かぶき座の怪人・花組芝居


〔観劇日〕 2001/2/13(火)
〔脚本〕    福島三郎/加納幸和
〔演出〕    加納幸和
〔出演〕    加納幸和/桂 憲一/森川理文/各務立基/植本 潤/大井靖彦/高荷邦彦/横道 毅/中脇樹人/水下きよし/ 山下禎啓/原川浩則/北沢洋/嶋倉雷象/溝口健二/秋葉陽司/松原綾央/八代進一

【あらすじ】
  創立100年という国立天地劇場が舞台となる。歌舞伎、能楽、狂言、落語、翻訳劇などの演劇まで上演されてきた由緒ある劇場なのだ。この劇場では、新劇の劇団・文明座の「欲望列車」がかかっている。 主演女優の九重八重子は、大スターだが多数の男との浮名を流している。
そんな中、台湾からノンフィクション作家がインタビューにやってきた。この劇場に「怪人」が出るという噂があるが・・・と。絶世の女形の霊が最後の舞台となったこの天地劇場にいるらしい。そして、 「怪人より」という封書が劇場に届く。

そんな中、歌舞伎役者の二代目恋松は、芸養子であるが、養父の恋助の名を三代目として襲名することになった。襲名披露での演木の稽古をしている恋松は思うように行かず、自分には才能がないのでは? と思い悩む。八重子が悩みを聞いてあげ一晩飲み明かして、ふたりは翌日の稽古に遅刻してくる。その2人は親子ほどの歳の差があるにもかかわらず、離れがたい気持ちが強くなる。 その日、恋松不在の稽古場で父の恋助が倒れる。恋松の母は、八重子と恋松のただならぬ雰囲気に異常なほど激怒するのだった。

そして、「欲望列車」の千秋楽の日になった。前日、荒れに荒れた八重子は浴びるほどの酒を飲み、車を熱海に走らせたと共演者が知らせに来ていたが、八重子はぎりぎりになって劇場に現われる。 みごとに楽日を終えるがそれは八重子の最後の舞台になった。

恋松は、いまだ悩んだまま景子をつづけていた。八重子の師匠は、「あなたが持っている物をすべて見せて、恋松を助けてあげなさい。」と忠告する。八重子は恋助・恋松が稽古をしている稽古場に 現われ、演目である「姥ケ池」に出て来る母親を演じてみせ恋松に伝授する。

襲名披露公演の幕が開いた。恋松は見事に「姥ケ池」演じることが出来た。舞台上には、心配そうに見守る八重子の姿があった。

【感 想】
  最初のシーンは、「欲望列車」の中のブランチの役で八重子が唄いながら階段を降りてくる。「踊れ踊れフラミンゴ♪〜」と唄うとフラミンゴの衣装を着けた男どもが現われる。ちょっとしたシャレだろう。 この小説の中でブランチが男を連れ込んで泊まっていたホテルの名前がフラミンゴだったもの(笑) なんか加納さんらしいひねりだ。ブランチの衣装は、白い帽子はデコレーションされ、白のツーピースで ロングスカート。白のパラソルに籐のスーツケースをさげている。しなを作って歩く姿は女優八重子が演じるブランチだが、これは加納幸和なのだ(笑) 。この人、顔も声も年齢不詳の女形。歌舞伎の女形 の発声。白塗りにすると、しっかり女性の姿になるのが可愛くて素敵だ。実際は、三十代後半なのに、見た目が四十代にみえる。なのに女形が似合う不思議な人だ。 他の劇団へは、初の男役で出演したり、V6の三宅健くんと山口紗也香の舞台では女教師で出演したりと花組芝居を見たお客さん以外からファンが増えている。そして、今回の演出は加納さん。若手、 ベテランを上手に使っているのがわかる。

恋松は、八重子と恋助の間に生まれた子供だったのだ。たが、八重子は女優の道を選び、恋松は恋助夫婦に引き取られ育てられてきた。恋松は、八重子が実の母だとは知らずに恋に落ちる。八重子も我が子と 分っていながらも恋松を男性として愛しているのに気が付く。

結局、千秋楽に現われた八重子は、熱海の海に車ごと落ちて死んでしまった八重子の幽霊だったのだ。そして、恋松に自分の役者としてもっているすべてを教え込んで、天地劇場の居座ることになる。歌舞伎役者 の女形の霊は、八重子に怪人の座を譲ったのだった。という話である。なかなか面白いストーリーだし、親子愛、男女の愛、師弟愛といろんな愛が詰め込まれていた。加納さん演じる八重子が母の気持ちになって 恋松に接するときなどは、胸が熱くなった。まったく、サーモンピンクの衣装を着けた男どものフラミンゴのダンスを見ても、その後のストーリーに引込まれて涙も出てくるのだから、加納さんの思うがままに なっていると言った感じだ。中年の大女優が若手の相手役と恋愛関係になってのキスシーンがあるが、遠い席で良かった。と思った。別に見せなくとも良いようにも思うのだが、フレンチキスからちょっとディープ なキスまで見せてくれました。また見にいっちゃうな(笑) 。キスシーンじゃないよ。加納さんの女形をそして、若手の立ち役さんを楽しみに見に良くのですよ。
('01/02/27)



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