[胃癌に関すること]

[胃の印環細胞癌(ステージ2、リンパ節転移なし、奨膜浸潤あり、根治度B)術後の化学療法は?]
[胃癌(印環細胞癌)で胃の2/3とリンパ節と胆嚢を取る手術を受けたが色々と心配]
[早期胃癌が発見され全摘の可能性もあると言われたが合併症が心配で簡単な手術を受けたい]
[早期胃癌で噴門側胃切除をすると言われたが、未分化癌の意味と糖尿病の影響を知りたい]
[胃癌で手術を受けステージ1bで早期癌と言われたが、進行癌では?]
[幽門狭窄症で胃全摘術を受けて6年以上になるが癌だったか?]
[胃の上部に悪性のものがあるため、胃のすべてを摘出する必要があると言われた]

[癌の手術(胃癌)はどんな手術か]

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[胃の印環細胞癌(ステージ2、リンパ節転移なし、奨膜浸潤あり、根治度B)術後の化学療法は?]

(相談)2000.7.23
前略 突然のE-mail、失礼致します。「胃がん」で検索していたところ、貴ホームページを見つけ、興味深く拝見させていただきました。早速ですが、父の胃がん治療法について教えて頂きたいことがあり、メールを送らせていただきました。

父(64歳)が6/1に胃癌(確定診断は印環細胞癌、ステージ2、リンパ節転移なし、奨膜浸潤あり、根治度B)と診断され、胃亜全摘術を受け6/26に退院、現在2週間に一度外来通院しながら自宅療養しております。退院後、「あまり効果は期待できないが、何もしないよりは・・・」ということで、フトラフールE(300mg/0.6g)顆粒を1日3回、食後服用しております。他に酸化マグネシウム0.5gを便通コントロールのため、併せて服用しております。私は大学時代薬学を専攻していたのですが、薬理学の講義で「癌の治療は基本的に多剤併用療法であり、いくつかの種類の抗がん剤を組み合せて使う」と教わりました。今回、父の事もあって改めて学生時代のノートを見直して見ると、「胃癌治療法:シスプラチン+5-FU、シスプラチン+MTX」等の組み合わせが書いてありました。また、「消化器系の癌には、抗悪性腫瘍薬はほとんど効果はない」とも書いてありました。 

 また、私なりにいろいろ胃癌の治療法についてインターネットで調べてみた結果、やはり胃癌の治療法はいくつかの抗悪性腫瘍薬を組み合せるのが主流のように感じられました。ということは、未だフトラフールE(これは確か、テガフールの腸溶性製剤ですよね?)しか処方されていない父の治療法は、主流の方法から外れていると思うのですが、実際のところはどうなのでしょうか?それとも現在では、1種類の抗悪性腫瘍薬を使うのが普通なのでしょうか?(私のノートの内容が古いだけ・・・ですか?)また、先日ある医療系の方々が購読する新聞(確かMedical Tribuneという誌名だったと思います)のコピーを友人から手に入れ、そこには「術後化学療法は組織型によって治療戦略が異なり、低分化型癌やスキルス癌ではMTX/5-FU少量交代療法を行う」という記事を見かけたのですが、父の場合、この治療法は適応にならないのでしょうか?。

個人的には、1種類の抗悪性腫瘍薬を長々と服用すると(最低5年間は服用することになる、と説明を受けました)、癌細胞が薬に対して耐性獲得をしてしまいそうで、非常に不安に思っております。「そんなことは主治医に聞けばいいだろう!」とお思いかも知れませんが、父の主治医は忙しく(どこの病院でも、お医者様は忙しいですよね)、なかなかアポも取れない状態なのです。

最後に、「根治度」について伺います。某書店で立ち読みしてきたのですが、「胃癌取扱い規約」によると、「根治度Aは癌細胞がすべて取りきれた状態」、「根治度Cは明らかに癌細胞が残っている場合」、「根治度Bは、根治度A、C以外」(なんて曖昧な表現なんでしょう・・・)とありました。これを私なりに解釈すると、「根治度Bとは体内に癌細胞が、目では見えないけれど残っている状態」ということになると思うのですが、私の解釈は正しいのでしょうか?はじめてメールを差し上げるのにこんなに長々と書いてしまい、大変申し訳ございません(ずうずうしいと思われるのは承知しております)。お忙しいと思いますが、どうかよろしくお願い申し上げます。

(答え)2000.7.24
お答えします。大変ご心配のことと思います。術前、術後の化学療法は、いまだに研究段階です。一定の方法はなく、医師や病院によって違っていると思います。しかし、この場合の化学療法は、手術と組み合わせて行う注射(点滴)で、退院後に漫然と「飲む」ようなものではないと思います。

>「根治度Bは、根治度A、C以外」(なんて曖昧な表現なんでしょう・・・)とありました。これを私なりに解釈すると、「根治度Bとは体内に癌細胞が、目では見えないけれど残っている状態」ということになると思うのですが、私の解釈は正しいのでしょうか?

その通りです。目に見える癌は手術で切り取ったが、目に見えない癌細胞が残っている可能性がある場合です。絶対治癒切除にたいして、相対治癒切除とも言われます。

癌の治療は病院での治療が成功して、元気で退院する日がスタートラインです。手術だけで治る人もいれば治らない人もいます。治るかどうかは、これからの養生次第で、癌も風邪と同じように自分で治す病気です。癌を治す方法は、自然治癒力(自己治癒力)を最大限に発揮するような生活をする以外にありません。身体に良くないことはやめて、身体に良いことをなるべくすることです。私も抗癌剤で癌が治るとは思いませんし、身体の免疫力を低下させることは明かです。もし本当に効くものなら、担当医は強く服用をすすめると思います。自分の命ですので最終的には、今後の治療方法はご本人の意志で決めてもらってください。父上の今の元気を維持してもらうことが大切だと思います。自分で治す、必ず治るという気持ちが大切です。明るく、前向きに生きてもらってください。参考までに抗癌剤に関する新聞記事を紹介しておきます。

効かない薬に年間1000億円、ある患者の告発
がん治療の情報戦(10) 平岩正樹、中国新聞 「くらし」欄 2000年3月12日

週刊誌の連載でも書いたが、奇妙な薬が日本のがん医療の現場で大量に使われている。一年前、ある医学誌に日本人の投書が載った。その雑誌の名は「ランセット」、世界で最も多くの医者に読まれている医学誌の一つだ。投書を書いた人の名はアオキエイコさん、医者ではない。患者なのだ。医者以外の文章が掲載されることは異例だ。しかも日本人である。アオキさんは、UFTという日本産の「抗癌(がん)剤」が日本で大量に使われ続けていることを告発している。きっと、「ランセットに投書が載れば、日本人も目を覚ますだろう」と思ったからに違いない。

UFTは1984年3月に発売されてから16年間も使われ続けているが、効かない。こんな薬を使うのはもちろん日本だけだ(少数の国でロイコボリンと併用して使われている)。UFTの仲間にはフルツロン、ミフロールなどがある。なぜこんなことが行われているのか。NHKの「クローズアップ現代」に出て私も告発したが状況は少しも変わらない。この奇妙な風習も実は、日本人の要望にこたえたものだ。

日本人は、本人に癌と気づかれないことを「命」よりも大切にする。それでも、何か「治療のふり」はしないといけない。効果はないが副作用もないUFTは「ごまかしの免罪符」として好都合なのである。UFTなら癌と気づかれる心配は少ない。その演技の薬代に日本人は年間一千億円を使っている。本人のいないところで医者は家族にそっと話す。「具合が悪くなったら病院に連れて来てください。それまでは本人の好きなようにさせてあげてください」「具合が悪い」とは死ぬ時のことだ。こんなホラーのようなヒソヒソ話が日本中の病院で行われている。

この世に治療法がないのなら、あきらめるしかない。しかし、治療法があるのに日本ではそれができない。名古屋の、すい臓癌の患者が米国テキサス大学のMDアンダーソン病院の外国人専用外来を受診しようと私のところに相談に来た。米国食品医薬品局(FDA)が承認したジェムシタビンという新しい抗癌剤を使ってほしいと希望していた。「その薬なら日本中のどこの病院にもありますよ」と私が言った時の、その人の驚きは大変なものだった。名古屋でも束京でも、どこの大病院でも「ない」と言われていたのだから。しかし、「それでも日本の医者はうそをついていない」と言えば読者はもっと混乱するだろう。日本のがん医療は知れば知るほど不可解なのだ。私はその種明かしをしなければならない。

(返礼)2000.7.24
数野 博 先生、昨日は突然のメール、大変失礼しました。それにも関わらず、こんな早く返事を頂き、ありがとうございます。父の治療法については、次の外来の時にもう一度、主治医と相談してみたいと思います。先程、フトラフールEの添付文書をよくよく読んでみたのですが、胃癌に対しての有効率はたったの20%、副作用のことを考えると、父には服用させたくないと考えています。(幸いも、現在のところ副作用らしき徴候は見とめられていません)ただ、父は現在服用しているものに対して絶対的な信頼を持っており、このまま服用中止させるにはいささか問題がありそうなので、この点についても主治医と相談してみるつもりです。とりとめのない文章になってしまいましたが、取り急ぎお礼まで。本当にありがとうございました。

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[胃癌(印環細胞癌)で胃の2/3とリンパ節と胆嚢を取る手術を受けたが色々と心配]

(相談)2000.6.11
こんにちは。初めてメールします。よろしくお願いします。私の夫のことで、ご相談します。夫は40歳、会社員です。平成12年の3月末ごろより、食事後に胃が重いような症状を訴え、ちょうど4月に人間ドックでしたので、胃カメラを飲んだところ、癌の可能性ありということで切除を勧められました。にわかには信じられず、セカンドオピニオンと思い立って、近くの大学病院を受診しました。結果はやはり、胃がんということで、5月8日に入院しました。内科で2週間ほど、色々な検査を受け、外科に移り、6月8日に胃を3分の2切除する手術を受けました。胃がんの大きさは1.4センチ、深さは筋層に達していました。肝臓やリンパ節への明らかな転移はなく、念のため、リンパ節の2群と、3群の一部を切除したとの説明を受けました。また、印環細胞癌との検査結果も聞きました。

質問は
1.「根治手術は成功した」との説明を受けましたが、それは「目に見えるものは切除しました。」という意味で、「完全に治りました」という意味ではないのですか。

2.印環細胞癌とは、きわめて悪性のものだとHPで知りましたが、術前の説明では「顔つきは悪いが根治は可能」とのことでした。HPなどの情報から見ると、医師の説明は納得いかないのですが、医師は何かを隠しているのでしょうか。

3.外科手術の際、胆のうも全摘しました。国立がんセンターのHPにも、胃がんで胆のう全摘など書いてなかったので、大変驚きました。医師は「当院では胃がんの患者はすべて胆のうを切除している」というのですが、不思議です。胃がんで、胆のう切除などということがあるのですか。

4.印環細胞癌には術前の化学療法がよく効くとHPにはあったのですが、夫は何の治療も受けずに外科手術を受けました。これからは抗がん剤の治療を2年ほどやっていくそうです。夫の主治医の治療方針は妥当ですか。

5.入院から手術まで、1ヶ月もありました。胃がんの手術とはそれほど待たされるものですか。それとも、見込みがないので待たされたのでしょうか。

本来は主治医によく聞けばいいのでしょうが、主治医はいつも忙しそうでなかなか言い出せません。誠意はある人のように見えるのですが、不安です。術前に2回ほど説明を受けたのですが、常に夫がそばにおり、「本当はもっと悪いんじゃないの」とはなかなか聞けません。情報も錯綜し、混乱気味です。今後始まる抗がん剤治療も不安です。良い参考文献等あれば教えてください。

(答え)2000.6.12
お答えします。大変ご心配のことと思います。

1.その通りです。癌は5年間、再発や転移が起きなければ、治ったということになります。

2.悪性度が高くても、治る可能性はあるわけです。恐らく病期が比較的早い時期の癌だったということではないでしょうか。正確には説明した医師に聴いてみてください。

3.手術の時のリンパ節郭清や、術後の化学療法(抗癌剤治療)による合併症の予防のために、一定の進行度以上の胃癌の手術の時に胆嚢を取ることにしている外科医は多いと思います。おそらく手術の前に説明があったと思います。

4.日本では医師によって、また病院によって、同じ病気でも治療方法が異なることが多く、一定の治療方法というものがなかったので、最近になってマニュアル的な簡単なガイドラインが作られたという段階です。それによりますと化学療法を行うのは切除不能の場合だけで、研究目的以外には化学療法は行わないことになっています。

5.一般的には、入院までに手術のための検査をすませますので、入院から手術までは一週間以内の病院が多いと思います。

病院での治療は三大療法(手術、化学療法、放射線療法)に限られています。病院の医師は、それ以外に癌を治療する方法を知らないのです。癌も自分で作った病気であり、自分で治す病気です。病院での治療で治ったように錯覚しますが、結局は自分の治癒力で治しているのです。病院での治療は、癌を治りやすくするための治療です。治療を受けて退院する日が、癌治療のスタートラインなのです。自分が自分の主治医のつもりで、自分の病気については主治医以上に知識をつけなければいけません。一人の人間の生き方の問題です。家族や医師は、それを支える立場です。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)2000.6.12
早速にメールをいただき、ありがとうございました。数野先生から直接メールをいただけるなんて感激です。このことがどんなに私や、日本中の患者やその家族を力づけるか、先生はご存知ですか。先生は闇に指す、一筋の光です。もちろん、先生を神格化し、他力本願的な生き方をしていくという意味ではありません。最善を尽くしていくつもりですが、ことの重大性におびえ、時にはくじけそうになります。ましてや、専門性の高い医療のこと、時には不安と寂しさで泣きたくなります。でも、がんばります。また、教えてください。本当にありがとうございました。

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[早期胃癌が発見され全摘の可能性もあると言われたが合併症が心配で簡単な手術を受けたい]

(相談)1999.10.16
はじめまして。42歳の独身男性です。まず、このようなホームページを開設されましたことに感謝と敬意を表します。空腹痛により受診したところ、1999年10月7日に数カ所の胃潰瘍とともに胃体部に一個の早期ガン(潰瘍を伴う)(進行ガンの可能性も少しある)が発見され胃幽門側3分の2切除手術(開腹後の状況によっては全摘の可能性も有り)を薦められました。手術後はガンの発生は遠退きますが、食生活には不便をきたし、胆石、腸閉塞など新しい病気を3つか4つ抱え込むことになります。また、胃全摘の場合には死亡率1%と言う話もあり、そうでなくともさまざまな合併症に苦しむこともあります。このように考えますと、私が臆病者なのかもしれませんが、現在の健康状態と比較して、どうしても根治手術の決心をすることが出来ません。たとえ、再発の可能性が残ったとしても、簡単な部分切除手術ではいけないのでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。

(答え)1999.10.16
お答えします。
>たとえ、再発の可能性が残ったとしても、簡単な部分切除手術ではいけないのでしょうか。

そのような選択もできると思いますので、担当医とよく話し合ってください。癌も自分で治す病気です。病院での治療(手術と化学療法)は、癌を治りやすくしますが、それだけでは治りません。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1999.10.16
数野 博 先生、私に考える時間の少ないことをお察し頂き、早急にお返事を下さいまして本当にありがとうございます。現在の病状と手術後の生活を比較し、具体的な手術方法、転移の危険度も含めて担当の医師に相談いたします。またメイルさせていただきます。

(相談)1999.10.27
数野 博 先生、本当にお世話になりありがとうございます。10月16日に、根治手術の決心がつかなくて相談させていただいた42歳の男性です。その時の病院では深達度については不明とのことでした。しかし、私としてはどうしても超音波内視鏡による検査をして欲しくて転院しました。以前の病院では、病巣の位置は胃のほぼ中央で低分化型で浸潤タイプ(潰瘍あり)と言われました。今回の病院では、場所は胃のほぼ中央ですが、分化型mガン(潰瘍あり)(深達度は超音波内視鏡による)と診断されました。担当の医師の話では「生検の場所はまったく同じでないから結果は異なる」とのことでした。正直な所、私も転院したばかりで担当の医師にこれ以上聞けませんでした。分化型mガンでしたら部分切除もかなり可能性があるように思いますが、病巣が2つあると考えた方が良いのでしょうか?数野先生にとりましては誠にご迷惑な質問とは思いますがよろしくお願いいたします。

(答え)1999.10.27
お答えします。病巣が2つあるのかどうかはわかりませんが、一つだけのように思います。問題は、治療が内視鏡的(胃カメラでの)切除でできるのか、できないのかということだと思います。内視鏡的切除が可能な場合の条件が決められていますので、その条件にあてはまらなければ、やはり手術を受けることになります。いずれにしても早期の癌だと思いますので、癌の部分さえ取ってしまえば治るわけです。手術の方法も一定の方式がありますが、最近は縮小手術といって、なるべく少ない部分を取るようにして小さい手術をするようになりつつあります。いずれにしても治療さえ受ければ大丈夫だと思います。またいつでもメイルをください。

(相談)1999.10.29
本当にお世話になります。何度も質問をさせていただき申し訳ありませんがどうぞよろしくお願いいたします。内視鏡検査の結果、目視で病巣が確認でき(500円玉位)、生検で分化型、超音波内視鏡でmガン、気になる要素として以前の病院でほぼ同じ場所から低分化型の細胞が検出された43歳の男性です。そして、バリウムの検査を受けたところ、面積が名刺位の病巣があると指摘されました。形としては名刺の隅に500円玉を置いた感じです。残りの「名刺」の部分は内視鏡検査の時には問題は指摘されず、生検も行っていません。内視鏡で目視出来なくてバリウムで大きな病巣が発見されることがあるのでしょうか?担当の医師は病巣と判断している様で、胃全摘になりそうです。ここで再度の内視鏡検査とバリウム検査をお願いして良いものでしょうか?本来は、私が担当の医師にお聞きすべきことなのですが、何か診断に口を挟むようで出来ません。数野先生、どうぞよろしくお願いいたします。(何度も申し訳ありません)

(答え)1999.10.29
お答えします。癌は進行しているようですので、早目にまず手術を受けられることおすすめします。手術をすることが治すことの第一歩です。癌は進行度によって手術の方法が決まっていますので、治る可能性のある手術を受けることが大切だと思います。進行癌として手術を受けて、もし早期癌だったら幸運だったと思ったほうが良いと思います。すべてを完全に診断することは不可能だと思います。癌であるという事実があるわけで、すでに名刺大にまで大きくなっているのですから、内視鏡手術は困難だと思います。あとは、あなたの癌を治すために必要な大きさの手術をすることになります。担当医とよく相談してみてください。ではまたいつでもメイルをください。

(経過)1999.12.17
数野 博 先生、胃癌の診断を受けて以来、今回で5度目のメイルになリます。お忙しい中、いつも真摯なご返答を頂き本当に有難うございます。私(43歳の男性です)は、11月5日に入院して8日に手術を受け、12月15日に退院致しまた。手術は幽門側3分の2切除となり、残胃に腸で作ったパウチを取りつけてもらいました。術後の病理検査で、病巣は2.7cm×4cm(sm)、この病巣から噴門側3cmの所に0.5cm×0.5cm(m)(切断面はここから更に3cm噴門側です)の早期癌で、リンパ節への転移もありませんでした。回復も順調で、入院中、発熱は37.5度が一度だけでした。どなたの場合でもそうでしょうが、癌であるという診断は突然降りかかって来ました。担当の医師からは説明がありましたが、それを信じながらも、何かもう少し違う方法が無いものかと考えてしまいます。このような中で数野先生のホームページに辿り着きました。皆様の例を参考にさせていただき、さらに数野先生に直接ご返答頂けるのがとても有りがたかったです。そして十分納得して手術に臨むことが出来ました。今後は、癌が出やすい体質だと考えて十分精進致します。本当に有難うございました。数野先生のご健康とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

(返事)1999.12.18
メイルありがとうございました。無事に手術が終り、退院されたとのこと安心いたしました。幸運にも早期癌だったようですので、ベストの状態でスタートラインに着けたわけです。これからが本当の治療です。癌は自分で作ったものですから、手術の前と同じことをしていたのでは、きっとまたできると思います。心の持ち方と生活習慣の改善が大切です。人生最大の危機を乗り越えることができれば、人間的にも大きく成長されることと思います。生と死、人は何のために生きるのかなどについて、考える機会を与えられたと思ってください。あなたが幸福になれば、あなたのまわりの人たちも幸福になります。自分一人だけの幸福はありえません。ではお元気で。

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[早期胃癌で噴門側胃切除をすると言われたが、未分化癌の意味と糖尿病の影響を知りたい]

(相談)1999.10.2
こんにちは,ドクターちゃびん様,現在、胃がんで入院中であり,来週の水曜日に手術を受ける予定です。私は現在30歳の男性で独身です。冗談半分で受けた胃検診がきっかけでガンが発見されました。病巣は胃の上のほうにあり,未分化の早期ガンと言われました。外科の医師からは、私の年齢と今後の人生を考えなるだけ胃を温存すべく、つぎのような術法を考えてくれました。胃の上側3分の2を切除,ここに小腸を切り取ってきて代用胃を作る,これにより残胃の検査が容易になるとともに,胃の大きさは小さくなるものの,幽門と胃の機能が残る。私は現在私がかかっている医師たちを信頼しておりますが,このような手術では、単純に考えて縫う部分が多くなるため,縫合不全が起きるのではないかとか、術後の生活もちょっとした衝撃で縫い目が破れてしまうのではないか,などと心配しております。さて、これらを踏まえた上で次のような疑問があります。
1 未分化のガンとは何なのでしょうか?分化しているものとの違いはあるのでしょうか?
2 胃の噴門を失うとどんなことになるのでしょうか?
3 内臓というのは簡単にくっつくのでしょうか?
  術後に強い衝撃を与えるとその部分が外れるなんてことがあるのでしょうか?
  (#スノボで転んだりしてその部分が裂けてしまうとか)
4 私は糖尿病でもあるらしいのですが,
  糖尿の人は傷が治りにくいと説明されました,なぜなのでしょうか?
本当はかかりつけの医師に聞けば一番良いのでしょうが,いつも忙しそうにしている医師を捕まえて聞くことになぜか抵抗があります。ドクターちゃびん様もご多忙とは思いますが,上記の質問にご回答いただけましたら幸いと存じます。よろしくお願いします。

(答え)1999.10.3
お答えします。大変ご心配のことと思います。「胃の上のほうにあり,未分化の早期ガン」「なるだけ胃を温存すべく」「胃の上側3分の2を切除,ここに小腸を切り取ってきて代用胃を作る,これにより残胃の検査が容易になるとともに,胃の大きさは小さくなるものの,幽門と胃の機能が残る」

この場合、治療(手術)方法の選択で運命が決まりますので、担当医の説明をよく聴いて、納得してから、すすめられた治療をうけることです。

まず、早期癌とのことですが、最近ほとんどの早期癌は内視鏡的(胃カメラで)に切除します。それが出来ない場合に手術します。たとえば癌の場所が内視鏡的切除が難しいとか、超音波内視鏡検査で癌の深達度が深い(癌が粘膜を越えて深く拡がっている)とかの理由です。

この手術をする場合、最も問題となるのは噴門の機能です。噴門の機能を代行できるような手術をすることが最も大切です。幽門と胃の機能は二の次です。噴門側胃切除術(近位胃切除術)といって、今でも色々な手術方法が試されています。手術後のことを考えて、胃全摘にする医師も多いくらいです。今までに、その病院でどれくらいの人が同じ手術を受けて、結果がどうだったか聴いてみて下さい。できれば、その手術を受けた人にあって、調子を聴くのが一番良いと思います。

>1 未分化のガンとは何なのでしょうか?分化しているものとの違いはあるのでしょうか?

細胞は未分化な細胞から分化して、それぞれ特殊な働きをする成熟した臓器細胞になります。胃の場合は胃粘膜の腺管構造を造る腺細胞になります。未分化な細胞ほど、細胞分裂も盛んで、発育も早いということになり、癌細胞で言えば「悪性度が高い」ということになります。一般的な胃癌は分化した腺癌です。

>2 胃の噴門を失うとどんなことになるのでしょうか?

噴門の機能は、胃の入り口の関所の役目です。普段は閉じていて、食べたものが食道から胃へ入るときにだけ開きます。胃にものが入ると入ったものが食道へもどってこないように閉じた状態になります。噴門の機能が失われると、胃に入ったものが食道へ逆流してきて、逆流性食道炎を起こして、大変つらい「むねやけ」の症状が出ます。噴門側胃切除術で最も問題となる点です。

>3 内臓というのは簡単にくっつくのでしょうか?

もちろん簡単に着くわけではなく、うまく着くように手術をするわけですが、いったん着いてしまえば、普通の日常生活で問題となることはありません。内蔵破裂をを起こすほどの強い衝撃を与えれば、裂けることがあるでしょうが、手術をしていなくても同じことです。

>4 私は糖尿病でもあるらしいのですが,糖尿の人は傷が治りにくいと説明されました,なぜなのでしょうか?

糖尿病の人は、血管が詰まりやすく、神経が麻痺してきて、傷が治りにくく化膿しやすいというのが特徴です。原因はすべて血液中の糖分が多すぎるためです。身体の細胞や臓器が正常の機能を発揮するために、身体の状態を常に一定の条件に保つように調節するシステムがありますが、その中でも血液が最も大切な働きをします。血液中の糖分の値が異常になると、細胞の働きが障害されて傷の治りが悪くなり、細菌感染に対する抵抗力が低下して感染しやすくなります。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1999.10.3
こんにちは,ドクターちゃびんこと数野様、早速のお返事ありがとうございました。また、大変丁寧に教えていただきましてありがとうございます。少し不安が和らぎました。

> この手術をする場合、最も問題となるのは噴門の機能です。噴門の機能を代行できるような手術をすることが最も大切です。幽門と胃の機能は二の次です。

なるほど、私はてっきり幽門の方が大切と考えていたのですが,逆だったのですね。そんなわけで噴門についてはこちらから何も聞かなかったし,また、医師のほうからも何も話はありませんでした。医師の話だと,私の胃を少しでも残そうと考えたのは,やはり私の年齢を考慮に入れたといってました。胃を全摘出するといずれ貧血だとかの症状が出てくるので、それらを少しでも緩和したいと。しかし、それによって食物が逆流したり,食道が犯されたりと危険を伴うのであれば一度主治医に聞いてみようと思います。

現在は一時帰宅が認められ、自宅でゆっくりしておりますが,夕方にはまた病院に帰らなければなりません。こうしていると何ら変わることのないいつもの日曜日で、うっかりすると病気のことなど忘れてしまっております。自覚症状がない分,何でこんな思いをしなければならないのかと,禁煙をはじめたことも手伝い、少し苛立っております。このたびは大変わかりやすく教えていただきありがとうございました。また、わからないことなどがありお世話になるかもしれません,そのときはよろしくお願いいたします。

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[胃癌で手術を受けステージ1bで早期癌と言われたが、進行癌では?]

(相談)1999.5.19
はじめまして、初めてメールさせていただきます。僕は26歳にして昨年の12月に胃癌で入院し(ホノルルマラソンから戻ってきた翌日)、今年の1月に手術しました。最初は胃潰瘍で消化器内科に入院して、内視鏡で突起物が認められているのにも関わらず、組織検査もせずにSMTと診断されていました。結局、悪い物かどうかはっきりと知りたいと申し出て、入院後3week経ってから細胞をとって検査してもらいましたが、結果は胃癌でした。それからは、外科に移されたのですが何故はじめから細胞を取ってくれなかったのか未だに納得いきません。しかも、その3週間で「若いから退院して外来でフォローしていこうか」というのを2回程言われました。と、グチはこの辺にしまして、私の癌ですがステージは1bで低分化腺癌、胃は3分の2切除(幽門側切除、ビルロート1)で、リンパ節転移無し、リンパ管転移あり(少々)、術後は念のための化学療法2クール(5FU、シスプラチン)、退院後UFT服用しています。そこで、先生にお伺いしたいのは、早期癌と進行癌についてです。主治医は1bは早期癌にあたると言ってましたが、早期or進行というのはステージで区別するのでしょうか?このサイトで「潰瘍に早期癌ができる」「進行癌が潰瘍を形成する」という文章がありましたのでこのような質問させて頂いているのですが、私は主治医から「癌が潰瘍を作った」と言われています。ですので、ひょっとして進行癌だったのでは・・と思ってきました。だから、手術後に2クールも抗癌剤をうったのかなとも考えるようになってきました。今更、知ってどうするというわけではないのですが、実際の所どうなのでしょうか。早期癌が潰瘍をつくるということは無いのでしょうか。また、UFTですが効果の程がわからないので れば止めようと思っています。飲んでいると、午前中はずっと気持ち悪さが続くのでしかも、もともと白血球は4100しかないのですぐに正常値を下回りそうだというのも理由です。お忙しいかと、思いますが宜しくお願いいたします。

(答え)1999.5.20
お答えします。私も10年前にホノルルマラソンにエントリーしたことがありますが、残念ながら出られませんでした。さて、「内視鏡で突起物が認められてSMTと診断されてた」とありますが、SMTというのは何の略ですか。いずれにしても、そんなに手術が遅れたようには思いません。早く見つかって、早く手術ができて、幸運だったと思います。

胃癌の場合、癌が粘膜下層まででとどまっているものを早期癌と言います。これは、あくまでも局所(胃癌本体の部分)の状態で言います。1bというのは、ステージ分類です。早期癌でも転移の状況で4期もありえます。逆に、局所の癌が進行していて(進行癌で)1bということは、ありえません。あなたの場合は、早期癌でリンパ節には転移がなかったが、癌の深達度(癌は胃粘膜の表面から発生して周囲と深部に向かって拡がりますが、深さの方を深達度と言います)が粘膜下層にまで及んでいた(粘膜下層までですので早期癌です)ので進行度(ステージ)が1bということになったのです。そして、リンパ節転移はなかったが、リンパ管侵襲(癌細胞がリンパ管の中に入り込んでいた)があったので、化学療法(抗癌剤治療)を行ったのだと思います。「癌が潰瘍を作った」ということですが、それは早期癌の形態分類(形による分類)で、癌の中央がくぼんでいたということです。

UFTを飲むか飲まないかは、あなた自身が決めれば良いと思います。飲んだから大丈夫とか、飲まなかったからいけないとかいうことは分かりません。副作用のことを考えれば、飲まないほうが良いかも知れません。ではまたいつでもメイルをください。

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[幽門狭窄症で胃全摘術を受けて6年以上になるが癌だったか?]

(相談)1998.12.24
42歳。男性。平成4年3月に、胃がん(幽門部が塞がり食物が摂取できなくなった。)のため胃全摘出手術を受けました。術後は薬の服用のみで、UFT・PSKを現在まで服用し続けています。胃摘出の副作用(胆石。食後、運動ができない、トイレが近い。胃のあたりの自然な感じの違和感。)はありますが、健康で元気です。仕事が忙しく睡眠時間が毎日4・5時間でも大丈夫です。主治医は、あなたの胃がんは腹膜まで侵された一番下の状態だったと言い、自分の患者では同じ状態でもう生存している人はいないと言っています。年齢が若く免疫力が高く、薬が効いているので生存していると言うことです。私は、医薬品のメーカーに勤めていますので、術後、薬をもらった段階で、自分ががんの治療薬をもらっていることが告知されなくてもわかりましたし、これらの薬が気休めの薬であることもわかっていました。私の心の中では、自分が世間一般で言われている癌に自分が侵されたということは未だ受け入れていないようで、薬も飲まないことがあります。大病院で手術前、2週間精密検査をしての診断結果ですので誤診はないと思いますが、幽門部閉塞状態が起こる胃がん以外の病名があれば教えてください。御忙しいところすみませんが、よろしくお願い致します。

(答え)1998.12.24
お答えします。まず、大変幸運だったことに感謝したいと思います。癌という病気は、たとえ早期でも100%治るわけではなく、また、たとえ手遅れでも治る人がいます。医学的な常識は、単なる統計学的な数字ですので、一人一人で違うのが当然のことです。

さて、胃癌以外で幽門部閉塞状態が起こる病名としては、幽門部にできた胃潰瘍または十二指腸潰瘍でしょうか。昔は手術してみないと分からないということがありましたが、胃カメラが進歩して、生検で癌細胞を証明できるようになってからは、診断はほとんど検査の段階で分かりますし、手術して切除した胃を調べれば間違いはないと思います。ただ、普通、幽門部の閉塞状態だけでは、胃全摘術はしませんので、かなり広い範囲に胃癌が拡がっていたものと思います。何か理由があるはずですし、ましてや良性の病気でそのような手術はしません。すでに5年以上経っているわけですから、癌は治っていると考えられますので、手術のときに摘出した胃の病理検査(組織検査)の結果を見せてもらえば、すべて分かります。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1998.12.25
幽門部閉塞状態が起こる病名について早速のご回答ありがとうございました。やはり、私はがんだったのかもしれません。後、生きても半年とか1年とかと言った状態だったのかもしれません。検査結果を聞きに行くたびに、すばらしい。と主治医から言われ続けてきたのも、納得いきますし、お世話になった婦長さんが、誤診だったのかしらと妻と話していたのうなづけますし、久しぶりに会った元上司の支店長が不思議そうに私をみてたのも納得いきますし・・・・・家族やまわりの方々に心配をかけていたようです。質問をして、誤診ということはありえないことがわかりました。ありがとうございました。主治医から、注意を受けていますが、薬だけはきちんと飲むようにしていきます。でも、性格的がのんびりしているせいか、まだ私は、自分ががんであったことを心の中では信じていないようです。

(返事)1998.12.25
メイルありがとうございました。奇跡に近い幸運に感謝して、これからの人生を大切にしてください。できれば、同じような病気の人や困った人のためにも、あなたの幸運を分けてあげてください。進行癌でも治ることがあるという、あなたは証拠です。あなたが、どうやって癌を治したかというは、他の人にも大変参考になると思います。あなたの性格的がよかったのか、癌と知らなかったのがよかったのか、いずれにしても自分で治したのです。では、お元気で。よければまたメイルをください。

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[胃の上部に悪性のものがあるため、胃のすべてを摘出する必要があると言われた]

(相談)東京1997.9.20
はじめまして。癌について質問があり、メールを出しています、実は、今日母が癌(あるいはがんもどき?)の告知を受けました。胃の上部に悪性のものがあるため、胃のすべてを摘出する必要があると説明されたそうです。明後日にあらためて検査を受け、早急に地元にある浜松医大の方へ入院することになっています。まだ詳しいことは何もわからないのですがやはり不安です。母は現在58歳、近くの工場でパートの仕事をしています。自覚症状は特になく、1年ほど前に人間ドックに入ったときは特に異常はなかったそうです。仮に胃をすべて摘出した場合、術後はどうなるのでしょうか。早期のものだった場合は手術が成功すれば以前のように普通に暮らしていけるのでしょうか。なにかアドバイスなり、情報なりいただけたらと思います。よろしくお願いします。

(答え)1997.9.29
大変遅くなり申し訳ありません。ドイツのホスピスに研修にいって留守にしていました。「癌」という言葉で病名を告げられたでしょうか?専門的に言うと「胃噴門部癌」だと思います。しかし、これだけでは「早期癌」か、「進行癌」なのかは分かりません。いずれの場合にも、手術は「胃全摘術」となることが多いわけです。手術が成功して、元気で退院できれば、治る可能性はあるわけですが、「早期癌」であれば、ほとんど治ります(残念ながら100%ではありません)が、「進行癌」の場合には、転移や再発の可能性が多くなります。いずれにしても癌の治療は、まず手術を受けて、順調に回復し、食べられるようになって、退院できた時が、スタートラインと思ってください。まず、スタ一トラインにつくことができなければなりません。胃全摘術は胃癌の手術の中では難しい手術に入ります。手術がうまくいけば、手術後も順調で、食事も十分な量ではないにしても順調に食べられるようになるでしょう。手術が上手な外科医に手術をしてもらうことが最も大切なことです。手術さえうまくいけば、普通の生活ができます。

しかし、癌は手術だけで、治る人と治らない人とがいます。「進行癌」の場合には1年から2年位で再発することが多いので、日常生活に注意して、自分で治すことを考えて、努力する必要があります。もちろん定期的に検診を受けて、転移や再発を早く発見して、治療する必要があります。転移や再発でも、最初の癌の時と同じように治療(手術など)できることもあります。癌の治療で最も大切なことは、本人の気持のもちかたです。病気をよく知り、常に前日きに明るく生きることが大切です。自分らしい生き方を見つけるチャンスを与えられたと思うことです。いつかは皆死ぬのです。死ない人はいません。生と死について考えることが大切です。

(返礼)1997.9.29
御返事いただき、ありがとうございました。直接「癌」という言葉ではなく、胃の上部に癌に進行する可能性のある「悪性のもの」が出来ていると説明されたようです。それ以上の詳しいことは入院後の検査を受けてからということですが、いずれにせよ、前向きに考えていこうと母とも話しました。担当してくださる先生も経験豊冨な優秀な先生だということなので、信頼してお任せしようと思っています。数野先生もお体に気をつけて頑張って下さい。

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[癌の手術(胃癌)はどんな手術か]

「癌の手術」は、癌のかたまりだけを取るのではなく、癌ができた臓器と周囲のリンパ節を含めて、大きく切除します。胃潰瘍の手術と胃癌の手術は、全くちがう手術となります。胃の場合、胃を取り巻くリンパ節(沢山ある)を、最も胃の近くにあるものを「1群のリンパ節」、その外にあるものを「2群のリンパ節」というようにして、3群まで分類してあります。城を取り巻く堀のようなものです。そして、これらの3群までのリンパ節群は、胃癌の手術の時、癌の進行度によって、早期癌なら1群まで、とか進行癌なら3群までというように、胃と一緒に取ってしまいます。その場合、転移があればもちろん取りますが、転移がなくても(目で見ての話ですが)一定の手術法として取ります。リンパ節郭清と言います。では、3群のリンパ節より遠いものはというと、3群以上は4群としていますが、これはもうすべて取ることができません。ですから、胃癌の手術は、癌ができた胃を大きく取り、一緒に取れる範囲のリンパ節をできるだけ取るということになりますが、手術で取れる範囲は限られています。もし、運良く手術で取った範囲内に癌の転移がとどまっていれば、治る可能性が高く、目に見える転移が残っていれば、治る可能性は低いということになります。目に見えない転移が残っている場合(多くの場合がこれです)に、それが発育するか、消失するか、そのままとどまっているかによって、治るかどうかということになります。退院の日がスタートです。医師は、他にたよるものがありませんので、効果についてははっきり分からないとしても(気休めかもしれませんが)、とりあえず抗癌剤を処方します。

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