ブルールーム


〔観劇日〕 2001/12/15(土)
〔作〕       デヴィッド・ヘアー
〔演出〕     デヴィッド・ルヴォー
〔出演〕    秋山菜津子、内野 聖陽

【感 想】
シュニッツラーが100年前に書いた戯曲で現題は「Reigen」(ドイツ語)。19世紀末ウィーンを背景 に、男女二人だけの対話による10場面の愛の情景をエロティックに描かれたもので、1998年のロンドン 公演でデヴィッド・ヘアーが脚色した。1921年に上演されたときは、エロティックな場面が多く警察の 手によって上演が中止されたと言います。
100年前の戯曲が現代に通用するのは、テーマが男女の愛と欲望についてだからでしょう。作者は医師で あり作家でもあったというから、テーマに対しての発想が分析的(セックスの連鎖という考え方)で中心に あったのです。
ロンドン公演では、ニコール・キッドマンとイアン・グレンが熱演し、刺激的なセックスシーンが舞台上で 繰り広げられ大ヒットしたのだが、共演した二人が公演後も熱演(?)してたため、それが原因でニコール・ キッドマンはトム・クルーズに離婚を言い渡されたとか・・・。なんて、よけいな話が入ってしまいました(笑)

さて、ベニサンピットでの公演はどうだったのでしょうか?
二人は、それぞれ5人の役柄に変ります。そして、10パターンの愛の情景が演じられたのです。現代に置き換えられた 10の場面を紹介しましょう。

@少女アイリーンとタクシー運転手フレッド
Aタクシー運転手とホームステイ留学生マリー
B留学生マリーとホームステイ先の学生アントン
C学生アントンと人妻エマ
D人妻エマと政治家チャールズ
E政治家チャールズとモデルのケリー
Fモデルのケリーと劇作家ロバート
(ここでロバートはピアノ弾き語りで「ブルールーム」を聞かせる)
G劇作家ロバートと女優
H女優と高貴な男マルコム
I高貴な男マルコムと少女アイリーン

このように10のパターンを見てわかるように、セックスの連鎖というものが描かれています。二時間の中で この10の場面をどう見せていくかと言うと、ステージ上で着替え、ヘアメイクをするのです。壁には、女性用 のドレスが何着か掛けてあり、バッグと靴が置いてあります。男物のジャケットと靴も同様に。ステージの 中央部が円形になっていて回転します。

秋山さんと内野くんの実力が十分に発揮されていた舞台でした。とても刺激的なエロティシズムの世界を 「演劇」と言う芸術で見せてくれていました。それぞれ一人の役柄で2パターンの愛の世界を表わしている のですが、お互いの気持ちや立場で愛と欲望の中から生まれる感動だったり失望や安らぎだったりと違って くることにリアリティを感じて、これだけのパターンを見ていると「自分の中の愛と欲望は?」と問うて 比較してみたくなります(笑)

しかし、ふたりとも流石です。特に内野くんは芝居とは言えよくやったなと感心しました。そのよくやった 全裸での演技では、それがとても自然のなりゆきと思わせてくれるのですから、あれよあれよと見入ってしまいました。 150〜200人ぐらいしか入らない小劇場と、来年予定されている名古屋や大阪での大きいところとでは ステージの大きさの違いであのスピード感が出るかしら?と気になるところだし、客席も横に奥に広いのですから 演じる側はどうなのかしら?とも思ってしまいます。とにかく、もう一度観たいですね。




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