’１６ 中山グランドジャンプ観戦記

2016年4月16日

　今年も昨年に引き続き、中山グランドジャンプへの外国馬の参戦は無かった。日本馬の方も小粒なメンバーで頭数も10頭とやや寂しいメンバーとなった。せめて昨年の覇者で暮れの中山大障害でも３着のアップトゥデイトが出走していれば良かったのだが、残念ながら左前に骨りゅうが出たために回避してしまった。しかし、そんな時こそ新たな障害界のスターホースが誕生するのかも知れない。

　人気は中山大障害３着で前走の阪神スプリングジャンプを圧勝していたサナシオンが集めていた。だが、新たなスターホースの誕生に期待して敢えて大障害コース初参戦のワンダフルワールドを本命として馬券を買った。

　今年もスタンドの大竹柵の真正面あたりで観戦した。目の前には芝コースの直線に最終障害となる置き障害が置かれていた。年に２回しか使われることのないＪ・ＧＩ専用ファンファーレが厳かに鳴り響き、レースのスタートである。

　人気のサナシオンがハナを切る展開でレースは進む。コースを一周半ほどして、襷コース入り口の谷に入り馬群が吸い込まれるようにして私の視界から消え、そして再び姿を現した。最初の難関大竹柵である。各馬順調に飛越…と思いきや、一頭落馬した馬がいた。障害の名手高田騎手が騎乗するウォンテッドだ。その後も空馬となって走り続けていたので馬体は問題ないが、名手高田が騎乗しても落馬とは残念である。

　それまでとは逆周りに半周してきて、今度は大生垣だ。今度は全馬無事に飛越。難易度の高い障害をこなした。場内からは拍手が沸き起こる。

　その後もサナシオンが先頭でレースを引っ張って進んでいく。２周目３〜４コーナーの中間の障害を飛越した後、道中三番手あたりでレースを進めていたオジュウチョウサンが動いた。先頭のサナシオンの直後まで上がっていき、直線を迎える。直線芝コース上に置かれた最終障害を飛越後にサナシオンが突き離し、一時は２馬身差を付けた。このままサナシオンが逃げ切るかと思われたが、オジュウチョウサンも負けてはいない。最後にオジュウチョウサンが盛り返して末脚を繰り出し、最後はサナシオンを捉えて先頭でゴール板の前を駆け抜けた。

　石神騎手はＧＩ初制覇。オジュウチョウサンは重賞初制覇である。昨年暮れの中山大障害では後ろから行き過ぎて６着に敗れているが、好位に付けられると強い。サナシオンも敗れはしたが、３着以下に９馬身差を付けての２着である。この２頭が抜けていたと言える内容だった。

　私の本命ワンダフルワールドは離れた５着。掲示板に載るのが精一杯だった。

　中山グランドジャンプは着順も重要かもしれないが、日本一難易度の高い障害を超えて完走することに意義のあるレースである。カメラは５着馬あたりがゴールした頃から勝ち馬を追っていたが、場内の観客は上位着順が決まり馬券は関係なくなってもゴール前を見ている。そして、最後の馬がゴールした瞬間、労うような、いや、完走したということを讃えるような拍手が沸き起こった。もちろん私もその一人。これがあるから中山グランドジャンプや大障害の観戦はやめられない。