日本ダービー之巻

 そして大舞台。日本ダービーである。

 しかし、ダービーはそれほど甘くなかった。「運の強い馬が勝つ」と言われているダービーである。ゲート再審査出場停止のせいで皐月賞に出られなかったスズカにはそれほど運があるとはいいがたい。

 結局「展開の利だけで皐月賞を勝つ」という強運の持ち主サニーブライアンが馬鹿逃げを打ち、またしても展開の利で逃げ切ってしまう。

 ツインターボ先輩を尊敬するスズカは「馬鹿逃げ」という芸を身につけようと日夜励んでいるが、まだまだ修行が足りない。一度たりともサニーブライアンの前を走ることなく終わってしまう。

(レース終了後控え室で)
スズカ「君のその豪快な逃げの秘訣を教えてくれよ。」
サニー「教えらんないね。だってそれを教えたら次はお前に勝たれるじゃねぇかよ。」

 同期だが普段からあまり中のよくなかったサニーブライアンはそういって厩舎へと帰っていった。それ以来二人は会話をしたことはない。

 スズカは夏は舞台にたたず、休養を装って北海道に行き、尊敬するツインターボ師匠に逃げ技の極意を習い密かに修行を続けていた。


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