ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》全曲

レオニー・リザネク(S)カール・リープル(T)ジョージ・ロンドン、ジョルジョ・トッツィ(Bs)
アンタル・ドラティ指揮コヴェント・ガーデン王室歌劇場o、同cho
ウォルサムストウ・タウン・ホール、ロンドン(セッション商業録音、ステレオ)
[ロンドン;POCL-3935/6]

  《オテロ》の全曲録音を終えたリザネク(1926生)はロンドンに移動して、「運命の役」と自ら語る《オランダ人》のゼンタ役を録音した。ロンドン(1920生)とのコンビで、昨年のバイロイトと本年前半のメトで人気を博していた。
  デッカとRCAの提携による録音で、主役4人はすべてメトの歌手である。ウィーンで録音する手もあったはずだが、スケジュールの関係か、ロンドンで録音されている。「ランナウェイ方式」のイギリス版である。
  この時期、バイロイトでは《オランダ人》が再演されていたが、主役2人は参加しなかった。ヴォルフガンク・ワーグナーによると、リザネクが法外な出演料増額を要求したためだという。代わりにアニア・シリア(1940生)とフランツ・クラッス(1928生)が歌い、バイロイト・デビューのシリアが大評判になった。この頃から、安い出演料のためにスター歌手が確保できないバイロイトの苦しみが始まったわけである。バイロイトは次第にワーグナー歌手、ワーグナー指揮者の「殿堂」から「登竜門」へと変わってゆく。
  ドラティは翌年来日して東京交響楽団を指揮することになっていたが、夫人の滞在費負担をめぐって話がこじれ、実現しなかった。



8.20(土)

モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》より、〈愛の神よ、みそなわせ〉〈楽しい思い出はどこへ〉

エリーサベト・セーデルストレーム(S)
ジョン・プリッチャード指揮ロイヤル・リヴァプールpo
ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドン(プロムス)
[BBC;BBCL4153-2]



8.20(土)

R・シュトラウス:歌劇《カプリッチョ》全曲

リーザ・デラ・カーザ(S)リヒャルト・ホルム(T)へルマン・プライ(Br)、ほか
ローベルト・ヘーガー指揮バイエルン国立歌劇場o
キュヴィリエ劇場、ミュンヘン(ミュンヘン音楽祭)
[DELLA VOCE LUNA;VL2010-2]

  モーツァルトとR・シュトラウスとワーグナーの歌劇を柱とするミュンヘン音楽祭は、この年は7月8日から9月9日まで開催された。デラ・カーザはザルツブルクとミュンヘンをかけもちで忙しく往復している。



8.20(土)

砲撃音(ベートーヴェン:《ウェリントンの勝利》のための)

ナポレオン時代の火器
ウエストポイント士官学校(セッション商業録音、ステレオ)
[MERCURY;434 360-2]

  ドラティ指揮のマーキュリー盤(6.9録音)にダビングされたもの。ウエストポイントにある軍事博物館所有の6ポンド青銅砲2門、12ポンド榴弾砲1門、フランスとイギリス製のマスケット銃が使用された。ディームズ・テイラーの解説コメント(11.22と23に録音)つきの録音風景も、9分26秒収録されている。



8.20(土)

黛敏郎:映画『狂熱の季節』サウンドトラック

演奏者不詳
日活撮影所、東京調布
[ディスクユニオン;SPFJ-10/11]
  「和製ジャズ・ビートニク映画音楽傑作選③」として2007年に初めてレコード化された。
  蔵原惟繕監督の劇映画。同年9月3日に封切られたもので、日付はミックスダウンが行なわれた日。主演は川地民夫と黒人のチコ・ローランドで、少年鑑別所帰りの少年の暴走を描く。黛敏郎の音楽はファンキー・ジャズのスタイルによるもの。



8.20(土)
 -23(火)





ハイドン:ピアノ・ソナタ第48番
シューマン:交響的練習曲

ニキータ・マガロフ(p)
不明(スイス?)(セッション商業録音)
[PHILIPS;456 898-2](ハイドン)
[PHILIPS;470 6662](シューマン)



8.21(日)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番

レナード・シュア(p)
アイズラー・ソロモン指揮アスペン祝祭o
アスペン、コロラド(アスペン音楽祭)
[Doremi Records;8017](2013)
  3枚組のLeonard Shure録音集に所収。(3.26参照)



8.21(日)

ヴェルディ:レクイエム

ジョーン・サザランド(S)フィオレンツァ・コッソット(Ms)ルイージ・オットリーニ(T)イヴォ・ヴィンコ(Bs)
ジュリーニ指揮フィルハーモニアo、同cho
アッシャー・ホール、エディンバラ(エディンバラ国際祝祭)
[Myto;1CD00309](2012)

  エディンバラ国際祝祭は8月21日から9月10日に開催される。これは開幕日の演奏。ヴェルディのレクイエムは当時ジュリーニ(1914生)とフィルハーモニアの十八番になっていて、6月9日ウィーン、6月12日ロンドンに続いて、この年早くも3度目の演奏である。歌手はロンドン公演もこの日と同じだが、ウィーンではソプラノだけがレオンティン・プライスに交替していた。プライスはその直後に、ライナー指揮の同曲のウィーンでのデッカ録音に参加しているので、リハーサル的な意味もあったのだろう。
  ジュリーニはイスラエル・フィルとともに10月から11月に仏米旅行をし、12月には日本公演に帯同して初来日する。



8.21(日)

メンデルスゾーン:交響曲第3番《スコットランド》
シェーンベルク:管弦楽のための変奏曲
ドビュッシー:3つの交響的絵画《海》

ディミトリ・ミトロプーロス指揮ベルリンpo
新祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ORFEO;C488981B]

  ザルツブルク音楽祭の芸術長となったカラヤンは、ベルリン・フィルをウィーン・フィルに次ぐ、ザルツブルク音楽祭の第2のホスト・オーケストラに据えようと画策、1957年に初登場させた。しかしウィーン・フィルなどの抵抗があり、この60年が2度めの登場となった。その後は1年おきに参加することになり、さらに74年からは毎年参加することになる。
  「このコンサートは、25年を経た今でもはっきりと思い出せるほど素晴らしい思い出である」(『ベルリン・フィルとの四半世紀』カール・ライスター/石井宏監訳/音楽之友社)と後に回想したライスター(1937生)は、1年前にベルリン・フィルのクラリネット奏者となったばかりだった。



8.22(月)

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4、10番
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第34番

アルテュール・グリュミオー(vn)クララ・ハスキル(p)
サラ・スコラスティカ(?)、アスコーナ(アスコーナ音楽週間)
[ERMITAGE;ERM112]

  グリュミオー(1921生)とハスキル(1905生)の名コンビによる演奏会。
  アスコーナはスイス南端のイタリア国境近くの小さな町。全欧の宗教会議がここで開かれるので、音楽週間もそれに合わせて開催されるという。8月17日から10月14日までに11回の演奏会が開かれ、シューリヒト、スターン、シフラ、ミルシテインなどが参加する。



8.22(月)

シュトレッカー:喜歌劇《ターラウのエンヒェン》より〈春までに好きな娘をくどきなさい〉

ヘルベルト・エルンスト・グロー(T)
ハインツ・フリッケ指揮ライプツィヒ大放送o、同cho
ライプツィヒ(セッション放送録音)
[JUBE;JUBE0101]

  『HERBERT ERNST GROH』所収。グロー(1906-82)は30年代からドイツのオペレッタ界で活躍したテノール。



8.22(月)
 -24(水)





ブラームス:ホルン三重奏曲

マイロン・ブルーム(hrn)マイケル・ツリー(vn)ルドルフ・ゼルキン(p)
マールボロ音楽学校、ヴァーモント(セッション商業録音、ステレオ)
[SONY;SBK63209]



8.22(月)
 -30(火)





シューマン:交響曲第1、3番、《マンフレート》序曲、《序曲、スケルツォとフィナーレ》

フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウスo
ベタニア教会、ライプツィヒ(セッション商業録音、ステレオ)
[ドイツ・シャルプラッテン;TKCC-15045]

  20-29とする説もある。



8.23(火)

R・シュトラウス;歌劇《アラベラ》抜粋

リーザ・デラ・カーザ、アンネリーゼ・ローテンベルガー、エヴァ・マリア・ロークナー(S)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)ほか
ヨーゼフ・カイルベルト指揮バイエルン国立歌劇場o、同cho
プリンツレゲンテン劇場、ミュンヘン(ミュンヘン音楽祭)
DVD〈DEUTSCHE GRAMMOPHON;00440 073 4050〉(全曲は未レコード化)

  2枚組『THE ART OF DIETRICH FISCHER-DIESKAU』所収。テレビ中継の録画をもとにDVD化したもので、第2幕と第3幕から約13分の抜粋。全曲の映像も残っている。
  バイエルン国立歌劇場の本拠地はまだ再建されておらず、プリンツレゲンテンが仮の本拠となっていた。



8.23(火)

落語『死神』

五代目 古今亭今輔
NHK
[テイチク;TFC-1261]

  15枚組「ラジオ名人寄席」所収。9.7文化放送の同演目もある。



8.24(水)

ヤナーチェク:《グラゴル・ミサ》より、クレド&サンクトゥス

マリアンヌ・シェッヒ(S)マルグリート・コンラート(A)エルンスト・ヘフリガー(T)フォーブス・ロビンソン(Bs)、ほか
ラファエル・クーベリック指揮スイス祝祭o、ルツェルン祝祭cho
クンスト・ハウス、ルツェルン(ルツェルン国際音楽週間)
[RELIEF;CR1881]

  『INTERNATIONALE MUSIKFESTWOCHEN LUZERN 1938-1988』第1集に所収。
  ルツェルン音楽祭では8月13日から9月8日までに、21回のリサイタルと9回の演奏会が行なわれた。ゼーフリート、ディースカウ、スターン、ザバレタ、デュプレ、ハスキル、ルービンシュタイン、バックハウスなど。指揮者はベーム、クーベリック、クレンペラー、セル、ジュリーニが出演している。



8.24(水)



モーツァルト:レクイエム
ブルックナー:テ・デウム

レオンティン・プライス(S)ヒルデ・レッセル=マイダン(A)フリッツ・ヴンダーリヒ(T)ワルター・ベリー(Br)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーンpo、ウィーン楽友協会cho
新祝祭劇場、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[SUITE;CDS1-6001](モーツァルト)
[EMI;7243 5 66880 2 5](ブルックナー)

  この日、カラヤンがザルツブルク音楽祭の芸術長を退くことが発表された。



8.24(水)

モーツァルト:歌曲《満足》《偽りの世》

イングヴァル・ヴィクセル(Br)
シクステン・エールリンク(p)
コンセルフース、ストックホルム
[Bluebell;ABCD079]

  『INGVAR WIXELL - PÅ BEGÄRAN』所収。「PÅ BEGÄRAN」は「BY REQUEST」という意味らしい。



8.24(水)
 -31(水)

ヴェルディ:歌劇《仮面舞踏会》全曲

アントニエッタ・ステッラ、ジュリアーナ・タヴォラッチーニ(S)アドリアーナ・ラッツァリーニ(Ms)ジャンニ・ポッジ(T)エットーレ・バスティアニーニ(Br)、ほか
ジャナンドレア・ガヴァッェーニ指揮ミラノ・スカラ座o、同cho
スカラ座、ミラノ(セッション商業録音、ステレオ)
[ポリグラム;POCG30101/2](DEUTSCHE GRAMMOPHON原盤)

  DGによる、スカラ座との最初の録音。それまでスカラ座と独占契約していたEMIに代わり、60年代はDGが録音を行なうようになる。DGは前年にカラヤンとの録音を開始するなど、それまでのドイツの国内レーベルという雰囲気を一変、世界的な活動を積極的に始めている。
  この《仮面舞踏会》はその第一歩だが、面白いのは、指揮も配役も4か月前の60年4月19日初日のスカラ座公演とほとんど同一であること。実演と録音を切り離すイギリス式(EMIやデッカ)とは対照的な方法論によっている。翌年の《ドン・カルロ》も同様だったが、営業面で苦戦したのか、その後はやはりレコード専用の配役が組まれるようになる。



8.25(木)(?)

R・シュトラウス;歌劇《サロメ》全曲

インゲ・ボルク(S)イラ・マラニウク(Ms)フリッツ・ウール(T)ヨーゼフ・メッテルニヒ(Br)ほか
ヨーゼフ・カイルベルト指揮バイエルン国立歌劇場o、同cho
プリンツレゲンテン劇場、ミュンヘン(ミュンヘン音楽祭)
[MYTO;2 CD 00282](2011)

  CDは月日の表示がないが、8月25日か9月3日のミュンヘン音楽祭のライヴと思われる。



8.25(木)







ジャズ『JAZZ IN THE GARDEN AT THE MUSIUM OF MODERN ART』(全6曲)

ブッカー・リトル(tp)ブッカー・アーヴィン(t-sax)ザ・テディ・チャールズ・ニュー・ディレクション・カルテット
現代芸術美術館(MoMA)、ニューヨーク(ライヴ商業録音)
[FRESH SOUND RECORDS;FSR-CD212](WARWICK原盤)
[COLLECTABLES;COL-CD-6131](スター・ダストのみ)

  ジャズ雑誌『メトロノーム』の提供で10週間にわたり、毎週木曜日夜にニューヨークの現代芸術美術館(MoMA)の庭園で開催されたジャズ・コンサートの、最終日のライヴ。
  この6曲以外に、同日の《スター・ダスト》が『SOUNDS OF INNER CITY』に収録されている。



8.25(木)

落語『将門(相馬良門雪夜噺)』

二代目 三遊亭円歌
ヤマハホール、東京銀座(第14回東京落語会)
[テイチク;TECR-21223]

  NHKでの放送は9月8日に行なわれた。



8.25(木)

落語『幽霊タクシー』

四代目 柳亭痴楽
NHK第1放送「ラジオ演芸ホール」
[ユニバーサル;UICZ-4145]

  日付は放送日。柳亭痴楽(1921生)はテレビ「痴楽綴り方教室」で圧倒的な人気を誇った。七五調による綴り方教室の代表作ともいわれる「恋の山手線」をマクラに披露している。「NHKCD 新落語名人選」の一枚。



8.-9.

映画『ローマ・オリンピック1960』

ロモロ・マルチェッリーニ監督
DVD〈ISTITUTO LUCE;LD90019〉

  ローマ・オリンピックは8月25日から9月11日まで開催された。オリンピック・ローマ大会組織委員会が製作した140分のカラー記録映画。ロモロ・マルチェリーニ監督。原題は『LA GRANDE OLIMPIADE』。
  映画の終わりは、この五輪のテーマ・ソングとなっていたマスカーニの歌劇《イリス》の〈太陽の賛歌〉の合唱で閉じられる。次回五輪が東京で開催されることと《イリス》の舞台が日本なのは偶然の一致だろうが、面白い。
  当時は記録映画の製作が組織委員会に義務づけられていた。次回の東京オリンピックの映画監督に内定していた黒澤明も、ローマへ見学に来ている。結局、黒澤のプランは壮大すぎて認められず、市川崑に交代することになる。



8.27(土)

歌曲リサイタル「ルネッサンス期のスペイン歌曲集」(10曲)

ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス(S)
グラシアーナ・タラゴー(g)
ホセ・マリア・ラマーニャ指揮バルセロナ・アルス・ムジケーEns.
アッシャー・ホール、エディンバラ(エディンバラ国際祝祭)
LP〈UNIQUE OPERA RECORDS CORPORATION;UORC339〉

  これらの曲は、同じメンバーにより9月12日から17日にかけて、バルセロナでセッション商業録音されることになる(18曲)。
  なおこのLPには、4日後の9月1日のリサイタル(ジェラルド・ムーア伴奏)と称する17曲も含まれている。だがそれらは当夜の曲目とは異なっており、1957年8月25日のエディンバラでのリサイタル[BBC;BBCL4101-2]と同一なので、おそらくはその誤用だろう。



8.28(日)

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番
シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ第1番
ファーガソン:ヴァイオリン・ソナタ第2番
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番

アイザック・スターン(vn)
マイラ・ヘス(p)
アッシャー・ホール、エディンバラ(エディンバラ国際祝祭)
[TESTAMENT;SBT 1458](2010)

  スターン(1920生)とヘス(1900生)は1952年にプラード・カザルス祭で共演して以来、ニューヨーク、エディンバラ、ロンドンなどでたびたび二重奏を行なった。これはその、最後の共演となったもの。
  ヘスは3日後に協奏曲を演奏している。



8.28(日)

マーラー:交響曲第8番《千人の交響曲》

ミミ・ケルツェ、ヒルデ・ザーデク(S)ルクレティア・ウエスト、イラ・マラニウク(A)ジュゼッペ・ザンピエリ(T)ヘルマン・プライ(Br)オットー・エーデルマン(Bs)、ほか
ディミトリ・ミトロプーロス指揮ウィーンpo、ウィーン国立歌劇場cho、ウィーン楽友協会cho、ウィーン少年cho
フェルゼンライトシューレ、ザルツブルク(ザルツブルク音楽祭)
[ORFEO;C519992B]

  30日までと終りの近づいたザルツブルク音楽祭の悼尾を飾る大演奏会。ウィーン・フィルの楽団長シュトラッサーによると、リハーサルでは大編成のためにミトロプーロスが音響を思うように把握できず、心の平衡を失ってしまった。しかし楽員のひとりが指揮台を高くすることを提案、それですべてがうまく行き、本番は壮大なものとなったという。



8.28(日)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番

ルドルフ・ゼルキン(p)
マールボロ音楽学校、ヴァーモント(セッション商業録音、ステレオ)
[SONY;SM3K64490]

  ゼルキンが生前に発売を許可しなかったベートーヴェンのソナタ9曲の商業録音を集めた3枚組に所収。1994年に初発売された。
  この曲は直前のマールボロ音楽祭では演奏されていない。



8.28(日)

談話『INTERVIEW WITH JOAN SUTHERLAND』

ジョーン・サザランド、バーナード・パーマー(語り)
BBC放送、ロンドン(?)
[ROYAL OPERA HOUSE COVENT GARDEN;ROHS002]

  サザランドが一躍有名になった1959年ライヴの《ルチア》全曲CDの余白に収められた4分半の抜粋で、その思い出を語っている。CDにはインタヴューの日付も相手も記されていないが、イギリスのCDショップMDTのサイトに「There is a bonus BBC interview with Joan Sutherland talking to Bernard Palmer from 28 August 1960」と書かれている。
  当時サザランドはエディンバラ国際祝祭の《清教徒》公演に出演中で、この日付の前後では26日と31日に公演があった。収録がこの日だとすればロンドンにトンボ返りしたことになるが、それ以前に収録してこの日に放送したと考えることもできる。



8.29(月)(?)

プッチーニ:歌劇《ボエーム》第1幕より、アリア2曲と二重唱

リーザ・デラ・カーザ(S)ニコライ・ゲッダ(T)
ファウスト・クレーヴァ指揮ハリウッド・ボウルo
ハリウッド・ボウル、ロスアンジェルス
[MELODRAM;CDM26526]

  ザルツブルクとミュンヘンの両音楽祭で奮闘中のデラ・カーザが突然ハリウッドに渡るとは考えくい。28日にザルツブルクで《ばらの騎士》、31日にミュンヘンで《アラベラ》があるので、おそらく無理だろう。録音年の表記ミスか。



8.29(月)

ベートーヴェン:《エロイカ》の主題による変奏曲とフーガ(?)

グレン・グールド(p)
コロンビア30丁目スタジオ、ニューヨーク(セッション商業録音、ステレオ)
[SONY;SM2K52646]

  7月13日と14日に行なわれるはずだったセッションがこの日に延期されたもの。ただし現在発売されている盤にはこの日の表記はなく、1967年2月と1970年7月のみが表記されている。



8.29(月)
 -30(水)





ベートーヴェン:合唱幻想曲

ギュンター・コーツ(p)
フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウスo、ライプツィヒ放送cho
コングレスハレ、ライプツィヒ(セッション商業録音、ステレオ)
[ART;0036682ART](VEB原盤)



8.30(火)

ジャズ『BILLY ECKSTINE/NO COVER NO MINIMUM』(全21曲)

ビリー・エクスタイン(Vo&tp)
ボビー・タッカー(p)指揮の楽団
ニュー・フロンティア・ホテルのクラウド・ナイン・ラウンジ、ラスヴェガス(ライヴ商業録音、ステレオ)
[ROULETTE;CDP0777 7 98583 2 3](CAPITOL原盤)

  「ミスターB」こと、ビリー・エクスタイン(1914~1993)は黒人ジャズ・ヴォーカリストの代表的スター。キャピトルのLPに未発表曲10曲を加えてCD化したもの。



8.30(火)

落語『毛氈芝居』

五代目 古今亭志ん生
東横ホール、東京渋谷(東横落語会圓朝祭)
DVD〈講談社;ISBN4-06-278008-9〉

  DVDブック『志ん生復活! 落語大全集第10巻』所収。DVDだが音声のみの収録。
  「圓朝祭」はいうまでもなく初代三遊亭圓朝を記念するもの。圓朝の命日である1900年8月11日にちなむ。



8.31(水)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番

マイラ・ヘス(p)
アレクサンダー・ギブソン指揮スコティッシュ・ナショナルo
アッシャー・ホール、エディンバラ(エディンバラ国際祝祭)
[BBC;BBCL4178-2]

  午後8時からの演奏会。当日の曲目は、前半がモーツァルトの交響曲第34番とこの曲、後半がバルトークの管弦楽のための協奏曲。



8.31(水)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番

クララ・ハスキル(p)
エルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンドo
サル・ドゥ・パヴィヨン、モントルー(モントルー九月祭)
[CLAVES;50-2408]

  モントルー九月祭の開幕コンサート。曲目は他にハイドンの88番とバルトークの管弦楽のための協奏曲。



8.31(水)
 &9.6(火)

ジャズ『ウイ・インシスト』(我々は主張する!)(5曲)

アビー・リンカーン(Vo)マックス・ローチ(ds)マイケル・オラトゥンジ(conga)、ほか
ノラ・ペントハウス・スタジオ、ニューヨーク(セッション商業録音、ステレオ)
[CANDID;VDCJ-1568]

  「いまこそ自由を」組曲と題され、抑圧されてきたアフリカやアメリカの黒人の歴史と現状を歌う作品。アメリカの黒人たちは差別撤廃を訴える一方で、17か国が次々と独立して「アフリカの年」と呼ばれるこの1960年に、先祖の出身地アフリカを強く意識するようになった。
  音楽そのものに加え、ジャケットが「シット・イン」運動を模しているのも強烈な印象を与える。この「シット・イン(座りこみ行為)」は60年2月1日、ノースカロライナ州グリーンズボロで4人の黒人学生が始めた。白人専用のカウンター席に座りこむことで差別に抗議する行為。その後2か月間で全米11州に波及、1000人を越す逮捕者を出した。10月19日には南部のアトランタでシット・インに参加したマーティン・ルーサー・キング牧師も逮捕されている。かれの保釈にケネディが尽力したことで、3週間後の大統領選挙では黒人票がケネディに集まったといわれる。



8.

『ジロティ編曲によるバッハのピアノ曲集』(8曲)

ベルナルド・セガル(p)
カリフォルニア(セッション録音)
[MASTER CLASS;MC-018]

  セガル(1911生)はブラジルのピアニスト。アメリカでジロティに師事した。ブラジルのレーベルが発売した「GREAT BRAZILIAN PIANISTS」シリーズの1枚で、原盤はアメリカのマイナー・レーベルと推測されるが詳細は不明。



8.

ジャズ『JIMMY GIUFFRE QUARTET LIVE IN 1960』より6曲

ジミー・ジュフリー(cl)
ジム・ホール(g)ブエル・ネイドリンガー(b)ビリー・オズボーン(ds)
ファイヴ・スポット、ニューヨーク
[JAZZBEAT;503]
  CDには2月23日のパリ・オランピアでのライヴも4曲含まれている。



不詳(8月?)

民主党大統領候補ケネディ応援歌《High Hopes with Jack Kennedy》《Jack Kennedy All the Way》

演奏者無記名(フランク・シナトラ、ネルソン・リドル・オーケストラ、ジョニー・マン・シンガーズ?)
ハリウッド?
[DRIVE;CD534](《High Hopes》のみ)

  ケネディを応援する目的でつくられた45回転シングルのプロモーション盤。2曲ともシナトラのヒット曲の替え歌で、「ケネディに投票しよう」などと歌われている。レーベル面に演奏者の記載はないが、《ハイ・ホープズ》の方は疑いなくシナトラ自身が歌っている。《オール・ザ・ウェイ》の方は無記名の合唱団による。
  シナトラの公式ディスコグラフィなどには録音されたことさえ一切掲載されない「幻のシングル」(プレス枚数は1000枚といわれる)である。そのため正確な録音日も不明だが、2曲目の歌詞中に「ジャックならニクソン氏に勝てる」とあることから、両党の大統領候補が指名された後(7月27日以降)の、早い時期の録音と考えられる。
  当時シナトラはケネディ陣営のために献身的に協力していた(翌年1月の大統領就任式典前夜の記念演奏会もシナトラが取りしきり、ライヴ録音を行なっている。ただしこれは一部しか世に出ていない)。
  シナトラはシカゴ・マフィアの大物サム・ジアンカーナにも協力を依頼した。大接戦の末のケネディ勝利の陰には、ジアンカーナによる不正行為があったとする説も根強い。しかし、後年のシナトラは一転して強力な共和党支持者となる。

  CDでは3枚組『FRANK SINATRA LIVE IN ITALY』に《ハイ・ホープズ》のみがボーナス・トラックとして含まれている。この曲はケネディの選挙戦を描いたニュース映像などのBGMとしてもよく用いられている。



不詳(8月?)

ジャズ『真夜中の恋のムード~お休み前の恋人に』(10+2曲)

水谷良重(Vo)白木秀雄クインテット
日本ビクター・スタジオ、東京築地(?)(セッション商業録音)
[THINK! RECORDS;THCD-023] LP〈ビクター;LV-137〉

  録音日不詳だが、1960年10月新譜なので、おそらくは8月前後の録音と推定される。当時ジャズ歌手だった水谷良重(二代目水谷八重子、1939生)とジャズ・ドラマーの白木秀雄(1933-72)は、1959年から63年まで結婚していた。これは夫婦共演のアルバム。
  CDは「昭和ジャズ復刻シリーズ」の一枚で、オリジナルLPに1955年録音のシングル2曲を追加している。