〔観劇日〕 2001/05/03(木),2001/05/20(日) 〔脚本〕 横内謙介 〔演出〕 横内謙介 〔出演〕 近藤正臣/伴美奈子/佐藤累央/杉山良一/石坂史朗/中原三千代/犬飼淳治/鈴木真弓/中尾あづさ/村内貞介/吉良咲子/六角精児/茅野イサム/有馬自由/ 山中たかシ/高橋麻理/鈴木利典/三村晃弘/岩本達郎/永田典之/ほか
【あらすじ】
客席の間をチンドン屋の2人が入って来る。最初は、携帯電話やアラーム時計の電源オフの注意事項や記念本やCDやTシャツの販売宣伝 をしていた。そのとき、黒のマントを羽織った仮面の男がチンドン屋の2人に紙切れを渡して、舞台が始まるのでした。
チンドン屋は、ニコラと紅子という二十面相の手下だったのだ。二十面相と一緒にいる、ねこ夫人がその2人を呼び寄せ二十面相が昔のように復活
する手伝いをしてほしいというものだった。三十年前のきれいな少年達3人を誘拐しようというのだ。
【感 想】
最初、怪人二十面を演じる近藤正臣さんが出てらしたのは、白髪の髪と髭で車椅子だった。声も老人のしゃべり方。二十面相の車椅子は、せむし男の蛭田が
つきそっているのだ。
車椅子で入ってきた老人二十面相が、ちょっと笑わせてくれた。・・・老人のしゃがれ声で言う
車椅子から立ち上がった時は、膝も腰も曲がり老人そのものだったのに、黒マントにシルクハットで復活したときは、役者として三十年以上
経っている筈なのに「若い!」ったらないのだ。一時期、ひさびさにTVに出られたときに「随分老けたなぁ」という印象をもったのだが、今日は全然違う。
体型も細いままで、怪人二十面相がよく似合うのだ。間の回りのラインを濃く描き、口髭も描き込んでいるのだが似合ってるのだ。いつもの、少しキザな表情や
物言いが近藤正臣そのものなのだ。怪人二十面相=近藤正臣のようで、なんかうれしい。怪人二十面相と言うなつかしい響きだが、むか〜し、小さい頃にTVで
やっていた(タイトルは忘れたけれど)「少年探偵団」というのだったかな? 「ぼ・ぼ・ぼくらは少年たんてーいだん。勇気凛々るりの色〜」と舞台上で、
三十年前の今は汚くなって現われた少年探偵団の3人が唄うのだ。
可笑しいけれど、うれし懐かしい感情もあって「今日はこの芝居に来て良かった」と、すぐに思ってしまった(笑)
明智小五郎役の山中たかシさんが面白く楽しませる明智を演じているのも良かった。3人の少年探偵団がまたそのへんのオヤジで、なおかつ昔は清らかだった少年を
うまく出していた。この3人が、六角さん、茅野さん、有馬さんなのだ。六角さんは、TVでもよく出ているので顔を見ればすぐに分る筈。丸く白いぽっちゃり顔に
黒ふち目がねをかけているのだ。出てくるだけで、そこはかとない笑いが込み上げてくる。
結局、怪人二十面相はもう時代遅れで子ども達にも受け入れられないから、自らの手で二十面相が守り続けてきたルールを壊して、最後にしようとするが、少年探偵団
がいつまでも怪人二十面相でいてほしいと頼むのだった。最初は、子供のころの絵空事、本の中の物語と言っていた3人だったが、必死に今の自分達の気持ちを訴えているのだ。
このへんが泣かせてくれた。必要のないものなんてないのだ。ということを切々と訴える。そして、もう一つわかったことは、怪人二十面相は、少年探偵団を愛していたと
いうこと。愛しているから、難題をぶつけ、時にはきびしく時にはやさしく見守る。これが大人が子供に対してしなければいけないことなのだ。大人がしっかりした、ルール(考え方)
を持っていないから、子供がだめになるのだ。現在の子ども達は昔と変ってきた。というのはも間違いで、大人達が変って来ているから子ども達に影響をあたえているのだと。
この怪人二十面相の芝居では伝えていたのだと思った。
懐かしさって、良いよね。子供の頃にもどったような錯覚が快く、流す涙も快く泣きながらも、くすっと笑う台詞も有りでとても良かった。終ってから会場を出てきたカップルの
男性が「すごくよかった〜」の一言がすべてを語っていたように思った。
地方公演終了の日、本当の千秋楽の「怪人二十面相」は、厚木市民会館小ホールで始まり。市民ボランティアの支援活動、厚木シアタープロジェクトのバックアップによっての
公演だそうだ。
紀伊国屋とは打って変わって、子供を連れたお母さんお父さんが多く来ていた。それも小学校低学年だ。やな予感がする。笑うところなどは、一緒に子ども達も笑っていて
楽しそうなのだが、近藤さんが良い台詞を言っている時に「見えな〜い。見えないよ〜」と言う声が聞こえたり、なんかパタンパタンと音をたてていたり、椅子を蹴飛ばしている
子供もいたりする。親は何をしているのだ。14列のお姉さんは、グッズ購入した時のビニールの袋を「パシャパシャ・バリバリ・クシャクシャ」とひっきりなしに音をたてて
いる。お姉さん落ち着きがない様子で、私はちょっとイライラしてしまった。なんだか芝居を観に来ているときの回りへの気配りが足りなさすぎる。と愚痴を言ったところで
芝居の感想に移りましょう(笑)
近藤正臣さんへの歓迎の声は、熱く会場を駆け巡った。いいタイミングで「こんどうっ!」と声がかかる。二十面相は、千秋楽まで衰えずカッコ良さも益々冴えていたように
感じた。近藤正臣の世界がしっかり出ていて、ちょっとキザな仕種が色っぽく「ん〜す・て・き」とつぶやいてしまう(つぶやかなかったけれど(笑))
花崎まゆみ役の高橋麻里さんは、声がでなくなっていた。紀伊国屋のときは、澄んだ通る良い声だったのに、長丁場で張り上げる台詞を続けていたからつぶれてしまったのね。
普段からの訓練が必要よ(笑)
二十面相が脱出した後、少年探偵団の三人が屋敷に取り残されたのだが、あっという間に荒れ果てた空き家に変ってしまっていた。空き家には、朝の光が射し込んでいた。
そのとき、黒のコートを着た男が入って来て、警察手帳を見せ「空き家に人が入り込んでいると言う連絡があってね・・・身分を証明するものがありますか? 持っているものを
出して・・・」といわれ、ひとりがポケットに入っていた宝石の袋を刑事に渡すと中身は三個のビ−玉に変っていて、「宝石はいただいた。怪人二十面相」と書かれたメモが
入っていたのだ。そんなこんなで三人は、夢を見ていたかのように刑事に促されてその屋敷を出ていったのである。その刑事は何を隠そう二十面相だったのだ。手下の者たちが
「これからどこへ?」と聞くと「夕日が見える街角へ」と言ってマントをひるがえすのである。そして、最後に手の中の物を見せて微笑んだ。それは、小年探偵団のひとりが
二十面相の屋敷からポケットに忍ばせていた宝石だったのだ。これを取り返すために刑事になって出てきた訳なのね(笑)
前回も感じたが、自分が子供の頃の時代を思い出させてくれる舞台だった。古き良き大人がいて、子供らしい子供がいる時代が懐かしい。今は、大人らしい子供で溢れ、大人の
意見を持たない大人が親になり、そんなだから子供にも中途半端にしか接することができない親がいるのだ。この芝居を観た大人が親がそれに気付いてほしいなぁ。と思った。
子供らしい子供に育てようよ。怪人二十面相が喜ぶような・・・。
二回目のカーテンコールでは、振り付けをしてくれたラッキー池田と扉座座長の横内さんが、インドのダンスのときの衣装を着けて登場し、ラッキーさんの振り付けでちょっと
だけ二人で踊ったのでした。そのときの近藤正臣さんがどういう行動をとったか?これは、千秋楽だから見ることが出来たのでとてもラッキー(池田)だった(笑)。横内さんが
近藤さんが着たマハラジャの衣装を着て出てきたので、近藤さんはすごく嬉しそうな顔をして手を叩いて飛び跳ねていたのだ。いや〜ん、可愛い近藤さんを見てしまった。
大人の男があんな風に無邪気に喜ぶ姿を見せてくれたのだ。なんか、そんな近藤さんの面も素敵だなぁと思った。近藤正臣、芸能生活40年と聞き驚きである。いつまでも活躍してほしいなぁ。
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