[肺癌に関すること]

[偶然肺に影が見つかり精密検査でも癌かどうかわからず胸腔鏡手術をすすめられた]
[肺癌と言われたがStageが決まらなかったり治療後の生存率が違うのは何故]
[2年前から気管支が潰れていると言われているが気管支鏡検査の必要は?]
[検診で肺に影があるといわれた]
[いずれ癌になる可能性が高いので手術と言われた]
[転移性肺癌と咳]

→ガンに関する一般的な相談 →見出しページへ


[偶然肺に影が見つかり精密検査でも癌かどうかわからず胸腔鏡手術をすすめられた]

(相談)1999.12.13
数野 博様はじめまして。○○ともうします。兵庫県宝塚市に住んでおります。突然で、申し訳ございません。ホームページを見て、相談のメールを送らさせていただきました。私の妻(42才)が、11月3日に、東京で大学時代の同窓会があるため一泊で参加した夜に、軽い胸の痛みを感じ夜にあまり眠れなかったと帰宅後申しましたので。翌日に、近くの内科医へ行きました。内診では、肋間神経痛ではないか?と言われましたが、ついでに、無料なので胸部レントゲンを撮りましょうと言われ、撮ったところ右肺外側、乳首あたりに、1cm以下の白い丸い影が映りました。そのとき内科医では、判断がつかず、翌日にお医者さんの会があるので、聞いてみますといわれました。しかし、どなたも、判断がつかず。その医師から、市民病院のCTを念のため受けなさいと紹介され検査を受けました。胸痛は3日ほどでまったくなくなりました。体調も普段と変わらず元気なのですが。17日に市民病院で、CTとレントゲンを受けて、18日にそれをその医師に見せたところ、CT画像にさきほどの右肺に、1cm以下の「うに」のようなイガイガの映像が映ていました。これは、おかしいといわれ、何かはっきり調べるべきと言われ。再びその医師より、19日に市民病院の呼吸器外科を紹介していただきました。呼吸器外科の医師も、影のかたちが疑わしいと言うことで検査入院を進められました。25日に検査入院して、気管支内視鏡検査、生体検査、アイソトープ検査(放射物質検査)、痰検査、血液検査、尿検査を受けました。12月10日検査結果がわかるので、市民病院を訪れ説明を受けました。内視鏡による生体検査では、問題なしでしたが、アイソトープ検査で、1cm以下のしこりが黒く画像に残りました。結論は、生体検査は、小さすぎて細胞が取れなかった可能性が、大きいと言われました。CTの「うに」のような画像、アイソトープ検査の画像が疑わしいと言うことになりました。医師からは、様子をみるか、異物に違いないので手術して取るかを進められました。医師の判断としてはがんの可能性が強い、感じでした。妻はいたって元気で、体重減少も、食欲不振もなく信じられない感じです。説明によると、胸空鏡手術を最初にして、1cmの患部をとり、30分の間に細胞の生体検査をし良性であればこれで終わるそうですが、悪性の場合、上葉とリンパ節を取るそうです。5時間くらいかけて、手術すると言うのですが。不安でいっぱいです。おそらく手術はやむをえないと思いますが妻の肺を一部取るのが、かわいそうでたまりませんし、小学生の子供が3人いて、自営業でして妻がいないと困る商売です。手術後の生活が大変なのではとゆう不安とテニスの好きな妻でして、術後できなくなるのがかわいそうですいません。質問ですが、手術はやむをえないでしょうか?もう少し、ようすを診たほうがいいでしょうか?早く取ろうと決心していますが!手術のときに、輸血による感染や、傷から感染症など移らないでしょうか?肺の一部を取ると、私生活の復帰に2から3ヶ月掛かるでしょうか?スポーツは、もうできないでしょうか?傷あとは、かなり覚悟したほうがいいですよね?再発は、するのでしょうか?我が家は、たばこは吸いませんし、野菜もよく食べるのですが、どうしてなるのでしょうか?私立病院は設備もよく、医師も、ちゃんと質問に答えていただき、自宅も近いので、任せようと思ってはいるのですが、他の病院も行くほうがいいでしょうか?長々ともうしわけございません。わらをもつかむ気持ちでおねがいもうしあげます。よろしくおねがいいたします。

(答え)1999.12.13
お答えします。大変ご心配のことと思います。

>質問ですが、手術はやむをえないでしょうか?もう少し、ようすを診たほうがいいでしょうか?早く取ろうと決心していますが!

肺癌であった場合には、癌細胞の種類によって治療方法が違ってきますので、できれば肺癌専門の医師(病院)で、一度診てもらってからでも良いと思います。どうしても診断がつかなければ、やむをえないと思います。

>手術のときに、輸血による感染や、傷から感染症など移らないでしょうか?

普通は、そのようなことがないように手術しますので、まず大丈夫と思いますが、手術にはつきものの危険性としては、ゼロではありません。

>肺の一部を取ると、私生活の復帰に2から3ヶ月掛かるでしょうか?スポーツは、もうできないでしょうか?傷あとは、かなり覚悟したほうがいいですよね?

手術の大きさにもよりますが、そんなに心配はないと思います。上葉だけの切除であれば、手術の前と同じような生活ができると思います。

>再発は、するのでしょうか?

病気によりますので、わかりません。

>我が家は、たばこは吸いませんし、野菜もよく食べるのですが、どうしてなるのでしょうか?

これについても、わかりません。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.12.13
数野 博先生、昨日突然のメールを出しました○○ともうします。早々のご返事ありがとうございました。わけのわからない質問にお答えいただきありがとうございます。気持ちをしっかり持って、よく考えようと思います。本人よりも、私の方が動転しております。気持ちの上で、支えてあげないといけないのですが。CT画像の「うに」の形や、アイソトープ(放射線物質注射)の画像に、映るのは、癌のかんの可能性が高いのでしょうか?肺に異物があるのは事実なので、肺がんでなくても取り除くのがよいのでしょうか?薬で消える、消えることもあるのでしょうか?もうしわけありません。よろしくお願いいたします。

(答え)1999.12.14
お答えします。

>CT画像の「うに」の形や、アイソトープ(放射線物質注射)の画像に、映るのは、癌のかんの可能性が高いのでしょうか?

癌以外の可能性もあります。炎症などのために異常陰影として映ることもあります。経験を積んだ専門家が診れば、ほとんど区別がつくと思います。

>肺に異物があるのは事実なので、肺がんでなくても取り除くのがよいのでしょうか?薬で消える、消えることもあるのでしょうか?

炎症などの場合には、薬で消えることもありますし、肺癌でも、薬(抗癌剤)で治療するものもあります。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1999.12.15
○○ともうします。 早々のご返事ありがとうございます。 いろいろと調べたりしました。病院の先生が信頼できるかなど、短期間で、医師の友人等を通じて調べました。自分なりに、確信できましたので、手術を受けさせることにいたしました。早く取ってしまうのが、やはり一番ベストと思います。いろいろとありがとうございました。

→ガンに関する一般的な相談 →見出しページへ


[肺癌と言われたがStageが決まらなかったり治療後の生存率が違うのは何故]

(相談)1999.9.9
はじめておたよりします。母(57歳)が先月末に肺ガンと診察され、現在検査中であります。Stageの決まり方、また手術したあとのStage別の生存率の違いの理由がをお教えいただけませんでしょうか。母はもともと別件(がっか腺の腫れ)で検査したのですが、レントゲンで肺に見にくいところがあるとの指摘からCTスキャンの実施を試みました。肺に何らかの塊がみえ、細胞診を実施しました。事前のガリウムシンチやMRI、血液検査、胆の検査、腫瘍マーカなどが’白’であったため基本的に安心しておりましたが、結果は’クラス5’、腺ガン。1.5x3cmの大きさは中の下。「まだ初期だし切除ですね」との診断でした。その後全身にヨードを入れてのCT検査を実施。3日かけて、頭部、胸部、腹部と’白’。家族みな一時は喜んだのですが、’白’といった医師より「Stageは2と考えている」と、その翌日には初めての胸部外科(それまではすべて内科)の外来で、「Stageは3Aでは」と。いずれにしてもあけてみないと、との判断らしいのです。Stageってそんなものなのでしょうか。よく肺ガン(非小細胞ガン)の資料を読むとStage毎の治療法として外科手術、化学療法などの記述があります。Stage3Aまで外科治療の範囲とあります。同じ外科治療を実施した後の危険度(生存率の違い)は何なのでしょうか。やはり再発率の違いとかなのですか?また、こういう時期、患者も家族の医者の一言で一喜一憂(多憂?)するものですがこう、ころころ内容が変わり、また患者本人にずけずけ言うことは昨今普通なのでしょうか。本人の治す意思が大事であり、治る可能性のある患者には告知し、治療方針を合意しすすめる、これは理想と考えますが、いままでのやりとりが計画性をもった会話とはとても思えないものを感じるのは家族の勝手な思い込みなのでしょうか。あわせてコメントいただけませんでしょうか。お忙しいとは存じますが、お返事をお待ちしております。34歳、会社員

(答え)1999.9.9
お答えします。肺癌のステージ分類は
ステージ0:癌が5mm以下でリンパ節転移がないもの。
ステージ1:癌が3cm以下でリンパ節転移がないもの。
ステージ2:癌が3cm以下でリンパ節転移があるが肺門部に限られているもの。
ステージ3A:癌が3cm以下でリンパ節転移が気管分岐部より2cm以内に及んできているもの。または癌自体が横隔膜や心臓の外膜に浸潤してきているもの。
ステージ3B:癌が心臓外膜、大動脈、縱隔、気管、胸椎に浸潤しているもの。リンパ節転移が反対側の肺門に及んでいるもの。
ステージ4:脳、骨、肝臓などに転移があるもの。
となっています。
リンパ節に転移があるか無いかの判断や、癌がどこまで浸潤しているかの判断は、検査だけでは困難なことが多く、同じ検査結果を見ても医師によって異なる場合もあります。再発率は、やはり進行度が進むほど高くなります。理論的には手術して癌をすべて取りきれれば治ることになりますが、癌は目に見えない転移を起こしたり、目に見えないが周囲に拡がったりしますので、癌細胞が残れば再発する可能性があります。告知に関しては、医師や病院によっても異なると思いますが、最近はおっしゃるような傾向にあります。一つには医師の保身的なやりかたで、真実を告げてないと訴えられることがあるからです。医師と患者や家族との信頼関係も希薄になりつつあります。充分な時間を取って説明や話し合いをすることが困難という事情もあると思います。つまりコミニュケーションの不足が最大の原因だと思います。ではまたいつでもメイルをください。

→ガンに関する一般的な相談 →見出しページへ


[2年前から気管支が潰れていると言われているが気管支鏡検査の必要は?]

(相談)1999.6.29
こんにちは、依然にも妻の貧血による悪性腫瘍の可能性についてご相談申し上げた者でございます。あのとき先生の「取り越し苦労でしょう。」という言葉に妻ともども本当に安心させられました。結局先日胃カメラで検査しましたところ、特に問題はないとの診断をいただくことができました。本当にありがとうございました。ところで今回は今年36歳になる私のことでご相談申し上げる次第です。一昨年の夏、実父が肺ガン(腺癌)を患い手術いたしました。幸い2年近く経過した今も再発の兆候なく無事な日々をすごしております。両親のどちらかが肺ガンになれば高率でその子も罹患すると聞いたことがありましたので、早速私も父の入院先の愛知県がんセンターで検査をしてもらうことにしました。その結果、胸部レントゲン上左肺中心付近に異常陰影を指摘されたのでした。丁度その1年前にも同センターで胸部レントゲンを撮っておりましたのでそれと比較することで素人の私にも容易にそのちがいを見とることができました。喀痰検査は異常なしでしたが、ガンの可能性もあるので胸部CTを早速撮るよう言われその1ヶ月後に検査を行いました。結果は気管支が潰れ、そこが炎症をおこしたために出来た陰であるとのことでした。気管支が潰れた原因として小さな腫瘍が関与しているということも可能性としては否定できないが、CT上そのような腫瘍性のものは確認できないということ、どうしてもはっきりさせたければ気管支ファイバーで生検するより他ないとおっしゃられました。しかしファイバーによる検査は大変な苦痛を伴うので、しばらくは定期的に胸部レントゲンで経過を観察することでよいのではないかといわれ3,4ヶ月に一回の割合でこの1年半経過を見続けてまいりました。その都度、炎症による陰はよくも悪くななっておらず、今もって全く変化がないとのことです。主治医の先生はもうすぐ丸2年を迎えるし、一向によくなる兆しもみられないことから再度CTによる検査の実施の必要性を説かれました。可能性としては低いが炎症の内部が癌化していることも考えられるというのです。それはCTを撮ればはっきりするというのですが、それまでただの炎症だからとさほど気にかけていなかっただけに非常にショックを憶えました。いったいこの疾患の病名はなんなのか、頻度としては多いのか、そもそも気管支が潰れるなどということがどうして起こり得るのか、炎症を押さえる治療法がなぜないのか、癌化する頻度は実際にどの程度あるのか、2年経過した今も全くレントゲン上での変化がみられないということは実際にはなにを物語っているのか等々・・・・・。一気に疑問と不安が吹き出してまいりました。CTは8月か9月頃でよいでしょうと言われており、いずれにしても検査をうけなくてはならないわけですが、とにかく不安は日々募る一方です。上記の私の疑問についてどう思われますか、先生のご意見を是非お聞かせ下さいますようよろしくお願い申し上げます。幾分文章が長くなり、結果貴重なお時間をさいていただくはめになりましたことお詫び申し上げます。

(答え)1999.6.30
お答えします。まず癌の原因は細胞の遺伝子の異常です。その遺伝子の異常を起こす原因はタバコ(喫煙)と飲食物と環境と言われています。「左肺中心付近に異常陰影があり、胸部CT検査で『気管支が潰れそこが炎症をおこしたために出来た陰』と言われた。原因として小さな腫瘍が関与しているということも可能性もあるが、CT上そのような腫瘍性のものは確認できない、はっきりさせたければ気管支ファイバーで生検する方法がある。しかしファイバーによる検査は大変な苦痛を伴う。もうすぐ丸2年を迎えるのでCTによる検査の実施の必要性を説かれた。」ということですね。

医学的な知識のない人に説明する場合に、専門用語を使わずに説明すると、セカンド・オピニオンを求めたりするときに、第三者には理解できないことがあります。この担当医の『気管支が潰れそこが炎症をおこしたために出来た陰』という説明がそのようなものです。気管支炎のことでしょうか?「CT上そのような腫瘍性のものは確認できない」のですから、やはり「はっきりさせたければ気管支ファイバーで生検する方法」ということになります。「ファイバーによる検査は大変な苦痛を伴う」ということですが、この病院はこの検査に自信がないのか、あなたの場合あまり必要性を感じていないかどちらかのようです。気管支ファイバー検査は、たしかに楽な検査とは言えませんが、最近は専門の医師が行いますので、そんなに苦痛はないはずです。検査が苦痛だから、検査を受けないなどど言うことがあってはいけないのです。ひょっとしたらヤブ(私も薮ですが、いや数でした)かもしれません。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1999.6.30
さっそくお返事いただきありがとうございました。やはりファイバースコープで検査しないかぎり白黒つけるのは無理ですか。私の父も肺ガンの検査でファイバースコープによる生検をしましたが、胃カメラなんか比べものにならないほど辛かったと話していました、死んでも2度としたくないと思ったそうです。父は昔からとても我慢強う性分でしたのでその父が苦しがるのだからよほどのことなんだと思ったものでした。主治医の先生は最初のCTを行う前に、もしCTの結果腫瘍の可能性があれば仕方がないがファイバースコープでの検査は避けられないとおっしゃっていました。しかし検査の結果、その可能性はかなり低いということでファイバーでの検査はとりあえず必要ないような口振りでした。今無理してするほどのことではないでしょうということでした。でも私自身はやはり心配でしたので「実際に癌がある可能性はどのくらいでしょうか。」と質問しましたところ「1割以下でしょう。」と答えられましたしたがって経過観察でよいのではということのようなのですが、今になってひょっとすると悪性化しているとも限らないのでCT検査をしましょう、という事自体が非常に腹立たしい思いがするわけです。こんなことになるならなぜ最初にファイバーを進めなかったのかということです。もしCTの結果やはり悪性化の可能性があるので検査しましょうなどといわれたら悔やんでも悔やみきれない思いです。せめて炎症を治療する方法はないものかと訪ねたことがありましたが、そのとき主治医は残念ながら無いとおっしゃいました。なんという病名かと聞いた時も病名はつけられないということでした。いったいこの疾患はなんなのでしょうか、気管支炎とはちがうようです。気管支が潰れるということは時折あるそうなのですが、原因はよくわからないとのことです。ただ相手の正体が不明なのはどちらにしても気味が悪いです。もし先生に心当たりがございましたらまたお教えいただければ幸いです。ありがとうございました。

→ガンに関する一般的な相談 →見出しページへ


[検診で肺に影があるといわれた]

(相談)1998.12.21
 はじめまして、58歳の母が、検診で肺ガンの疑いが有るといわれたことでとても心配で、何気なくインターネットで「肺ガン」で検索していたところ、先生のHPに出会いました。相談への返答が、丁寧で人間味にあふれているのを見て、まだなにも診断さえされていないにもかかわらず、お聞きしてみたくてメールします。

 母は、12月の初めにレントゲンで肺に影が有るといわれ、主治医に再検査を勧められました。レントゲンは撮ってから3ヶ月はあけないといけないから3月に再検査をしましょうというのです。ガン患者にとって、3ヶ月は貴重ではないかと思うのですが・・・。母は、そんなに先に検査すればいいとおっしゃるんだから、可能性は低いんではないかと希望的観測をしています。けれども、先生は同じ検診で同じような影のあった人で進行性のガンの人がいました、と漏らしたそうですし、なにより、母の両親ともガンで(肺ガンと胃ガン)亡くしているので、私は嫌な予感がしてたまりません。
 このような1次検診でひっかかってガンではなかったという例は多いのでしょうか。それから、1次検診から再検査の期間が3ヶ月以上あいているのですが、もっと早く手を打ったほうがよいのではないでしょうか。
 もっと大変な状況におかれている患者さんが多い中、ガンかどうかもわからない御相談ですみません。ただ、私自身、夫に早急に離婚を迫られている身であり、1歳の子供を抱え、仕事もして母の世話をするとなると、夫に調停などの離婚交渉を待ってもらったり、兄夫婦と同居その他について話し合わなければならなくなるので、時間は大切な要素になるのです。内輪の話までして申し訳有りませんでしたが、どうぞ教えてください。

(答え)1998.12.22
お答えします。健康診断は健康と思われている人に対して行われ、自覚症状がないうちに病気を発見して早く治療して早く治すことを目的としていますので、わずかな異常も見逃さないように注意深く行います。つまり病気を見つけるための検査ですので、少しでも異常と思われる人は、再検査や精密検査が必要ということになります。再検査や精密検査では、異常なしとか経過観察(様子を見る)となる人もいますが、それは病気の人を見逃さないようにするためには必要なことなのです。もしわずかな異常を異常なしとすれば、病気の人を見逃すことになり、そのほうが問題となります。最近は、健康診断で異常なしと言われたのに、病気だったといって訴える人までいますので、健康診断をする医師は細かいところまで神経を使って所見をつけます。それが健康診断の目的ですので、もし健康診断で異常を指摘されたときには、まずかかりつけの先生に相談してみることは大切なことです。

さて、検診で肺癌の疑いがあるとされた場合の対応ですが、まずもう一度レントゲン写真を撮ってみて、やはり怪しい影があるようでしたら、次にするべき検査があります。「レントゲンは撮ってから3ヶ月はあけないといけない(そのようなことはありません)から3月に再検査をしましょう」というのは、まず検診の次に行うべき検査をしてみて、異常がない場合のことです。検診で肺癌の疑いが指摘された場合に、次に行うべき検査はCT検査と喀痰の細胞診検査です。さらに必要な場合には気管支ファイバースコープによる検査を受けます。レントゲン写真だけで診断がつくような肺癌は、ほとんどの場合が進行癌です。肺癌は大変治りにくい癌の一つですので、いかに早く発見して、早く治療するかということにかかっています。そのために検診をしているのです。呼吸器の専門外来のある病院を受診されることをおすすめします。ではまたいつでもメイルをください。

(返事)1998.12.22
早々にお答えをどうもありがとうございました。考えてみます。

→ガンに関する一般的な相談 →見出しページへ


[いずれ癌になる可能性が高いので手術と言われた]

(相談)1998.9.11
父(64歳)の事でご相談したいと思います。病院にて検診の結果右肺上部に影があるとのことで細胞診を受けたところ異常が見つかり手術を勧められています。自覚症状もなく、まだ癌ではないとのことですがこのままではいずれ癌になる可能性が高いとのことで来週にでも、手術をすることになっていますが、この段階で果たして手術は必要なのか、また手術を受けたことによるダメージはないのか心配です。主治医は手術が簡単かつ安全であるといいますが、本人や家族は少し納得できないでいます。情報が少なくて申し訳ないのですが先生の良きアドバイスをお願い致します。

(答え)1998.9.11
お答えします。「右肺上部に影があり、細胞診で異常が見つかり手術を勧められた」「まだ癌ではない」「いずれ癌になる可能性が高い」ということは、癌に非常に近い細胞があるということだと思います。その場合には、やはり手術をして、あやしい部分を取って、それを詳しく調べてみることになります。精密検査と治療を同時に行うということです。時期が早い(腫瘍が小さい)場合には、診断がつきにくく、はっきりするまで待つよりは、手術をして調べてもらうほうが良いと思います。進行癌であれば、誰が診てもはっきりしていて、迷うことはありませんが、肺の進行癌は手術をしても治ることは少ない病気です。「手術が簡単かつ安全である」ということですので、おそらく胸腔鏡手術といって、小さな穴を開けて内視鏡で行う手術か、それに近いものだと思います。納得できるまで主治医に話を聴いて、納得できれば手術を受けることにされるのが良いでしょう。「情報が少ない」ということは、まだ十分説明を聴いていないということです。分かるまで聴いてください。ではまたいつでもメイルください。

(相談)1998.9.14
さっそく、ご返事をいただき、本当にありがとうございました。先日は、私自身少し動揺し、頭の整理もつかないうちにメールを出してしまい失礼いたしました。乱文にもかかわらず、とても分かりやすいご説明をいただき感謝いたしております。あれから、少し落ち着いて、本やその他からいろいろな情報を集め本人も含め、家族ともいろいろ話し合いを持った結果、やはり今の病院だけで結論をだすことはやめ、他の大きな病院(公立や大学付属)をもう一度受診したほうが良いのではないかという事になりました。現在、父が受診している病院はある病院からの紹介で行ったものでこの地域では、名の知れた総合病院です。しかし主治医の先生の説明も私達にとっては納得いくものではなく、検査の仕方にも少し疑問があるのです。(肺ガンの検査ではまずたんの中に癌細胞があるかどうかを調べるということですが父は、その検査を受けておりません)、手術の方法も、先生がおっしゃるような胸腔鏡手術というものはなく(その様な方法があることも、先生のメールで初めて知りました。)右肺の上部3分の1切除するというものでした。私達からするとまだ癌でもなく、いずれ癌になる可能性があるという段階で、簡単に切除してしまって良いのか、また手術による何らデメリットが無いものか、そこが一番不安だったのです。という訳で、今週予定されていた手術を一旦キャンセルしてもう一度、社会的信用のある大きな病院で検査していただこうと思うのですがいかが思われますか。それから、その「胸腔鏡手術について、もう少し詳しく知りたいのですが、それを受けると、進行癌であるか否か確実に分かるのでしょうか?また、その結果、進行癌でないとしたら、肺を切除しなくても良いのでしょうか?また、他の病院を受診するにあたっての注意すべきポイントなどがあれば教えてください。

(答え)1998.9.14
お答えします。大変勇気ある判断と決断だと思います。もう一度、他の病院で診てもらって、意見を聴くことをセカンド・オピミオンといって、先進国では常識ですが、日本ではなかなかできないようです。本当は診断した医師の方から、「希望があれば、○○病院でも、診てもらって下さい」という提案があるべきです。特に「手術」という治療は、やり直しができませんので、専門病院で専門の医師の診断を受けるべきです。日本では、どの病院のどの医師が、肺癌の専門で肺癌の手術を沢山手掛けていて、手術が上手であるというような情報がほとんどありません。噂や口コミ、それに本や雑誌に出ている情報で判断することが多いと思います。はっきりいって、客観的で、正確な情報はありません。大学病院が必ずしも良いとは限りませんので、肺癌の専門医を探してみてください。あわてることはありません。

ところで、私の方からの質問です。痰の検査であやしい細胞が見つかったのではなかったのですか?どのような方法で細胞診が行われて、どのような結果(数字で現します)でしたか?それから、肺の右上には「腫瘤陰影(レントゲンやCTで映るような影又は固まり)があるのでしょうか?その大きさはどれくらいでしょうか?

前回も言いましたように、早い時期の癌の場合には、診断はかなり困難です。肺癌であるという診断は、一度でも癌細胞が見つかれば、それで確定できますが、癌でないという診断はきわめて困難です。結局、切除してみないと分からない場合もあります。デメリットの無い手術はありません。メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットが大きい場合に手術をします。デメリットが小さければ(軽くて安全な手術であれば)、手術適応(手術してもよいという判断)は拡大されて、手術することになります。

胸腔鏡手術は小さな傷から、内視鏡を入れて、肺を部分的に切り取る手術です。肺の手術を沢山している病院であれば、必ずしていますが、病巣(腫瘤)のある部分の位置や大きさによって、できる場合とできないばあいがあります。細胞診と違って、切り取った組織(腫瘤全体)を調べることができますので、診断は確実です。もし癌であれば、リンパ節郭清などの必要に応じて、開胸手術が必要となる場合もあります。ではまたいつでもメイルください。

(返信)1998.9.16
喀痰検査は、一度も受けていません。そもそも一番初めは、耳たぶのすぐ後ろに大豆より少し大きいグリグリ(腫瘍?)が出来、それが心配で受診したのですが、すぐに胸部レントゲンを撮るように言われたのです。「肺に異状があるとそこへ(耳たぶの後ろ)あらわれるのですか?」と本人が質問したそうですが、答えは、「それと肺とは、関係ない」とのことでした。実際、そのグリグリは後日、注射器でぬき、中からは、無色透明の液体がでてきただけで、何ら問題は無いと言うことで、無くなってしまいました。それなら、なぜ肺の検査をということになったのかがよく分からず、それは主治医に質問してもあいまいだったそうです。

と言う訳で、父は最初に胸部レントゲンとCTを撮り、2回目の受診の時に気管を調べるからということで、内視鏡を入れました。そして、その時に細胞を取られたと言うことです。そして、3回目に全身のCT, MRI。そして次に骨の撮影をしました。結果はその都度、弟(本人の息子)が一緒に聞きに行き、いずれも、異状なしとのことでした。

細胞診の結果にも異状な数値は出ておらず、レントゲンのフイルムで、このあたりに影がありますと、見せられたものは、かたまりではなく、もやの様にうっすらと白くなっているだけで、それが、素人には異状なのかどうかは、はっきり言って分からなかったと言うことです。CTの結果を示しての説明はなかったそうです。場所は、右の鎖骨の下で、鎖骨に隠れてよく見えないとの説明を受けています。

(答え)1998.9.16
メイルありがとうございました。喀痰検査は一度も無し、胸部レントゲンとCTを撮り、2回目の受診の時に内視鏡検査(細胞診)、3回目に全身のCT, MRI、骨の撮影。結果はいずれも異状なし(細胞診の結果も異状なし)、レントゲンで「もやの様にうっすらと白い影」、CTの結果を示しての説明はなし。

以上のことから分かることは、手術が必要という理由は見当たらないということです。少なくとも、細胞診で癌細胞がみつかるか、CTで腫瘤陰影がなければ、手術はしないと思います。この病院のやりかたは、いわゆる「検査漬け」の典型的な例のように思われます。転院が正解だと思います。ではまたメイルを下さい。

(返礼)1998.9.20
いろいろと親身になってご相談にのっていただき本当に、有り難うございました。父も心から感謝いたしております。病院をかえ一から検査しなおしてもらおうと思います。また、何かありましたらメイルを差し上げますのでよろしくお願いします。心から御礼申しあげます。

(答え)1998.9.21
メイルありがとうございました。「肺癌の疑いがあり、手術が必要」と言われたわけですから、肺(呼吸器)専門の医師がいる病院に行く必要があります。ちょっと気になることがある場合や風邪などの軽い病気の場合は、まず近くの(できれば、かかりつけの)医師に診てもらいます。専門的な診断(検査)や治療が必要な場合には、最初に診てもらった医師が紹介してくれると思いますが、この場合医師にまかせますと、その医師の出身大学などの人脈に限られることが多く、結局最初の医師(病院)選びで運命が決まってしまいます。一般の人にとって、医師や病院についての客観的な情報はほとんどありません。「○○の名医何人」というような本もありますが、あまりあてになりません。マスコミの情報には、惑わされない方が良いでしょう。自分で納得できる医師や病院を選ぶ以外にないと思います。ではまたいつでもメイル下さい。

→ガンに関する一般的な相談 →見出しページへ


[転移性肺癌と咳]

(相談)数野1998.1.25
お元気ですか?福山の数野です。田中先生、教えてください。66歳の転移性肺癌の女性です。5年前に上行結腸癌で、右半結腸切除術を受け、1年半で肝転移のため肝左葉切除術を受けました。さらに1年半で多発性肺転移が現れました。ハスミワクチン、LAK療法、佐藤療法(BRP療法)などをしていますが、次第に増悪し、左肺は完全に無気肺となり、右肺の転移巣も増大しつつあります。昨年9月ごろ一時は呼吸困難と疼痛のため全身状態がかなり悪化しましたが、在宅酸素療法とMSコンチンの服用で見違えるように落ち着き、現在通院中です。

最近、咳が次第に多くなり、困っています。咳き込むと呼吸困難になり、出血の心配もありますし、特に夜間に咳が多く、呼吸困難と不眠、不安のために衰弱しています。治療方法を教えてください。

(答え)1998.1.28
数野先生お便りありがとうございました。tereminal stage(末期状態)の呼吸困難のコントロールは本当にやっかいですね。呼吸困難感と咳に関しては、モルヒネの効果に期待したいところです。コンチンをお使いのようですが、少しずつdose up(増量)はいかがですか?御存知とは思いますが、pain(疼痛)に使用するより少量のモルヒネで、dyspnea(呼吸困難)のコントロールができると言われています。MSコンチンでは徴調整が難しいので、モルヒネ水(塩酸モルヒネ10J十単シロップ2cc+加水して1Occとする)を、適宜5M(=5mg)程度ずつ、追加していくのはいかがでしようか?COPD(慢性閉塞性肺疾患)の既往がある場合は、ゆっくりdose upする必要がありそうです。在宅ということなので大丈夫かと思いますが、補液が入りすぎていて、咳、呼吸困難が増悪するケースもありました。dry(脱水)に傾けた方が楽なようですね。また、抗不安剤で呼吸困難感が劇的に改善した例も経験しました。横隔膜や呼吸筋の緊張を和らげるのでよさそうです。また、夜間睡眠の確保にも有効と思われます。セルシン2−5mgを眠前から使い、1日3回まで増量していいと思います。予後の見通しとも関係ありますが、リンパ管症や狭窄があるようなら、リンデロンも試してみても良いかも知れません。(1−4mg程度でしようか?)どれも教科書的で申し訳ありません。呼吸困難にはMST(morphine,steroid,tranquilizer)と覚えましたが、現実はなかなかうまくいきません。イギリスのtextbook(教科書)では。病態をとわずモルヒネの吸入療法を勧めていますが、きちんと証明されておらず、いま、私がpi1ot study(試験的研究)中で、近いうちにdouble blind/randomized crossover trial(二重盲検試験)をしたいと計画中ですが、どうなることやら。お役にたてず、申し訳ありません。またなにかありましたら、ご運絡下さい。ホームページの旅行記も楽しませていただいてます。田中桂子(国立がんセンター東病院呼吸器内科医師)

→ガンに関する一般的な相談 →見出しページへ