[卵巣癌2]

[卵巣嚢腫で手術をしたら一部に癌があり未分化胚細胞腫と言われ定期検査を受けている]
[卵巣癌で3回の手術と化学療法を受けたが転移した、代替療法は?]

[卵巣癌で手術と化学療法を受けたが10ケ月目に再発して癌性腹膜炎]
[片側の卵巣腫瘍と反対側の卵巣の一部を摘出した結果、卵巣癌だった]

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[卵巣嚢腫で手術をしたら一部に癌があり未分化胚細胞腫と言われ定期検査を受けている]

(相談)千葉県2000.1.21
はじめまして、相談にのっていただきたくてメールを書きました。わたしは、22才の女性で、現在大学4年生です。去年の10月5日に片側の卵巣を摘出する手術を受けました。手術前は卵巣嚢腫か、もしかしたらガンの疑いがあるといわれていたのですが、手術後の検査で「未分化胚細胞腫」という若い人に多いガンだということがわかりました。ただ、これは中間性のものだしガンが含まれていた腫瘍の部分をすっぽりと取り除けたので10月14日には退院することができました。しかし、その後定期検診ということで2回ほど病院に行き、採血をして腫瘍マーカーで再発していないか調べたのですが、一つの項目の数値だけがだんだん高くなってきているんです。(その項目はどこの臓器のことなのか聞けなかったのですが、卵巣関係ではないそうです。)他の項目の数値は一応正常値の範囲までさがっています。今、3度目の採血をして腫瘍マーカーの結果を待ってるところですが、手術後の先生の説明で「80%は再発の可能性はないでしょう」と言われていたので、非常にショックです。マーカーの値がさがらないということはやはり再発したということなんでしょうか?このガンの場合化学治療はあまり効かないので、延命治療ということになるし、生存率も低いと言われたのですが本当なんでしょうか?もし、それが本当なら化学治療を拒否することはできるんでしょうか?それと、最近腹痛が頻繁におこります。特に、おへその真横(右側)が痛むことが多くなってきたんですが、何かガンと関係あるのかと非常に不安です。この部分には、何の臓器というか器官があるんでしょうか?いろいろたくさん質問してしまって申し訳ありません。やっと就職も決まって一安心できると思っていた矢先に、こんな状況になってしまい精神的にも非常にまいってしまっています。相談できる人もいないし、医学書等を読んでも、あまりこのガンについて書かれていなかったので、どうしていいか困っています。質問に回答していただけるととてもうれしいです。また、参考になる本などがありましたら教えてください。どうか、よろしくお願いいたします。

(答え)2000.1.22
お答えします。大変御心配だと思いますが、メイルの内容からは卵巣嚢腫で手術をしたら、その一部に癌があったというラッキーなケイスと思います。それに「胚細胞性腫瘍」は抗癌剤や放射線療法が有効で完全治癒率の高い腫瘍です。

>しかし、その後定期検診ということで2回ほど病院に行き、採血をして腫瘍マーカーで再発していないか調べたのですが、一つの項目の数値だけがだんだん高くなってきているんです。(その項目はどこの臓器のことなのか聞けなかったのですが、卵巣関係ではないそうです。)

一番大事な点ですので、担当医に良く聞いて、必要な検査や治療は積極的に受けなければいけません。あいまいにしていると治療のチャンスを失うこともあります。

>他の項目の数値は一応正常値の範囲までさがっています。今、3度目の採血をして腫瘍マーカーの結果を待ってるところですが、手術後の先生の説明で「80%は再発の可能性はないでしょう」と言われていたので、非常にショックです。

医者は「治る可能性が高い」と言うかわりに「80%」と言ったと思います。ほとんど治ると考えるべきです。心の持ち方と生活習慣の改善が大切です。治ると、自分で治すと信じて闘うべきです。

>マーカーの値がさがらないということはやはり再発したということなんでしょうか?このガンの場合化学治療はあまり効かないので、延命治療ということになるし、生存率も低いと言われたのですが本当なんでしょうか?

繰り返しますが、担当医にきちんと聞いてみてください。ちゃんと治療すれば治ります。

>もし、それが本当なら化学治療を拒否することはできるんでしょうか?それと、最近腹痛が頻繁におこります。特に、おへその真横(右側)が痛むことが多くなってきたんですが、何かガンと関係あるのかと非常に不安です。この部分には、何の臓器というか器官があるんでしょうか?

医療は本人の意志に従って行われます。自分で決めることです。自分の命、自分の人生ですから。痛みの原因が何であるのか、担当医の診察を受けて、聞いてみてください。メイルだけではわかりません。その部分には色々なものがあります。

>いろいろたくさん質問してしまって申し訳ありません。やっと就職も決まって一安心できると思っていた矢先に、こんな状況になってしまい精神的にも非常にまいってしまっています。相談できる人もいないし、医学書等を読んでも、あまりこのガンについて書かれていなかったので、どうしていいか困っています。質問に回答していただけるととてもうれしいです。また、参考になる本などがありましたら教えてください。どうか、よろしくお願いいたします。

人生の大きな危機です。自分の力で乗り切らなければいけません。人間の、自分の生命力を信じきることです。まずインターネットで調べてみてください。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)2000.1.22
昨日、未分化胚細胞腫のことで相談にのっていただいた者です。早々の回答メール本当にどうもありがとうございました。今日、先生からの、胚細胞性腫瘍は治癒率が高いというメールを見て非常に驚きました。抗がん剤もよく効くのですか?わたしの主治医の先生の話とまったく正反対だったので、正直言ってとても困惑しています。主治医の先生は大学の教授もしており、かなり有名な方らしいのですが特にガンについて詳しいというわけではなさそうなので、とても不安です。特に、未分化胚細胞腫は医師になってからまだ2例しか接していないと言っていたので…。そんなにめずらしいものなんでしょうか?やはり、ガン専門の先生のいる病院の方がいいんだろうか、と最近考えています。この点について、何かアドバイスがありましたら教えていただけるととてもうれしいです。(お忙しくなかったら…)では、失礼します。

(答え)2000.1.24
お答えします。日本では大学の教授は研究と教育が主な仕事です。上手に患者さんを治療することには必ずしも熱心とは言えません。やはり癌を専門的に治療している施設が良いかと思います。ではまたいつでもメイルをください。

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[卵巣癌で3回の手術と化学療法を受けたが転移した、代替療法は?]

(相談)岩手県1999.5.2
始めまして、私は岩手県在住、○○と申します。現在25歳、子供はおりません。自分の病の事で悩んでおり、先生のご意見をお聞きしたいと思っております。始めに、私の病歴について箇条書き致します。

平成6年 始めての手術の結果、卵巣癌3期と診断を受け、その後5クールの化学療法を受ける(アドリアマイシン、シスプラチン)
平成7年 2度目の手術、再発が見られ5クールの化学療法(薬名同じ)
平成9年 3度目の手術、同じ場所に3センチ程度の再発があり1年間服用薬にて治療(UFT)
平成10年 左右の鎖骨の付近リンパ節に米粒大の腫瘍(3箇所)転移,化学療法を受ける(10クール,タキソール)
平成11年5月 外科手術にて腫瘍切除予定

始めて手術を受けたとき19歳という年齢もあり卵巣の一部と子宮の温存を希望しました。現在、鎖骨付近の腫瘍があるものの卵巣のほうは腫瘍マーカー、CTは平常です。主治医は今後タキソール及びシスプラチンの化学療法を勧めていますが、私自身化学療法に疑問を感じています。先日主治医と面談し、副作用がつらいこと、化学療法による鎖骨付近の腫瘍の縮小が見られなかったことなどの理由により化学療法をやめたいとの話をしました。そして今後代替療法に切り替えたいと思っておりますが、化学療法をまったく止めてしまうのにも不安感じています。今までの治療経緯より先生のご意見をお聞かせ下さい。

(答え)1999.5.2
お答えします。大変前向きに治療を受けておられることに感心しました。やはり卵巣癌の治療は、化学療法(抗癌剤治療)が中心です。治ると信じてがんばってください。参考までに一冊の本を紹介しておきます。化学療法に耐えて、難しい癌を治した人です。

奥迫康子著(家の光協会出版)
「真利栄ちゃんママがんばってるよ」絨毛がんに冒された母と子

ではまたいつでもメイルをください。

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[卵巣癌で手術と化学療法を受けたが10ケ月目に再発して癌性腹膜炎]

(相談) 仙台市1999.3.31
始めまして。 仙台市在住の○○と申します。患者は私の妻(40才)で、卵巣癌を再発してしまいました。経緯は以下の通りです。
・昨年5月卵巣癌(粘液性腺癌)と診断され、卵巣、子宮、大網膜、リンパ節の摘出手術を実施。
・6−8月抗ガン剤治療(タキソール,カルドプラチン)3クールを実施。
・10月に腸念転を起こし、小腸の一部を切除。
・これがセカンド・ルック・オペレーションの役目を果たし、その時点でのガンの転移は見られなかった。
・腫瘍マーカーの値はその後も正常範囲内であった。
・腸ねん転の手術以降は下痢が続く毎日となった。
・1月末から腹痛がたびたびおこり、2月に嘔吐を起こしたため再び入院。
・癒着性腸閉塞と診断され、絶食による保存的治療を3週間実施。
・改善が見られないので3月3日に剥離手術をした所、癌の再発が見つかり、小腸,大腸,腹膜への転移があった。腸閉塞は、癌性腹膜炎による癒着が原因と言われた。再び癒着部分のみの切除が行われた。
・術後4週間を経過しましたが、多少の便通はあるものの、まだ腸閉塞ぎみで絶食状態(水分は経口摂取)です。
・傷口の回復もあまり良くなく、まだ完全には塞がっていません。主治医は、傷口がふさがったら抗ガン剤治療(5−FUとピシバニール)を開始したいと言っています。確かに卵巣癌には抗ガン剤が効くと耳にしますが、実際に1度目は効かなかったことでもあり、有効性に疑問を感じています。主治医も、薬に耐性のある腫瘍なので、やってみないと判らないと言われました。体重も入院前に比べて5キロ,腸ねん転を起こす前と比べると8キロも痩せており、この様な患者の状況で抗ガン剤治療を行うのには非常に不安があります。(特に抗ガン剤の腸への副作用が心配です)とは言え、もう既に術後4週間を過ぎており、体力の回復を待っていてはガンが進行し、それにより再度腸閉塞になってしまうことがそれ以上に心配です。養子免疫やリンパ移入,佐藤式などの免疫療法も考えているのですが、即効性と言う意味ではやはり抗ガン剤が良いのかと悩んでいます。何かアドバイスを戴けないでしょうか。(長文になってしまい申し訳ありません。)

(答え)1999.4.1
お答えします。大変ご心配のことと思います。昨年5月に手術を受け、6−8月抗ガン剤治療、10月のセカンド・ルック・オペレーションではガンの転移は見られず、腫瘍マーカーも正常範囲内であった。にもかかわらず、1月末から癒着性腸閉塞状態となり、3月3日の手術で癌の再発と転移があり、癌性腹膜炎の状態とのこと、残念ながら末期的状況のようです。主治医と良く相談して、本人の意志を尊重して残された時間をどのように使うかということを考えなければいけないと思います。徹底的に闘う方法から、何もしない方法まで、選択肢は沢山あります。残念ながら決めてはないと思いますので、どれもやってみないと分からないということです。参考となる本を紹介しておきます。どちらも同じ年頃の女性の患者さんです。まず、徹底的に闘ったひとの本は、奥迫康子著(家の光協会出版)「真利栄ちゃんママがんばってるよー絨毛がんに冒された母と子」です。闘わなかったひとの本は、最近出版された「告知ー外科医自ら実践した妻へのガン告知と末期医療」(熊沢健一著、マガジンハウス出版、1500円)です。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.4.1
やはり、末期ということなのですか。主治医は、消化器系のガンならば末期といえるかも知れないが、卵巣ガンなので末期とは言えないとおっしゃっていました。理由は抗ガン剤が効くからと言うことらしいのですが、抗ガン剤のことを考えなければ、症状的には末期ということなのでしょうか?治療のしようが無く余命があと何ケ月、と言う時に末期と言うと、何かの本で読みました。私の患者もそういう状態なのでしょうか。

(答え)1999.4.2
お答えします。癌性腹膜炎という状態は、効果的な治療方法がないので、末期癌と言えます。どのような状態でも「治療のしようが無い」ということはないのですが、問題は治療の効果があるかどうかということです。どの程度の効果を期待するかということかもしれません。あなたの期待と主治医の言う効果とが一致しているでしょうか。よく話しをしてみてください。「卵巣ガンなので末期とは言えない」「抗ガン剤が効くから」ということでしたら、治療を受けるべきだということになります。この場合の主治医の「効く」という意味をよく聴いて、納得できれば治療を受けるべきではないでしょうか。ではまたいつでもメイルをください。

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[片側の卵巣腫瘍と反対側の卵巣の一部を摘出した結果、卵巣癌だった]

(相談)札幌1998.12.18
はじめまして。26才(未婚)の卵巣ガンと診断された者です。インターネットでこのホームページを知り思い切ってメールを出してみました。今、主治医に勧められている手術を受けるかどうか迷っており、相談に乗って頂きたいと思っております。まず、これまでの経過ですが、今年の8月中旬に片側の卵巣に腫瘍があると診断を受け、8月下旬に腫瘍の摘出手術を受けました。その手術では、片側の卵巣・卵管・腫瘍と、もう片方の卵巣の一部を摘出しました。病理検査の結果、腫瘍は悪性のもので確か、粘液性のうほう癌と言われたと思います。一部分だけ摘出したもう片方の卵巣と子宮には癌細胞はないということで、片側の卵巣と子宮は温存できるだろうと言われております。その後、予防のために化学療法を受けるよう主治医から説明があり、10月から月に1回づつ、3回の治療を受けるように言われました。今、3回目が終わったところです。使用した薬は、最初の2回は「タキソール」と「パラペラチン」という薬を1日で点滴するものでしたが、2回とも、治療後3日目に腎臓から出血が起こり、(泌尿器科の先生にみてもらったところ、出血の量はそれほど多くないとのことでしたが)血尿が出ました。尿からいろいろな検査をしたようですが、問題は見つからず、2回目の治療のあと腎臓の血管造影の検査もしましたが、血管にも異常がないということで、腎出血の原因が薬にあるとの判断から3回目は「トポテシン」という薬に変えました。「トポテシン」の場合は2週間おきに3回やって、1回分だとの説明でしたが、「トポテシン」の1回目の点滴の最中に強い吐き気が起こったため、薬が体に合わないということと、予防のために行っている治療だからという主治医の判断で、それ以後の化学治療は止めることになりました。以上が今までの経過です。

そして、3回目の治療の後、主治医よりリンパ節郭清の手術を受けるように言われました。理由は、リンパ節の中に癌細胞がないことを確認するためで、微小のものはとって顕微鏡で見ないとわからない、また、癌細胞はリンパ節にのって広がっていく場合が多いのでその流れを事前に切ってしまうため、とのことでした。また、マニュアル通りでいけば、リンパ節に癌細胞がないことを確認して、はじめて治療を終わりにすることができるのだとも言っていました。しかし、8月に行った手術では肉眼的にはリンパ節に癌が広がっている様子もなかったし、恐らく何もでてこないだろうという予測はしていると主治医の先生は言っていました。手術の予定日は年明け、1月12日です。私の希望としては、当然ながら、できるだけ手術はしたくないという気持ちがあります。同じようにリンパ節の手術を受けた他の患者さんをみても、足がむくむだけでなく、パンパンに張って、痛みが続いている人も何人かいらっしゃいます。また、リンパ節をとったからといって、他に絶対転移しないという訳ではないと、聞いたこともあります。そしてなによりも、何も悪くないかも知れないものをとってしまう必要性というのは本当にあるのか、というところに疑問があるのです。今、本当に悩んでいます。手術を受けるべきかどうか、先生のご意見をお聞きできたら、と思います。

(答え)1998.12.18
お答えします。卵巣癌は手術と化学療法(抗癌剤治療)を組み合わせて治療します。手術は、片側の卵巣・卵管・腫瘍と、もう片方の卵巣の一部を摘出し、病理検査の結果、粘液性のうほう癌で、一部分だけ摘出したもう片方の卵巣と子宮には癌細胞はないということですので、化学療法を受ければ一応治療は終了したものと考えてもよいと思います。参考までに現在日本で最も一般的に使用されている医学参考書から、卵巣癌のリンパ節郭清についての部分を引用してみます。

卵巣腫瘍(悪性)(吉川裕之  東京大学助教授・産科婦人科)

リンパ節郭清の必要性については異論のあるところであるが,少なくとも腹腔内1・2期症例では,高分化型粘液性腺癌を除いて後腹膜リンパ節郭清の意義があると考えている.

 片側の卵巣のみに腫瘍のある1a期では妊孕性温存のための術式(片側付属器摘出術/対側卵巣楔状切除術/部分大網切除術/骨盤・傍大動脈リンパ節生検)が可能である.最近では上皮性卵巣癌1c期に化学療法を十分に行うことを前提に妊孕性温存手術を行う施設も多い.また若年者の多い胚細胞性腫瘍では進行期に関わらず,子宮と対側卵巣が正常であれば妊孕性温存手術を行うことも一般的になってきた.

 観察を目的とするSLO(セカンドルック手術)は卵巣癌の全例に有用とされたこともあるが,現在では臨床試験として新しい化学療法の評価をその終了時に行う以外は適応がないとする考えもあり,個々の症例でその価値を検討すべきである.(今日の治療指針1998年版/(c)1998 IGAKU-SHOIN Tokyo)

タキソールの副作用の中に「血尿」が含まれています。とりあえず以上お答えします。いずれにしても、高度に専門的な治療を必要としますので、慎重に考えてみてください。ではまたいつでもメイルをください。

(追加)1998.12.31
その後、いかがおすごしでしょうか。卵巣癌の治療については、色々な意見がありますので、函館市の秋山記念病院の秋山實男先生(私の大学の同級生)の意見を聴きました。参考にしてください。

メイルの内容からは、病期(進行度)は卵巣癌ステージ1aの症例です。卵巣癌の治療の原則は病期に関わらず、子宮全摘術と両側卵巣摘出術です。一側に卵巣癌があれば、対側への転移率は40%以上あるからです。さらには、術後療法として抗癌剤による化学療法を3クール行うことが基本です。今回の症例では、26才の未婚であることからスタッフの意見がかなり分かれているようです。非常に初期に見つかったから出来るだけ保存的に行おうとの最初の意見と、予後を考えると今回の治療では不安であるのでリンパ節郭清をと、後で意見が出ています。○○病院産婦人科は北大産婦人科の関連病院です。 レベルは北海道でもトップクラスです。このメイルの内容で、最も問題となっているのは最初の説明が、子宮温存をほのめかした非常に安易なものであったところです。 粘液性嚢胞癌は非常に予後の悪いもので、抗癌剤の効果が少ないグループです。私がこの症例を担当すれば、最初の手術は同じ術式となるでしょうが、片側に癌がでていれば予後を考えると抗癌剤投与後、セカンドルック手術を行い、子宮全摘術及び対側付属器摘出の必要性を説明します。若くて、将来もあるでしょうが、生き延びて子供を生み、母となってその子を成人まで育てる可能性を考えると、危険を覚悟で子宮、卵巣を残す意味がないと考えます。勿論本人の生き方にもよりますが、はっきりとした本当の意味でのインフォームド・コンセントが必要です。ことここに至っては、最初の手術でリンパ節腫大がなければ、中途半端なリンパ節郭清は意味がないはずです。やるなら、全てを摘出する手術であり、しないのならこのまま治療を終わる、二者択一です。主治医のニュアンス、背景がわかりませんので充分なコメントは難しいですが、all or nothing を基本とすれば結論はつけやすいはずです。卵巣癌には、中庸の治療はありません。

<参考>
卵巣癌の病気の進行度は、国際進行期分類によると、1期(卵巣内限局)、2期(骨盤内蔓延)、3期(腹腔内蔓延、リンパ節転移)、4期(遠隔転移)のように分類されますが、卵巣癌は症状が現れにくく、3期の状態で発見される場合が多いようです。
卵巣癌の特徴は癌細胞の種類(組織型)が一定でなく細胞の種類によって色々な癌の場合があることと、化学療法がよく効く場合があることです。
つまり、卵巣癌の治療は手術と化学療法の組み合わせが最も一般的で基本的に必要な治療となります。卵巣癌の場合には、たとえ進行癌の状態でも正確な進行度と組織型を調べて治療方法を決めるために手術をすることが必要です。

(経過)1999.1.30
年度末にご相談のメールを差し上げた卵巣ガンのものです。リンパ節郭清の手術を受けるか否かについて親身に相談にのって頂きありがとうございました。2回目のメールを頂いた後、自分なりに考えた末、結局予定通り1月12日に手術を受けました。今は順調に回復しております。病理検査の結果摘出したリンパ節・大網・盲腸からは癌細胞は検出されず、治療はこれで終わりになり、3月末ごろから職場復帰が可能と言われております。計画通り健側卵巣及び卵管と子宮は温存しております。温存した場合のリスクも教えて頂いたわけですが私としては先のことを危ぶむより今を大事に生きたいと最終的には思い、主治医の先生の判断に従うことにしました。退院したら結婚します。子供も生むつもりです。見ず知らずの私のようなものに力をかして下さったこと、お礼申し上げます。今後、またこの病気のことで悩んだときには身勝手ながらまたご相談するかもしれませんがその時はよろしくおねがい致します。ひとまずはお礼とご挨拶まで・・・。本当にありがとうございました。

(返事)1999.1.30
メイルありがとうございました。これからも今を大切に前向きに生きてください。またいつでもメイルをください。

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