[膵臓癌の診断に関すること]

[背部痛と腹痛があり腫瘍マーカーが上がっているがCTでは異常がない]
[腫瘍マーカーとCTと超音波検査で膵臓癌の疑い?]
[半年以下の余命の膵癌で、治療は痛みの緩和だけと言われたが黄疸のためにPTCDをした]

[急性膵炎の症状で入院して検査したら腫瘍と言われた]

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[背部痛と腹痛があり腫瘍マーカーが上がっているがCTでは異常がない]

(相談)1999.3.7
突然のメール申し訳ございません。私、今月で35歳になる薬剤師(男)です。一昨年の平成9年の4月に便に血が混じるとのことで簡単な気もちで隣のクリニックで血液検査を受けました。その結果CEA1.5、CA19-9は56.2と異常値を示しました。早速腹部CT及び胃及び大腸の内視鏡(軽い外痔核があるとのこと)を実施しましたが異常は認められませんでした。その後CA19-9は、6月55.4、7月72.9、8月43.0 エエラスターゼ212 9月45.2 10月46.9 12月44.1CEA1.2 と推移しその間、8月にはヘリカルCTによる腹部検査も実施しましたが異常は認められませんでした。平成10年に入り2月及び8月にも通常の腹部CTを実施しましたが異常は発見されていません。平成10年のCA19-9の推移は1月47.6 2月56.9 3月38.2 5月39.5 7月40.1 8月50.3 9月56.2 12月62.0です。この間アミラーゼに異常は一度も認められておりません。また、腹部エコーにても膵管の拡張なども認められておりません。自覚症状としては検査の結果が出る前は何もなかったのですがその後は精神的なものかこの1年半腹部の痛みや背中が張るといった症状が続いています。黄疸や下痢、体重減少などもありません。たばこも吸いません。自分としては、他に関連する疾患を持っていないないのに1年半もCA19-9が横這い状態が続いているということは、膵臓以外の部位に癌が有るのではないかと考えているのですがいかがなものでしょうか。宜しくお願いいたします。

(答え)1999.3.7
お答えします。CA19-9は、炎症でも高値を示すことはよくあります。経過から見ても、もし癌があれば数値も高くなるでしょうし、なにか症状がでてくるはずです。なにか慢性の炎症がどこかにあるのではないでしょうか。かかりつけ医で、引き続き経過を診てもらえばよいと思います。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.3.8
お答えありがとうございました。前回のメールにも書きましたが、症状として腹痛及び背部痛があります。CTやUSでも異常がなく膵管の拡張等がなくてもこのような症状はでるものなのでしょうか。前回のCTから半年がたちますのでそろそろ再度CT検査を受ける予定です。

(答え)1999.3.9
お答えします。腹痛と背部痛をきたす原因は色々考えられますが、心配のない痛みもあります。定期的に精密検査を受けておられるようですので、担当の先生に良く聴いてみてください。また、「病は気から」という言葉があるように、あまり気に病んでいると本当に病気になることがあります。自分の健康は自分で作るように心掛けて、日常生活を改善してみてください。喫煙、飲酒、食生活、ストレス、運動不足、肥満などがもしあれば、改善してみてください。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1999.3.9
メールありがとうございました。確かに患者さんには病は気からといっているのに自分もそれに当てはまってしまっているような気はします。また、検査結果が出ましたら報告と供にご相談させていただきます。

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[腫瘍マーカーとCTと超音波検査で膵臓癌の疑い?]

(相談)1998.12.18
初めてメールいたします。昨日、”父(59歳)が来週膵臓癌の疑いで入院する”と母から聞きました。会社の健康診断でひっかかり、毎年秋には癌騒動が持ち上がる父です。去年は胃癌の疑いでした。もともと胃にポリープがあり、2年前に医師から”今は癌ではないけれど、定期的に受診するように”といわれたそうです。去年も、胃癌の疑いで再再検査までいき、胃カメラを飲んだものの、癌ではないと診断されました。今年も、腫瘍マーカー(CAE)で11.2(通常5以下)という値が出たので、再検査で病院へ行き、CTと超音波検査を受けたら、”膵臓が通常3cmのところが3.9cmに肥大している”ということで、来週5日間の入院で検査を行うそうです。月曜日に入院、火曜日の検査で、なぜ金曜日までの入院が必要なのか不思議と、母は悪い方に考えてしまっています(私もなのですが)。癌だった場合、そのままずっと入院して手術すると言われたそうです。父はお酒は飲みませんが、たばこは吸います。HPの他の人の相談内容を拝見すると、”膵臓癌はCTと超音波と血液検査でほぼ確定できる”と書いてあったので、やはり膵臓癌の疑いがかなり強いということなのでしょうか?父は黄疸もなく、痩せてもいません。現在のところとても元気です。背中と腰、みぞおちのあたりは昔から時々痛いと言っていましたが、とても心配です。以上、唐突なメールで申し訳ありませんが、お忙しいところよろしくお願いいたします。

(答え)1998.12.18
お答えします。膵臓癌は大変治りにくい病気ですので、医師はできるだけ早い時期に膵臓癌を見つけようとします。誰が診ても分かるような膵臓癌は、治療の方法がありません。もし早い時期の膵臓癌が見つかれば(それでも治る人は少ないのですが)、不幸中の幸いと思い、もし異常がなければ、良かったと思ってください。しかし、今は三人に一人が癌になり、亡くなる人の四人に一人は癌で亡くなっています。元気なときから、癌について、生と死について考えておくことが大切です。無事に検査が終わることをお祈りします。ではまたいつでもメイルをください。

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[半年以下の余命の膵癌で、治療は痛みの緩和だけと言われたが黄疸のためにPTCDをした]

(相談)1998.12.16
突然のメールで失礼します。4週間前より父(61歳)が膵癌と診断され、言葉にできぬほどの悲しみとショックで途方にくれながらも何とか私にできないものかと色々な情報を調べてみたところ先生をホームページを見つけ、他のネット上の中でも先生のご回答が一番わかりやすく、的確な印象を受けまして本当にわらをもつかむ思いでメールをさせていただいております。父の症状の経過としては今年の10月の上旬より便秘を訴えており、その1週間後より腹部の不快感、その1週間後に食欲不振、次に腹部痛、次に背部痛を1ヶ月間に症状が進んでいきました。父はもともとここ13年間糖尿病を患っており、その間もかかりつけの医師に症状を訴え、通常の胃カメラと内視鏡と血液検査をうけたところまったく異常がないので心因性の消化不良ではないかと言われ、特別な処置はしていただけませんでした。ところが最後の1週間ぐらいで痛みがひどくなり、再度病院に行ったところ超音波検査とCT検査を受けたところところ先生が青い顔して、緊急入院しろと言われました。その時私だけに膵臓がかなり肥大しており恐らく悪性腫瘍の可能性が高いと言われましたがとりあえず検査をすると言われました。それから10日間後にやはり進行性の膵癌だと言われ半年間以下の余命であり手術も化学治療も放射線治療もほとんど効果がないと言われ、残された治療法は痛みの穏和だけだといわれました。医師が言うには1年前の超音波ではなにも出ていなかったので進行も早いと言われました。

そこで先生にご相談したいことなのですが、私がとても疑問に思うことなのですが、父の医師はCT検査・MRI検査・超音波検査・血液検査・尿検査はしていましたが、その他の内視鏡的検査や細胞検査は父に聞いたところまだしていないそうです。私も色々なところで調べたところ膵臓の疾患は診断が難しく最終確定診断には内視鏡検査や細胞検査が施されると聞いたのですがこれらの検査なしでも本当に正しい診断ができるのでしょうか?それから入院してからの父の症状は始めの10日間ぐらいは腹部と背部の疼痛と高血糖(240から350)のためからくる倦怠感が症状で医師の治療は絶食と24時間の輸液(中身はわかりません)、薬はロキシニン・タガメット・ウィンタミン・セディール・マーロックス・902と書いてある痛み止めを飲んでおります。現在は痛みはあまり無いらしく腰部の軽い鈍痛があり、食欲はあまりないようですが、病院で出される食事は半分位は一生懸命食べるようにしております。少し黄疸が出ているようで今は胆汁を出すためのカーテルを入れることできないが患部が腫れてきたらカーテルを入れると言われました。炎症は少しおさまっているといわれましたがこの炎症というのは癌そのものと関係があるのでしょうか?それとも炎症そのものが癌なのでしょうか?また炎症が治まれば少しは症状が治まるのでしょうか?医師になにも出来ないと言われましたが私はそれがどうしても耐えられず、なにか少しでも父にしてあげたい、父に苦しんでほしくないと思い、神にもすがる思いでインターネットで調べた漢方薬も天仙液という副作用のないと言われている抗がん剤を試してみようと思います。これらは先程述べた父に処方されている薬と併用しても大丈夫でしょうか?父には先生も家族のものも腫瘤形成膵炎だと言ってあるので父には告知しておりませんので父も早く治そうとして頑張っているのをみているととても辛いです。

私はアメリカで育ちましたので日本であまり病院にかかったことがなく、父の先生に色々質問をしてもとても不親切で、まかせておけみたいな感じであまりにも患者さんやその家族に対する説明や対応がアメリカと違っていて大変戸惑っております。本当に長くなってしまった上に質問もバラバラになってしまって申し訳ないのですが、色々調べた中でも告知や説明がわかりやすかったので先生からなんらかのご回答をいただけることを心から願っております。よろしくお願いします。

(答え)1998.12.16
お答えします。まず、ホームページを見て頂いてありがとうございます。直接、患者さんを診ずに回答するわけですから、本当に的確な判断かどうかは分かりませんが、できるだけお答えします。

父上の症状の経過(腹部の不快感、食欲不振、腹部痛、背部痛、糖尿病、通常の胃カメラと内視鏡と血液検査で異常がない、超音波検査とCT検査で膵臓肥大)と、悪性腫瘍の可能性が高いため行われた検査の結果などから、進行性の膵癌だと言われ半年以下の余命であり手術も化学治療も放射線治療もほとんど効果がなく、残された治療法は痛みの穏和だけだといわれたとのことですね。

(1)「CT検査・MRI検査・超音波検査・血液検査・尿検査はしたが、内視鏡的検査や細胞検査はまだしていないのに、本当に正しい診断ができるか?」
確かに最終的に確定診断を下すためには、内視鏡検査や細胞検査が必要ですが、あなたのメイルにある経過から考えられる病気は、残念ながらやはり「進行性膵癌」だと思います。「癌細胞の存在」が証明されれば、診断は100%確実ということになりますが、膵癌と考えられる状況証拠(腫瘍マーカーの検査も含まれていると思います)がそろっていますので、まず間違いないと思います。
(2)「炎症は少しおさまっているといわれましたがこの炎症というのは癌そのものと関係があるのでしょうか?」
おそらく癌による膵管の閉塞のための膵炎の症状のことだと思います。炎症は癌そのものではありませんが、炎症が治まれば炎症のための症状は治まります。膵炎症状のために絶食と点滴が必要だったわけです。
(3)「天仙液という抗がん剤は、処方されている薬と併用しても大丈夫か?」
天仙液という薬に関する知識がありませんので、わかりません。主治医に相談してみてください。
(4)「腫瘤形成膵炎と言ってあって、告知していない」
父上は「治るという希望」を持って、治そうとして頑張っておられるわけですが、これからは次々と辛い症状が出てくると思います。すでに黄疸も出ているとのことですので、できれば早目にある程度の真実を告げてあげて、治るということ以外の希望が持てるように、皆で支えてあげることをおすすめします。そしてお互いに「ありがとう」といえる最期を迎えたいものだと思います。ドイツの諺に「分かち合う喜びは二倍の喜び、分かち合う苦しみは半分の苦しみ」という言葉があります。告知しないということは、一人で苦しみなさいということではないでしょうか。
(5)「日本の病院の医師は、色々質問をしてもとても不親切で、まかせておけみたいな感じ」
その通りです。日本では、今までずっと「拠らしむべし、知らしむべからず」というやり方でした。これをpaternalismといい、これに対する反省からinformed consentやinformed decisionということが言われていますが、その背景となる情報公開がほとんどされていないのが現状です。医療の分野だけでなく、日本の社会全般にあてはまることで、個人の権利は無視されていると言ってもよいでしょう。

いずれにしても、残された時間は多くはありません。残された時間をどのように使うかということも、本当は自分で決めさせてあげるべきだと思います。もし、自分だったらどのようにしてほしいかということを考えてみてください。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1998.12.22
先生 メイル本当にありがとうございます。先生からの父への告知についてのアドバイス(喜びは二人で分かち合えば2倍 苦しみは半分になる)を見て涙が止まりませんでした。本当に父も色々ともし今事実を知らせればきっと私たちに話したいとことがいっぱいあるというのはわかってはいるのですが、父に死の恐怖を感じてほしくない!そしてきっと父は治ってくれる、そして今は言うべきではないとか色々頭の中によぎります。父の苦しみを考えると私の苦しみなどどうでもいいのですが、本当にどうしていのかわからなく辛いです。おとといから2日間外泊許可がでて家に帰ってきたのですが、1日目はなにも問題なく、父も少量ですがみんなと食事をしながら「みんなで食べる食事はおいしいね」と言いながら嬉しそうに食事をしました。ところがベットで横になっている時はだるそうだったけど別に変わりなかったのですが、トイレなどやちょっと場所移動をする時に立ち上がった瞬間にまず足が痙攣して立てなくなり、次の瞬間に急に意識不明状態に2日間で4回ぐらいなり、ジュースや砂糖を急いで口に入れると2分後ぐらいで少し意識が戻りました。これは低血糖のせいでしょうか?それとも膵癌と関係があるのですか?今回外泊許可が出た時は先生にインシュリンを打たないでくれと言われ、低血糖に気をつけるように言われました。それから父を見ているとすぐ眠りについてしまいます。そして眠る時に体がピクピク痙攣しています。もしまた父がこのような状態になった時はどのような対処をすれば良いのでしょうか?父の医師に言われたようにジュースや砂糖を口に入れてはみたのですが、最後の方には意識を失ってる状態が少しずつ長くなっているような気がします。(昏睡・痙攣・てんかんのような症状)それから3日前ぐらいからあずき色のような嘔吐物(水っぽいもの)を一日中はいています。それから父はすごい便秘と尿がほとんどでないことに悩まされいます。これはくすりのせいですか?それとも他に原因があるのでしょうか?明日父は胃カメラ・CT検査をして手術をするかドレナージュをするか決めると言っています。もし手術の時になにかあったらとか考えると恐怖で眠れません。先生はERCPや生検をしなくても診断は正しいと思うと述べられましたが今でも私は誤診であるに違いないと願っています。先生のおしゃるとおり日本の医師のベットサイドマナーや対処の仕方は本当に問題があると思います。(もちろん全部の医師でないと思いますし、日本にもすばらし医師はたくさんいるとは思いますが)このような命にかかわる時はそこには患者にとってもその家族にとってもSECOND CHANCE はありません。本当に悔しいですが、素人の私たちには医師のいうことを聞くしかありません。本当に今の日本にとってこの医学会だけではなく、他の色々なことで技術や専門だけでなく心の問題がたくさんありますね。先生本当に、ありがとうございます。今の私にとって本当にこころの支えです。またメイルいただけたらうれしいです。どうかよろしくお願いします。

(答え)1998.12.22
お答えします。痙攣や意識消失は、やはり低血糖のためだと思います。インシュリンを中止すれば起きなくなると思いますが、血糖値をチェックしたほうが良いでしょう。「あずき色のような嘔吐物(水っぽいもの)を一日中はいてる」ということと、黄疸が出ているということからは、胃から出たところの十二指腸で通過障害があるということです。体力があれば昭和天皇と同じようなバイパス手術が必要と思われます。「便秘と尿がほとんどでない」のは、食べ物や飲み物が、身体に入る量が不足しているからでしょう。低血糖発作も、そのためだと思います。バイパス手術が成功すれば、少し残された時間が増えるかもしれません。癌でないことを、お祈り致します。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1998.12.23
先生本当に早くに御返事をいただけてありがあとうございます。先生からのお返事だけが今の私にとっての救いです。前回も述べたましたように父の医師になにを質問しても「今はわかりません」だけでその症状に対するPOSIBILITIES TREATMENTSに対する説明がまったくなく、質問をすると嫌な顔をされるだけです。おとといより父は大変な低血圧になり輸血をはじめ、御小水のほうもTUBEをつけました。そして昨日から父はものすごい意識障害のような錯乱状態なような感じに夜中からなり、まるで違う人が乗り移ったみたいな感じで、立てる体力もないはずなのに4人でおさえてもおさえられないぐらいの力で抵抗してチューブやなどをはずそうとしました。いまは沈静剤と睡眠剤を点滴で入れずーと眠っていますが、先生、父は状態が落ち着けばまた意識がもどるでしょうか?どうかどうか教えてください。父の医師はこれが内臓機能障害からくるならそのままかもしれないし、心因性からくる不安などからくるものならなおるかもしれないとは言っていますがそれ以上はなにも言ってくれません。先生に言われたように父に昨日は父に告知はしなくても、自分の父に対する思いや感謝や今自分が思っていることなどを伝え、だから父にも頑張ってね言おうと思っていたところでした。もう一度父と話したいです。また意識が正常にもどることができるように願ってます。先生もバイパス手術かドレナージュの手術を考えてると言っていましたが今は体力の方が心配であると言われました。私も手術ができて少しでも長い時間がすごしたいです。でもいつ背骨の近くにある大動脈が破裂するかもしれないといわれました。私にはこれが理解できません。大動脈が癌と関係あるのですか?先生のメイルでアドレスを御返事をみて解ったのですが、父も広島の甲山群戸張というところの出身です。本当に何度も何度も御忙しいところメイルをしてすみません。でも先生の御返事心から感謝しています。

I am not ready to let him go...
Thanks so much for your very helpful advice.

(答え)1998.12.25
メイルありがとうございました。現在、父上は身体のバランス、特に血液の状態(電解質や酸塩基平衡、血糖など)が、かなり不安定になっていて、正常な状態からはずれているように思います。代謝異常といいますが、そのための譫妄状態deliriumのように思います。原因は、経口摂取ができないこと、嘔吐すること、黄疸があると、貧血があることなどでしょう。とりあえずは、沈静剤や睡眠剤で治療しますが、原因に対する治療をして、身体のバランスをもとにもどさなければいけません。きめこまかな治療で少しずつ、検査の異常値を補正して、正常な状態にもどさなければいけません。大動脈が破裂するような心配はありませんが、茶色の吐物は血液が混じっているからで、昭和天皇のように吐血や下血をおこす可能性はあります。今は、できれば少しでもそばにいてあげて、少しでも良くなるような治療をしてもらうように、あなたの熱意で医師や看護婦を動かすことです。頑張ってあげてください。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1998.12.25
いつもすぐにメイルをいただいて本当に感謝いたします。現在父はまだ薬のせいかずーと眠っています。ただ2日前にdeliriumの時よりは少しおとなしくなり、時々ですが正常なような気がします。今はPLASTICのチューブを鼻から入れて胃の中のものを出しています。先生のおっしゃるとおり慢性的な出血があると言われました。そのために輸血をしているのでしょうか?父の医師からはいつ吐血や下血があるかわかわからなし、もしそのような状態がおきた場合輸血では間に合わないと言われました。現在はまったく口から食事を取っていませんがもしこの状態がおさまればまた少しでも食事をすることができるのでしょうか?もう一度少しでもいいから父のすきなものを食べさせてあげたいです。痛みのほうはほとんどないそうです。意識がなくなってからあんなに便秘気味だったのにおむつと尿管を入れてから看護婦さんによるといい便(下痢ではない)と御小水も順調だと言われました。DELIRIUMになる前日にものすごい低血圧になったため夜中に病院から電話があったのですがその後は血圧もこの3日間正常で熱もないそうです。しかしやはり医師から胆管と十二指腸がつまっていて大変厳しい状態だと言われました。(これは腸閉塞のことでしょうか?)今日ドレナージュの手術をするはずでしたがまだ無意識にチューブをとってしまう可能性があるので危険なので様子をみてみるということでした。バイパス手術は今は大変危険な状態なので無理なので後で検討するがそれまでもつかどうかみたいなことを言われました。。。そこで先生に質問なのですが、黄疸を取りのぞくということは顔などの黄色味とかゆみを取ること以外になにか他に良い結果があるのでしょうか?それからもしバイパス手術ができたとしたらその後食事をとることなどが出来るのでしょうか?今日父はほとんど眠っていましたが一生懸命に父にいろんなことを話しかけました。先生のHPを拝見させていただいていると本当にいろいろ人が同じような状況で苦しみ、また頑張っていると思うと本当に人生て過酷だと思いました。それから先生のおっしゃるとおり私も不満ばかり考えずに熱意で父のためにがんばって医師を動かして父とともにがんばってみます。ただ看護婦さんたちは本当に父によくしてくださって医師に聞けないようなことでも誠心誠意答えてくれ本当に心から感謝してます。DOCTORのような確信的なことはあまり言えないようですが本当に心の支えになります。そして何回も言うようですが先生のアドバイスも本当に私の心の支えです。またメイルをいただければ大変嬉しいです。

Merry Christmas and Happy Holidy to you! (not for me unfortunately...)

(答え)1998.12.25
お答えします。「もしこの状態がおさまればまた少しでも食事をすることができるのでしょうか?」「胆管と十二指腸がつまっていて大変厳しい状態だと言われました。これは腸閉塞のことでしょうか?」「黄疸を取りのぞくということは顔などの黄色味とかゆみを取ること以外になにか他に良い結果があるのでしょうか?」「もしバイパス手術ができたとしたら、その後食事をとることなどが出来るのでしょうか?」

現在の病気の状況は、胆管と膵管が一緒になって十二指腸に流れ込む部位の膵臓(膵頭部)に癌ができていて大きくなったために、胆管と膵管と十二指腸が詰まってしまった状態です。もしこの癌を手術で取ってしまうことができれば、とりあえず、問題はすべて解決できるわけですが、それが可能なのは癌が小さくて切除できる範囲にとどまっている場合だけです。胆管が詰まっているために、黄疸が出ています。黄疸は、本来肝臓が血液中から胆汁中に排泄するビリルビンという物質が、血液中に増加したために起きる現象で、ひどくなると肝不全、腎不全、脳障害、出血傾向などの重篤な状態となる危険な症状です。手術以外に「外胆汁瘻」でドレナージする方法があります。PTCD(percutaneous transhepatic cholangio-drainage経皮経肝的胆管ドレナージ)といって、皮膚から肝臓を通して胆管に管を入れる方法で、慣れた医師が行えば比較的簡単にできます。十二指腸の通過障害は、腸閉塞と言ってもよいでしょう。手術以外に、この状況から脱する方法はありませんので、それまでは食べられません。

内容は異なっていても、いずれは誰にでも訪れる人生の危機だと思います。生と死を考える機会を与えられたと思って、がんばってください。できれば明るく、前向きに、ユーモアと笑いを忘れず。「ユーモアとは、にもかかわらず笑うこと」だそうです。人を思いやる心だと思います。今日は、クリスマスですね。奇跡を祈ります。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1998.12.26
いつも的確なご回答をすぐに送ってくださっていただき、本当にありがとうございます。先生の説明はとてもわかりやすく感謝しております。父の状態は先生の説明でよくわかりました。ただひとつ解らないことなので教えていただきたいのですが、十二指腸の通過障害がおきている父が食べられる状態になるようには手術以外にないとありましたが、これはPTCDも食べられる状態になれるひとつの方法と考えてよいのでしょうか?それからもう一つ教えていただきたことは、現在父は鼻からプラスチックのチューブを入れ胃の中のものを出しているのですが、お茶や水分は取ってもよいとのことなのですが、もし漢方薬(液体)のを経口した場合、これもすぐこのチューブによってすぐに外に出されてしまいますか?それから昨日より少し熱がでているようなのですが、これはどうして熱がでるのでしょうか?年末で大変お忙しいと思いますが先生のメイルを心からお待ちしております。それから先生がおっしゃられた辛い時、でも明る、前向きにというのは本当に難しいことですね。自分はどんな時にもどんな試練も耐えられると思っていたのに、父のことだけはどうしても耐えられません。でも父の前だけでも明るく、そして前向きに、できることだけはすべてしてあげ、奇跡を祈っております。先生には医学的なアドバイスはもちろん、その他のことについても励まされます。THANK YOU

(答え)1998.12.27
お答えします。
「十二指腸の通過障害がおきている父が食べられる状態になるには手術以外にないとありましたが、これはPTCDも食べられる状態になれるひとつの方法と考えてよいのでしようか?」
説明不足でした。PTCDは手術ではありません。レントゲン透視下に局所麻酔で皮膚から肝臓に針を刺してチューブを胆管に挿入するものです。胆管内に溜まった胆汁を体外に排出して「黄疸」を軽減するための手段です。食べられる状態にはなりません。
「現在父は鼻からプラスチックのチューブを入れ胃の中のものを出しているのですが、お茶や水分は取ってもよいとのことなのですが、もし漢方薬(液体)のを経口した場合、これもすぐこのチューブによってすぐに外に出ききてしまいますか?」
その通りです。胃に入ったものは、胃液で消化されて十二指腸に送られるわけですが、父上の場合は胃からの出口をふさがれた状態になっていますので、胃に入ったものはチューブで体外に出さなければ吐いてしまいます。胃から吸収されるものはほとんどありません。
「昨日より、少し熱かでているようなのですが、これはどうして熟がでるのでしようか?」
体内に癌があるだけでも熱が出ます。さらに黄疸があったり、鼻からチューブが入ったりしていますので、身体が反応して熱が出ます。もちろん、抵抗力も弱くなっていると思いますので、身体に細菌が入って起きる「感染症」の可能性もありますが、その場合にはかなり高い熱が出ると思います。微熱であれば頭を冷やしてあげたりしますし、ある程度高い熱であれば解熱剤を使います。感染症であれば抗生物質を使います。口の中が不潔になりやすく、乾燥しますので、なるべくお茶や水を口にしたり、うがいをするなどして口の中を清潔にしておいてあげてくたさい。綱菌感染の原因になりやすいと思います。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1998.12.28
先生、さっそくのメイルありがとうございました。先生の説明とてもわかりやすかったです。今日父がPTCDをしました。30分ぐらいで終わると聞いていたのですが、2時間半もかかってしまいましたが、これで少しでも父が楽になれば嬉しいです。もし少しでも父の体力が回復すればバイパス手術ができて、食事が取れるようになればいいです。肝臓などに移転がある場合や癌が進行している場合バイパス手術はむずかしいのでしょうか?それから先生のお話ですと鼻からチューブをしていて、十二指腸に通過障害がある場合、胃からほとんど吸収されないとありましたが経口摂取の他に漢方薬(一回 10cc/一日3回ぐらい)のものをなんとか投与できる方法はないでしょうか?教えてください。よろしくお願いします。先生からのメイルを心からお待ちしてます。THANK YOU

(答え)1998.12.29
メイルありがとうございました。「肝臓などに転移がある場合や癌が進行している場合バイパス手術はむずかしいのでしょうか?」
全身状態が麻酔に耐えられる状態であれば、バイパス手術は可能だと思います。しかし、癌性腹膜炎のように、癌がお腹全体に拡がっているような場合には、難しいと思います。さらに普通、外科医はバイパス手術をして、ある程度の期間(3カ月から6カ月位でしょうか)以上、食べられる期間が期待できる場合にのみ、手術をします。

「経口摂取の他に漢方薬(一回 10cc/一日3回ぐらい)のものをなんとか投与できる方法はないでしょうか?」
口からか、鼻から入れたチューブからしか投与する方法はないと思います。10cc位であれば、全部は吸収されないとしても、少しは吸収されるかもしれませんので、飲んで頂いて、しばらくの間(1時間位)鼻からのチューブからの排出を止めておけばよいと思います。口から飲むということは、精神的にもプラスになりますし、口の中やのどが洗われて口内炎などの予防にもなると思います。ではまたいつでもメイルをください。

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[急性膵炎の症状で入院して検査したら腫瘍と言われた]

(相談)埼玉県1998.11.21
今日は。初めてお便りいたします。9月初旬に父が激しい腹痛を訴えて、緊急入院いたしました。たばこは過去に吸ってはいましたが、アルコールは一滴も飲めないのに急性膵炎という診断を受け28日間の絶食と点滴とで結局50日の入院生活を送りました。幸いにも症状は治まり元気になったようでした。現在も元気そのものです。しかし、先日CTでの検査をしたところが、再検査の必要ありと判断され、その再検査の結果、膵臓が黒くなっているとかでまた更に詳しく調べる必要があるということで昨日からまた入院しています。医師は父の目の前で私たち家族だけを呼んだものですから、ただでさえ小心な父は恐怖におののいています。さて先生にご相談申し上げたいのは、担当医師のいう、膵炎合併のガンというのはあるのでしょうか?膵炎を発症したあとは回復する一方でしたので何か別の悪い病気が潜んでいるとは考えたくないのですが、いかがでしょうか。担当医師はお酒も飲まずに胆石もなく膵炎になんか通常ならないので何かあると思って心配していたんだけど・・・とおしゃっていました。なお、絶食が終了してからこれまで食欲は旺盛で背中の痛みなど自覚症状は何もありません。お忙しいとは存じますが、近親者に医師もありませんで、頼るところがありません。どうかよろしくお願いいたします。

(相談)1998.11.22
昨日はつい気が動転しておりまして、突然かつ大変失礼なメールをお送りしてしまい、申し訳ありませんでした。先生のホームページを拝見させていただきますと、膵臓ガンがとりわけ厳しい病気であることが理解でき、本当に悲嘆に暮れています。まだ、細胞診は行っていませんがガンという特定をするためのものだとしますと、事態は楽観できるものではなさそうですね。私は離婚したとき思いました。夫のかわりはもしかしたら今後また現れるかもしれませんが、親のかわりはいないと。かならずやってくる彼らの老いと病とからは決して目をそらさない、と。そうはいっても一人で受けて立つのはいいようのない孤独と恐怖とで泣きたい気持ちになります。そんな時、病院から戻っていろいろなホームページを観ていたら先生のページに出会ったのです。そしてつい大人が通常持つべき分別も忘れて唐突なメールを送ってしまったのでした。父は67歳です。急性膵炎で入院していらい○○病院でお世話になっています。担当医師は見たところまだ若く、結果を見ないとなんとも言えないけど今見えている膵臓の黒くなっているところが大きくなって胆管を圧迫し始めたら黄だんがでるので、切ることになるだろうといっていました。現代では手術はガンの可能性が高い場合にかぎられているようなので、やはりその事態を憂慮しているのでしょうか?検査は大腿部の付け根からカテーテルを挿入するものと更に一週間おいて経口内視鏡での検査を行うようです。お忙しいとは存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。

(答え)1998.11.22
お答えします。まず、膵癌で膵管が閉塞されると急性膵炎の症状を呈することがあります。膵癌は、血液検査と超音波検査、CT検査でほぼ診断できます。内視鏡検査で癌細胞が証明されれば、診断は確実となります。血管造影検査(大腿部の付け根からカテーテルを挿入して行う検査)は、癌が周囲にどの程度の影響を及ぼしているかということを調べて、手術が可能かどうかの判断や手術の参考にします。「胆管を圧迫し始めたら黄だんがでるので、切ることになる」ということは、「癌でなければ今手術の必要がなく、また癌であればすでに治すための手術は不可能なので、このまま様子を見て、腫瘤が大きくなって胆管を圧迫し始めて黄疸がでた場合には、いずれにしても黄疸を治療するための手術をする」という意味だろうと思います。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1998.11.23
お忙しいところを本当にありがとうございました。本日も父の見舞いにって参りましたが、本当に普通に元気なものですから、恐ろしい病気を抱えているとは信じられません。信じたくないんですね。あれほどの大掛かりな検査ですから、やってみたら何でもありませんでした、ということは考えにくいのでしょうが、とりあえず結果が出るのを待ってみようと思います。また、その結果を受けて先生にご相談させていただく事があるかも知れません。その時はまたどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

(報告)1998.12.11
先生こんにちは。先日父の件でご相談にのっていただきましたものです(急性膵炎)。不安におののくときに先生のこのページで更に落ち込んだり、元気づけられたので、大変感謝しております。ただ、私の父は結局、複数の病院でガンの確定的な診断は得られず、当初入院した病院でも大掛かりな検査の結果、手術の必要は当面なしとなりました。また、メールいたします。ありがとうございました。

(返信)1998.12.11
お答えします。癌でなかったとのこと、本当に良かったですね。膵臓の腫瘍の診断は困難な場合があり、分からないので手術してみて結局膵炎だったということもよくあります。いろいろな検査で癌を疑わせる結果がなければ、手術をする必要はないと思います。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1998.12.11
早速のお返事ありがとうございます。不安でたまらないものにとってすばやい回答は本当にありがたいものです。父はこれまでの数々の検査はガンを想定してのことだったと知って落ち込んでしまいました。ガンとは思ってなかったということを聞いてむしろ驚いてしまいました。ただ、確かにI3N3はあるようでそれが今後どう変化していくかは分からないということで月に1回は内科と外科とへ伺うようにといわれているようです。内科の先生は切ったほうがいいとおっしゃるし、外科の先生は

ガンでもないのに切れないとおっしゃいます。これだけたくさんの情報がありますと、最終的には患者が判断し、父のように真正面から自分の問題と取り組む勇気のない人はその家族が取捨選択しなくてはならないんですね。生きるって大変なことですね。いい年して初めて実感しました。また、メール入れさせてください。だいぶ寒くなったので先生どうぞご自愛くださいませ・・・

追伸:膵臓の病気について素人が読めるような本はございますでしょうか?急ぎませんのでもしご存知ならばおしらせくださいますか?インターネットでは急性、慢性膵炎と、膵ガンしかのっていないので・・・お時間ありますおりに、お願いいたします。

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