蜘蛛の巣


〔観劇日〕 2001/11/30(金)
〔作〕       アガサ・クリスティ
〔演出〕     山田和也
〔翻訳〕     小沢由佳子
〔出演〕    久世星佳、嵯川哲朗、寿ひずる、安原義人、入川保則、戸井勝海、増沢望、各務立基、神戸みゆき、青山達三、加藤英雄、(声)筒井康隆

【あらすじ】
空想好きのクラリサは、イギリス郊外に住む外交官夫人である。1人娘ピパのいるヘンリーと結婚している。そんなクラリサが「もしも死体を見つけたら・・・」などと空想をしていたら、 ある日突然、空想は現実のものとなった。
ヘンリーの前妻と結婚した男オリバーの死体が客間で見つかり、ピパは、自分が殺してしまったのかもとれないと告白する。クラリサは外交官の夫の立場を考えて、居合わせた知り合いに 頼み込んで死体を隠してしまう。そんなとき、「この家で殺人があった」と言う通報を受けた。と警察がやってくる。

ひとりひとり尋問が行われ、隠した死体が見つかりそうになった時、隠してあった場所から死体が消えていたのである。何故、死体が消えたか? 誰が犯人なのか? 一夜のうちに起こった 奇妙な事件は、もつれた蜘蛛の糸のように絡み合ったまま・・・。

【感 想】
アガサ・クリスティの作品の舞台化されたものを観たのは、これで何本目だろうか? 今回は、推理劇 だけれどコメディなのです。笑いながら犯人探しをして、とても楽しく観られました。
ただ、出演者の交替があり少し残念でした。細川俊之さんが体調を悪くされて降板され、 入川保則さんが配役されていましたが、入川さんもなかなかナイスミドルな元政治家のおじさまローランド 卿を演じられていました。

クラリサを演じている久世星佳の芝居は、いくつか観ているが今回のように素敵な役はなかったのではない かな? 久世さんの持っている魅力を十分引き出しているようでした。やさしさ、優雅さのなかにも頑固な ところ、そしてそそっかしい天然ボケのようなコミカルな性格の女性を見事に見せてくれました。 台詞(言葉)の面白さと久世さんの美しいのに三枚目の演技がぴったり合っていて、良い役をいただいた なぁ。と思いました。

夫ヘンリー役の増沢さんは、「増沢さんだ」と分っているのですが「誰?」と言いたくなるように目がね と髭と帽子のいでたちでちょっと不満。登場場面も少なかったし増沢ファンにとっても物足りなかったの ではないかしら。開演前にパンフレットを読んでなかった私は、声で分った増沢さん(笑)。

ある実業家の秘書ジェレミー役の戸井さんは、甘いマスクに声もよく「ジェレミーってちょっと軽い奴?」 と思わせておいて(勝手に思ってるのだけれど(笑))、中盤には「とっても良い人」と思い、そして 結局は悪い奴だったのです。な〜んだ、最初は疑っていたのに途中から騙されていたなんて悔しい〜(笑)

殺される役で出てきた各務くんですが、実は花組芝居以外で見るのは初めてで、とても新鮮でした。やはり 存在感あり。花組芝居でもいつも中心的な役で、いろんな人間を演じてきているから力もしっかり付いて いるのだと思いました。舞台に映える各務くんでした。

出演者それぞれベテラン揃いで、観ていて嬉しくなりました。男のように大股で歩いて「ガハハハ」と大 笑いするような屋敷の使用人の役をする寿ひずるも素敵でした。長い間ブランクがあったのに復帰して 3〜4年ですっかりまた舞台の人になっていました。

嵯川哲朗さんも重みのある中に可笑しさが出ていてこの方も見ごたえがありました。安原さんは、ローラ ンド卿とは友人の弁護士役。無理に説得させられて死体隠しに手を貸してしまうのだから、ばれたら大変。 おろおろした弁護士も面白かったですね。海外の映画・TVドラマの吹き替えで聞いている安原さんの声 にふ〜しぎな感覚がありましたが、すぐに舞台上に集中しました。

ひとつ、ピパ役の神戸みゆきさんの声は、高すぎてキンキンとした音が浮いていて聞きづらかったです。 はっきりして台詞も聞き取り易い声なのですが、高すぎて辛かったです。少女ですから、高い声は自然 なのですが、泣く、笑うときの音域をほんの少し下げてみると良かったのではないかと思いました。 よく、通る声質なのですから、観客の耳に入るときの音を研究してみては?




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