パラケルススの魔剣(物語)

■物語

6年前。
アメリカ東部の町 ニューカム。

人工2000にも満たない小さな町は、これまでに無い賑わいを見せていた。

きっかけは、町外れのウェザートップ館で起こった謎の惨殺事件だった。
警察も匙を投げたこの事件を解決しようと、
世界中のゴーストハンター達が集まってきたのだ。

彼等は次々と館の探索に向かい、そして帰ってきた
―― 心と身体に 癒し難い傷を負って。
ただ ひたすら震え、二度と館の事を口にしようともしない。

ある朝、数人の男女が旅立った。

館は魔物の巣窟と化していた。
死者が爪を振り上げ、巨大化した生き物が牙をむき、椅子やテーブルが飛びまわる。
暗い地下室に辿り着く頃には、既に多量の血が流されていた。

地下室の五芒星をくぐり抜けると、そこは更に凶暴な魔物で溢れかえる異世界だった。
全ての根源を断つ為に、彼等は前進した。

失ったものは血だけでは無い。
正気も失われていった。
そして、幾つかの生命も。

長い戦いだった。

やがて地響きと共に、全ては終った。

暗雲の晴れた館から戻ってきたのは、5人。
東洋系の顔立ちの男と、寄り添い合うアメリカ人の男女。
眼鏡の奥に悲痛な表情を隠した 若い科学者風情の男。
そして、もう1人。

彼等は多くを告げず、去っていった。
町の人々はかなり後になってから、事件の全貌を書物で読む事となった。
そのフィクションともノンフィクションともつかぬ本の表紙には、こう記してあった。

「ラプラスの魔」 モーガン・ディラン著、と。

そして、月日が流れた。

■プロローグ

6年前、アメリカの ニューカムと言う田舎町で幼い 子供達の惨殺事件が起こった。

犯人の手がかりは無く、やがて警察の捜査は打ち切られた。
だが 私は職業柄 興味を抱き、事件のあったウェザートップ館を訪れた。


そして5人の仲間と出会った。

私立探偵 アレックス、
女性記者 モーガン、
科学者 ビンセント、
研究家 ブラックウッド、
そして 霊能者 ジョアンナだ。

館はモンスターの巣食う場所と化していた。
次々と襲いかかる死体や怪物を退け、次第に謎が明らかになってきた。


館主 ベネディクトは危険な魔術に手を染め、
その結果 次元を越えて 別の世界へ渡る方法を発見していた。

その方法とは、館の地下に隠された五芒星を潜り、
異世界のラプラス城へと 足を踏み入れた。


この世界では歴史が歪んだ道を辿っていた。
ナポレオン時代の数学者であった ラプラスが 魔物と手を結んで
フランス皇帝の座を手に入れ、一大帝国を築き上げていたのだ。

私達は戦い、謎を解き、罠を暴き
1歩ずつ ラプラスのもとへ 近付いていった。


冒険の途中で ブラックウッドと ジョアンナを失ったが、1人の強力な仲間を得る事にもなった。

彼の名は 草壁健一郎。
日本から来たと言う、謎の霊能者だった。


苦難の果てに、私達は魔皇帝ラプラスにまみえた。
そして彼が呼び出した ”ラプラスの魔” と戦い、勝利をおさめた。
ラプラス城は崩壊し、ラプラスが作り出した架空の世界は、跡形もなく消えた。

私達は 無事に ニューカムへ戻った。
霊能者ケン ―― 草壁健一郎は、何処とも無く去り、その後 消息を絶った。
アレックスと モーガンはアメリカに残り
ビンセントは研究の為 イギリスへ渡ったと聞いている。

あれから、もう6年が過ぎた・・・・・・。


御久し振りね。 お元気?
あたしと アレックスは 遂に結婚しました。

アレックスは 相変らず探偵家業を続けているけど、
あたしは 新聞社をやめて 今はフリーのライター兼 小説化ってとこかな。 

ビンセントが、心霊現象を科学で解明しようと 研究を続けているのは 知ってるわね?

実はビンセントから、今度ロンドンで行なわれる 心霊学会に招待されたの。
学会の後にパーティーがあるから、そこで旧交を暖め直そう と言う提案みたい。

あたしと アレックスは喜んで出席する事にしたわ。
ついでに 新婚旅行も兼ねて、ヨーロッパをまわろうかと 計画しているの。

貴方も 是非、参加してね。
久しぶりに顔を合わせて、ゆっくり話をしましょう。
楽しみにしています。

追伸 ケンは今でも、消息が掴めないの。 一体どうしているのかしら