[肉腫1]

[胃の粘膜の下にある平滑筋腫(胃粘膜下腫瘍)といわれて手術をしたら平滑筋肉腫だった]
[足の付け根のしこりを調べたら横紋筋肉腫で手術のために人工肛門になると言われた]

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[胃の粘膜の下にある平滑筋腫(胃粘膜下腫瘍)といわれて手術をしたら平滑筋肉腫だった]

(相談)横浜2000.3.23
初めまして、横浜に住む○○と申します。どこに相談してよいのかわからずネット検索でここにきました。どうぞよろしくお願い致します。35歳の妹のことで相談したいと思います。去年の4月頃から胃痛があり近所のクリニックに通院しておりましたが、胃薬を処方してもらうことの繰り返しで特に精密検査はしませんでした。今年になり、いよいよ痛みが強くなり、別の医院でエックス線を撮ったところ卵ほどの腫瘍が胃にできているといわれ、2月29日に手術をして取り除きました。術前のCTやMRI検査では異常はなく、胃カメラで取った生検も異常はありませんでした。医師の説明では、胃の粘膜の下にある平滑筋腫という病気だそうです。99パーセント良性で「子宮筋腫が胃にできたようなもの」といわれ安心しておりましたが、万が一悪性だと「平滑筋肉腫」というもので、肝臓や肺に転移しやすく、手術で悪いところをとっても血液の細胞の中に潜んでいることがあり予後が悪いと言われました。手術で取った腫瘍は大人のこぶし程もあり、大きな潰瘍が一つと細かいのが2〜3できていました。切ったところの外側に白くぽこっと丸いものがでていて、「胃の外に突き出たところ」と説明されました。それって、胃を突き破って腫瘍が外に出ていたということなのでしょうか。腫瘍の検査の結果が3週間経った今でも出ていないとのことで、とても不安です。先日廊下で立ち話のような感じで「今のところはどんな状況ですか」と聞いたところ「う〜ん、非上皮性なのでわかりにくい、でも、悪いところは全部とりました。」と言われました。私としては99パーセント良性と言われていたのに「悪いところ」っていったい何なんだ?と考えてしまい、とても不安です。妹は術後の経過は順調で3月19日に退院して自宅療養しております。食欲はまだないようですが、元気です。31日に外来で血液検査とエックス線を撮るそうです。その後CTなども撮るという話ですが、CTというのは腫瘍が良性でも撮るものなのでしょうか。検査が長くかかっているのは悪い可能性があるからなのでしょうか。そもそも、平滑筋肉腫というのはどういう病気なのでしょうか。「家庭の医学」などには筋肉の癌と出ていましたが詳しいことは書いていません。癌という文字を見て悪いことばかり考えてしまうのです。大変にお忙しいこととは思いますがどうか、どうかご返答よろしくお願い致します。

(答え)2000.3.23
お答えします。大変ご心配のことと思います。胃の粘膜下腫瘍で、潰瘍を伴っている場合には、悪性リンパ腫や平滑筋肉腫を疑います。これらの病気は、胃の粘膜に発生する癌と違って、胃の粘膜の下にある組織に発生するために、胃カメラで組織を取って検査をしてもわかりませんが、知識と経験のある医師であれば、手術の前に診断がつくと思います。これらの病気は胃の外に向かって発育することが多いので、普通の胃の検査ではわかりにくく、症状もあまり出ません。

>妹は術後の経過は順調で3月19日に退院して自宅療養しております。食欲はまだないようですが、元気です。31日に外来で血液検査とエックス線を撮るそうです。その後CTなども撮るという話ですが、CTというのは腫瘍が良性でも撮るものなのでしょうか。

やはり転移があるかどうかを調べるためではないでしょうか。担当医に良く聞いてみてください。

>検査が長くかかっているのは悪い可能性があるからなのでしょうか。

そのように思います。少ない病気ですので、診断がつきにくいのだと思います。

>そもそも、平滑筋肉腫というのはどういう病気なのでしょうか。「家庭の医学」などには筋肉の癌と出ていましたが詳しいことは書いていません。癌という文字を見て悪いことばかり考えてしまうのです。

固まりを作る悪性腫瘍には、癌と肉腫があります。発生する場所が違うために名前が違います。癌は上皮細胞(表に出ている細胞:胃腸の粘膜や皮膚など)が悪性化したものです。それ以外の、筋肉や骨などに発生する悪性腫瘍を肉腫と呼んでいます。特殊なものとして、リンパ組織に発生する悪性腫瘍を悪性リンパ腫、血液の悪性腫瘍(固まりを作らない)を白血病と呼びます。ではまたいつでもメイルをください。

(返礼)2000.3.23
数野先生、お忙しいのに早速のご返事ありがとうございました。先生のご説明よく理解できました。もし悪性でしたら、もっといろいろ伺いたいのでまたメールさせていただくと思います。どうぞよろしくお願い致します。今は検査の結果をまって主治医の先生からも説明をよく聞くつもりでいます。どうもありがとうございました。

(相談)2000.3.29
数野先生、お忙しいことと思いますがまた相談させていただくわがままをお許しください。先日35歳の妹のことで相談しました横浜の○○です。3月27日に父と病院に行って主治医と面談して手術でとった腫瘍の病理検査の結果について聞いてきました。平滑筋肉腫であることがわかり5年生存率60パーセントと言われました。そして転移する人は1〜2年以内に転移してくる。転移したら何もできないとも言われました。手術で原発巣は切除しきれているとのことでしたが、私の感じでは手術前主治医の先生は肉腫を疑っていない様子でしたので、原発巣は取ってもまわりリンパ節などはとっていないようなのです。とっていなくても転移する確率というのは変わらないのでしょうか。お医者さんが60パーセントとか数字を言ってくる場合数字そのものよりも「転移するよ」ということを言いたいのでしょうか。今は妹も退院して元気ですが、今の段階で何か打つ手はないのでしょうか。病院を専門の病院に変えたほうがいいのでしょうか。主治医の先生は規則正しい生活をしても不摂生していても出るときは出るし出ないときは出ないので本人の好きなように過ごさせてあげるのがよいといわれました。そして告知の件ですが、とりあえず、「境界病変」なので検査をして様子を見ていくと言うつもりであるとのことでした。家族としてもどうしてよいかわからず、病院を変えるとか積極的治療を考える場合は本人にある程度のところまで告知する必要があるようにも思うのです。今後どういう方向でいけばよいのでしょうか。アドバイスお願い致します。それからもう一つ、来月またCTをとる予定なのですが、手術をして悪いところはとりあえず取ったのにそんなにすぐにCTで検査するってことは早い時期に転移する可能性があるとお医者さんが考えているからなのでしょうか。いろいろ支離滅裂になってしまい申し訳ございませんがどうか、どうかよろしくお願い致します。

(答え)2000.3.30
お答えします。

>私の感じでは手術前主治医の先生は肉腫を疑っていない様子でしたので、原発巣は取ってもまわりリンパ節などはとっていないようなのです。とっていなくても転移する確率というのは変わらないのでしょうか。

リンパ節に転移があるか無いかによって違うかも知れません。ほとんどの進行胃癌でも転移したリンパ節をすべて取ることは不可能ですが、たとえ転移したリンパ節が残ったとしても、かなりの人が治ると思います。結局は自己の治癒力(自然治癒力)の問題です。

>お医者さんが60パーセントとか数字を言ってくる場合、数字そのものよりも「転移するよ」ということを言いたいのでしょうか。

それは、わからないということです。つまり五分五分ということです。私たちは皆、今生きているというでは同じで、明日の命はわかりません。皆、五分五分です。

>今は妹も退院して元気ですが、今の段階で何か打つ手はないのでしょうか。病院を専門の病院に変えたほうがいいのでしょうか。

いつも言いますが、退院の日が治療のスタートライインです。これからは自分で治すためのあらゆる努力をしなければいけません。ただ待っていたのでは、奇跡も何も起きません。

>主治医の先生は規則正しい生活をしても不摂生していても出るときは出るし出ないときは出ないので本人の好きなように過ごさせてあげるのがよいといわれました。

身体に悪いことはやめて、身体に良いことをするということです。心の持ち方と生活習慣の改善が基本です。主治医の言ったことはそういう意味だと思います。

>そして告知の件ですが、とりあえず、「境界病変」なので検査をして様子を見ていくと言うつもりであるとのことでした。家族としてもどうしてよいかわからず、病院を変えるとか積極的治療を考える場合は本人にある程度のところまで告知する必要があるようにも思うのです。

もし自分だったらどうして欲しいですか。自分の人生を自分で決められなくても良いのでしょうか。家族はそばにいて支えて上げることができるのでしょうか。基本的にはすべて本人の希望を聴いてあげて決めるべきだと思います。

>それからもう一つ、来月またCTをとる予定なのですが、手術をして悪いところはとりあえず取ったのにそんなにすぐにCTで検査するってことは早い時期に転移する可能性があるとお医者さんが考えているからなのでしょうか。

手術の前に検査していたとすれば、今後の手術後の経過を見る時の比較のためではないでしょうか。

(返礼)2000.3.31
数野先生、早速ご返事いただき大変感謝しております。ご説明よくわかりました。妹の平滑筋肉腫についてご相談させていただいた、横浜の○○です。妹への告知の件、とても難しい問題だと思います。彼女の人生であるのだから彼女が決めるべきであることはよく理解できますし、もし私だったら絶対言って欲しいことでもあります。それが人のこととなるとその後の彼女の「反応」を考えるとやはり躊躇してしまうのです。とにかく今日妹は病院に検査の結果を聞きに行くのでその様子を見ながら対処していくつもりでいます。本当にお忙しい中お答えいただきありがとうございました。

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[足の付け根のしこりを調べたら横紋筋肉腫で手術のために人工肛門になると言われた]

(相談)1999.10.2
はじめまして。お忙しい所お手数をお掛け致しますが16歳の娘の事で相談をお願いいたします。娘は現在脚の付け根の所にできた腫瘍の除去のために入院をして精密検査を受けております。今までの経過は次の通りです。この塊は本人によりますと4、5ヶ月前当たりから気付くようになってきて現在卵大の大きさになっています。ずっと本人が一人で悩んでいたらしいのですが、一ヶ月ぐらい前に本人から言われて直ぐに病院に連れていったのですが、この時は左足の付け根の塊と左足のリンパ腺の五円玉大の腫れ、そして右足のリンパ腺の小さな腫れがありました。診断の結果は、原因不明でこんな症状は見たことがないとの事でしたが、取り敢えず、CT撮影をしていますが、年齢から言って悪性ではないだろうとの事で安心しておりました。この段階では、触診では内部に膿が溜まっているような物ではないこと、また注射器で内部を抜き出してみても何も出てこない硬いものである事より腫瘍である可能性が高いが、場所が女性性器と肛門の直ぐ横と言う事で最初に行った外科よりも婦人科の方が良いのではないかと言う事と、もっと大きい病院の方良いというので、現在は大きな市民病院に転院しています。

市民病院でもこの部位にこの様な腫瘍ができる事は非常に珍しくほとんど例が無いとの事です。ここでは血液検査とMRI検査を行いました。血液検査の結果は腫瘍マーカーはどれも反応しないとの事です。また前の病院にて行ったCT撮影の結果についての見解は、表面の膨れだけではなく内部にも塊がある事、形状がきれいな円形ではなく境界がはっきりしていない事等指摘がありました。これより腫瘍である事は間違い無いが、詳細は組織を取りだし検査しないと悪性か良性かの判断は付かないとの事で4日前に手術をして腫瘍の組織とリンパ腺の組織を取り出しています。この手術直後の説明では、”悪性か良性かは直ぐにははっきりしなく、3日後の検査結果が出てからになるが、悪性、良性いずれにしても腫瘍が肛門の括約筋の近くまで来ている。直腸はまだ大丈夫だが腫瘍を完全に除去すると肛門も除去しないといけなく人工肛門にならざるをえない。また悪性の場合リンパ腺に飛んで更に転移している可能性があるので全身のCT検査をする。”と言われました。悪性の可能性の指摘もさる事ながら、人工肛門の可能性に付いてかなりショックを受けています。

さてここから御相談ですが、まだ良性か、悪性かの結果も出ていない段階で難しいとは思いますが、以上の状況において肛門を除去しないといけないのでしょうか。肛門を残したまま周辺の腫瘍組織を除去する事は不可能でしょうか。またぎりぎりの所で除去してどうしても除去しきれなかった腫瘍組織をレーザーや放射線等の手段で殺す事は不可能でしょうか。全て完全に取ってしまう事が最良の道である事は分かっていますが、女性である事と歳がまだ16歳である事より、何とか取らなくてしかも再発しない方法を見つけたいと必至になっています。どうぞ上記の事に付いてお教えください。明日検査結果の説明と今度の除去手術に付いての説明があります。人工肛門に付いてまた言われると思いますが、他の方法の可能性を話し合ってみたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。またこの際どういう点を確認しておけばよろしいでしょうか。お教えをお願いいたします。

(答え)1999.10.3
お答えします。大変ご心配のことと思います。「左足の付け根の塊と左足のリンパ腺の五円玉大の腫れ、そして右足のリンパ腺の小さな腫れ」「腫瘍が肛門の括約筋の近くまで来ている。直腸はまだ大丈夫だが腫瘍を完全に除去すると肛門も除去しないといけなく人工肛門にならざるをえない」

病気が何であるかということと、その治療方法が問題ということですね。切除した腫瘍組織の病理学的検査(顕微鏡検査)で、病名が確定すると思います。足の付けね(そけい部)に多発性に発生した腫瘍ということから考えられる病気は、直腸肛門部(または外陰部)の腫瘍からの転移か、リンパ節(リンパ腺)にできた腫瘍(リンパ腫)だと思います。もし病気が悪性で、肛門を除去することによって病気が治るのであれば、やはり除去して人工肛門にすべきだと思います。担当医に出来るだけ肛門を残す方法を希望するということを話して、他の方法の可能性を聴いてみてください。まず命を助けるということが優先されると思いますが、納得できなければ、必ずしも医師の言う通りの治療を受ける必要はありません。あわてることはありませんので、良く調べてみて、良く考えてから、本人の意志を尊重してあげて、納得のいく方法を選択してください。「めずらしい病気」とか「すぐにでも治療をしなければ」とかいう言葉に惑わされないことです。このようなことをいうのは、経験が少ないか自信のない医師(病院)です。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.10.4
早速の返事をどうもありがとうございます。非常に不安な状態での早速の返事に非常に心強く思っています。さて、本日検査結果とその内容に付いて先生と長く話をしてきました。結果は悪性腫瘍で”横紋筋肉腫”との事です。悪性と分かった以上は取り去り人工肛門にするのが一番の方法なのでしょうが、この前のメールでお話したように先生に出来るだけ肛門を残す方法を希望するということを話して、他の方法の可能性を話し合ってきました。先生はできるだけ希望に添うようにするとの事ですが、その中で私の考え方は
ア) 完全除去し人工肛門を付け、転移に対応するための抗がん剤の投与
イ) 抗がん剤、動注、放射線治療をまず行い患部が縮小した後、除去手術を行う。
の二つの方法のうちどちらがいいか迷っています。治療の基本からいくと考えるまでもなくア)の方がいい事ははっきりしていると思いますが、イ)でまず肛門を取らなくてもよい可能性を試してみて、効果が無ければア)の方法を取っても遅くはないのではないでしょうか。この場合抗がん剤によって現在よりも進行しないという事が前提になりますが。逆に、進行する可能性があって処置が手後れになってしまう恐れが大きいと後で取り返しの付かない事になりこれもまた心配です。またア)の方が治りが早いと思われますが、人工肛門になりこれが16歳の女の子に耐えられるかが最大の問題です。短期間で治る可能性はあるが一生重荷を背負っていかないといけない。また一回取ってしまうともう元に戻す事はできない。これが50歳くらいの年齢であったなら迷わず手術して完全除去してしまう様に決断するのですが。いずれにしても本人の意志を尊重することが大事だと思いますが、納得させられるか自信がありません。まず、抗がん剤で進行を食い止めながら最善の方法を検討する事が良いと思うのですがどうでしょうか。こんなことは議論の余地の無い事なのでしょうか。命を最優先するとしたら、こんなことをあれこれ考える前にまず何としてでも手術をして原因を取り去り人工肛門にする事について娘を説得させるべきなのでしょうか。また横紋筋肉腫は進行が早いとの話も聞きまして、既に転移していないかも心配です。(CTに依る撮影ではまだ何も出ていません)お忙しい所申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

(答え)1999.10.4
お答えします。結果は悪性腫瘍で”横紋筋肉腫”とのことですが、まず病気について理解したうえで、本人にも話してあげて、治る病気であるという希望をもって、病気と闘うことです。治るという信念と、自分で治すという前向きの気持ちが大切です。医療スタッフと家族は、それを支えてあげなければいけません。日本で最も一般的な医学参考書から引用しますので、すでにかなり勉強されているようですが、参考にしてください。

悪性四肢軟部腫瘍Malignant Soft Tissue Tumor of the Limbs
梅田 透  国立がんセンター東病院・整形外科医長
◆治療方針
 軟部肉腫の治療法は専門家の間でさえ標準的治療法が確立されていない腫瘍が多く,きわめて難しい.治療の原則は病理診断,悪性度より腫瘍のbiological behaviorを考え,化学療法,放射線治療,外科的切除法からなる治療計画を立てる.
1.化学療法
 小円形細胞肉腫(横紋筋肉腫,末梢型神経芽細胞腫,骨外Ewing肉腫など)については,まず全身疾患と考える.小円形細胞肉腫は全身化学療法が有効であり,横紋筋肉腫ではビンクリスチン,アクチノマイシン-D,シクロホスファミド(VAC)に放射線治療を加えた標準的化学療法が確立されている.自家骨髄移植も行われる.
 その他の肉腫も原則的にはVACを中心にシクロホスファミドを同系のイホスファミドに変更,エトポシドの併用などが行われる.
 紡錘形細胞肉腫および多形型細胞肉腫(悪性線維性組織球腫,滑膜肉腫,脂肪肉腫,神経肉腫,平滑筋肉腫,線維肉腫,その他)では標準的治療法が確立されていない.用いられるkey drugはアドリアシンであり,併用化学療法としてはCYVADIC,また近年イホスファミドが単剤,併用で用いられている.
 また腫瘍縮小による安全な切除縁獲得を目的として術前動注化学療法を行う.用いる薬剤はシスプラチン,アドリアシンであるである.
2.放射線治療
 小円形細胞肉腫は放射線感受性腫瘍であり,腫瘍の局所コントロールにより外科的切除を安全にするため行われ(30-40グレイ),腫瘍の100%壊死も期待できる.一方非小円形細胞肉腫に対しては外科切除で十分な切除縁の得られない主要血管,神経部位に応用(40グレイ)され,局所再発予防に効果を示している.
3.外科療法
 固形腫瘍である軟部肉腫治療の基本は,外科切除による腫瘍の局所制御である.MRIを中心とした各種画像診断(CT,血管造影,骨scan, TI scan)により,患肢温存で,安全な切除縁が得られるよう手術計画を立てる.広範切除,切除+放射線治療を選択する.局所浸潤が広範で神経の温存が難しい例では切離断を選択する.
●患者説明のポイント
・悪性であっても病識が乏しいことが多い.がんと同様に予後不良の軟部肉腫もあるなど,腫瘍の概念をわかりやすく説明する.
・不適切な治療による再発例には,前医に対していらぬトラブルを生じないよう言葉に注意する.
●看護上の注意
・特に術前動注例ではカテーテル刺入部の出血に注意する.
・化学療法施行例における全身状態の把握.
・看護上においても,上記患者説明のポイントに留意する必要がある.
(今日の治療指針1998年版/(c)1998 IGAKU-SHOIN Tokyo)

>ア) 完全除去し人工肛門を付け、転移に対応するための抗がん剤の投与
>イ) 抗がん剤、動注、放射線治療をまず行い患部が縮小した後、除去手術を行う。
>の二つの方法のうちどちらがいいか迷っています。

化学療法や放射線療法の効果が期待できそうですが、本人と家族と医師とでよく相談して決めることだと思います。みんなで力をあわせて闘わなければいけません。

>ア)の方が治りが早いと思われますが、人工肛門になりこれが16歳の女の子に耐えられるかが最大の問題です。短期間で治る可能性はあるが一生重荷を背負っていかないといけない。また一回取ってしまうともう元に戻す事はできない。これが50歳くらいの年齢であったなら迷わず手術して完全除去してしまう様に決断するのですが。いずれにしても本人の意志を尊重することが大事だと思いますが、納得させられるか自信がありません。

「5才のこどもの悩みも、50才のおとなの悩みも、重さは同んなじだ」(マルセ太郎)という言葉があります。納得させ、説得することも大切ですが、正確に伝えて、自分で決めさせることを考えるべきではないでしょうか。自分の命、自分の人生です。充分時間をかけて、本人と家族と医師とでよく話し合うことです。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.10.9
数野先生、お忙しい所いつも御丁寧な返事をいただき誠にありがとうございます。非常に力づけられ感謝いたしております。早速ですが、病名は悪性の腫瘍で”横紋筋肉腫”であったことは前回連絡させていただきましたが、更に前回同時に取ったリンパ節の組織検査にて、リンパ節にも転移しているのが確認されました。この為先生がご指摘のように人工肛門となっても完全切除とリンパ節の切除をする事で決心致しました。この為、本人には悪性腫瘍の事や今後の転移の危険性の事等事実を正確に伝え、命に危険性のある事、手術によって人工肛門になる事、人工肛門とはどんなものである事など話し合っています。本人は意外と冷静に対応しています。そして手術をする事に同意してくれました。唯一つの心配はリンパ節の膨れが転移だった事で、その他の部位に既に転移していて元を取ってもまた現れてくるのではないかと言う事です。しかし手術で完全切除する事、そしてその後抗がん剤治療をする事、が今できる最良の方法であると思われますのでまずはやってみる事にします。本人にとっては辛い人生の選択ですが命には代えられないという事を分かってくれています。リンパ節の膨れが転移だったという事は手術で完全に除去しても予後はあまり良くないという事を意味するのでしょうか。またお時間がありましたら教えて下さい。

(答え)1999.10.10
お答えします。
「リンパ節の膨れが転移だったという事は手術で完全に除去しても予後はあまり良くないという事を意味するのでしょうか。」

本来、癌(悪性腫瘍)と言うものも自分で治す(治せる)病気です。手術などの病院での治療で治っているように錯覚していますが、もしそうであれば早期癌しか治らないことになります。進行癌でも治る人が多いのは、病院での治療で主な病巣を除去してもらって、残った目に見えない癌細胞は自分の治癒力で治しているのです。病院での治療だけでは、進行癌を治すことはできません。病院での治療は、癌を治りやすくする一つの手段です。そのことを忘れないようにして、病院での治療を受けて、元気で退院する日がスタートラインだと思ってください。ではまたいつでもメイルをください。

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