[胃癌2]

[胃癌検診で要経過観察といわれ3カ月後に癌と判明した]
[出産後に発病、胃癌の手術を受けたが癌性腹膜炎の状態、利尿剤を飲むべきか?]
[胃全摘術(胃癌)を受けリンパ節転移のため抗癌剤治療をしているが不調で不安]
[転移性卵巣癌(クルケンベルグ腫瘍)で発見された胃癌]

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[胃癌検診で要経過観察といわれ3カ月後に癌と判明した]

(相談)1998.10.20
ホームページを拝見させていただき、初めてお便りさせていただきます。実は先日、主人(36才)が胃ガンであるとわかり、ショックを受けています。今年の6月に市の健康診断で(バリウム)、「胃の経過観察が必要」との結果がでて、結局再検査にいったのが9月。その時に胃カメラでの検査の結果、胃潰瘍との診断で薬を飲んでいました。念のため細胞を調べた結果、なんと悪性とのこと。まさか!と言う気持ちです。素人考えで、ガン=すぐに手術。と思っていたのですが、その前に検査があるらしく(なんの検査なのか、私が医者に直接聞いたわけではないのでわかりませんが)その検査の日程を決めて、そのあと手術の日程を決めて・・・と何となく、こんな悠長なことでよいのだろうか?なんて感じています。若いほど進行が早いとか?初期らしいのですが、胃の3分の2をとるということです。今はただ、無事に終わって欲しい、転移がありませんように、と祈るのみですが、手術から一月は入院と言われただけで、そのあとは一体どんな生活?と、心配性の私はあれこれ考えてしまいます。退院後はもちろん、すぐ仕事復帰というわけにはいかないとは思いますが、どのくらい自宅療養するものなのでしょうか?もちろん、手術後の経過も大いに関係があるとは思いますが・・・。食事に関しても普通の食生活にもでるまで、どのくらいかかるのでしょうか?なんだか、つい悪い方へ考えてしまいがちで、毎日鬱々としてしまいます。お答え頂けたら嬉しいのですが。よろしくお願いします。

(答え)1998.10.20
お答えします。早期胃癌とのこと、まずその幸運に感謝することです。あわてることはありません。手術は、やり直しの効かない治療ですので、手術の前にはあらゆる検査をします。手術さえ成功すれば、早期癌の場合は90%以上治ります。

癌になった原因に思い当たることがあれば、手術後はそれを改めなければまた同じことになります。普通の生活をすればよいわけですが、身体によくないこと、たとえば喫煙か、ストレスとか、肉食とか、悪い生活習慣は止めなければいけません。年齢的にも、本人のやる気さえあれば、すぐにでも仕事に復帰できます。手術が成功して退院する日が、これからの人生のスタートラインです。それからは、自分で治す以外にありません。病院の方から色々と指導があるはずですので、よく聞いて納得がいけばそれに従い、納得がいかなければ自分で道を切り開くことです。幸運に感謝して、一日一日を大切に生きることです。生と死について考える機会を与えれられたと思って、この貴重な経験があなたがたの人生のプラスになるようにしてください。人は、いつか必ず死にます。死なない人はいません。いかに生きるかということを考えるチャンスです。ではまたいつでもメイルください。

(相談)1998.10.21
お忙しいのに早速のお返事、ありがとうございました。暖かい励ましのお言葉、とても嬉しく思います。「いつでもメイルください」のお言葉に甘えて、またいくつか質問してもよろしいでしょうか?「癌になった原因に思い当たることがあれば、手術後はそれを改めなければ・・・」とのことですが、主人に関して、特に思い当たるところはないのです。喫煙は一日5本程度、飲酒は時々缶ビール一本程度、食事も好き嫌いはあるものの、出されれば食べますし・・・。強いていえばラーメンが好きですが、それも時々食べるくらいです。なぜ、主人がガンになってしまったのだろう?そんな気持ちでいっぱいですが、そんなこといっていても仕方ないですよね?なってしまったんですから。ガンに関する本などを読むと、ガンにも色々な種類があることがわかりましたがはたして主人はどのようなガンなのでしょうか?手術をしてみないと完全に治るか、又は初期と思われていたものが実はそうではなかった、ということもあり得るのでしょうか。前回のメールには書かなかったのですが、実は9月になってから胃カメラの検査をすることになったのは、一日だけですがひどい胃痛になり、その為本人も検査する気になったようです。その胃カメラの検査で胃潰瘍と診断されたということは、前回も書いたと思いますが、その胃の痛みは胃潰瘍が原因だったのでしょうか?それともガンのためでしょうか?ガンは自覚症状がでたときは、もう手遅れ、とよくいわれていますよね。お医者様が初期といったのは気休めではないか・・・。それともはっきり主人に悪性であることを告げるということは本当に初期で手術をすれば治るということなのか?私は、心配性なので、考えても仕方のないことをあれこれ考えてしまうのです。特に今現在、育児休業中のため、家にこもっているとつい・・・。主人は数年前にも胃潰瘍を患って、その時は薬を服用して治ったのですが、今回も同じ場所らしいのです。潰瘍は、ガンになるのでしょうか?それから、やはり妻の私としては、最良の医師、病院で治してもらいたい。という気持ちがあるのですが、そのあたりのことは詳しくありません。果たして最良の医師、病院とは?それさえもわかりません。主人は家から近い方が私や子供も通いやすいし、今の病院でいいんじゃないか。といっているのですが・・・。手術に、上手下手ということはあるのでしょうか?極端にいえば、この病院、医師なら助かったのに、こっちはダメだった、というようなことはあるのでしょうか?今、妻の私がするべきことはいったい何なのでしょう?とりとめもなく書いてしまってすみません。お返事を頂けたもので、つい調子に乗ってしまいました。こうして書くことで、気持ちを落ち着けていつのかもしれません。読んで頂いてありがとうございました。

(答え)1998.10.22
お答えします。私たちの身体の中では毎日3000個位の癌細胞ができているそうです。身体の免疫力(治癒力)が弱っていると癌細胞が増殖します。目に見える大きさの癌(約1cm)は、約1億個の細胞からできています。現在、癌に対する一番確実な治療方法は手術です。早期癌の場合には手術で治る可能性が高いわけですが、100%ではありません。一方、進行癌の場合でも治らない確率が100%ではありません。癌の進行度によって治る確率が数字で表されますが、一人一人違います。本人にとっては0%か100%のどちらかです。三人に一人は癌になる時代ですから、だれでも普段から心の準備をしておくことが大切ですが、あまり心配し過ぎてもきりがありません。普通に生活していて、癌になったのであれば、運が悪かったと思うって、前向きに癌と闘ってください。

ご主人の場合には、三つの可能性が考えられます。主治医の先生には、そのうちのどれかということは分かっているはずです。(1)良性の潰瘍の場合、(2)潰瘍の一部に早期癌ができている場合、(3)進行癌が潰瘍を作っている場合の三つです。それぞれの場合で、手術のやり方が違います。胃の痛みは、やはり胃潰瘍が原因だったと思われます。癌の場合には、症状がないことが多く、「自覚症状がでたときは、もう手遅れ」と言われています。なお、胃潰瘍は、癌になることがあると言われています。

さて、手術はやり直しが効きませんし、その後の経過は最初の手術でほとんど決まってしまいます。手術は技術ですので、物を作ったりするのと同じです。多くの患者さんの手術をしている医師と病院ほど、手術とそれに伴う色々な治療は上手です。確かに、小さなパン屋さんでも、上手に美味しいパンを作る店もありますので、すべてにはあてはまりませんが(当院の前にはそのようなパン屋さんがあります)、手術の場合は、手術をする医師の腕は勿論のこと、看護婦さんや技師の人など、病院全体のレベルの問題です。繰り返しますが、手術はやり直しが効きません。慎重に医師と病院を選ぶことです。あわてることはありません。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1998.10.26
土曜日に主人と一緒に病院に行って来ました。私は主治医の先生に会うのは初めてだったのですが、その為か私にもあらためて病気のことを説明して下さいました。数野先生から、「手術はやり直しがききません。医師と病院は慎重に選ぶべき。」とのアドバイスを頂いたこともあり、とりあえず、主人の主治医の先生がどんな感じの方なのか知りたいと思い、土曜日に病院に行ったのです。その病院は、私立(たぶん)の総合病院で、私も以前風邪などでかかったことはあるので、病院の雰囲気はわかっていました。(特別嫌な印象はないです。でも総合病院の為なのか、いつも混んでおり時間がかかるというのが本音ですが。)主治医の先生の感じは良かったので、たぶんこの病院でお世話になると思います。もちろん先生の印象と、手術の上手い下手は関係ないとは思いますが、やはりこの先長いおつき合いとなれば、話しやすい先生がよいですよね。実は、癌センターの方も問い合わせてみたのですが、やはり混んでいるらしく、緊急の場合をのぞき、入院は二週間から一月は待たなければならないそうです。(申し遅れましたが私は埼玉に住んでいます。)しかも、胃カメラ検査にもしばらく予約待ちとか・・・。その間にも病気が進行しているかと思うと、私には耐え切れそうもありません。癌に対する知識を持っておこうと思い、いろいろ本を読みあさっているのですが、逸見さんのことが書いてある本を見て、不安になったことがあるのでいくつか質問させて下さい。逸見さんは定期検診で癌が発見されたとありましたが、1月に手術をして9月にも手術をしているようですが、この場合は早期癌ではなかったということなのでしょうか?最初に見つかったとき、早期と診断された、と書いてあったのですが、進行していたが早期といったのか、それとも実際早期だったのが、9月までの間に最初の手術で残っていたガン細胞が、みるみる広がっていったのか、どちらなのでしょうか?逸見さんの癌はスキルスというものと聞いていますが、それは特別に進行速度が速いのでしょうか?主人が6月に受けたバリウムの検査の結果は、「胃角部短縮」のため経過観察ということだったのですが、その時すでに癌になっていたのでしょうか?ガン細胞が出来てからそれが広がっていくスピードは、個人差や癌の性質によっても様々だと思いますが、たとえばたちの良い癌だったとして、早期と呼ばれなくなる時期までどのくらいなのでしょうか?月単位?それとも年単位なのでしょうか?数野先生のホームページである方と先生のメールのやりとりを読ませていただきました。その方はお父様が胃ガンということで先生に質問されていたようですが、胃ガンと診断されるまで、とてもお元気で自覚症状もなかったようですね。でも癌は10cmもあったとか。しかもリンパの方にも転移が見られたとのこと。私の主人も今、病気であるのが信じられないほど普通に生活しています。今週、色々な検査があり、早ければ来週にも入院となりそうです。検査の結果がとても怖いのですが、できるだけ良い方に考えていきたいと思います。いつもの事ながら支離滅裂な文章をお許し下さい。

(答え)1998.10.27
お答えします。逸見さんは、毎年アメリカで有名な日本人の医師にかかって、胃カメラでの定期検診を受けていましたが、発見されたときにはすでに手遅れの進行癌だったようです。2回目の手術は、最初の手術の時、取り切れていなかった癌が発育して大きくなってきたために、医学的に見れば治る可能性は無かったわけですが、本人の強い希望で非常識な手術が行われたようです。再発ではなくて、そのまま癌が残っていたということです。逸見さんの胃癌の発見が遅れた理由は色々ありますが、胃カメラしかしていなかったことと、逸見さんの癌がスキルス癌という特殊な性質の癌だったことが主な原因です。癌は普通、胃の一番内側の粘膜という部分から発生して、横に拡がりながら発育していき、大きくなるに従って次第に深く拡がっていきます。レントゲン検査にしても、胃カメラにしても、胃の中からの検査ですので、胃の粘膜の変化を調べているわけです。スキルス癌の場合は、最初はやはり胃の粘膜に発生しますが、横に拡がらずに深く入っていって粘膜の下で広く拡がっていきます。進行速度も比較的速いのではないかと言われています。スキルス癌の場合には、レントゲン検査で胃の変形などの異常が発見されて、精密検査のために胃カメラをしても粘膜にある癌の部分を発見することが困難な場合があります。レントゲン検査で「胃角部短縮」という所見がある場合には、「傷」がある可能性を考えます。「傷」は良性の場合(潰瘍)も、癌の場合もあります。

私たちの身体の中では、毎日約3000個の癌細胞ができては壊されているといわれてます。何かの原因で壊れずに発育して、目に見えるかたまりになったものを癌(癌腫)と言います。約1cm(約1g)の癌は、約1億個の癌細胞でできていて、1個の癌細胞から発育するためには、約10年かかると言われています。しかし、発育の速度は色々な原因(発癌物質やストレスなど)で促進されるようですし、個人差や癌の性質によっても様々です。治療を考える場合には、月単位で考えればよいと思います。あわてることはありません。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1998.10.29
逸見さんの手術その他について、丁寧に説明を頂いたのに、御礼のメールが遅くなり申し訳ありません。ありがとうございました。スキルスという種類の癌が恐ろしいものだということはわかりました。ところで、逸見さんの病気の発見が遅れた理由の一つに、「胃カメラしかしていなかった」とありますがそれは細胞をとって検査をしなかったということでしょうか?また、スキルスというものは、胃ガンの中でどのくらいの割合を占めているのでしょうか?それに、胃を切るには最小限にするとしてもやはり3分の2は切るのでしょうか?主人はまだ検査がすべて終わっていないので、転移があるのかそうでないのかもわかりませんが、とりあえず今日入院しました。もう、あとは主治医の先生にお任せして、一日も早い回復を祈るだけです。またメールを書くことがあるかもしれません。が、よろしくお願いします。

(答え)1998.10.30
お答えします。胃カメラのときに細胞をとって検査をする(生検といいます)のは、目で見て癌の疑いがあると思われる部分から細胞を取るわけですから、そのような疑いがなければ検査(生検)はしません。スキルス癌は、稀な癌です。胃を切るときは最小限、癌を完全に切除できる範囲の胃を取ります。3分の2とは決まっていませんが、結果的にそのような場合が多いということで、胃を全部取ることも稀ではありません。まず、すべての検査が終わってから、主治医の方から説明がありますので、その時に疑問に思うことを主治医に聴いてみることです。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1998.10.30
思いつくままの様々な質問に、丁寧にお答え下さって、本当にありがとうございました。数野先生に疑問を解決してもらうことで、少し気持ちが落ち着きました。また、疑問がでてきたらよろしくお願いします。

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[出産後に発病、胃癌の手術を受けたが癌性腹膜炎の状態、利尿剤を飲むべきか?]

(相談)1998.9.4
はじめまして、突然のアクセス失礼いたします。本日よりパソコンを使い始めた初心者です。いろいろといじっていて、あなた様のページを見つけ、思い切ってメールを送ってみることにしました。ご相談は私自身の病気のことです。私は、33歳の主婦です。12月に第二子を出産したばかりなのですが、不幸なことに4月に病気が発覚し手術、余命宣告となってしまいました。病名は、胃がん、腹膜播種とのことでした。ワンクールの抗がん剤投与後は、一縷の望みをかけて民間療法で頑張ってきました。何とか順調に日々を重ねてきたのですが、8月に入りお腹が張ってきてパンパンになってきてしまいました。主治医の先生は何もおっしゃらないのですが、病気が進行し癌性腹膜炎の状態なのではと推察しています。内心の焦りはかなりのものではありますが、現在の状況の対処に悩んでいます。と申しますのも、病院からは利尿剤を処方されたのですが、果たして飲んでよいのかということです。利尿剤を一度服用すると次はもっと早くたまるようになると聞いたので…なんとか自力で排出させようと果物をとったりいろいろ試みてもやはりうまくいきません。母は、尿が出なくて尿毒症になったらたいへんと、しきりに服用を進めます。私自身も頭では分かっているのですが、やはり利尿剤を飲んだらもう最後、みたいな思いがありなかなか踏み切れません。利尿剤服用の件も含め、今後の対処の仕方をご相談いたします。突然、並びにつたない文章、お許しください。

(答え)1998.9.4
お答えします。何事もプラス思考でいきましょう。コップに残った水を見て、「もうこれだけしかない」ではなくて、「まだ、これだけ残っている」と考える。そして「がんばれば、必ずできる」という信念で努力する。あなたの力は若さです。かなりの医学知識をお持ちのようですが、現代医学に末期癌に対する光明を見いだすことは困難です。そこは未知の世界です。しかし、言えることは身体にとって良いことをすれば、身体の方も治癒力を発揮しやすくなるということです。何かをきっかけに、驚くような治癒力を発揮できることがあります。とりあえず、恐れずに利尿剤を飲んでみたらどうでしょう。他にも方法はあります。現代医学にも、癌性腹膜炎に対する治療方法はあります(利尿剤もその一つです)。子供さんたちのためにも、自分で道を開くことです。色々な情報があると思います。納得できるものがあれば、それに賭けてみてはどうでしょう。「病は気から」と言います。迷っていても一日は一日です。感謝の気持だけで末期癌から生還した人もいます。あなた自身の方法でやってみてください。ではまたいつでもメイルください。

(相談)1998.9.8
先日は、突然のメール失礼いたしました。何分初心者なので、無事メールが送られたかもはなはだ怪しくて、しばらくパソコンに触れずに居りました。意を決意して受信してみて、早速ご返答が入り感激しております。(実は、先生へのメールが「初」だったのです!!)さて、調子に乗ってまたご質問お願いします。

第一番目の質問です。先日の利尿剤の件ですが、あの後少し服用してみました。飲んだとたん、動悸が激しくなったのですが、そういうものなのですか?また、やはりしばらく飲んでいると効かなくなってくるのでしょうか?

二番目の質問です。外科の先生にお話するのも何なのですが、実は今、外科と内科のことで悩んでおります。先日もメールに書いたのですが、現在の主治医の先生は、無口というか元々の患者じゃないのでそんなものなのか無関心!といった感じで・・(手術の執刀医は転勤してしまい,後任の先生はまだ若く、外来に出れるまで今の先生が代理という形のようです)二週間に一度病院に行っているのですが、{どうですか?}と聞かれることもなく、こちらからお願いしなければ血液検査もしてもらえない状況です。今回の腹水の件も、かなり前から私自身感じるものがあり、かなり訴えていたのですが取り合ってもらえず、実際に腹水が溜まってきてもただ利尿剤を処方するだけで今後の話もなければ何もないという感じなのです。5月に抗がん剤の投与のために入院したのですが、その直前に夜になると微熱が続き小水が出なくなったのですが、外科でいくら言っても{何だろうね〜}といわれるだけだったのですが、同じ事を近所の内科に話したところ、その場で小水を調べて腎盂炎とわかり、その場で注射をしてもらい楽になった・・また、ずっと咳が続き苦しんでいたのですが、単なる風邪と言われ続けていたのですが,さすがに腎盂炎の話をしたらやっと検査をしてくれ肺炎だと分かったと言うこともありました。(しかし、検査の結果に時間がかかり肺炎と分かる前に熱があった状態で抗がん剤の投与6がなされました。)外科とはこんなものなのでしょうか?はっきりいって大変な不信感を感じております。思い切って内科に移ったほうがよいか悩んでおります。よいアドバイスがありましたらお願いします。

(答え)1998.9.9
メイルありがとうございました。私もまだ初心者です。利尿剤は身体にたまった余分の水分を尿にして身体のそとに出す働きをします。身体は血液を腎臓で濾過して、血液の中の老廃物を水に溶けた尿のかたちで排泄します。このとき腎臓は、身体に水分が不足していれば、少ない水分で老廃物を排泄しようとして濃度の濃い尿を作り、水分が余分にあれば薄い尿で沢山の水分を尿として排泄します。利尿剤は、強制的に薄い尿を作らせて、水分を取り出そうとしますので、血液の量(水分量)が一時的に減るため、血圧が少し下がって動悸がすることもあります。しばらくすると、身体の余分の水分が血液の中に移動して、元にもどります。このようにして次第に身体の中の余分の水分を取り除く働きをします。余分の水分が減れば、尿の量も元にもどって、「しばらく飲んでいると効かなくなってくる」ということになります。このとき、血液の中の蛋白質(栄養)が少ないと、利尿剤の効き方が弱い場合があります。なるべく食べたり、飲んだりして、栄養や水分を補うようにしましょう。のどが渇けば口から水分を取ってください。点滴で直接身体(血液)に入った水分は、血液から身体に移動して逆に余分の水分となって身体にたまります。

「患者さんの命は、医者次第」という言葉があります。医者選び、病院選びが一番大切ですが、現実にはほとんど不可能です。そのために私は開業しました。患者さんにとって一番適当と思われる医者や病院を選んで紹介します。そのためには、医者や病院に関する情報をできるだけ沢山集めます。できるだけ自分自身で確認もします。近くで、いつでも診てもらえて、何でも相談できるかかりつけの医者を持つことです。専門的な医療はもちろんそれなりのところで受けなければいけません。いまの医師にはこれからも診ていただくとして、その医師にこだわらずあなたの希望をかなえてくれる医師を探すことです。医師としての実力は、経験と勉強と情熱と、それに最も大切なのは病んだ患者さんを思いやる心です。外科の医師の座右の銘として「鬼手仏心」という言葉があります。偏差値や金も儲けで医者になったような人たちには、理解できないかも知れません。人を診ずに、病気だけを診ることしかできない医者が多いと思います。これからは、患者さんの力で医師や医療を良い方向に変えていかなければいけません。「医療オンブズマン」のようなものが必要です。勇気を出して、あきらめずに、根気良く、医者を教育してください。またいつでもメイルください。

(相談)1998.10.15
始めまして。○子がいろいろご相談をさせて頂いてありがとうございます。本人は9月18日に入院しました。2,3日前から、腰の痛みと、排尿困難で苦しんでいました。利尿剤は飲みましたが期を逸したのでしょうか、一滴も出なくなり、更に食物は勿論、水も飲めなくなり頼みの綱の薬も受け付けなくなり、内科なら対応してくれるだろうと2週間おきに通院している病院にいきました。が、内科は外科からの委嘱がないと診れないとのことでしたが、そのまま帰れる状態ではなく、また、新たに外科に受け付けてもらい、待つこと4時間半ともなり我慢の限界におよび、取り敢えず入院しました。それが、良かったかどうなのか力尽き果てたように、そのまま入院となりました。検査の結果、水腎症とのことで、通院している間にどうして解らなかったのか、身内からみれば臍をかむ思いです。今は取り敢えず尿管の確保のためか、尿管に管を通うし、栄養剤、利尿剤、吐気止めの点滴をしています。また、腰の痛みにモルヒネを20ミリから今では30ミリに増量し、腹水を1日500cc取り始めて14日めになっています。本人は日に日に衰え、口をきくことも億劫のようで次ぎから次ぎへ押し寄せくる痛みの現象に耐えているのが現状です。一応、リミットの10月7日を過ぎてはおりますが、終局的は今後どんな症状を予測していればよろしいのでしょうか。本人は当初から最終的には、ターミナルケアを望み千葉の柏の癌センターを申し込んでいます。希望者多数の為、1ヶ月半待ちとのことで,無駄待ちに終わるかもしれません。現在此処でも緩和ケアの対処療法しかしていませんので其の侭、ここで終末を迎えても良いのですが、いまいち、病院に不信感を持っているので本人の希望を叶えてやりたいと願っています。どんなものでしょうか。取り止めもなく書いてきましたが、本人がメールをいれる気力がないので、母親の私が替わって送ります。慣れないので、不明瞭な点、多々あるとおもいますが、お汲み取り願います。

(答え)1998.10.15
お答えします。ご心配のことと思います。病院や医師にしてもらえることは限られていますので、あまり期待しないことです。まず十分痛みを取ってあげることが大切ですが、末期癌の場合、何が起きるか予想ができません。身体の状況によって、予防できる場合もありますが、多くの場合は起きてくることに対してその都度治療をしていくことになります(対症療法といいます)。ターミナルケアということになりますが、やはり知識と経験と熱意と心が必要です。がんセンター東病院の緩和ケア病棟に申し込んでいるとのことですので、連絡を取ってみてください。「希望者多数の為、1ヶ月半待ち」とのことですが、緩和ケア病棟の場合は、単純に順番に入院するということはありません。重症度によって決めているはずです。現在の状況をよく話してみて、とりあえず痛みだけでも取ってもらえれば、一度退院できるということもあります。できれば主治医の方から連絡を取ってもらえれば良いのですが、難しいでしょうか。ではまたいつでもメイルをください。

<参考>
国立がんセンター東病院の先生に聴いてみましたが、緩和ケア病棟(PCU)は、やはり入院待ちの人が多く、入院まで1カ月半位かかっているようです。状況はどんどん悪化しているため、予約から1カ月経っていない人は入院を諦めて頂くか、入院予約をストップするか、それとも緩和ケアの外来自体をストップするかという話しまで出ているそうです。

原因は、一般の医療機関で緩和ケアがほとんど行われていないことと、当然ながら、がんセンターと一般の医療機関の連携が取れないためです。死への準備教育とホスピス運動を通して、市民への啓蒙と一般の医師と医療機関での緩和ケアの普及を進めないかぎり、末期癌患者がホスピス(緩和ケア病棟)に殺到するという現象は続くことでしょう。

(返礼)1998.11.2
冠省 10月27日11時46分、○子が33才の生涯を終えました。余命6ヶ月の告知を受けとめ、「現代では癌は不治の病ではない、根治はムリでも共生は出来るのではないか」と病気と真正面から向き合い、可能性を追求して来ました。多数の書籍やWEBを当たり情報を得て、ML等で多くの方々のアドバイスを戴きながら、自分の病の進行を冷静に分析し、自分自身で治療方針を決め頑張って来ましたが、残念ながら病には勝てませんでした。あまりにも早い終焉に大変悔いは残ります。しかし出来る限りのことは全て挑戦したので本人も納得して逝きました。病状の推移としては水腎症で片方の腎臓が機能しなくなり、残された腎臓がストップした時点で本人も限界を悟り、ペインコントロールに完全に切り替え、家族や現場の方々に感謝とお別れの言葉を述べ、最後に子供達とのお別れが済んだ後、モルヒネの投与量の増量を要求し、意識不明に陥りその3時間後に静かに旅立ちました。最後まで精一杯頑張り、人生の仕舞い方も自身で決め立派に生きた彼女を誇りに思います。本人も皆々様には大変感謝しておりました。応援して下さった皆様へ本人に成り代わってお礼申し上げます。ありがとうございました。不一 母○○、兄○○

(返信)1998.11.3
メイルを頂きありがとうございました。あまりに早く、あまりに短い人生の終焉でした。心からご冥福をお祈り申し上げます。苦しみの連続の6ヶ月間だったと思います。現在の日本の医療には、医療の根本である病める人を思いやる心のある医療・「緩和ケア」という大きな部分が欠けています。「緩和ケア」は末期医療だけでなく、すべての医療における基本的な姿勢です。これは医療の場だけでなく、現在の日本の社会全般にあてはまるかも知れません。本当に必要なことは何かということを考える機会を日本人に与えるために、天は日本に不況をもたらしたのではないでしょうか。目先の便利さやギャンブルに金と時間を費やす生活を見直すチャンスです。子供さんたちや皆さんと共に、○子さんが残してくれたものを活かして、より良い社会、より良い日本、より良い世界を作るために、一人一人が考え、学び、行動しましょう。○子さんもきっと見守ってくれているでしょう。あらためてご冥福をお祈り申し上げます。

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[胃全摘術(胃癌)を受けリンパ節転移のため抗癌剤治療をしているが不調で不安]

(相談)1998.8.20
お忙しいところを恐縮ですが、先生にご相談したくメールさせていただきます。昨年より主人(55歳)がずっと頭痛と貧血・微熱に悩まされておりましたが、いろいろ病院を転々とした結果、2月10日都立駒込病院の内視鏡検査で胃上底部に13cm大の胃癌が発見され、貧血の改善を待って、3月3日に胃の全摘手術を受けました。幸い外科的には良好で、手術後体力は一時回復しましたが、術中に疑わしいリンパ節を検査・切除したところ約半数が陽性であったということです。リンパに転移しているということで、4月8日の退院以来、1ヶ月半に一度10日程度の入院で定期的に点滴による抗癌剤治療を受けています。それほど副作用は強くなく最初の1〜2回は順調でしたが、7月半ばの入院の際は非常に辛かったようで、夏の暑い時期に関しては、現状経口薬による抗癌剤治療に切り替えています。8月5日の外来の時には、前回とったCTの結果が知らされ、リンパの腫れもひいており、腫瘍マーカーの数値も18から4に落ちていると言われましたが。しかし、12日頃から次第にまた38度弱の微熱が出ており、咽の痛みと下痢を訴えています。食欲もなく、薬と思って食べてはいますが、体重も3キロほど減りました。駒込病院の主治医の先生に電話でご相談したところ、たぶん夏バテかやや風邪気味なのではということで、次の外来までとにかく脱水症状を起こさないように、注意してくださいと言われました。長く続く下痢と微熱は、転移等なんらかの要因があって起きているのでしょうか?本人も手術をすれば、一時期は体調が良くなるものと思っていただけに、闘病に不安を感じています。術後の体力回復は個人差が大きいとは思いますが、うちの場合、どうなのでしょうか。とても不安になっています。どうかアドバイスお願い申し上げます。

(答え)1998.8.21
お答えします。ご主人の病気について、主治医からどのように聞いておられるか、またご本人とあなたがどのように考えていらっしゃるのかが、よく分かりません。「13cm大の胃癌」ということは巨大といえる大きさです。それでも症状がほとんどなかったということは、いわゆる「スキルス癌」だったのではないでしょうか。そして、胃を全摘出し一緒に摘出したリンパ節の半数に転移があったということですから、かなりの進行癌だったようです。さらに、手術後のCT検査でリンパの腫れも大分ひいており、腫瘍マーカーの数値も18から4に落ちているということは、明かに癌が残っていて、それに対してかなり強力な化学療法(抗癌剤治療)を行っているということになります。

現在の症状については、四つのことが考えられます。まず、主治医の言われるように風邪をひいて体調をくずしたか、抗癌剤の副作用の可能性です。次に、「術後の回復の中で何回か迎えるであろう峠」の可能性です。そして、残った癌の悪化の可能性です。これらの、すべてかもしれません。主治医の診察を受けて、原因が何であり、それに対してどのような治療方法があるのか、残された時間をどのように使うべきか、色々な状況と選択肢が考えられますので、主治医によくよく聞いてみてください。とりあえずお答えしました。

(相談)1998.8.21
お忙しい中、ていねいなアドバイスをありがとうございました。主治医の先生は、本人にも私にもすべてきちんと話して治療を進めるというお考えで、病状について、故意に隠されていることはないかと思います。

癌告知があった際、極めて異例な大きさであること、何故自覚症状が出なかったかは正直言ってわからないとおっしゃいました。或いは頭痛を和らげるために、本人が日常的に服用していた鎮静剤で症状が粉飾されていたのかもしれないとのことでした、スキルス癌という診断はいっさい告げられておりません。ただし、進行癌であること、リンパに入っていることは指摘され、現状では他の臓器への転移は認められないと説明されました。この際に残っている時間については何もおっしゃいませんでしたが、10年の単位で生きることはむずかしいであろうとのことでした。現在行っている抗癌剤治療は、主治医の先生の考えでもっとも効果的であろうというもので、先日の外来では、いまこの治療が成果をあげていると思われるという所見でした。他の臓器に転移がなくても、リンパの中に癌が残っていることで悪化が進み、命をおとすということはあるのでしょうか?本人は、転移さえしなければ…という思いで辛い抗癌剤治療に耐えていますが、もともと家族の血統的に癌体質であるため、もし自分が癌にかかってどのみち助からないのなら、残った時間をなるべく幸せに過ごしたいと発病前には常々申しておりました。ただ、本当に病を得て、とにかく前向きに闘病している姿を見ると、希望をもって治療を受けている限りは、残った時間の過ごしかたという話は、たとえ長年のパートナーでも踏み込んではいけない領域のような気もします。

先生、残された時間はどのくらいあるのでしょうか?主治医の先生は、来年の春まで、抗癌剤治療を続けるとおっしゃっていますが、これでは本人にただただ辛いだけの残された時間を過ごさせることになってしまうのでしょうか?また、お手すきの折にでも、御意見賜われればと存じます。ほんとうにありがとうございました。

(答え)1998.8.22
お答えします。主治医の先生を、信頼して治療を続けてください。あなたのメイルから分かる範囲で、私の意見を書きます。「極めて異例な大きさ」の「進行癌であること」、「リンパに入っていること」、そして手術後のCTや腫瘍マーカー検査で、手術の時取り切れていないリンパ節に癌が残っていると考えられることなどから、現状では(目に見える、CTなどで分かる大きさの)他の臓器への転移は認められないとしても、すでに他の臓器に転移しているのと同じであり、目に見えない他臓器への転移はあるものと考えられます。「10年の単位で生きることはむずかしい」というのは、もし現在行っている抗癌剤治療が、主治医の先生の考えのように、奇跡的に効果的であった場合のことです。「いまこの治療が成果をあげていると思われるという所見」ですが、一般的に言って抗癌剤の効果は次第に弱くなり、副作用が目だってきます。「他の臓器に転移がなくても、リンパの中に癌が残っていることで悪化が進み、命をおとすということはあるのでしょうか?」残念ながら、その通りです。人間はみんな「もし癌にかからなくても、どのみち助からない」のです。「残った時間をなるべく幸せに過ごしたい」ということが、「いかに生きるべきか」ということで、それが「生と死を考える会」の活動目標の一つの「死への準備教育」でもあります。家庭でも、学校でも、一年に一度だけでも、「生と死を考える日」を持ちたいものです。死というものが、癌というような形で具体的になって初めて気付くことが多いようです。

私たちの会の入会申込書の一部を紹介します。『「びんご・生と死を考える会」は、「福山あすなろ会」をひきついで、だれもが生と死について、医学、宗教、哲学の広い視野から、特定の宗派、思想、主議にとらわれることなく、学び、考え、伝え、行動すると同時に、あらゆる喪失に伴う悲嘆に寄り添うことを通して、人間を、生きることの意味を探る場となることを目指しています。ある日突然、癌の宣告を受けて青くなります。愛する子供や配偶者を失って嘆き悲しみます。また、財産をなくして途方にくれます。私たちはそのような現実に直面して初めて、うろたえながら生きることの意味を考え始めるのではないでしょうか。人間の生と死が意味すること、自分自身の死や愛する人の死にどう備えるかを共に考え、生きがいを求めて共に歩もうとする市民のつどいです。』北海道には「生と死を考える会」が、札幌、苫小牧、日高などにあり、全国では43ケ所にあります。

「残された時間」は、医学的に常識的な意見とすれば、主治医の先生の言われた「来年の春まで」だと思います。ただこれは平均的な数字ですので、治療がうまくいき、本人の治そうという意志と治す力が強ければ、奇跡的ですが治る可能性もあります。常に希望を失わずに、常に前向きに生きてもらってください。家族や周囲の人で、それを支えてあげてください。色々な人の力を借りることも必要となります。「希望」は「治る」ことだけではありません。その時その時に、持つことのできる希望です。どんな小さな希望でも、かなえられれば大きな喜びとなり、生きがいとなります。時間は取り返せません。大切にしてください。そばにいて、話を聴いてあげることが基本です。何かをしてあげようと考えると何もできなくなります。奇跡を祈ります。

(返礼)1998.8.22
温かいアドバイス、ありがとうございました。昨日の外来で、服用の抗癌剤は一時中止し、9月1日よりまた入院して、点滴による抗癌剤治療を行うこととなりました。約10日間の予定です。本人もそれで納得しており、それまでに体力を回復するぞと言っております。9月19日には、本人の大好きなTOTO国際陸上の良いチケットがとれているので、秋の一日、スポーツ観戦ができるのを励みに頑張るつもりのようです。先生のおっしゃるように、確かに健康な私達も「死」というものに向かって、日々、何かを(時間を?体力を?)失っていくわけですが、失うものの数を数えながら生きていくほど、悲しく寂しい人生はありません。残っているもの、いまあるものを愛おしく思いながら、日常のひとつひとつのことの中に、喜びを見つけながら、ささやかな希望をひとつひとつ持ち、実現させながら、これから楽しく且つ慎重に生きてみようと思います。また、気持ちがぐらつくことがあったら、お便りさせていただきます。本当にありがとうございました。

(答え)1998.8.23
7月26日に福山でコロムビア・ライトさんに「笑いとガン」という講演をしていただきました。大変参考になったことがありますので紹介します。『何事もプラス思考で、コップに残った水を見て、「もうこれだけしかない」ではなくて、「まだ、これだけ残っている」と考える。背筋をのばし、前方を見て、笑いとユーモアを忘れずに!』お元気で。

(相談)1998.12.4
8月頃、胃癌手術後の主人の件で、先生の温かいアドバイスをいただいた中○です。その後、一時のひどい不調は緩和され、抗癌剤による腎臓障害も比較的軽症で1ヶ月半に1度の治療を順調に受けてきました。食欲もあり、現状ある程度生活を楽しんではいるのですが、首のリンパが腫れて痛い時があるので、この12月1日からの入院治療で検査を受けたところ、残念ですが、首のリンパの部分に癌が浸潤しており、医学的標準からいうと、最大6ヶ月位しか時間は残っていないと言われました。主治医の先生も誠意をもって遇してくださっていますが、今後抗癌剤治療を続けるかどうかは本人がどう生きたいか次第だとのことです。本人はパニックに陥っているわけではなく、何とか冷静に対応しよう、前向きに考えようとしています。問題は、抗癌剤治療を受け、その副作用で不自由な思いをしている時間をもっと楽しいこと、心に残ることに使ったほうがいいのかどうかという点です。免疫力低下によって体力がいたずらに落ちてしまうことも心配です。主治医の先生も、抗癌剤が効果があるか否かは疑問、ただあの時治療を続けていればもっと永く生きられたかなあという後悔が残らないように判断したほうがいいとおっしゃっています。痛みが出た時や末期になった際のホスピスも紹介しますよと言ってくださいます。ただ、我々としては、なるべくごく普通の生活をできるだけ楽しみ、いつ「その時」が来ても悔しい思いをしないように時間を使っていきたいと願うのみです。私も彼もあきらめてはおらず、奥深いところで覚悟を固めた上で、余命告知を受けた直後も笑って話をするだけの気概はもっております。

先生、免疫療法・体力温存療法などについてアドバイスをいただけないでしょうか?できれば東京都内・近郊でアクセスできるところがあればと思います。主治医の先生は非常にオープンな方で、やってみたい治療があれば、何でも相談してください、カルテも出しますと言ってくださいます。何とか主治医の先生とのタッグで1日でも永く人間的に生きられる日々をのばしたいのです。お忙しいところ恐縮ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(答え)1998.12.4
こんにちは。私の意見としては「抗癌剤治療を受け、その副作用で不自由な思いをしている時間をもっと楽しいこと、心に残ることに使ったほうがいい」と思います。「抗癌剤が効果があるか否かは疑問」ということは、効果はほとんど無いか、あっても一時的ということです。「ただあの時治療を続けていればもっと永く生きられたかなあという後悔が残らないよう」という段階はすでに過ぎているように思いますし、きっともう後悔はされないと思います。「痛みが出た時や末期になった際」には別にホスピスでなくても今の先生に治療して頂けば、自宅で過ごすこともできるでしょうし、もしご希望ならホスピスを紹介してもらわれるとよいでしょう。ただ、何のために、何の必要があって、ホスピスへ行くのかということを考えてからの方が良いでしょう。『なるべくごく普通の生活をできるだけ楽しみ、いつ「その時」が来ても悔しい思いをしないように時間を使っていきたいと願う、あきらめてはおらず、奥深いところで覚悟を固めた上で、余命告知を受けた直後も笑って話をするだけの気概はもっております』すばらしい生き方だと思います。

医師としてこれが良いですとおすすめできるような治療方法はありません。しかし「なるべくごく普通の生活をできるだけ楽しむ」ためには、通院でできる免疫療法が良いでしょう。強いて言えば「横浜サトウクリニック」で行っているBRP療法(佐藤療法)でしょうか。ある程度の科学的な裏付けもありますし、治療費も不当に高いものではないと思います。この治療には保険が効きませんので、全額自己負担になります。電話予約制ですので問い合わせてみて(受診してみて)、納得できれば治療を受けてみてはいかがでしょう。時間的にも、体力的にも負担は少ないと思います。電話は045-641-9650です。どのような治療を受けるとしても、最も大切なことは、「主治医の先生とのタッグで1日でも永く人間的に生きられる日々をのばす」ことです。楽しい想い出を沢山作ってあげてください。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.1.26
寒暖が激しい不規則な気候ですが、お元気で御活躍でしょうか?何度もメールで先生に温かいアドバイスをいただいている中野です。昨年末、主人が余命告知を受けた際には、いろいろと親身な助言をいただき、ほんとうにありがとうございました。可能性があるかもしれないことなら、何でもやってみようということで、さっそく1月7日に佐藤クリニックで免疫療法を受けてみました。幸い副作用等はなかったのですが、免疫療法が効果があるか否か判断するには、最低でも3ヶ月、通常は6ヶ月経過を見ないと何とも言えないとのことで、とにかく6ヶ月は頑張って生きなきゃね、とある意味で本人ははりきっています。先生、新しい治療を受けるというのは、病人にとって素晴らしい希望なのですね。私は、その治療が効果があるかどうかということよりも、生きようとする希望を与えてくれるということのほうに、ありがたさと魅力を感じます。ところで、治療費のことなのですが、初回は血液検査を含めて約20万円でした。私自身は別段高いとも思いませんが、主人は血液検査が約9万円ということに疑問を感じているようなのです。本人は家族の負担を考えてのことなのですが、数野先生に、他でもう少し低コストのBRP治療が受けられないか、伺ってみてくれと申します。2月3日に、2回目の治療に伺うのですが、その際にはたぶんレントゲンとCTがあるので、その検査代金も気にしているのだと思います。私自身は、治療費については負担にも何も思っていませんが、本人がコスト面で疑問を持っていると、お医者様との信頼関係という意味でもマイナスがあるかと思い、はなはだ恐縮ではございますが、あえて筆をとりました。理詰めの主人のことですから、検査費9万円が妥当なものであることさえ納得できればいいのだと思います。決して佐藤先生や治療方法に不満があるわけではございません。そのあたりのことをお教え願えると幸いです。それと、もうひとつお願いがあります。数野先生、東京近隣で末期癌に対するペインクリニックをどこか御紹介いただけないでしょうか。現状、首のリンパに入った部分が痛く、最近は肝臓のあたりと腹部の痛みを訴えます。駒込病院の主治医の先生にもいろいろ御相談しましたが、鎮痛剤数種(最初はバファリン、現在はロキソニンと痛みがひどい時はボルタリンの座薬)を処方していただいてますが、どうも痛みがとれないようです。これは何ともならないのでしょうか?もっとひどい痛みが出てきたら、もうモルヒネしかないのでしょうが、そこに至るまでに、何か手の打ちようがあればと思います。とは言うものの、本人は極力生活を楽しむようにしていて、私と一緒に出かけたり、友人を招いて御飯を一緒にしたりと、残された時間を有効には使っています。私としては、できるだけ普通の生活を楽しませ、来るべき時に備えて、本人の「痛い」という訴えを聴いていただけるところを確保しておきたいのです。主治医の先生はとても良い先生ですが、なにぶん現役の外科医としてお忙しく、いわゆる末期癌患者の「痛い」にきめ細かく対応していただくことは叶わないのです。主人を見ていて思うのですが、「痛い」への対応は多分に医学的な気休めで良いのです。理詰めの主人は精神的なアドバイスにはある種の抵抗を示しますが、医学的なアドバイスには、何にでもチャレンジしてみたいと思っております。とても勝手なお願いで申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い申し上げます。寒さ厳しい折、くれぐれも御自愛くださいませ。

(答え)1999.1.26
お答えします。病気に対する治療の効果の半分は気持の問題です。BRP療法が、生きがいになっているとのこと、大変良かったと思います。横浜サトウクリニックでは、健康保険が使えませんので、すべて実費で支払うことになりますので、費用が高額となります。BRP療法が、保険で認められた治療ではないので、そのようになっています。それから、横浜サトウクリニックではBRP療法に関する研究もしていますし、血液検査は免疫関係の特殊な検査を行いますので、どうしても費用が高くなります。つまり研究費と特殊検査の費用が、治療費を高くしているということだと思います。もしどうしても治療費を節約しようと思われるなら、BRP療法の協力病院に紹介してもらう方法もあると思います。

末期癌に対する疼痛緩和療法は、ホスピスや緩和ケア施設の医師が専門です。インターネットで検索してみてください。癌の疼痛は、積極的にモルヒネを使います。「もうモルヒネしかない」ではなくて、消炎鎮痛剤で効果がないような場合には、「まずモルヒネで」治療します。見違えるように、楽になります。生活を楽しむためには、なおさらモルヒネが必要です。ではまたいつでもメイルをください。

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[転移性卵巣癌(クルケンベルグ腫瘍)で発見された胃癌]

(相談)1998.8.3
前略 卵巣癌についてお聞きします。先日、私の妻(39歳)が卵巣の摘出手術をうけました。その時の先生の話では良性の腫瘍で問題ないとのことでしたが細胞検査の結果が悪性と言われました。また、卵巣癌の場合は原発が胃にあるケースが多いといわれ再検を受けた結果、胃癌と言われました。発見が遅れた理由は胃の細胞の内面にあるので内視鏡でもわかりにくいとのことでした。ようするるに、胃から卵巣に転移してしまったようです。先生の話では胃を手術する意味があまりないと言われました。全身に転移している可能性が高いためです。そこで抗癌剤による治療を進められた分けですが、どのようなもので効果はあるのでしょうか。以上、宜しくお願いします。

(答え)1998.8.9
お答えします。昨日まで、オーストラリアへホスピス・緩和ケアの研修に行っていて返事が大変遅くなりました。クルケンベルグ腫瘍(転移)として有名なものです。胃の小さな癌からの転移で、印環細胞癌の場合が多いようです。胃癌が胃の壁の外にまで発育して、癌細胞がお腹のなかに散らばり、癌細胞が卵巣にくっついて発育したものです。血液の中に入った癌細胞が、血液の流れに乗って、卵巣に転移することもあります。癌の治療は、手術と化学療法(抗癌剤治療)と放射線療法を組み合わせて行います。しかし、このような治療だけで癌が治るのではありません。早い時期に手術をしても治らない人もあれば、手遅れと言われても手術して治る人もいます。手術や化学療法や放射線療法で治療をしても、最終的に全身に残った目に見えない癌細胞は、自分の力(治癒力や免疫力)で治しているのです。治癒力や免疫力を弱めずに、手術や化学療法や放射線療法で癌細胞をできるだけ少なくすることが、病院でする癌治療です。胃癌の状況がわかりませんが、胃癌を手術で取り除くことも場合によっては、考えられる治療の一つだと思います。本人と家族がよく相談して、主治医と納得がいくまで話し合うことです。

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