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2019年度優駿エッセイ賞落選作品 五重勝

19/11/5

 この作品は雑誌『優駿』で毎年行っている「優駿エッセイ賞」に2019年度に応募したものです。2004年に応募した時は初の応募ながら1次選考を通過しましたが、今回は見事に(15年連続)1次選考で落選しました。入選作の著作権はJRAに帰属することになっていますが、本作品は入選はしていないので著作権は私にあると判断し、この場を借りて公開します。


五重勝

 我が一口出資馬インプロヴァイズが準オープンの韓国馬事会杯を勝ったその日、私は帯広競馬場にいた。出資馬の応援のために中山競馬場に行きたかったのだが、その日はばんえい記念が行われる日だった。出資馬出走が決まる前にばんえい記念を観戦すべく帯広までの飛行機を早割で押さえていたため、キャンセル料が高い。また、ばんえい競馬の最高峰であるばんえい記念はぜひ生観戦をしたいレースである。そう思って予定通り帯広に行くこととした。
 帯広競馬場ではソリを曳く馬と一緒に走りながらレースを観戦。これがばんえい競馬観戦の醍醐味だ。しかし、朝の2レースから打っているのに馬券は全く当たらない。
 前述のようにこの日の中山競馬場では出資馬インプロヴァイズが準メインの韓国馬事会杯に出走する。帯広競馬場にも中央競馬の馬券売り場ができていて、モニター観戦ができるのでそこで中央競馬のレースを観戦した。
 実は前週のWIN5でキャリーオーバーが発生していたので、朝の飛行機の中で予想して、空港に着くとIPATでWIN5を2点だけ買っておいていた。韓国馬事会杯もその対象レースである。
 そこでWIN5対象レースだけは、中央競馬の売り場で中央のレースをモニターで観戦することとした。WIN5対象の最初の2つのレースは買っている馬が無事に勝った。
 3つ目の対象レースは韓国馬事会杯。もちろん出資馬インプロヴァイズを買っていた。2番人気に推されていた。戸崎騎手が手綱をとったインプロヴァイズは道中中団に付けて、3〜4コーナーのカーブを距離ロスを最小限に抑えるべく最内を回ってきた。そして、直線で内の開いたところをうまく抜けて、ゴール前で先頭に躍り出る。見事にインプロヴァイズの勝利。馬の力もそうだが、戸崎騎手の好騎乗も光った。これでめでたくオープン入りである。また、WIN5の3つ目も通過。
 さらに4つ目の対象レースである阪神大賞典も唯一買っていたゴールドシップが勝ち、4つ目も通過。その次のスプリングステークスで1番人気アジアエクスプレスが勝てばWIN5が的中する。獲ったも同然でいた。
 スプリングSでアジアエクスプレスに騎乗したのは、奇しくも前のレースで我が愛馬インプロヴァイズを勝利に導いた戸崎騎手だった。ちなみにWIN5対象レースの1つ目のレースも戸崎騎手が勝っていた。ここも勝って私にWIN5的中をもたらせば、まさに戸崎さまさまである。
 しかし、アジアエクスプレスは最後に良い脚で上がってきたものの、前を行くロサギガンティアを捉えられず、惜しくも2着。最後の5つ目で期待を裏切られた。しかも惜しい2着だ。
 中央競馬はWIN5こそ惜しいところで獲り逃したもののインプロヴァイズの単複と阪神大賞典の三連単が当たっていて馬券収支はプラスだったのだが、現地で目の前で行われているばんえい競馬は全く当たらない。訳あって馬券を買えなかったレースに限って予想が当たってるし…。帯広に来てるのに中央競馬に心が熱くなっている。
 とはいうもののばんえい記念は格別であり、場内にも独特の雰囲気が漂っている。馬達は1トンもの重いソリを曳いていく。通常のレースでは第二障害途中まではあまり止まらないものだが、ばんえい記念では馬達は小刻みに止まり、息を入れる。第二障害も一気に駆け上がれる馬はいない。坂の途中で休息を入れて、ゆっくりと、しかし懸命に障害を越えていく。
 やっとの思いで障害を越えても、その後の平坦な場所でも止まってしまう。私が本命にしたキタノタイショウという馬は第二障害を越えた時点でかなり離されていたが、実力のある馬なのでそれでも何とかなりそうだと思った。しかし、結局何ともならなかった。勝ったのは8歳馬インフィニティー。無限大という意味。良い名前の馬だ。
 1〜3着まで決まって馬券の当たり外れは決まったが、それでもレースは続く。ほとんどの観客がその場を離れずレースを見続けている。アアモンドヤワラという馬が他馬から離されてゴールした瞬間は軽い拍手が起こったが、第二障害をよく見るとまだ1頭いた。シベチャタイガーだ。着順はすでに決まっているのに、観客のほとんどはその場を離れることなくレースを見続け、「頑張れ!」などと声援もあがっている。やっとの思いで最後の馬がゴールすると、観客から大きな拍手が沸き起こる。泣いている人もいた。勝ち馬が決まった瞬間よりも最後の馬がゴールした瞬間が盛り上がるのはばんえい記念ならではである。1トンものソリを曳いて完走することに意義があり、着順に関係なく完走することが人々に大きな感動を与えるのである。
 目の前のレースの馬券はカスリもせず、馬券では中央競馬に熱くなってしまったが、ばんえい記念を現地で観た、その感動を味わったということだけで帯広までやって来た甲斐があるものだ。

 それから4年後、中央競馬は12月28日は平日でも開催することとなっていた。そこで2歳GIのホープフルステークスが行われる。
 その直線の開催である有馬記念当日にWIN5の的中票数ゼロでキャリーオーバーが発生していた。有馬記念当日といえば一年で最も馬券が売れる日である(WIN5の売り上げがいつもよりも多いかどうかは調べてないが)。その時のWIN5の売り上げが持ち越されており、配当が上積みされる。キャリーオーバー発生時だけ買う人も相当数いると思われ、また、普段買ってる人もいつもより多く買うだろう。配当が普段の倍ぐらいになるということはないのだが、それでも普段よりは好配当となるはずだ。ここはWIN5で勝負すべきだろう。
 その日私は阪神のオープンレースに一口出資馬が出走する予定だったので応援に行こうと休暇を取っていたのだが、残念ながら除外となったので遠征も中止した。そこで、朝からWIN5の対象レースの予想をしていた。そしてWIN5を72点購入し、ホープフルSを観戦するために中山競馬場に行った。
 WIN5の1つ目のレースであるフォーチュンSの直前に中山競馬場についた。そのレースは1番人気のシンギュラリティが勝ちまずは第1関門突破。
 2レース目は2歳GIのホープフルSだ。1番人気のサートゥルナーリアと以前から注目しているニシノデイジーの馬連一点勝負していた(WIN5もその2頭を買っていた)が、惜しくも1着3着で普通の馬券はハズレ。しかし、サートゥルナーリアが強い勝ち方でホープフルSを制し、WIN5の第2関門は突破できた。
 この日のWIN5は1番人気−1番人気−1番人気−2番人気−2番人気とかなり堅い結果に終わったのだが、唯一1番人気が勝たなかった阪神11レースのベテルギウスSは1番人気馬を買い目に入れていなかった。そうしたら買い目に入れていた2番人気のロードアルペジオが勝った。ただ、このレースは8番人気のマイネルバサラの単複勝負でなおかつWIN5の買い目にも入れており、その馬が勝ったと思ったらゴール寸前で差されてクビ差の2着だった。ここでマイネルバサラが勝っていたら単勝も獲れたしWIN5の配当も上がったはずなのだが…。
 微妙といえば中山最終レースのベストウィッシュカップも微妙だった。買っていたレジーナドーロが最後にギリギリ差したと思ったが、近くにいた見知らぬ爺さんが「よっしゃ、12(サンクロワ)勝った!」と言っていたので思わず「3(レジーナドーロ)じゃないの?」と話しかけた。その後2人でスローVTRを見るとハナ差でレジーナドーロが先着していた。これでWIN4であり、的中へのリーチがかかった。
 残る5つ目のレースが最大の難関だった。予想をしていてこのレースがずば抜けて難しかった(他の4つはそれなりに自信はあった)。ハンデ戦な上に自信を持って推せる馬もいない。結局3頭買ったが、その中の1頭はハンデ50kgの最低人気のクリノコマチであり当たる気がしない。それでも押さえで買っていた1番人気のフィアーノロマーノが勝利を挙げ、見事にWIN5的中である。
 スマホでツイッターを見ていたら結果が発表になる前に「WIN5的中」とつぶやいている人が何人もいた。私は万が一的中して数千万とか億とかの配当を得られることになった場合、全世界に公開すると大金を手にしたことがバレて身の危険を感じるため買い目を公開していない。3つ目のレースが当たった時点で沈黙を続けていたが、ツイッターのタイムラインを見ているうちに「そんなに付かないだろうから言ってもいいだろう」と思って発表前に当たったということを公表した。配当が発表になり293.3倍だそうである。普通の馬券を買って穴を獲った程度の配当だ。しかも、1点100円で計7200円という多点買いをしているのだから、投資金額が3倍強になっただけでそんなに儲かったわけではない。こんな配当なら普通の馬券でもたまに獲れるが、キャリーオーバー分というオマケが付いてるのだから良しとしよう。
 人生初のWIN5的中はこんな感じだったが、いつの日かネットなどで公開すると身の危険を感じるほどの大きなのを的中させたいものだ。そうなったら、公開できないので、このような場所に書かせていただくこともおそらくないだろうが。


[あとがき]
2018年末に人生で初めてWIN5を的中されたので、WIN5についての思い出を語ってみました。主観が勝りすぎた内容のためかあえなく1次選考敗退でした。

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