[卵巣腫瘍のこと]

[卵巣腫瘍の手術の結果一部悪性で化学療法と再手術が必要と言われたが不安]

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[卵巣腫瘍の手術の結果一部悪性で化学療法と再手術が必要と言われたが不安]

(相談)新潟県2000.7.3
数野先生、はじめまして。61歳になる母の病状について相談にのってもらいたく、連絡しました。5月29日に卵巣腫瘍の手術を行い、子宮と卵巣を取り除きました。肉腫の疑いがあると言われ、病理検査は術後1ヶ月以上かかり、結果は悪性が一部あるとのことでした。腫瘍マーカーは(-)であり、リンパを一箇所取って検査したが異常はないとのことでした。急遽明日から入院となり、2種類の薬を投与し、半年後には結果を見るための再手術を行う予定です。母は5月中旬から水溶性アガリクスを飲んでおり、少しはよくなっているのではと思い、”現状”の検査を依頼しましたが、術後1ヶ月以上も経過しているので、早く治療に取り掛からなければならないと言われ、やむを得ず、入院させることにしました。ですがどうしても現在の病状を知りたいのです。本当に手術しなければ病状を知ることはできないのでしょうか。そして「すぐに薬を投与すべきなのか。」「再手術をしなければ病状は分からないのか。」不安で一杯です。誰に相談していいのか分からず悩んでいた時に、このホームページを知りました。早急の回答をどうぞ宜しくお願い致します。

(答え)2000.7.4
お答えします。大変ご心配のことと思います。病院によって考え方や、治療の方法が違うと思いますので、担当医に納得できるまで説明を受けてください。基本的には、癌細胞の種類と進行度(ステージ分類)によって、手術の方法や、化学療法(抗癌剤治療)の方法が違うと思います。手術で再発の有無を確認する方法(セカンドルック手術)は、従来は一般的に行われていましたが、最近は必ずしも行うとは限らないようです。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)2000.7.4
早速のご回答ありがとうございました。現在の病状は手術をしないと分からないのでしょうか。他に病状を検査する方法はないのでしょうか。そのことについて主治医に納得できる回答を求めましたが、うやむやに説明され、医師に対する不信感がつのるばかりです。もう少し親身になって、説明をしてほしいのですが、それが今の主治医では大変困難です(手術をするにしても・化学療法をするにしても、きちんとした説明と現在の病状を把握した上でやってほしいです)。できることなら病院を変えたいくらいです。病院は県内でも指折りの規模ですが、不信に感じます。どうか返答を宜しくお願い致します。

(相談)2000.7.4
こんばんは。たびたび恐縮です。今日入院ということで病院へ行ったわけですが、病状やきちんとした治療法の因果関係の説明がないまま入院して、勝手に治療を進められるのが嫌だったので、思いきって先生に事情を聞くことにしました。(本来ならこちらが聞かなくても医師の方から説明するのが当然なのでしょうが・・・) すると以前は肉腫だと言っていたことを撤回して、上皮に出来る癌の疑いと大動脈に影(良性か悪性かわからない)が見えるため、化学療法による治療をすると言われました。実際このような病状でやはり化学療法がベストなのでしょうか。術後1ケ月が経過しましたが、本人はいたって元気です。よって今現在の病状を知る方法はないのでしょうか。完治したかどうか手術しなければ分からないのでしょうか。他に方法があればどういう手段で検査するのでしょうか。手術は今すぐでないにしても、本人の体力等を考えると不安です。また、医師にもし上記の病気なら5年も命がないといわれましたが、本当にそうなのでしょうか。

(答え)2000.7.5
お答えします。医学は進歩していますが、まだまだ本当に分からないことが多いのです。時間が経ってみないと分からない。手術をしてみないと分からない。抗癌剤を使ってみないと分からない。そして、人の寿命は分からない。分かっているのは、誰も、必ず、いつかは死ぬと言うことです。分からないということを言えない医者が多いのです。参考になる新聞記事がありましたので、紹介しておきます。

[医療不信]「わからないのすすめ」に反響
「診断は絶対ではない」医師も患者も認識を
朝日新聞 2000年6月17日

今月九日から三回にわたって掲載した「医療不信」に対し、三百通を超える投書や電子メールが寄せられた。九日付の紙面で、診断ミス(誤診)を防ぐため、「まずは『わからない』のすすめを」と呼びかけたところ、約三十人の医者や患者から意見をいただいた。あいまいな診断を下すのならむしろ「わからない」と言ってしまってはどうか、という提言だったが、医師からは「そんな無能な医師だと患者が逃げてしまう」などと手厳しい批判もあった。一方、患者の方は、むしろ「ごまかさず『わからない』と言ってもらった方が信頼できる」など、賛成意見がほとんどだ。(くらし編集部・佐藤純、辰濃哲郎)

投書を何度も読み直してみると、この「わからない」は、医療不信の根っこにあるさまざまな問題点…に共通するキーワードである気がしてきた。ある小児外科医の投書。「医師も人間なのだから、わからないことはある。患者にうそをつくことと、安心させることとは違う」と基本的には賛成だ。しかし、一方で、「医師も患者もそれを望んでいない。一番の問題は医師のプライドと、患者さんの主体性のなさ」という。ある女医は、「患者の訴え、症状、所見から、何が原因なんだろうという科学者の探求心があれば、『わからない』という言葉は出てくるはず。メンツのような感情は捨て去らないと。医療は完全でも確実でもない」と言い切る。二人に共通するのは(1)診断は絶対ではない(2)過度の「プライド」を捨てなければならないーということ。だが、患者がそれを受け入れてくれるかどうか。「お医者様に治療をお任せする」という「パターナリズム」はいまでも健在だ。その患者に向かって、診断は絶対ではないことを表明することは、勇気のいることらしい。しかし、患者側の意見を読んでみると、医者が思っているほど医療に対する意識は低くない。寄せられた多くの投書は医師の誤診に触れている。本当に誤診かどうかは検証のしようがないが、問題なのは、患者が治療に納得していないということだ。九日付の紙面で、腹痛、おう吐、下痢の症状を訴えて病院で診察を受けたが、三度も「風邪による腸炎」と診断され、最後は盲腸による腹膜炎で、手術後に死亡した女児のケースを取り上げた。「同じケースです」といって投書をくれたのは、三十代の母親だ。六歳の子供が同じような症状で診察を受けた。違っていたのは、病院の医師が「原因がわからない」と言ってくれたことという。医師は、盲腸と急性胃炎の両方を疑って、どちらでも対応できる治療法を入院しながら継続したという。最後には、手術を決断し、盲腸による腹膜炎にもかかわらず、無事回復した。医師は親に、なぜ鎮痛剤を使わないのかなど、治療法をそのつど説明していた。処置がベストだったかどうがは別として、医師は患者と向かい合っていた。このほかにも意見が相次いでいる。「命まで危険にさらすよりは、わからないと言ってくれた方が信頼できる」「わからないから、と言って、別の病院を紹介してくれた」「わからないので医学書をチェックしてきますというので、一瞬信じられなかったが、その真摯な姿勢がうれしかった」

まとめてみると、医師は(1)わからないから患者に考え得る可能性について説明しなければならない(2)その可能性に照らし合わせて別の病院を紹介しなければならない(3)患者も「医師は絶対」ではないことを知り、一緒に治療法を選んでいかなければならない。つまり「わからない」と言うことは、患者に対して責任をもつということで、患者も診断が絶対であるという幻想を捨てなければならないのだ。

内科医を夫にもつ妻からの投書があった。夫が研修医の時代、相当な裁量権が与えられていることを知って驚いた。夫は「自信がなくても患者に悟られないようにするのが医者の力量のひとつ」という。しかし、この妻は「若いうちから『絶対』という鎧をかぶっていると、何か迷ったりしたときに決断を急いでしまったり、絶対であるという錯覚に陥ったりするのではないか」と懸念したという。印象深い投書があった。「医師と患者の断絶をなくし、『ブラックボックス』を共有できないだろうか。医師は豊富な専門的な知識を持っている。どんなにわからなくてもいくらかの情報を持っている。それを患者と一緒に考える。患者という存在を交えた『新しい診断』は医師と患者の障壁をとりのぞかせ、医療への関心へと導き、この関心が国民の健康を気遣う心となってくれれば」この投書は、医学部を目指す高校三年生の女生徒からだ。

がんも、自分で治す病気です。自分が自分の主治医だと思ってもらってください。本人と家族の熱意で、医師や病院を動かすくらいでないと、納得のできる対応は受けられないかも知れません。それが日本の病院の現実です。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)2000.7.6
数野先生、大変お忙しい中、迅速な回答ありがとうございました。お蔭様で家族そして本人も勇気づけられ、明日からの治療に入ることができます。また、不明な点・不安な点等がありましたら教えてください。

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