二人の噺


〔観劇日〕 2001/8/29(火)
〔作・演出〕       福島三郎
〔出演〕    中井貴一/段田安則

【あらすじ】
東京の寄席の舞台では、桜福亭藤介の高座がかかっている。ネタは、藤介の創作落語「平成の大泥棒」だ。 石川五右衛門の末裔の石川十五右衛門がボケまくって大活躍する話なのだ。

藤介が「平成の大泥棒」を話しているころ、藤介が借りているアパートには、偶然にも泥棒が入っていたが、 この泥棒は、藤介の落語に出て来る泥棒と同じように要領が悪いのである。もたもたとしているうちに、 藤介が帰って来てしまい、見つかってしまうことになる。

落語の「平成の大泥棒」そっくりの会話が始まり、いつしかこのふたりに奇妙な友情が芽生える。

【感 想】
最初、中井貴一さんが黒のスーツ姿で登場。身体は細くしまっていて背が高く舞台映えする。これから始まる 舞台の主人公を紹介して、落語家姿の段田さんが高座に出て来る。

中井さんの最初にきりっとした姿で登場させておいて、そのあとハンチングを被ったドジな泥棒役で出さ せる面白さがあった。何?このドジなこそ泥は何をしでかすのか・・・(笑)と見入ってしまっていた。 中井さんの一昔前の二枚目顔がコメディタッチの芝居をするところに面白さがあり、中井さん自身も楽しんで 演じているな。というのがはっきり伝わって来るから面白い。そして、この十五右衛門という男、本当は 学校の先生なのだ。石川五右衛門の血を受け継ぐ父親の泥棒という職業を受けつがなければと思い、先生 をする傍ら泥棒もしているという良く言えば前向きな男なのだ。それを中井さんが実にその通りに見せて くれるから笑ってしまう。

段田さんは、ちゃんと落語家になっていましたね。芸達者な段田さんをしっかり見せてくれました。若い ころ「落語家っていいなぁ」と思った時期もあったそうだから、上方落語の藤介役を楽しめたのではない だろうか。中井さんの泥棒との掛け合いは、込み上げて来る可笑しさがあった。段田さん演じる生 真面目な落語家もぴったりでした。

途中、中だるみする箇所があったり、どんでん返しのようなストーリーが分ってしまったりということは あったが全体的には良い出来でした。
結局、藤介と十五右衛門は異母兄弟だと分る。藤介も「五右衛門の血 を引く父親の職業を後世に伝えなくては。」と思ったが、泥棒にはなれないので落語のネタで十五右衛 門という主人公の落語ネタを作ったのだった。このふたりの異母兄弟は、それぞれが違った立場で、好き だった父親の職業を受け継いだのだった。最後のシーンはこの兄弟が笑わせたり、しんみりさせたりで楽 しませていただきました。ふたりとも芝居が好きなのがジンジンと伝わって来たのも楽しかった理由ですね。




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