JCを盛り上げるには

 近年JCを回避する日本の一流馬が多い。天皇賞から有馬に直行するほうがローテーションとしていいからである。天皇賞にしても有馬記念にしても昔から八大競走として格が上だからであるし(秋の天皇賞は伝統の3200m戦ではなくなり2000mになってしまったので格があるのかどうかは疑問だが)、その谷間にあるJCは日本唯一の国際G1であり世界から認められているにもかかわらず、日程的にきついからといって出走してこない一流馬が多い。(97年の場合エアグルーヴ、バブルガムフェローといった牡牝の現役最強馬がでてきたがむしろ珍しいケースである。)中3週のローテーションだと普通は理想のローテーションなのかもしれないが、ことG1のようなハイレベルになると馬にも疲れが残ってくるので、関係者の気持ちもわからないわけではないが。

 しかし、日本の最強馬が出てこないとなるとせっかくの国際G1も盛り上がらない。では、どうすればそういう馬(の関係者)が出走しようという意志をもってくれるのだろうか。

 それは次のようなルールを作ってみればどうだろうか?「JCに出走した日本馬に有馬記念の優先出走権を与える」というものである。そうすれば有馬を狙っている陣営がJCにも出走させようという意志がでてくるだろう。有馬記念の出走権は(1)JC出走馬(これは数が限られているので有馬の枠があふれることはない)(2)ファン投票上位10頭((1)で残った枠が10以下の場合、上位優先)(3)その他現在の条件に準ずる(G1勝ち、年度内の重賞勝ち、賞金順など)。(1)についてはJCに登録馬が殺到し、除外になったらどうするのかと思う方もいらっしゃるかもしれないが、やはり「JCに選ばれし者」は選ばれなかった馬より格が上ということになるので「登録」ではなく「出走」を条件にしたほうがいいだろう。

 しかし、これには問題点がある。有力馬が揃えば盛り上がるか?ということである。先に述べた(1)を満たすためにとりあえず出走しておいて、狙いは有馬だからということでただ歩いているだけの馬もいるのかもしれないからである。「出走馬の名前」をとるか「全力を賭した戦い」をみせるか。結構難しい問題かもしれない。まあ、プロ野球にもオールスター戦という「全力を賭した戦い」よりも「選手の名前」を重要視した試合があり興行的にもそれなりに成功しているので、やはり役者を揃えることも大事だと思うが。

 日本馬についてばかり書いてきたが、次に外国馬である。97年はなんと北米からの参加はゼロ。97年最後の東京開催に東京競馬場の空には星条旗もカナダの国旗もたなびいていなかった。ヨーロッパの馬も(ピルサドスキーを除くと)一流所はいない。それはブリーダーズカップとの日程が中1週になり、輸送なども考えると間隔がきつすぎるからである。やはりJCとBCを比べるとBCの方が格は上で、これはこれで止むを得ないことである。かといって日程を遅くすると今度は有馬記念に悪影響が出るので、そうするわけにもいかない。欧米にとってはBCが大事だが、日本人にとっては有馬記念は国民的行事のようなものなので有馬の日程は動かしづらい。結局アメリカにBCを凱旋門賞とJCのちょうど真ん中(つまりJCの3週間前)にやるようにお願いするしかないだろうな。そうするには、アメリカの競馬関係者にJCを凱旋門賞と同列にみてもらえるように頑張るしかない。とどのつまり、海外からやってくる馬たちに「失礼のないような」日本代表が出てくるのが先決なのかな。

 しっかし、もともとは日米経済摩擦による外圧によって設立されたJC(そのために伝統の天皇賞が馬に非常に負担のかかる坂のきつい府中の3200mを2000mに変更というとんでもないことになった:その証拠として第一回外国招待馬はほとんどアメリカ馬である)に当のアメリカの馬が(決してアメリカ競馬が落ちぶれたわけではないのに)出てこないのは皮肉な話である。JRAはアメリカのためにJCを秋天の権威を失ってまで設立したのだから、アメリカはBCをJCにどうにか間に合う時期にやるといった「恩返し」はしてもいいのではないだろうか。


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