[癌治療の合併症]

[胃癌で胃全摘・胆摘・脾摘手術の術後に癒着のために再手術をしたが縫合不全を起こした]
[脳の悪性リンパ腫で放射線療法と化学療法を受けたが、吃逆(しゃっくり)が止らない]
[結腸癌再発の手術後に腸閉塞を起こし敗血症となったが完治するか?]
[胃癌で手術(2/3胃切除術)を受けたが吻合部が狭くて通じない]
[進行胃癌の根治手術後の合併症で回復が遅れ、むせて飲み込めない]

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[胃癌で胃全摘・胆摘・脾摘手術の術後に癒着のために再手術をしたが縫合不全を起こした]

(相談)2000.5.20
先生へ、始めまして。インターネットにサイトが有るのを知りお便りします。義理の父(75才)が胃癌で2000年3月30日に胃全摘及び胆摘・及び脾摘出手術を受け、約2週間前後で退院予定でしたが、その後、小腸が大腸の上に乗っかり、胆摘・及び脾摘に依って出来た空洞に捩れて大腸と絡まり癒着を起こし4月28日に小腸、1Mter切除、小腸の位置を戻すと言う手術を受けました。その後、嘔吐や吐血を繰り返し一ヶ所縫合不全、創は現在開放状態、中央にドレインを挿入、低圧にて持続吸引を行っています。ドレインからは淡黄色及び白色の粘りの有るものでしたが、現在は黄色・混濁の汚いものが出てきています。ドレインの先は腸内には入っていない様です。(ガーゼ交換の時に創の中に溜まった浸出液をドレインで吸引していました)

手術を受ける前の係り付けの医者の胃カメラの写真を見ましたが、胃の上部に大きな瘤(10CM玉)一部陥没、診断は胃癌ステージ4と言う事も有り、○○病院に急遽入院、手術を受けた次第です。手術は出来るだけ受けさせ度くなかったのですが、当時、内出血が有り、貧血状態(ヘモグロビン値が5.6)と低い為、急遽手術を受けた次第です。手術前の立会で主治医より胃全摘及び胆摘・及び脾摘出手術を行うと言う説明を受けた際、なるべく摘出部分を少なくして欲しいとお願いしましたが、気持ちも胃の場合は治る確率が高いとも言う事、合併症として肺炎を起こす事、又、縫合不全になる事は一応は聞きましたが、斯様な状態になるとはまさか思いもよりませんでした。(私の考えでは先ず手術を受けて貰い、その後、AHCC及び鮫の軟骨を主体とした穏やかな治療に専念して貰うつもりでした)手術を受けた今となっては、担当医今の状態を勘案しながら、その後の処置を決めなければなりませんが、どの様に対応したら良いのか是非、助言を頂き度くよろしくお願い致します。

(答え)2000.5.21
お答えします。大変ご心配のことと思います。胃癌の手術(胃全摘及び胆摘・及び脾摘)後の癒着性の腸閉塞の手術後の縫合不全という状態だと思います。普通は、縫合不全をおこしている部分を食べ物や消化液が通らないようにして、栄養は静脈栄養で補給して、傷が癒えるのを待ちます。どうしても治らないと判断した場合には、もう一度手術をする場合もあります。今は、からだの状態をできるだけ良くして、傷が癒えるのを待つことだと思います。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)2000.5.21
数野先生、早速のお返事有難う御座いました。昨日、主治医に面談、お話を聴いた処

(1)内臓が空気に触れる為、術後の癒着は発生する。癒着は傷口を塞ぐ為、起らないと困るが、今回は胃全摘・胆摘・及び脾摘後の空間に小腸が落込み小腸が固まり癒着した為、2回目の手術を行い、固まりを解し駄目になった小腸の一部を切除、再縫合した。
(2)2回目の手術後、傷口に菌が発生、大腸及び小腸に穴が空き、大腸の穴からは大腸菌・うんこと同じ物が体内に流れ出した為、大腸の穴は接着剤の様なもので癒着・穴を塞ぎ、経過は良い。小腸は大腸に比較してデリケートな為、接着出来ない。
(3)ここ2〜3日、傷口の廻りの肉が盛り上がって来ており(100%傷口⇒70%)、肉の漏り上がりで小腸の穴も塞がれる可能性が出て来た為、一週間程様子見する。
(4)傷口にMRSA菌が発生したが抗生剤は使わなかったが、体力の回復に伴い菌も消えた。現在、栄養剤で点滴を行い糖分等の補給(2000Kcal)しているが、寝たきりのままでは脂肪になるだけなので、極力歩き体内の糖分を燃焼、蛋白質に変えるようにして欲しい。そうすれば傷口の塞がりも早くなり又、MRSAの再発生の確率も低くなる。

との事で先ずは一安心を致しました。本当に有難う御座いました。但し、術後の再発処置の節には何卒、宜しくお願い致します。(穏やかな療法が良いと思っていますが、本人には胃潰瘍と説明している事、又、胃全摘の為、食事療法等の適用が難しいと思われる為、どの様な形で進めたら良いか、迷っています)

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[脳の悪性リンパ腫で放射線療法と化学療法を受けたが、吃逆(しゃっくり)が止らない]

(相談)2000.5.13
初めてお便りさせていただきます。相談できるところがなくて悩んでいる時に、このホームページに出会いました。現在私の父がしゃっくりが止まらず、悩んでいます。私の父(62歳)は、去年の5月に倒れ、脳腫瘍と診断されました。7月に脳生検後、「悪性リンパ腫(中枢神経原発)」と診断され、放射線治療を行い、退院しました。しかし、9月に鼻腔内に腫瘍が発見され再入院し、10月から11月にかけて2度目の放射線治療を受けました。11月からメソトレキセート大量療法が始まりました。1月下旬の骨髄検査では骨髄にリンパ腫の細胞が残っていたため、多剤併用化学療法(ACOMP―B療法)を2クール行いました。この頃より、ひどい口内炎に悩まされ、食事の量が激減したとともに、介助つきの歩行も難しくなりました。治療終了後、4月になりましたが、少量の食事をとった後、げっぷが出て、食欲が出ないようです。また、しゃっくりが始まり、氷水の飲用、咽頭刺激、注射で止まらなくなったため、コントミン糖衣錠〔25mg〕1錠を夜寝る前に服用し、抑えていました。ところが、5月に入り、しゃっくりが止まりにくくなり、止めても30分ほどしかもちません。また最近、急に右手に力が入らなくなり、ベッドに一人で起き上がっていることも出来なくなりつつあります。4月の骨髄検査では、リンパ腫の細胞は見当たらないとのことです。しゃっくりは病気から来るものではなく、化学療法などの副作用ではないかとのことですが、理由はわからないようです。しゃっくりを止めるには、コントミンの量を増やし、眠らせるしか方法はないとのことでした。今、眠らせて止めるか、しゃっくりを我慢するかどちらかを選ばなければなりません。薬の量を増やすと眠ってしまうため寝たきりになる可能性があります。しゃっくりを止める方法は本当にないのでしょうか?しゃっくりを止めるためだけで、薬で父を寝たきりにさせてしまうしかないのでしょうか。御忙しい中恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

(答え)2000.5.14
お答えします。現代医学では、すでに試みたような方法しか無いと思います。もし胃腸や肝臓など、内蔵に問題があれば、それに対して治療をする必要があると思います。それ以外では、昔から柿のへたを煎じたものが効くとされています。専門の漢方薬局には置いてあると思いますので、試みてみてください。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)2000.5.14
数野先生 早速のお返事をありがとうございました。とても心強く嬉しく思いました。明日にでも漢方薬局に相談したいと思います。どうもありがとうございました。

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[結腸癌再発の手術後に腸閉塞を起こし敗血症となったが完治するか?]

(相談)1999.10.7
いろいろな相談への先生のお答えを読みながら、私の母 (58歳)病状についてお聞きしてみたいと思いました。母は、2年前結腸ガンのため地元の病院で手術を受けましたが、今年になって再発し9月10日に再手術を行いました。かなりの大手術だったようで、6時間ほどかかりましたが、無事に成功したと言うお話を先生方から聞き家族で喜んでおりました。腫瘍の大きさは9センチほどにもなっていたそうです。術後しばらくは調子がよく、歩いたり、食事もとっていましたので、先生から退院もすぐにできるだろうといわれていました。しかし突然今まで食べていたものを全部戻し、一晩中吐き気がして、熱がでました。先生の説明では腸の働きが悪かったのだろうと言うことで、鼻からまた管を通したところ、吐き気もおさまりました。この症状もよくなり、一時帰宅の話もでるほどだったのですが、今度は高熱が続くようになりました。熱が出始めるときは、激しい悪寒とふるえがあり、40度近くまであがります。座薬を使うとすごく汗をかき着替えなければなりません。毎日3回ほどの座薬がかかせません。もうこんな状態が1週間近く続き、本人は食欲もなくリンゴやおかゆなどすこし食べる程度です。先日先生から血液の中の細菌を今調べており、それに合う薬を使って治療するとのことでした。現在は、血小板と赤血球が減ってきているので今後危険な状態になる場合もあるというお話でした。敗血症と言う症状は、完治するものでしょうか?だいぶ体にも負担がかかっているので、ガンが再発しやすくなってしまうことはあるのでしょうか?初めてのメールで、説明も不慣れですいません。よろしくお願いします。

(答え)1999.10.8
お答えします。大変ご心配のことと思います。「敗血症」というのは、血液のなかに細菌が入って起きることが多く、何かその原因があるはずです。メイルの内容からは、縫合不全が考えられます。腸を縫い合わせた所から、お腹の中に腸内容が漏れているのではないでしょうか。敗血症の治療は、抗生物質やガンマグロブリン(免疫グロブリン)などの点滴で治療しますが、原因がある場合には、それを治療しないと治りません。担当医によく聴いて、粘り強く治療をしてもらうことです。心配なことやわからないことがあれば、担当医に納得できるまで聴くことです。患者さんの命は医者次第です。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.10.11
早速のメールありがとうございました。病院は自宅から遠いところにあり、治療の説明は本人(母)が聞くことが多く主治医から家族への面談は、手術時の前後2回、敗血症らしいので検査をしているという説明のため1回なので、なかなか直接先生とお話しする機会がなく、不安になっていました。メールを読みながら治療についてよくわからないことや些細なことにも丁寧にお答えくださり、家族として大変心強く思います。主治医の先生は、母のところに、休日も朝夕来てくださっているらしいですが・・・本当に母の命は主治医の先生にかかっていることを実感しています。さて、先日は敗血症と言うことで血液検査で菌を培養して高熱の原因を探していると言う説明でした。その後血小板の値も落ち着き、血液検査の結果も異常はみられなかったそうです。 高熱プラス何回もの採血で母もぐったりしてしまいこのままどうなってしまうのか心配でした。異常なしということで、すぐに今度は骨髄の検査をしました。これも異常なしといわれ、3日後次に病院にいったときには、たくさんついていた点滴がはずされていたのです。熱は、1日に3度決まった時間に座薬を使用して抑えているようです。食欲は、あまりないようですが、点滴がとれてから、だいぶ食べられるようになってきました。6キロ近く体重も減ってしまったので、何とかこのまま食べられるようになり、熱の方も収まってくれないかと思います。明日からは熱があがるまで座薬を使わないようにしてみるということでした。母に主治医の先生は、熱の原因はわからないといっているようです。腹部のCTも撮り手術した部分にたまっていた水が原因ではないかとチューブをつけてとっていましたがそれもはずされました。原因がわからないといわれていますが大丈夫なのでしょうか。

(答え)1999.10.12
お答えします。
「原因がわからないといわれていますが大丈夫なのでしょうか。」
原因がわからないことは、しばしばあります。その時に行う治療を対症療法と言います。熱が出れば解熱剤を、痛みがあれば鎮痛剤を使って治療するという方法です。原因がわからなくても、症状を取る治療(対症療法)をしていれば、自分の身体の治癒力(自然治癒力)で治してしまいます。癌の治療も、おなじことです。ではまたいつでもメイルをください。

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[胃癌で手術(2/3胃切除術)を受けたが吻合部が狭くて通じない]

(相談)1999.9.14
突然のメールですが、教えてください。83歳の父が黒部市民病院で先月19日 進行胃がん(幽門部)の手術を受けました。胃を三分のニ切除し、無事に終了したようなのですが、術後縫接した部分が狭く、胃液、唾液が通じず、強制吸引を行っていたようです。昨日姉の連絡によると、接合部に突起物が出来ており、風船のようなもので膨らませる処置をしたとのことです。相当苦しんだようです。このような例はあるのですか。教えてください。また、医療ミスでは無いかと考えてしまうのですが、もしその疑いがある場合、どのような対処法があるのでしょうか。また、病院の転院はどのように行ったら良いのでしょうか。(高齢から、遠隔地にいるわたしは、大きな手術は反対していたのですが。)

(答え)1999.9.17
お答えします。大変ご心配のことと思います。「術後縫接した部分が狭く、胃液、唾液が通じず、接合部に突起物が出来ており、風船のようなもので膨らませる処置をした」とのことですが、「吻合部狭窄」といいます。手術の直後に起きる場合と、時間が経ってから起きる場合とがあります。手術直後に起きる場合の原因として多いのは、縫い合わせた部分の腫れ(浮腫)によるものです。この場合には1ケ月位絶食などで治療すれば、自然に良くなります。もし原因が手術そのものにある場合(縫い方が悪いなど)には、再手術しなければ良くならないと思います。いずれにしても、手術の合併症としては初歩的なもので、経験を積んだ外科医であれば、あまり起きないものだと思います。担当医の説明をよく聴いて、わからないことはわかるまで聴いて、もし必要であればしかるべき病院に紹介してもらってください。ではまたいつでもメイルをください。

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[進行胃癌の根治手術後の合併症で回復が遅れ、むせて飲み込めない]

(相談)1999.4.16
はじめまして、今回相談させていただくのは私の祖父の胃ガン術後の事です。祖父は、現在84才で進行性の胃癌と診断され、胃とその周りのリンパを全摘出しました。手術の次の日に肺炎を併発し、人工呼吸器を付け、なんとか乗り切り、リハビリに励むことが出来る毎日となりましたが、その後3週間後ぐらいに腹水がたまり、腹膜炎をおこし、緊急手術をし、溜まっていた腹水は癌性でなくウィルス性のものとわかり、その2日後に膵臓に開いた穴にから膵液でて、十二指腸などの内蔵を痛め、大量出血をし、またまた緊急手術をしました。そして、すごい生命力と、先生をはじめとする病院の方々の治療により約1カ月が経過し現在元気になりつつあります・・・。ですが!

ここから、やっと本題なのですが、一度目の手術の後、肺炎を乗り切り、いざ食事を取ろうというときに、人工呼吸器のための喉の穴がじゃまになったのか、食事を何日もしていなかったせいかうまく物が飲み込めないのです。ごっくん・・・と飲み込みすぐに ごほん!ごほん!とむせかえり、飲み込んだものを吐き出してしまうのです。これは、腹水が発見されるまで続き、そして、現在3度の手術を乗り切った今でも、変わりません。おかげで、食事は、ほとんど食べられない状態です。主治医の先生は、それに関しては取り合っていただけません。ですが、このまま点滴を減らしていっても、食事がほとんど入らないので、とても、心配しております。プリンなどが、たまに入ったりすることがあるのですが、与えられた薬も実はほどんど飲めない状態です。胃ガンや、肺炎の影響なのでしょうか?老人の祖父は、せっかく救っていただいた命ですが、とても、つらい・・・と申しております。本人も何時間もゆっくり食事をするのですが、その間ずっと、この状況で、まわりの者も見ているのがつらいほどです。「これは、ちょっとずつ努力ば必ず食べれるから」と励まし続けていますが、本当にそうなのでしょうか?なにか、問題があるということは考えられないでしょうか?そんな症状は、仕方がないのなら、また毎日努力するのですが・・・教えて下さい。実は前回の腹水が溜まる前、腹痛を訴える祖父に主治医の先生にそれは、胃腸が動くからだと説明され、看護の者も直る証拠と「がんばれ!」と無理矢理、体を動かしたり、食べさせたりしていた経過がありますので、ちょっと不安になっております。何か、考えられることがありましたら、教えて下さい。お忙しいとは存じますが宜しくお願いいたします。

(答え)1999.4.17
お答えします。大変ご心配のことと思います。残念ながら、その病院の先生は進行癌が手術だけで治ると思って、84才で進行性の胃癌の人に、大きな手術をし過ぎたようです。一昔前までは、癌の手術はとにかく大きく切り取るということを考えましたが、それだけで治すことができる病気ではないことが分かってきて、最近ではなるべく小さな手術をして、手術後の回復を早くすることを心掛けます。老人の場合、とくにすでに平均寿命を過ぎたご老人の治療は、「節度ある手術」を考えます。場合によっては、手術をしないことも、一つの選択です。

さて本題の「うまく物が飲み込めない」ために、ほとんど食べられない状態のことですが、体力が弱ってきたご老人にはよく見られることです。老人病院や老人施設では、日常的な問題です。まず体力の回復が必要ですが、根気よく訓練をしなければいけません。ある老人病院では、食事の前に使い捨てのスポイドに水を入れて凍らせたものの摘みの側で舌の付け根やのどを刺激することをしています。水が最もむせやすく、プリンやバナナなどが食べやすいようです。参考までに、最も一般的な医師のための参考書から引用しておきます。

嚥下障害Dysphagia
齋藤 等  福井医科大学教授・耳鼻咽喉科
疾患の概念 一般に,随意的な第1相口腔期,反射性不随意的な第2相咽頭期,および第3相食道期に分けられる.これらは患者に水を飲ませてみれば大体わかる.通常は第2相の嚥下障害に伴う誤嚥が最も問題になる.
診断のポイント まず,よく“むせる”といった動的障害の場合は末梢性神経障害性か中枢性かを区別する.中枢性の場合は,水を飲ませると第1相から2相への移行がスムーズにいかない.一方,第3相の通過障害といった静的障害の場合は,下咽頭癌や食道癌の診断を進めねばならない.
◆治療方針
1.中枢性の場合
 第1相から2相へ随意的に移行できない中枢性の場合,大変困難で,鳥のような重力嚥下しかないが,第2相が問題である.その他,口腔・中咽頭癌切除後の場合は,量のある再建材料で嚥下圧を保持するようにつとめる.
2.第2相の嚥下障害
 種々の手術方法がある.
a.輪状咽頭筋切断術 嚥下圧が弱くて,食塊が下咽頭に残り,喉頭内に流入して誤嚥する,喉頭下降期型誤嚥に有効である.
b.喉頭挙上術 嚥下時,喉頭は約2cm挙上するが,この動きが不十分な喉頭挙上期型誤嚥に有効である.これには,髻舌骨下筋群切断術,鬆甲状軟骨の上1/3を切除して,舌骨に縫縮挙上する甲状軟骨舌骨固定術,鬘舌骨を下顎骨方向に牽引挙上する舌骨前方牽引術,などがある.
c.声門閉鎖術 髻両声帯の縫合閉鎖(Montgomery法),鬆喉頭蓋・披裂部縫縮閉鎖(Habal法),があるが,小瘻孔ができることが多い.
d.喉頭気管分離術 喉頭と気管を分離切断し,喉頭側気管断端と食道とを縫合交通させ,下方気管断端は気管孔として前頚部に開孔する.
e.喉頭全摘術 喉頭を全摘して,気管と食道を永久に分離するので最も確実であるが,声を犠牲にする最後の手段である.
3.嚥下訓練
 水の嚥下が最も難しく,バナナ,プリンなどの軟固形物から訓練するとよい.また,1側の反回神経麻痺の場合,麻痺側に頚を回して嚥下させると誤嚥が少ない.(今日の治療指針1998年版/(c)1998 IGAKU-SHOIN Tokyo)

ではまたいつでもメイルをください。

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