[前立腺癌]

[骨転移で発見された前立腺癌(病期D2)のホルモン療法、免疫療法、食事療法は?]
[前立腺癌がリンパ節に転移していてホルモン療法を行っている]
[前立腺癌が骨盤へ転移していてホルモン療法を行っている]

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[骨転移で発見された前立腺癌(病期D2)のホルモン療法、免疫療法、食事療法は?]

(相談)2000.4.27
はじめまして.先生のホームページはたびたび拝見させていただいております.非常に頼りになるHPなものですから,いろいろな意味で大変ありがたく見させていただいています.今日は実は私の叔父の前立腺がんについてご相談をしたく,メールを差し上げることにしました.私の叔父は57歳で,大阪市に在住しています.去年頃から体調の不良を訴え,本人が自ら病院へ出向き,約1年を通しさまざまな検査を行い,診療してもらっていたのですが,医師は何の異常もなく,男性の更年期あるいは精神的な問題から体調が悪いようだ,などという始末でした.病院の理事であるというこの医師は,前立腺がんの検査(触診)も行っていました.ところが今年の3月に腰に激痛が走り,何も疑わず整形外科へかかったところ,骨盤に腫瘍がある可能性が高い,と指摘され,急遽また違った病院で精密検査を行いました.結果,前立腺がんステージD2,という診断でした.

4月の前半に下半身麻酔での針生検を6カ所行いましたが,6カ所ともに微分化したガン細胞が検出されたとのことです.骨盤転移が認められ,リンパへの転移の可能性もとても高く,放射線科においてMRIや骨シンチ等を再度とり,詳しく診る,とのことでした.腫瘍マーカーは,病院によって異なるのですが,100及び150でした.体重は73キロあったのが66キロまで落ちてしまいました.食欲がだんだん落ちてきて食べなくもなっています.治療はホルモン治療を行っています.錠剤を朝夕2錠ずつのものと,腹部への注射を月に一度行う,というものです.病院での治療と平行させていくつか試していますが,一つには,蓮見ワクチンを3度接種しているのと,アガリクスを服用しています.また,アラビノキシランも服用を始めました.

先生へいくつか質問があるのですが,

1.高齢の男性に多いと言われる前立腺がんですが,ホルモン治療は叔父の年齢の場合,よく効くのか,それとも効きにくいのか,を知りたいと思います.がんの進行自体は若いほど早い,ということですが,ホルモン治療と年齢の関係はどうなりますでしょうか.

2.免疫治療についてお伺いしたいと思います.がんへ抗する力として,本人の免疫力を高める,ということが大切なようですが,現在日本においての免疫治療の現状などはどういったものなのでしょうか.NK細胞の活性を高め,免疫力を向上させる効果がある,というアラビノキシランを買い求め,現在服用を始めていますが,これについての先生のご意見などがありましたら,是非お伺いさせていただきたく思います.がん治療に取り入れている病院もあるということですが,どれくらい期待が持てるものなのか知りたいと思います.

3.食事療法についてですが,動物性タンパクががん細胞の増殖を助ける?ということで全く摂取しないようにしました.植物性タンパクのみをタンパク源としていますが,植物性タンパクならどのようなものも大丈夫,ということでいいのでしょうか.肉類(牛・豚・鳥など)はもちろん,卵・牛乳などをやめています.

以上とても長くなり,またいくつも質問をしまして,ご多忙な中大変失礼いたします.実は去年末に私の実父を膵臓がんで亡くしました.その際にも先生のHPをとても貴重なソースとして拝見させいていただきました.先生のような方がこのような活動をされていることに心から敬意を表します.叔父のがんの相談の件ですが,まことに不躾ながら,どうぞよろしくお願い申し上げます.何かしらアドバイスが頂けるものならばとても幸いに存じます.季節は暖かくなりますが,どうぞご自愛下さいませ.

(答え)2000.4.28
お答えします。大変ご心配のことと思います。

1.前立腺癌は進行の遅い癌の一つです。高齢であれば、それだけ進行が遅いのでホルモン療法で進行はさらに遅くなるのではないかと思います。治療は年齢に関係なく、ステージCまでであれば、手術をします。手術後の再発を防ぐためにホルモン療法を行いますが、ホルモン療法だけで、再発を防ぐことはできないようです。当然、ホルモン療法だけで治すことは出来ないと思います。

2.病院では免疫療法はしていません。一般的なものは、丸山ワクチン、蓮見ワクチン、佐藤療法(BRP療法)などでしょうか。それぞれ特長があるようです。アラビノキシランについては、残念ながら知識がありません。健康食品でしょうか。

3.心の持ち方と生活習慣の改善(特に食べ物)が大切です。代表的な食事療法は、玄米菜食とゲルソン療法でしょうか。今のやり方でいいと思います。以上とりあえずお答えしました。またいつでもメイルをください。

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[前立腺癌がリンパ節に転移していてホルモン療法を行っている]

(相談)1998.11.2.
突然お便りいたしまして申し訳ありません。私は26歳の学生です。実は先日(10月中旬)、父(59歳)が前立腺癌と診断されました。腫瘍マーカー値は100をこえていたそうです。自覚症状は全くなく元気なのですが、すでにリンパ節まで転移していて(肺や骨などには転移していませんでした)、現在田舎の病院でホルモン療法を行っております。父の病気に関してはとても不安なのですが、私は遠くにいることもあり主治医の先生と直接お話することができません。そこで先生にお聞きしたいことがあるのですが、
(1)ホルモン療法で癌が小さくなってから手術、という手法は父のステージではもう不可能なのでしょうか?
(2)ホルモン療法はやがて効果がなくなり癌が再燃(再発)すると聞きました。再燃については、年齢の若い方が起こりやすいものなのでしょうか?
主治医の先生には3年後の生存確率が40%だといわれ、本人そして家族は今とても沈んでいる状態です。しかし、先生のページを拝見して心の持ちようが大事であることを悟りまして、覚悟はしつつも希望は捨てず、前向きに考えなければならないと思っているところです。なかなか難しいですが、本人、家族一丸となってがんばります。今日は父の病気について正確に把握したいと思いましてメールした次第です。お忙しいところ申し訳ございませんがなにとぞよろしくお願いします。

(答え)1998.11.2.
お答えします。すでにリンパ節まで転移している進行前立腺癌に対しては、ホルモン療法を行います。

(1)ホルモン療法で癌が小さくなってから手術という手法は、もう不可能でしょう。

(2)ホルモン療法はやがて効果がなくなり癌が再燃(再発)します。再燃については、個人差が大きくて予想は困難ですが、やはり年齢の若い方が起こりやすいでしょう。

前立腺癌は、比較的進行が遅いものが多く、うまくいけば5年から10年くらいは大丈夫かも知れません。病院での治療と、定期的な診察や検査を確実に受けて下さい。最期まで主治医と共に癌と闘うことが必要です。そのほかに自分でできることをしてもらってください。何が良いとか、何はだめだとかということはできません。自分で選んだ方法を続けることです。常に前向きに、希望を失わずに、一日一日を大切に生きてもらってください。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)1998.11.4.
先日、前立腺癌の件で質問しました○○です。先生には大変お忙しい中早々に返事を頂きましてありがとうございました。大変感謝しております。父の癌に関しては大変厳しい状況ですが、希望を失わずにがんばろうと思っております。どうもありがとうございました。

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[前立腺癌が骨盤へ転移していてホルモン療法を行っている]

(相談)1998.10.10
初めてお便り申し上げます.実は私の義父が7月に前立せん癌と診断され,現在ホルモン療法を施していただいております.私は義父と離れて暮らしておりますので,検診結果などを電話で聞きながら,私にできることを模索(アガリクスなどの使用)しております.本来なら主治医の先生に直接お伺いしなければならないことですが,一般的なこととして先生にお教えいただけますと助かります.知りたい点は,

1.ホルモン療法は癌の進行を遅らせるのが主目的のように思え,完治に至るのでしょうか?
2.検診結果として,腫瘍マーカー値を教えていただいておりますが,値の持つ具体的な意味が解りません.の2点です.

補足)年齢70歳、7月の時点での検診結果は骨盤へ転移しており,腫瘍マーカー値は11、10月の時点での検診結果はレントゲン撮影なし,腫瘍マーカー値は0.25
お忙しい中で誠に恐縮ではございますが,何とぞよろしくお願い申し上げます.

(答え)1998.10.11
お答えします。どのような癌でも個人差がありますが、前立腺癌では特に個人差が著しく、また他の癌と違って比較的進行が遅い場合が多いとされています。他の原因で亡くなった人の20%から30%の人に、死後の解剖で前立腺癌が見つかったという報告もあります。つまり、前立腺癌があっても、普通に長生きできる人もかなりいるということです。治療の方法は、年齢、病気の進行度、癌細胞の悪性度(分化度)、症状の有無などによって決まります。あまり高齢でなく、治る見込みのある場合にはやはり手術をします。手術だけでなく、内分泌療法(ホルモン療法)や放射線療法を組み合わせて治療する方法もあります。父上の場合は、骨に転移しているということから、手術で治すことは困難と判断して、とりあえずホルモン療法をしていると思います。癌細胞の悪性度にもよりますが、治療の効果があれば5年から10年くらいは大丈夫かもしれません。

ホルモン療法の効果は、腫瘍マーカーの値が参考になります。前立腺癌の場合の腫瘍マーカーは、前立腺特異抗原(PSA)という検査の値で判断します。55歳以上の前立腺肥大症の人では、前立腺癌の可能性が高くなりますので、PSAを調べます。普通、4.0未満が正常で、10.0以上の場合には癌の可能性がかなり高いとされています。腫瘍マーカーの値は、癌細胞の量(数)に比例しますので、腫瘍マーカーの値が下がったということは、治療の効果があったということだと思います。もし症状(排尿障害)が強いようなら、癌を治すことはできないとしても症状を取るために手術が必要となる場合があります。姑息的手術と言いますが、具体的には経尿道的前立腺切除術を行います。

前立腺癌は、共存しやすい癌だと思います。病院での治療を確実に受け、定期的に経過を診てもらえば、進行癌といえどもまだ時間は十分あると思いますので、残された人生をいかに生きるかということを考えて、納得のいく生き方をすることができると思います。病院での治療以外にも、治療の方法は沢山ありますが、決して民間療法だけにたよらないことです。ではまたいつでもメイルください。

(相談)1998.10.12
早速のお返事ありがとうございました.頂戴しましたお話より推察いたしますところ,私の疑問でございました
1.ホルモン療法は癌の進行を遅らせるのが主目的のように思え,完治に至るのでしょうか?
につきましては,進行を遅らせるだけではなく,病状の改善(具体的には腫瘍マーカーの低下)が可能であると考えて差し支えございませんでしょうか?
2.検診結果として,腫瘍マーカー値を教えていただいておりますが,値の持つ具体的な意味が解りません.

腫瘍マーカー値につきましては,現在0.25であるため,ご指摘いただきました4.0よりかなり少なく,病状の改善はされているように思いますが,担当医の先生は,「ゼロにしたい」とおっしゃったそうです.ホルモン療法で「ゼロ」になる可能性,または,実例などございましたらお教えいただけますと非常に助かります.お忙しい中で何度も失礼ではございますが,是非お教えいただきたく何とぞよろしくお願い申し上げます.

(答え)1998.10.13
お答えします。ホルモン療法の効果は、腫瘍マーカーの値で判断します。腫瘍マーカー(PSA)の値は、必ずしもゼロにはなりません。良性の前立腺肥大症があっても、この値は上昇します。「病状の改善」は、腫瘍マーカー値の改善だけでなく、癌が小さくなるとか、尿が出やすくなるとか、痛みが軽くなるとか、という前立腺に関係した症状の改善と、食欲が出るとか、貧血が良くなるとか、元気が出るとか、という全身的な症状の改善で判断します。あまり数字にこだわらないほうが良いでしょう。病院での治療と診察・検査をきちんと受け、自分でできる身体に良い生活を心掛け、一日一日を大切に生きることです。

「生きがい療法五つの指針」が大変参考になります。
1)自分が自分の主治医のつもりでガンと闘っていく。
2)今日一日の生きる目標に打ち込んで生きる。
3)人のためになることを実践する。
4)死の不安・恐怖と共存する訓練に取り組む。
5)死を自然界の事実として理解し、もしもの場合の建設的準備をしておく。

生と死について考える機会を与えられたと思って考えてみてください。次はあなたの番かも知れません。ではまたいつでもメイルをください。

追伸:プロゴルファーの杉原輝夫さんも前立腺癌で闘病しながら試合に出ています。

(返礼)1998.10.13
大変お忙しい中でご丁寧なお話をいただき誠にありがとうございました.激務の中とご推察申し上げますれば,くれぐれもお身体ご慈愛くださいますようお祈り申し上げます.

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