最 低 賃 金 制 度 と は |
◆最低賃金制とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度のことである。最低賃金額より低い賃金を労使合意の上で定めても、それは法律により無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされる。
最低賃金は、原則として事業場で働く常用・臨時・パート・アルバイトなどの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者とその使用者に適用される。
しかし、一般の労働者と労働能力などが異なるため最低賃金を画一的に適用することが必ずしも適当でない労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の適用除外が認められている。
■最低賃金の適用除外を受けられる労働者
1.精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
2.試みの使用期間中の者
3.職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうちの一定のもの
4. @ 所定労働時間の特に短い者
A 軽易な業務に従事する者
B 断続的労働に従事する者
◆最低賃金には、次のように地域別最低賃金と産業別最低賃金の2種類がある。
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、すべての労働者とその使用者に適用される最低賃金として、各都道府県ごとに設定されている。
地域別最低賃金の金額は、都道府県労働局長が、改正を必要と認める場合に、地方最低賃金審議会に諮問し、同審議会の意見(答申)を聴いて決定する。
産業別最低賃金は、関係労使が、基幹的労働者を対象として、地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を必要と認めるものについて設定されている。
産業別最低賃金の金額は、関係労使の申出を契機として、厚生労働大臣または都道府県労働局長が、決定(改正)の必要性を最低賃金審議会に諮問し、
必要との意見が出された場合に、労働大臣または都道府県労働局長が最低賃金審議会に諮問し、同審議会の意見(答申)を聴いて決定(改正)される。
* 地域別と産業別の両方の最低賃金が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
■最低賃金の決定方式には、「審議会方式」と「労働協約拡張方式」の2つがある。
審議会方式 |
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労働協約拡張方式 |
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・地域別 最低賃金 |
厚生労働大臣または都道府県労働局長が必要と認めたとき |
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一定の地域内の同種の労使の大部分に適用される労働協約があり、労働組合または使用者の全部の合意による申請があったとき |
・産業別 最低賃金 |
労使から申出があり、最低賃金審議会で決定(改正)の必要性有りとされたとき |
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諮問 |
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最低賃金審議会(労働者代表、使用者代表、公益代表、各同数の委員による審議) |
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答申 |
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厚生労働大臣または都道府県労働局長 |
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↓ |
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決定・官報公示 |
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↓ |
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効力の発生 |
現在、最低賃金のほとんどは審議会方式によって決定されている。最低賃金は、最低賃金審議会において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分に参考にしながら審議が行われ、@労働者の生計費、A類似の労働者の賃金、B通常の事業の賃金支払能力の3要素を考慮して決定(改正)されている。
◆最低賃金の対象となる賃金は、通常の労働時間、労働日に対応する賃金に限られる。具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象になる。
1.臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
2.1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
3.所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
4.所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
5.午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
■最低賃金の対象となる賃金の例
賃金 |
定期給与 |
所定内給与(この部分が最低賃金の対象となる) |
基本給 |
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諸手当 |
精皆勤手当 |
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通勤手当 |
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家族手当 |
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所定外給与 |
時間外勤務手当 |
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休日出勤手当 |
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深夜勤務手当 |
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賞 与 |
■実際の賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を次の方法で比較する。
1 |
賃金の支払われ方が 時間給の場合 |
時間給≧最低賃金額(時間額) |
2 |
賃金の支払われ方が 日給の場合 |
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額) |
3 |
賃金の支払われ方が 週休、月給等の場合 |
賃金額を時間当りの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較する 換算方法は次の計算例による (月給額×12か月)÷年間総所定労働時間≧最低賃金額(時間額) |