キッド and Kid。


〔観劇日〕 2001/2/8(木)
〔脚本〕    GINGUIS FARM
〔演出〕    宮崎 忠
〔出演〕    伊藤高史/佐野賢一/海老原敬介/山下和敏/平尾良樹/石塚透/川瀬忠行/小山弘訓/大村美樹/菊田由美子/小森薫/川渕良和(劇団方南ぐみ)

【あらすじ】
  ある医者の結婚式の二次会会場であるウエスタン風のバーでのお話。
二次会の幹事である木戸が会場のセッティングをしている。そんな中、早々と医者仲間が三人入ってくる。一人は相当酔っている。 幹事である木戸は、新郎の原医師の部下であり原医師からは常日頃からいじめられていた。木戸は首を振ったり、頻繁な瞬きなどストレスによるチック症状がでている。 原医師は、看護婦たちにも評判が悪く二次会に出席するものも少ない。看護婦の一人と交際していたが、学部長の娘と結婚するためその看護婦を捨てたのだった。 それは、医者の間でも周知の事実だった。
新郎新婦が揃い、さて二次会が始まろうとしたときに、その看護婦が現れたのだ。会場の雰囲気は最悪のものに。案の定、ごたごた・がらがらと新郎新婦の仲は壊れてしまった。新郎の原医師に叱責された木戸は、これまでの 不満を言い殴りかかろうという勢いであったとき、ウエスタン・バーのマスターのパンチが木戸の顔面に入り倒れ込んだ。

気が付いた木戸は、1881年7月11日のウエスタン・バーにタイムスリップしていた。そこには、お尋ね者のビリー・ザ・キッドの張り紙がある。バーのオーナーから保安官までみんな木戸の医者仲間の顔ぶれで木戸は混乱。 バーテンこそが、ビリー・ザ・キッドだと言う事がわかり、キッドも未来からタイムスリップしてきた木戸のことを理解してくれる。知らぬ間に木戸のチック症状は取れていた。そんなストレスのない1881年。しかし、木戸は気が付く。 1881年7月13日はビリー・ザ・キッドがパットという男に背後から撃たれて死ぬということを・・・。木戸は、史実を変えてしまうのか?

【感 想】
  あらすじを書いていたらあまりに長くなりそうなので途中で止めたけれど、ストーリーは結構良く出来ていたと思う。結局、現代のストレスの多い生活から逃げ出したいという気持ちが過去へのタイムスリップという道を作って しまったということだったのでしょう。木戸は、現代に帰ってくるのかと思っていたら1881年の人たちに囲まれているほうを選んだという結末でした。

この、劇団ジンギスファームは、NTV「進め!電波少年」でチューヤンとヒッチハイクをした伊藤高史さん、CX「らぶ・ちゃっと」で宇崎慧さんと共演していた佐野賢一さんがいる劇団です。伊藤高史さんが昨年出演した 「オーファンズ」を観て、けっこう頑張ってるなぁ。と思っていたので、今回のこの劇団の公演はまた別の伊藤高史さんを見ることができて良かったです。佐野さんは、普通にしていると佐野さんなのに(なんのこっちゃ!)、 演技入るとどことなく今田耕治に見えてしまう。TV(らぶ・ちゃっと)のときからそう思ってたんだけれど。舞台では、最初から汗かいて頑張っておりました。

一番気になったのは、現代でのウエスタン・バーのオーナー役と1881年のキッドのお兄さん役をしていた平尾良樹さんです。上背もあり顔もまあまあで二枚目で通る役者さんですが、バーのオーナー役ではコミカルな味を出し、 キッドのお兄さん役では、カッコ良さを前に出してるにもかかわらず、しゃべりかたは一緒(笑)。あの声といい、しゃべり方といい、いつもああなんだろうか? 素敵すぎる。この素敵というのは、複雑な意味が混ざり合った ステキなのです。声は口の中から出てきますよね。すっとんきょうな声を出す人の声ってよく頭のてっぺんから出るような表現のされ方をしますよね。平尾さんの声は、耳の後ろあたりから出てくるような声なんです。 ん〜。実際に聞きに行ってみてください。声質は二枚目なのですが、音が三枚目。と表現すればいいのでしょうか? 平尾さんの別な芝居を見てみたくなりました。劇団チェックというより、平尾さんをチェックというところでしょうか

新郎の原医師の役の海老原敬介さんの声は、洋画の吹き替えにぴったりの声でした。芝居自体がウエスタンでしたから、ふっと洋画に置き換えて見ている瞬間がありました。声って面白いですね。

その他では、ちょっと、うるさ過ぎる言葉の繰り返しがあったので、二回差っ引いたらどうだろうか?と思いました。そして、ほかで使い古している台詞をそのまま持ってきていたのが一箇所あったけれど、 あれはわざと入れていたのかな?。故意に入れているのなら、その後それなりの突っ込みをいれて欲しかったなぁ。

エンディングもひねった事によって、かえって中途半端な終わり方になってしまったように感じました。木戸を素直に過去の世界に受け入れておしまい。と、したほうが良かったと思うけれど、過去に居てはいけない人だから 拳銃で撃って消してしまおう。としたかったのですよね。それは、私の読みすぎなのかな? とにかく、あらら?という終わり方には改善の余地ありです。
そして、若い人には分からなかったと思うけれど、新郎新婦の名前が原 誠と進藤 愛。そう「愛と誠」だったのです。昔の純愛ドラマのタイトルを思い出し、舞台上の新郎新婦には、愛も誠もなかったという皮肉。これも 私の読み過ぎ?(笑)。次回公演にも行ってみたいと思いました。平尾さんの演技を観に。
('01/02/09)



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