[肝臓癌に関すること]

[以前よりC型肝炎を患っていたが腰痛の検査入院で肝臓癌を宣告されて驚いている]
[B型肝炎からの肝硬変に肝臓癌が出来たがTAEにすべきかマイクロ波治療にするべきか?]
[肝不全:手術を受けたが腹水がたまり衰弱している]
[肝炎と肝癌][肝臓の構造とTAE(経皮的肝動脈塞栓術)][肝硬変とTIPS]

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[以前よりC型肝炎を患っていたが腰痛の検査入院で肝臓癌を宣告されて驚いている]

(相談)島根県2000.7.15
ホームページを大変興味深く拝見致しました。色々癌で悩んでおられる方がおられるんですね。私の義父が先日、ヘルニアのため検査入院をしたのですが本日先生に呼ばれ義母が行った所肝臓癌を宣告されました。詳しくは解りませんが4cmの大きさらしいです。以前よりC型肝炎を患っていたのですが、急なことで驚いております。不安です。この大きさだと死に至るのでしょうか。余命はどれほどでしょうか。年齢は63歳で今月定年になった矢先のことで余生を楽しもうと張り切っています。全然、何の知識もなく申し訳ありませんが、教えてください。

(答え)2000.7.16
お答えします。大変ご心配のことと思います。

C型肝炎の人は高率に肝臓癌になります。とくに肝炎のビールスが多くて、肝炎の状態が続いている人ほど癌になりやすく、8割くらいの人が癌になると言われています。

進行肝臓癌(3センチ以上)に対する今までの一般的な治療方法は、手術か、TAE(経皮的肝動脈塞栓術)でした。TAEは足の付け根の動脈に針をさして、そこから選択的に(必要な部分だけにという意味)肝臓癌を栄養している動脈(癌に行っている血管)にまで管を入れて、癌の部分だけに抗癌剤と血流を遮断する物質(リピオドール)と抗癌剤を注入して、癌への血流を止める(しばらくすると又開通するようにうまく注入する)と同時に抗癌剤が癌の中にだけ入って効果を発揮させる治療方法です。時間も短く、身体への負担も少なく、副作用も最小限にできます。これを経過を診ながら(AFP値や癌の大きさを参考にして)、数カ月から半年毎に繰り返します。この方法のデメリットは、治療のたびに入院して血管に管を通さなければいけないことと、血管が完全に詰まってしまうと治療ができなくなることです。

他にリザーバー植え込みによる化学療法などもあります。色々な選択肢がありますが、最近はマイクロウーーブで癌を焼く方法が効果的だと言われていますし、さらに新しい方法もあります。

マイクロウエーブは、癌が沢山あっても、開腹して何箇所も焼くことが可能です。その場合、体力の消耗はほとんで問題となりません。残念ながらTAEでは、必ず癌細胞が残りますし、再発・転移を促進すると言われています。TAEは治すための治療ではなく、最近は他の治療と組み合わせて行うか、他の治療が出来ないときに行います。おそらく日本で一番沢山マイクロ波治療(マイクロ波凝固壊死療法、MCN)をしているのは、国立病院九州医療センター外科(810-0065福岡市中央区地行浜1-8-1、電話092-852-0700)の才津秀樹先生だと思います(私の名前を出してもらって結構です)。開腹手術でも2週間くらいの入院ですむと思います。

C型肝炎に発生する肝臓癌は、一つだけですむことは少なく、つぎつぎに出来てくることが多いので、最初に良く長期の作戦を立てて、治療を始めなければいけません。うまく治療を続ければ5年は大丈夫です。最近は、それ以上長生きしている人も多く、もちろん治る人もいます。主治医とよく話をして、本人が納得できる治療方法を選択してあげてください。ではまたいつでもメイルをください。

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[B型肝炎からの肝硬変に肝臓癌が出来たがTAEにすべきかマイクロ波治療にするべきか?]

(相談)1999.10.6
ホームページ拝見しました。このホームページ作っていて下さって、有難うございます。集団検診で、肝臓の精密検査を要するといわれたのが、確か1997年の6月ごろだったと思います。その後、精密検査によりB型由来の肝硬変の診断が出ました。肝硬変の進行度を示す数値は、安定していたのですが、黄疸値があがったり下がったりでした。アルブミンもすくなくなっており、血小板も10万を切っていました。ヘリカルCTとかいうCTで0.5mmづつ撮影して、胆管に胆石が詰まっているらしいことがわかり、昨年一月、逆行性造影何とか術という方法で、造影しながら石を取りました。胆のう切除を勧められたので、本人は嫌がったのですが、家族で説得し、胆のうを外科的にとりのぞいたところ、胆のうの壁は肝臓に癒着寸前。もう少しほおって置いたら、腹膜炎を起こすところだったと思われます。術後は、黄疸もなくなり、顔色も一段と良くなり、胆のうを取る前は少しぼーっとしていたような時もあったと思われますが、そういう症状もすっかりとれました。しかしB型由来の肝硬変では肝ガン発生率が高いということで、3ヶ月に一回のわりでエコーをとっていました。で、とうとう先日の検査で、見つかってしまいました、1.3mmのがひとつ。それと予備軍と思われる多数の低エコーが認められるとのことです。

これから父(71歳)の肝臓ガンとの闘いがはじまります。そして、家族の私たちもその戦闘に参加するわけです。今日主治医から、連絡を受けて、居たたまれない気持ちでいて、そうだHPがあるに違いないと思い検索をしました。涙がとまらなかったメールもあります。仕事中にこっそりネットしてたので、半べそをかいたような顔を回りの人に気づかれないようにと、急にばたばた立ち回ったりしていました。私には皆さんのメールがひとごとではなくなっており、それぞれの方の身の処し方がずっしりと心に響きます。皆さんの経験から、類似のケースの治療方針は大体同じであることなどが良くわかり、できる限りのことをやってもらっていることには確信が持てました。父は、医者さんと薬が好きで、体に良いというものは何でも試します。胃が痛いといえば胃薬を、肝臓の値が悪いといえば得体の知れない民間薬をといった具合です。お酒は大好きで、ほぼ毎日飲んでました。医者が好きと書きましたが、父がかかるお医者さんは「大丈夫ですなんともありません。この薬を飲めば直ります」という先生です。いつも血液検査をしていました。お酒好きですから、長い間GTPの数値が高かったにもかかわらず、脂肪肝といわれて詳しい検査はまったくしないままでした。最近、値が落ち着いたとか言って直ったとか言っていたんですよ。それって、細胞死の進行が進むところまで進んだということなんですよね。

質問があります。肝硬変への移行は、B型であることがもっと早くわかっていて、お酒をもっと早く止めて居れば遅くなったのでしょうか?ウイルスによるガン化にはそう言う条件は間のしないのでしょうか。TAEとマイクロウェーブとの選択の違いを教えてください。お忙しいところ申し訳ございません。教えてください。

(答え)1999.10.8
お答えします。大変ご心配のことと思います。

>1.3mmのがひとつ。それと予備軍と思われる多数の低エコーが認められるとのことです。

まず、「1.3mmの肝臓癌」というのは聞いたことがありません。どうして肝臓癌という診断がついたのでしょうか?

>これから父(71歳)の肝臓ガンとの闘いがはじまります。お酒は大好きで、ほぼ毎日飲んでました。

肝臓病の人がお酒を飲むということは、肝臓が悪くない人が酒を飲むのとは、全く意味が違います。肝臓に大変な負担がかかりますので、禁酒が治療の最低限の条件です。

>肝硬変への移行は、B型であることがもっと早くわかっていて、お酒をもっと早く止めて居れば遅くなったのでしょうか?

その通りだと思います。

>TAEとマイクロウェーブとの選択の違いを教えてください。

最近はマイクロ波治療が第一選択だと思います。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.10.8
お返事有難うございます。先生とのこうしたやり取りが、同じような状況の人には励みになると思えるので、お忙しい先生とは存じますが、お言葉に甘えて、もう少し書かせていただきます。前回のメールで、単位が間違っていました。1.3センチと書くところ1.3mmになって居ました。お恥ずかしい次第です。実は、今回の13mmが見つかる前に一度超音波をやってます。そのとき肝左葉外側に11mmと9mmの低エコー性病変がみられましたが、CTとMRIでは病変がなく、再生結節だろうということでした。3種類でみた像を比べると区別がつくのかと驚いたわけです。ところが、CTとMRIで左葉の下端に30mmの腫瘤性病変があるとのことで、これは超音波で見えていなかったので、再び超音波をしたところ、13mmとの診断でした。強く肝癌が疑われるといわれました。サイズが違うのがどうしてかわかりませんが、エコーのほうが立体的にとらえられるせいなのかなと思っています。B型特有の肝実質像をしているとのことですから、肝癌がいつ出てもおかしくないといわれています。

お酒は、肝硬変の診断がついてからぴたっと止め、それからは、ノンアルコールビールを晩酌にしています。それでも0.5%以下という表示ですから、まったくないわけではないと思いますが。お酒を早く止めていれば、肝硬変に移行するのを少しでも食い止めることができていたのかと思うと、いままで毎年血液検査をしていたのは何だったんだろうかと思います。どうして、はやくB型の検査をしてくれなかったのだろうかと。言ってみても始まらないわけですが。きっと本人は大丈夫だからといって、精密検査を拒否したに違いないからです。集団検診で、影がみつかって精密検査が必要といわれたときも、大丈夫とさわいでいました。母が病院に行けといっても聞かないので、私が知り合いを頼って、先に予約をして、行かなかったら私の面子がつぶれるんだからね、と強行しました。この作戦は成功し、しぶしぶ精密検査をしたわけです。考えてみると、実は本人が一番怖がっていたのかもしれません。病院に行けといっても伸ばし伸ばしにして、お酒を飲んで帰ってくるのだから、母はまったく毎日頭に来ていました。家族って、ああも捨て台詞をはくものなのかとあきれてしまいますよね。こっちは、本当に心配して言っているのに、すんなり受け入れてもらえないと、勝手に死ねば。とか、苦しむのは自分なんだからね。なんて心にもないことを言ってしまう。でも今は、なるべく本人を責めたりしないようにしようと思ってます。早く検査していれば良かったのにとか言われると、つらいと思うのです。一番後悔しているのは自分に決まっているのですから。来週の水曜日に検査入院ということで、血管造影をするそうです。そのとき可能なら、動脈塞栓をするとのことです。このときに家族が同席して、手術の適応も相談するのことなのです。もちろん経験のある医師の判断をもっとも重視するべきと考えていますが、予備知識も必要だと思います。そこで、また、教えていただきたいのは、

1:CT,MRIで30mm、エコーで13mmとういうサイズの違いは良く起こることなのでしょうか。
2:マイクロウエーブは、開腹して、何箇所も焼くことが可能なのですか?開腹手術による体力の消耗は、どのように予想されますか。TAEは開腹がないから、体力を温存できるというふうに考えて、できる限りTAEで、というより今のうちに疑わしきは、焼いてしまう方が良いのでしょうか。
3:今は内科にかかっていますが、そうなると外科の担当になりますよね。手術が良いとなった場合、たとえば評判の高い他の病院の移る方が、良いと思われます。数野先生も、腕の良し悪しが大きく出るとどこかに書いておられてと記憶しております。今お世話になっている先生にはどのような配慮をして、その旨をつたえたらよろしいのでしょうか。

本当にお言葉に甘えて、いろいろお聞きしますが、よろしくお願いいたします。

(答え)1999.10.9
お答えします。

>1:CT,MRIで30mm、エコーで13mmとういうサイズの違いは良く起こることなのでしょうか。

ちょっとサイズが違い過ぎるようです。今のところMRIが一番正確だと思います。エコーでは31mmではないでしょうか。

>2:マイクロウエーブは、開腹して、何箇所も焼くことが可能なのですか?開腹手術による体力の消耗は、どのように予想されますか。TAEは開腹がないから、体力を温存できるというふうに考えて、できる限りTAEで、というより今のうちに疑わしきは、焼いてしまう方が良いのでしょうか。

マイクロウエーブは、開腹して、何箇所も焼くことが可能です。その場合、体力の消耗はほとんで問題となりません。残念ながらTAEでは、必ず癌細胞が残りますし、再発・転移を促進すると言われています。TAEは治すための治療ではなく、他の治療と組み合わせて行うか、他の治療が出来ないときに行います。

>3:今は内科にかかっていますが、そうなると外科の担当になりますよね。手術が良いとなった場合、たとえば評判の高い他の病院の移る方が、良いと思われます。

素直に希望をお話しになるほうが良いと思います。おそらく日本で一番沢山マイクロ波治療(マイクロ波凝固壊死療法、MCN)をしているのは、国立病院九州医療センター外科(810-0065福岡市中央区地行浜1-8-1、電話092-852-0700)の才津秀樹先生だと思います。開腹手術でも2週間くらいの入院ですむと思います。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.10.14
いつもすぐにお返事をいただき、有難うございます。昨日父が血管造影検査をいたしました。門脈CTをとったところ、左葉の下部に13mmが鉄アレイのように二つつながっている像があって、結局30mmということでした。そのほかに、今までの検査で見られなかった20mmの腫瘍が、左葉の上部心臓の下に新たに見つかってしまいました。動脈カテーテルで造影剤を入れたところ、左葉の下部の腫瘍には栄養血管が入っており、腫瘍の手前までカテーテルがいれられるかもしれないということでトライしました。細いカテーテルが直前まで入ったので、塞栓することになりました。それまでの経験で、この状態なら切除に負けない効果が期待できるとのことでした。もうひとつのほうは血管が入っておらず、エコーでも見えにくいし、普通のCTでは見えないから、開腹して切除かマイクロウエーブとのことで、4週間後に、同じ病院の外科で処置を受けることになりました。内科の先生は、マイクロウエーブを進めたいようですが、外科の先生が切ってしまおうというので、きちんと意見の統一がされることを願っています。

始めは、手術の適応と言う結果になったら、転院して手術の上手なところでと思っていたのですが、塞栓がうまく行きそうというのがあって、流れが少し変わってしまいました。私としては、そのときの医師の判断が一番的確であろうと考えました。ドクターは、検査だけきちんとして、外科に回すべきだと考えていたようです。ところが、あのままカテーテルを元に戻して、やっぱり切除という感じにはならないくらい、うまく腫瘍の入り口にカテーテルが入ったようです。術中の経過、腫瘍の中に一滴一滴入っていく様子を、本人がモニターでドクターと一緒に見ていました。まだ、末期ではないと思われます。今回ぐらいの塞栓だとそれほど影響はないのかもしれませんが、恐らく、次回の開腹で、少し体力が落ちるのではと思います。普通の生活にはもどれるのかなと思うのですがいかがでしょうか。ビリルビン2.4です。GTPなどが正常値です。血小板は、低いですが、9万あります。アンモニアも今のところ正常です。黄疸が出たと診断されるのはどのくらいの値なのかわかりません。これからじわじわと黄疸が出てくるのでしょうね。とにかく再発がないことを神様に祈るだけです。本当に、こんな私事のメールを読んでいただき、丁寧にお返事いただけるので、感謝しています。

(答え)1999.10.15
お答えします。もし仮に、癌の存在場所が肝臓の左葉だけに限られているのなら、手術で肝臓の左半分を切除する手術が行われると思います。輸血も必要ないくらいの手術です。肝臓癌で黄疸が出るのは、末期状態の最後です。GOT,GPTが正常とのことですが、現在ビリルビン値が上昇している原因は何でしょうか。常識的に考えると、癌が二ケ所にあるということは、今は目に見えないが他にもあると考えますので、手術はしないと思います。マイクロ波治療が良いのではないでしょうか。ではまたいつでもメイルをください。

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[肝炎と肝癌]

(相談)
ウイルス性肝障害が肝臓癌と関係が深いということですが教えて下さい。

(答え)
肝炎を起こすウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型、F型と多くの肝炎を起こすウイルスがあります。しかし慢性肝炎、肝硬変、肝癌と進行するのは、B型とC型です。
B型肝炎はおもにお産のときに母親から感染する母子間感染で成立します。HBs抗原陽性の人をB型キャリアーといいますが、現在目本人では約1.5%位の人がキャリアーと言われていますが、このうち90%の人は肝炎にならずに終わりますので、のこりの10%位の人が慢性肝炎、肝硬変になり肝癌になる可能性があります。
C型肝炎は血液でうつるウイルス性の病気で、第一の原因はかつて受けた輸血です。しかしC型肝炎の約半致の人は輸血を受けたことがない人です。残念ながら原因がわからないことが多いようです。かつて、血液中にウイルスがいてそれが他の人に感染するといった考えがまだなかったころの医療行為、たとえば静脈注射や予防注射などで、C型ウイルスのいる血液がたまたま血管内にはいったかもしれませんし、覚醒剤の回しうちだとか、針治療を受けたときや、入れ墨をした時に他の人と同じ針を使って感染がおきたと考えられることもあります。C型肝炎にかかりますと、自然に治るひとも10一20%位ありますが、多くの人は慢性肝炎、肝硬変になります。C型肝炎の人もやはり日本人で約1.5%200万人いますが、20歳以下の人は非常に少ないのが現状です。

Q)B型肝炎やC型肝炎になってなにか自覚症状がありますか?

A)自覚症状は殆どなく、健診や献血時に偶然みつかることが多いと思います。健康診断では肝機能検査のみで、ウイルスまで調べていないことが多く、肝機能が異常値の時、たんなる脂肪肝か、また脂肪肝にウイルス性肝炎が治併しているかを、検査して知っておくことが大切だと思います。B型肝炎の湯合には。慢性肝炎の状態でも、肝臓癌になることがありますが、C型肝炎の場合には、慢性肝炎の時点で肝臓癌こなることは少なく、殆どは肝硬変に進展してはじめて肝臓癌を発生します。

(相談)
ウイルス性肝炎になっている人は、どうような検査を受けますか。

(答え)
私たちは肝臓癌のハイリスクグループを決めています。BやCのウイルスのキャリアーであり肝機能検査でGOT, GPT, γ−GTP, Ch−Eといった、いずれかが異常の人をハイリスクグループとして年に2−3回は腹部超音波検査(エコー)やCT検査をすることにより、肝臓癌があっても早期に見つけるようにしています。GOTやGPTが100以上の人や、肝硬変になっている人にはより頻回な画像検査が必要になります。肝臓癌の時上昇するAFPという血液検査も必要と思います。

(相談)
インターフェロン治療について教えてください。

(答え)
ウイルスが肝臓内にいると、肝臓病が進展することが多いため、ウイルスを排除するための、インターフェロン治療があります。インターフェロン治療によりウイルスが完全にいなくなると肝臓癌にはなりません。しかしインターフェロン治療で完全にウイルスがなくなり治つてしまう人は、30−40%くらいです。ウイルスの量やウイルスの種類によってインターフェロン治療がよく効くものと、効きにくいものが分かりますので、治療前に、ウイルス量やウイルスの種類を検査してインターフェロン治療を受けたほうが良いかどうか調べておくことが大切です。

(相談)
インターフェロン治療を受けない人や、インターフェロン治療を受けたが治らなかった人は、どうすればよいのでしょか?

(答え)
ウイルス肝炎でも肝機能が正常なら肝炎も進展しないわけですから、酒を控えることは勿論ですが定期的に通院して、薬をのんだり注射をうけてGPTやGOTを落ち着つかせることも大切だと思います。要するに肝臓癌を予防するためには、ウイルスを排除できる人はインターフェロン治療により排除し、肝機能をできるだけ正常化するように心がけることだと思います。そして、ウイルス性の肝障害が持続している人は肝臓癌になりやすい状態であると自覚して、定期的に画像診断をして、肝臓癌になっていても早期に発見することが大切だと思います。

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[肝不全:手術を受けたが腹水がたまり衰弱している]

(相談)1998.9.22
50歳の姉が7月末に肝臓癌の手術をしました。術後、1ヶ月過ぎた頃から腹水が溜まり、1週間に1回腹水を抜いています。1回で抜き取る水の量は2升ぐらいです。水を抜く度に痩せていきます。果たして、彼女は肝臓癌の末期でしょうか?

(答え)1998.9.22
お答えします。「肝臓癌の手術」をしたということは、C型肝炎から肝硬変になり肝臓癌ができて、しかも手術で切除できるくらいの肝臓癌で、肝硬変も手術に耐えられる程度であるとの判断だったと思います。術後、腹水が溜まるということは「肝不全」による症状だと思います。この場合は「術後肝不全」で、やがて回復してくると思います。どうしても正常な肝臓ではありませんので、手術による肝臓への負担(手術侵襲といいます)のために、一時的に肝臓の働き(機能)が低下して、腹水がたまります。利尿剤などで改善しない場合には、腹水穿刺をして抜き取ることをします。もし回復できないようなら、手術をした判断が誤りであったか、手術が予想以上に大きくなった(手術侵襲が大きかった)ために、肝臓が持ちこたえられなかったということになります。いずれにしても今は治療によって回復してくるのを待つ以外にないと思います。

つまり「肝臓癌の末期」ではなくて、「肝硬変の末期」の可能性があるわけです。普通、肝硬変で命を取られるのは、(1)肝不全(黄疸が出てアンモニアが高くなり腹水がたまる)、(2)食道静脈瘤の破裂(門脈圧亢進症のための吐血)、それに(3)肝臓癌のいずれかです。肝硬変の人は、血液の中の「血小板」が減っているために、血が止りにくく手術の時の出血量が多くなりやすく、出血量が多いと肝不全になりやすくなります。詳しい状況が分からないので、ほとんど私の想像です。ではまたいつでもメイルください。

(返礼)1998.9.24
数野先生、早速の御丁寧なご返事を有難うございました。今後とも 宜しくお願い致します。

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[肝硬変とTIPS]

肝硬変の場合5年くらいで、
(1)食道静脈瘤の破裂による吐血や、
(2)肝臓の機能が低下して腹水がたまり血清のアンモニア値が高くなって意識障害を来たす肝不全や、
(3)肝臓癌で、命を取られます。
TIPS(カテーテルを使用して肝臓の中に管を入れて門脈の血圧を下げる処置)は主に(1)に対する治療方法で、(2)に対しては悪影響があり、(3)に対しては無関係といわれていて、臓器移植を行っている諸外国で肝臓移植までの一時的な治療として行われていますが、腹水が劇的に減ることもあります。

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