セイムタイム・ネクストイヤー


〔観劇日〕 2001/6/11(月)
〔原作〕    バーナード・スレイド
〔翻訳〕    青井陽治
〔演出〕    宮田慶子
〔出演〕    加藤健一/高畑淳子

【あらすじ】
  ふとしたことで出会ったドリスとジョージは、あっという間に意気投合した。そして気付いたら二人とも ジョージが借りていたコテージで翌朝を迎えていたのだ。

二人とも幸せな家庭があるから後悔もするのだが、このまま終らせることもできない感情があった。 ドリスの提案で、一年に一度、同じ日に同じこのコテージで秘密のデートをすることに決めた。毎年、デートは 続き、お互いの子供たちも成長しそれぞれの仕事も成功する。こんな年に一度の短い時間なのに二人はお互いの ことを理解できてかけがえのない存在になっていく。

そして、奥さんを亡くしたジョージは、ドリスに結婚して欲しいと言うがドリスは、「私は結婚しているのよ」 と断る。そして、ふたりは・・・。

【感 想】
  楽しみにしていた舞台だ。高畑淳子という女優が好き。演じている姿が好きなんだなぁ。シリアス、コメディ なんでも出来る素敵な女優。この舞台は、16年間で今回が5回目の再演となる。残念ながらいままでの公演 を見ていないので今回と比較することは出来ないが、きっと年齢を重ねられてからの再演となるときっと思いも 違うのだろうなぁと想像できる。
加藤健一事務所の舞台のことを聞いたのが、ちょうどこの芝居の初演のときだったと思う。学校の先輩が観て 同じ歳の人が頑張ってるのよ。と言っていたのを思い出す。私は仕事に忙しい時代で観劇なんて行くことが できず、セイムタイム・ネクストイヤーを見逃していた訳だ。

1951年を知らせる木製の立て看板。そして、それが引っ込むとコテージのベットに眠る ふたり。ドリス24歳、ジョージ27歳のときだ。この時から舞台は、ほぼ5年刻みで二人を描くのだから、 それぞれのふたりの変わりようが楽しめるのだ。カトケンさんがベッドから手を伸ばし床に落ちているパンツ を取るときなどは、裸の上半身が見えてしまうわけで、どうかしら?と思っていたが、ちゃんと鍛えてられる ようで安心して見ていられた(笑)
1955年。18歳で妊娠したため高校を中退していたドリスは、このころ読書クラブに入って知識を得て 、話題も豊富になりジョージを驚かすが、ドリスは別れ話を持ち出す。高畑さんのあの活き活きした表情が素敵。 そして、切ない思いしたときの顔もとにかく良いのだ。ドリス29歳。私が29歳の頃は何をやっていたかな? と考えてしまった(笑)
1960年。ジョージは、ドリスと会うのを楽しみにコテージで待っていたが、現れたドリスは妊娠9ヶ月の 大きなお腹だった。ここで、ジョージはガッカリするのだが、急に産気付いたドリスの出産介助をする羽目に。 まあ、このときの高畑さんの陣痛がきたときのベッドでの「ひーひーふー」という様子が面白かったぁ。

この後、休憩になったのだが演劇の研究生と思われる男女三人の会話が面白かったのだ。
男「あんなんひとりで子供なんて産めるんかぁ」
男「へその緒とか切るんやろ〜」
女「もう、ふたり出産してるから平気なんちゃう」
男「そうかぁ」
男「しかし、あの女優さんうまいなぁ。なんであんなイキイキした顔ができるんやろ」
女「うん、すっごく、可愛い〜」
こんな会話でした。聞いていて思わず笑っちゃいましたね。

5年後のコテージに、ドリスは、ヒッピーのような格好で現れた。なんと、38歳にして大学にかよっているのだ。 通信教育で高校も卒業するという、この成長ぶりはジョージと知り合ったからなんだと思う。しかし、この ヒッピードリスは、学生運動にも参加していてジョージとは少し隔たりができているような雰囲気。でも、 心は分かり合っている不思議さ。このときの高畑さんがまたまた驚きで、舞台をこんなに楽しんでると感じて こちらも見ていて心地よかった。あのヒッピー姿でバッグを振り回しながらコテージの部屋中を飛んで歩くのは 笑わせてくれましたぁ。
そして、さらに5年、ドリスはビジネスで成功し社長となっていた。このときのシャキッとした、てきぱきと 部下に指示を与えているのは、20年前に会った自信のないドリスではなかった。高畑淳子、いや〜見せてくれます。 おお〜すっかり高畑さんを中心に書いてしまった。でも、高畑さんの変わりようの方が見ていて楽しいの だから仕方ないな。カトケンさんのことは最後に書こう。
そして、1975年。ジョージの妻が亡くなって、ドリスにプロポーズするジョージ。ドリスはジョージを 愛しているのだけれど、家庭を捨てることはできず申し出を断ると、ジョージはコテージを出て行くのだが、 その後のドリスは、号泣してしまう。ホンマモンの涙と鼻水に迫力満点の高畑さんの演技。ジョージを愛している のだけれど、この選択しかできなかったドリスの苦しさが分る。これで、ジョージと年一回のデートも出来ない のだから。そんなとき、ジョージが「負けたよ」と行って部屋に戻ってくる。「年一回のデートで我慢するから」 と言って抱き合う二人は、これでしあわせなのですね。5年毎に変るドリスは、あたかも6種類の女性のように 見える。高畑さんは、6人の女性を演じたように思う。

さて、カトケンさんについて。最初に出会った日の翌朝、ふたりで話しているときの「この後ろめたさ」 という台詞があまりにも多すぎて、なんか嫌な感じがした。コメディだから大袈裟にしているからよけいにそう 感じたのかもしれない。なんでこんな弱い男にドリスは惚れてしまったのよ。なんて思ったりもして(笑) きっと何年たっても、この「後ろめたさ」はあったのだろうけれど、年一回のデートの繋がりも二人にとって 大切なものだったのだ。そんな関係も分らない訳でもない。
最後の52歳のジョージを演じているのを見て「この52歳は老け過ぎよ」と感じましたね。カトケンさんと 同じ年齢を演じている訳で、52歳のジョージはあんな爺むさいのかなぁ。と疑問に思った。でも、全般的に 見て、とっても満足でした。やっと見ることができて良かった。
('01/06/23)



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