モンテ・クリスト伯


〔観劇日〕 2001/2/26(月)
〔原作〕    アレクサンドル・デュマ
〔脚色・演出〕 高瀬久男
〔出演〕    内野 聖陽/関 輝雄/原 康義/清水明彦/若松泰弘/石川 武/鈴木弘秋/大原康裕/吉野正弘/ 浅野雅博/松井 工/石橋徹郎/椎原克知/助川嘉隆/林田一高/城全能成/森田大輔/
塩田朋子/金沢映子/奥山美代子/岡 寛恵/鬼頭典子/栗田桃子/浅海彩子

【あらすじ】
  メルセデスを愛するフェルナンは、航海から帰って来たエドモン・ダンテスとメルセデスが結婚すると聞いて口惜しがった。ダンテスが乗っていた 船の船長が航海途中でなくなり、残りの航海は一等航海士のダンテスが船長の代わりをしてきた。船の持ち主は、次の航海からダンテスを船長に 昇格させるといわれたが、先輩の中で妬む者がいた。船長の遺言でパリまでナポレオンの手紙を届けに行くことになっていたので、明日から三週間ほど 帰ってこられないので、今日婚約パーティが開らかれているところなのだ。このナポレオンを崇拝する者、現在の王を推進する者とふたつに別れているがナポレオンに関わる者たちには 罪人となる可能性もある時代だった。

ナポレオンの手紙を届けることを知った妬みを持っている2人が裏で何やら仕組んでいるらしい。婚約パーティの最中にダンテスは、警察に連れていかれ、 重罪で牢屋へ入れられた。地下牢の中での14年間の生活の中で知り合ったファリア司祭と話しているうちに、自分が何故この場所にいるのかがはっきりと してきて、ダンテスの復讐のために生きることがはじまった。ファリア司祭が亡くなるときに、モンテ・クリスト島にある莫大な財産を受け継ぐことになった。 ファリア司祭の死体は袋に入れられたが、その中にはダンテスが代わりに入っていて、牢屋から抜け出ることができた。

モンテ・クリスト伯爵となって、パリにあらわれたダンテス。そこには、フェルナンと結婚してしまったメルセデスと家族や法の職を利用して自分の安泰のため、 ダンテスを無実の罪に課した検事の家族、船長になれない妬みから工作を企てたダングラール家族もいたのだった。この機会をえるためにダンテスは10年の 年月をかけて来た。そして、綿密に計画されたひとつひとつが実行されていくのだった。

【感 想】
  中学のころ、モンテクリスト伯と書かれた翻訳本を読んだ記憶がある。そのときにどんな感想を持ったかは、今思い出すことは出来ないが分厚かったのだけは 覚えている。

今は使われてない牢屋を見学に現われた黒マントに見を包んだひとりの紳士が係の者に案内されて入って来るところから始まる。 舞台は暗く、かすかな明かりだけが牢屋の中を見せてくれている。そう、この紳士が14年間冤罪でこの牢屋につながれていたエドモン・ダンテスなのだ。 14年間の気が狂うような苦しみの数々を思い出すのだ。声は低く陰湿な感じの紳士を演じているのは内野 聖陽さんだ。

ダンテスが航海から帰ってきたときは、20才の若者。未来は明るく婚約者もいて、しゃべり方もはずんだ明るい声で、パーティではダンスも披露するダンテス を見て、内野 聖陽さんには、こんなに明るい役は、ちょっと似合わないかなぁと思っていた。このときの衣装も、色合いはよかったが、ズボンのお尻の部分が むちっとした感じになってしまい、あまり見たくなかったかなぁ(笑)
ただし、モンテ・クリスト伯爵になって登場したときは、黒の燕尾服に襟元には蝶々結びをした黒のスカーフがあった。もう、「カッコイイ〜」と叫びたくなった。 手を後ろで重ね、ゆったりと歩く姿は引き締まっていて、復讐心を秘めている冷酷な男を見事に見せていた。

昨年、演じたミュージカル「エリザベート」での死の帝王トート役では、これを見事にはまり役とした。最初、歌があるので唄い始めの時は、はらはらしながら 聞いていたものだった。と思い出す。いままで、文学座でトート役が似合ってしまうような、モンテ・クリスト伯爵が似合ってしまうような役者がいただろうか? はっきり言える。「こんな素敵に美しい人はいなかった」と。最初、友人にポスターを見せたとき「ヴィジュアル系のバンドの人?」と言ったくらいだから、しっかりとメイク された顔も美しかったのだ。モンテ・クリストは、そんなメイクはしてないが、頭のてっぺんから爪先まで美しいシルエットなのだ。惚れ惚れする。というのは、こういうのを 言うのだろうと思う。

この長編小説を舞台にして、モンテ・クリスト伯爵がどのように描かれるのかと楽しみにしていた。内野さんが演じるのだから、期待していて良いとは思っていた が私にとっては期待以上だった。復讐の鬼になってはいたが、自分が愛したメルセデスとその息子はメルセデスの懇願により助けることにした。そのときから、 頼ってくれていたエデと第三の人生を生きようと決めたときの表情は、温かさが蘇えった顔でこれもまた良かった。

内野さんのことしか書いてないが、もうひとりこの人も立ち姿から違うな。と思った人がいた。ダンテスが警官から助けた泥棒のルイジ・ヴァンパ役の松井 工さんだ。 文学座研究所の35期生で昨年座員に昇格したのだ。 今はモンテ・クリスト伯爵の手足となって動いていて、伯爵の気持ちをも理解している男の役だ。この大人になってからのヴァンパが舞台に現われたときの存在感は、 立ち姿にあるとおもった。これもまたきれいなシルエットだった。あとでパンフレットを見たら特技のジャズダンス・タップダンスを生かしてミュージカルに出ていたと書いてあった。 なんか、ただの新劇の役者とは思えなかったのは、こういう背景があったからかな?と思った。

また、長くなって読みづらい感想になってしまいましたね。ごめんなさい。 ('01/02/28)

二回目の【感 想】
エドモン・ダンテスは、最初のシーンの20才の頃、中盤の牢獄生活をおくった14年間の姿、そして、後半の復讐するために現われたモンテ・クリスト伯爵の姿と三段階に 分けられる。一回目を見たときの感想では、牢獄に入っているときのことは書いてなかったので、その辺から書き出そうかな。
舞台上のセットは、色は黒とグレー。両脇に固定された階段、中央には長方形の回転するセットである。裏表で牢獄になったり、屋敷になったりである。エドモン・ダンテスが警察につかまり 検事の取り調べを受け、騙されて牢獄に入れられてから何年かの歳月が流れてのシーンでは、中央のセットが二回転する時間内で、内野さんは、伸びた髪のカツラと付け髭と顔は薄黒く、 擦り切れた囚人服になっていた。早変わりに近いものがあった。そして、しゃべり方も何年もの間暗い牢獄生活でやつれた疲れた希望の光もないという声になっていた。ん〜さすが!

ひとつ「あれ?」と思ったのが、他の地下牢から穴を掘ってエドモンの部屋に出てきてしまったファリア司祭が希望を与える人になるのだが、その穴はファリア司祭は、行き来できる大きさだが 内野さんは体格良すぎて入らないでしょう。という大きさだった(笑) でも、ふたりとも行き来していた設定なのだ。

エドモンは、最初のシーンから動き回るのが多くて警官につかまるときには、すでに額からは汗が光っている状態。そして、牢獄に入った直後のシーンでは、内野さんのあごからポタポタと 汗が滴り落ちていたのでした。汗かきの内野さんでしたぁ。

<追 加>
思い出したことがあったので、追加します。内野さんの伯爵になってからの振る舞いが綺麗なので、私の中で気に入っている部分を書いておこうかなと。
・手を後ろに組んでゆったりとした足取りで歩く姿。
・上記の状態のまま振り返るときの動き
・フロックコートに着替えてから、椅子にかけるときにそのまま座るのではなく、コートの両端を後ろへ払い座るその仕草
・黒マントをはおり、シルクハットを頭にのせる動き

などがとてもきれいでした。そして、カーテンコールで深ぶかとお辞儀をするときの足の位置。片方の足を後ろへ半歩ずらし、両手はふくらはぎの斜め後ろ側に付けている。この姿がまた綺麗なのです。 機会があったら、お辞儀の仕方も見てみてください。



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