〔観劇日〕 2001/5/31(木) 〔脚本〕 ヤスミナ・レザ 〔演出〕 パトリス・ケルブラ 〔出演〕 市村正親/平田 満/升 毅
【あらすじ】
二人はお互いの気持ちが理解できなくて、喧嘩同様の状態になってしまう。それに巻き込まれてしまうのが気の良いイワン なのだ。いままでの三人の関係が悪化し始める。
【感 想】
白い舞台で白い絵をめぐって三人のいさかいがはじまるのだが、そのきっかけとなる絵を買ったセルジュが升さんだ。
モダンが良いものとおもっているセルジュには、白い背景の白い線が入った白い絵にモダンを感じ、同じ白でもその中にオレンジやら
グレーの色が見えると言う。自慢気に話すセルジュとマークの会話が面白い。「この絵の良さが分るだろう?」というセルジュに
「この絵に本当に500万出したんじゃないたろうなぁ」と反すマーク。お互いに怒りさえ感じているのにその感情を抑えながら
、まだ言い合っているのだ。市村さんのマークの人を小馬鹿にしたような態度と表情には笑ってしまう。
二人のやりとりや独り言が終って、やっとイワンの登場だ。マークにセルジュの話を聞かされて、マークの気持ちも分れば
セルジュの気持ちも分るといったような態度をとる。このへんがマークとセルジュとイワンが親友でいられた理由がありそう。
三人三様の性格や現在の精神状態を吐露していき、悪化した関係を修復していくというまるで心理劇と言って良い。心理学を学んでいる人
には、読ませたい本だと思った。私も活字でもう一度三人の精神状態をひとつひとつ追っていきたくなったくらいだ。
三人の関係が15年も続いていたのは、支配型のマークに無意識のうちに支配されていたセルジュ。そして争い事の嫌いな気の良い
イワンがこの二人の間に入ってうまく均衡をはかっていたからだろう。支配されていたセルジュがだんだんと自分の意志で物事を決める
ようになって、マークの好みとは正反対のものに興味を抱き、白い絵を買って来てしまったのだ。そのおかげでいままでの、
おとなしく納まっていた三人の関係は崩れ始めたが、自分の心の中をはじめて(多分はじめて)さらけ出すきっかけとなったのだ。「こんな言い方していいの?」
と思うほどの言葉で言いたいことを言い合い(これが長い)、イワンの発した言葉によって、セルジュとマークの間に修復への気持ちが生まれる。男三人が15年仲良くして
いたと言うのも可笑しい。これって女性の関係なら分るような気がするが・・・。でも、女性三人だったら、これほどのいさかいには
ならなかったのでは? と思い、いさかいになったら修復は不可能だとも思った。
平田さんの長〜〜い台詞に感嘆!。
三人で映画を見に行くという約束の時間にイワンは遅れた。待っているマークとセルジュはイライラ。そこへイワンが飛び込んで来る。
謝るのかと思っていると遅れた理由を話し始めた。なんと数分間の休みない台詞に終った後は、大拍手だった。イワンのフィアンセとイワンの母親の
語りをひとりでしゃべってしまった平田さん。すっご〜い。こんなところもイワンの性格が出ているところなんだなぁ。と笑いながら納得して
しまった。
この三人の性格は、みんなひとりひとりの中にもあって、そのどの部分が割合を占めているかの違いなのだと思った。支配したいという気持ち、
自分より優れた人や物への憧れの気持ち、争い事は嫌いでなんでも丸く納めたい気持ち、等など・・・。三人のやりとりと気持ちの流れを
観ているのが楽しい舞台でした。一時間半の短い中に凝縮された芝居もいいものだ。
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