YsIII

WANDERERS FROM YS

■物語

2人の旅人が、木陰で身体を休めていた。
その日はあいにくの空模様ではあったが、それでも旅人の一人、
若い方の青年は、立ったままで目の前の風景に見入っていた。

彼こそ、後の世に、偉大な冒険家として名を残す、アドル=クリスティンだった。

いま彼は、仲間のドギと共に、ドギの故郷、
レドモントの街を目指すきっかけとなった、あの日の出来事を思い出すのだった。

隊商の一団が、二人の立寄った街にやってきたのは、今から三ヵ月前のことだった。
商人達は、6人ほどいたが、みな疲れきった顔をしていた。
彼等はしきりに愚痴をこぼした。
フェルガナ地方に、原因不明の災害が起こっているという。

その日の夜、ドギからアドルは、フェルガナ地方のレドモントが、
彼の生れ育った街であり、10年ほど前に出たきりだということを、打ち明けられた。

ドギの話が続く。

「ここまでくれば、レドモントの街はもうすぐさ。
いままでいろんな街を旅したが、レドモントほど素敵な街はなかったなあ。
住んでいる人も、みな気立てのいい人ばかりで、
孤児だった俺が無事に育ったのもそのおかげだ。
いけない、長話になってしまったな。
そろそろ出発しよう。」

旅をいそぐ二人は、森の中で、山猫が男を襲っているのに出会った。
剣を振り上げた二人が駆寄ると、山猫は気配を感じて、森の中へ消えていった。
彼は、ドギの旧友だった。

彼の名はロアルド。
二人は、ロアルドに手当を施し、
そのまま彼の働く宿屋に、一晩の世話を受けることになった。

きずの手当を受けたロアルドは、ドギと昔の思い出話を始めた。

「いろいろな所を転々と・・・、ドギ、お前らしいな。
お前が帰ってきたら、レドモントのみんなも喜ぶだろうな。」

武器屋を継いだアドニス、
アイテム屋を経営しているシンシア、
城で働くようになったチェスター・・・。
懐かしい名前が次々に、ロアルドの口から出てくる。

「そう・・・エレナの事を憶えているか?
とてもきれいな娘に成長して、会ったらきっ とびっくりするだろうな。」

翌日の朝早く、アドルとドギは出発した。

何時間か経っただろうか、二人の前に漂流民族の一団が現れた。
彼らは占いや曲芸で、報酬を得ながら、旅を続ける民族だった。
アドルとドギは、相談して、
フェルガナ地方を襲った災いの原因について占ってもらうことにした。

占い師は、黒髪をのばした若く美しい女性だった。
お金を受取った女は、テーブルの上の水晶に集中した。

それまで透明で、澄んだ輝きを放っていた球の中心部に、ポツリと小さな黒い点が現れる。
水晶の奥に何が見えたのか、女の顔は青ざめていく。
水晶の黒点は、次第に大きくなっていった。

突然、水晶球の表面にひびが走り、水晶は爆発した!
女は、爆発のショックで気を失ったが、ほどなく意識を取り戻した。
仲間に向って彼らの言葉で、二言三言ささやくと、女は、ドギにお金を返し、
一団はその場から足早に立ち去ってしまった。

アドルとドギには、彼ら漂流民族の言葉は分からなかったが、
ただ、「ガルバラン」という言葉だけが、なぜかいつまでも耳から離れなかった。

漂流民族と別れて、ほどなく二人の目の前に美しい街が現れた。
その街は、緑の木々にかこまれ、その間をぬって川が流れている。

「どうだ、アドル、美しい街だろう。」

確かに、美しい風景だった。
だが、それだけではない。
アドルには予感がした。
つかの間の印象ではない、時がたつにつれて、はっきりとしたものになっていく。
何かが待ち受けているという、威嚇的とも言えるほどの雰囲気が、
まわりの土地全体からおしよせているのだ。

「さあ、あと少しだ、行こうぜアドル。」

ドギが、前よりも早足で、街目ざして歩き出すと、
アドルも、まとわりつく予感を振り払い、ドギの後を追った。

■ソフト解説

機種名:FC
販売額:7500円(税別)
発売元:ビクター音楽産業
発売日:1991年09月27日
ジャンル:RPG+ACT


機種名:PCE
販売額:7200円(税別)
発売元:ハドソン
発売日:1991年03月22日
ジャンル:RPG+ACT


機種名:SFC
販売額:8800円(税別)
発売元:トンキンハウス
発売日:1991年06月21日
ジャンル:RPG+ACT


機種名:MD
販売額:8700円(税別)
発売元:RIOT日本テレネット
発売日:1991年11月01日
ジャンル:RPG+ACT

■ゲーム紹介

行く先々で 事件や異変に巻き込まれる(引き起こす) 最高のお人好し。
何だかんだ言って 自慢の剣術で解決してしまう 最強の悪の権化キラー。
結局 生涯において 100以上の冒険を行った 赤毛の冒険者【アドル・クリスティン】の1エピソード。

殆ど無言で冒険を続けていた お人好しアドルが 色々おしゃべりをし始める貴重なエピソードであり
それに付随して 軟派ぶりが目立ち始めるエピソードでもあるが これは 冒険者の華か。

今作ヒロイン【エレナ】は ナイフ片手に【バレスタイン城】を駆け抜け アドルの命を救う偉業を達成。
ただ捕まったり 後を追って石にされたりとは ちと 違う。

なお 旅仲間で親友でもある【ドギ】の出世作でもあり 必殺壁崩しは今回も健在。


元祖PC版 発売当時 偉大と言われた前2作と比較され
「ドラ(Pi)ンバスターもどき」と かなり酷評されていた割には
上記の用に 数多くのコンシューマー移植数を誇り 発売元も異なると言う 奇跡の怪作。

なお オリジナル(PC版)に最も近いコンシューマー作品は
最終ボス【ガルバラン】が 唯一 旧バージョンである PCE版となる。

今回は 一番知名度が低い FC版イースを調査。

マイナーチェンジが目立つが それでも FCとしては かなり頑張っております。

■フェルガナ地方案内

▼レドモントの街

【ドギ】の故郷。
鉱山と貿易の都市として繁栄していたが
魔物の出没が影響し 不景気に見舞われている。

▼ティグレーの採石場

【レドモンドの街】の主用産業を担う 美しい鉱石を産出する採石場。
街の男性の殆どは ここで働いている。

近頃 突如出没し始めた魔物に悩まされており
遂には落盤事故まで発生してしまった。

奥には「呪われた開かずの扉」があるらしい。

▼イルバーンズの遺跡

活火山が火柱を吹き上げ 極彩色の古代植物が茂る禁断の遺跡。
何時 誰が 何の目的で築いたかは不明。

地下には灼熱の溶岩が流れており そこにはかつて生贄が捧げられたと言う。

▼エルダーム山脈

万年雪に覆われた 険しく高い山々が連なっており
地元の人々は「魔の山」と呼んで 恐れている。

この厳しい自然の中に 街の生活を捨てた隠者が一人 山小屋で生活を営んでいる。

▼バレスタイン城

湖に面した 小高い丘にそびえ建つ 美しい城。

かつては 周りに住む人々から尊敬・敬愛・信頼を受ける城主が治めていたが
その城主の死後に 野心家【マクガイア】が 後を継ぐ事となる。

心無い侵入者を防ぎ 中にあると言う美術品等の宝物を守る為
仕掛け槍を代表とする 様々なトラップがフル稼動している。

▼ガルバラン島

一切が 謎に包まれた孤島。
唯一 わかっているのは 非道な魔物【ガルバラン】にちなんでいると言う事のみ。

入口は 魔物の牙のように噛み合い 侵入者を拒むような造りになっている。

その内部は 普通の灯りは全く光を放たない 深遠なる闇の迷宮になっており
【ガルバラン】の呪いによって操られた骸骨兵が徘徊している。