すべて世は事も無し


〔観劇日〕 2001/10/10(水)
〔作〕       ポール・オズボーン
〔翻訳〕    小田島恒志
〔演出〕    加藤健一
〔出演〕    山口果林、倉野章子、一柳るみ、岡まゆみ、竹下明子、清水明彦、山本龍二、有福正志、加藤健一

【あらすじ】
アメリカ中西部のある小さな町に、四人の老姉妹が住んでいる。次女のコーラとセオ夫妻は三女の アイダ夫妻と仲良く庭つづきの二軒の家に。そして四女のアリーだけが独身でコーラの家に居候中。

人生の黄昏を迎えへウォンでまったり過ごしたいところなのだが、心配のタネはつきない。
夫とアリーの仲があやしいとにらむコーラ。エスティはあまりにも頑固な夫について行けず、息抜き のために姉妹の家にくる。そして、幾つになっても独立できない息子と頼りない夫を持つアイダ。 それが驚いたことに、その息子のホーマーが今日婚約者を紹介するために連れて来るという。これが一族に とって、久々に起きた大事件となるのだった。

【感 想】
最初、次女(倉野)と四女(岡)が出ていたのだが、メイクと演技に釘付けになり(笑)・・・ちょっと 変な言い方だけれど・・・誰が演じているのかはわからなくても良いくらいだった。それが少し落ち 着いてみたら、倉野章子さんと岡まゆみさんと分って「ひぇ〜。楽しい」と言うことになったのだ。 老姉妹の70歳前後の役をみんな20歳は離れている女優さん達が演じているなんて、なんて楽しいこと なんだろうと嬉しくなった。自然に演じるのも有りだが、作り込んだ役を観るのも好きだなぁ。そんな 作品を選んだカトケンさんに拍手しちゃいましょう。

三つの家庭のそれぞれ抱えている問題と四女の独身のアリーの問題が絡み合って、観ている側も老後の 生活をどうしようかと考えてしまった。ひと昔前のアメリカ中西部だから、ふた家族が同じ敷地内に家 があって暮らしていけるのだものね。小さい日本でこんな生活はみんなが出来るわけではないから現実味 がないが、黄昏る時期の暮らしをどうしていくかについては、みんなに降りかかる現実だから自分の老後 を考えつつみてしまったのだわ。

有福さんの面白い味が出ていて、今回も最高に良かったわ。カトケンさんが選ぶ出演者は、いつも全員が 持ち味を十分出していて満足できる。カトケンさんが今回の演出は他の人に任せられないと言われるのが 理解出来るような気がする。ひとりひとりの役を作っていくのにカトケンさんの頭の中にあるものを すべて出したいのだと思っているのだなぁ。と。

そして、最後のシーンで映し出された、「春の朝 / ロバート・ブラウニング」の訳詩

時は春、
日は朝(あした)、
朝は七時、
片岡に露みちて、
揚雲雀なのりいで、
蝸牛枝に這い、
神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。




観劇日程へ戻る