第15回:部の存続をかけて!入部勧誘作戦あれこれ。

 昨日は入学式。で今日は始業式。昨日も学校にきているから新学年になったときの緊張感がさらっさらない。いいのか悪いのか分からないけど。始業式の一大イベントと言えば、誰しも緊張する担任発表がある。私もこれは緊張した。 ・・・・・わたしの担任は、去年の3年1組の担任(私のつけた俗称が、「目つきの悪い日本史教諭」:これで全校生徒の75%に通用するあたりが恐ろしい)であった。このクラスが去年の合唱コンクールで優勝しているだけに、たぶん自分等も絞られるんだろうなぁ・・・、と思った。

 で、翌日は実力考査の最終日である。一般大衆はそのまま下校や部活動にいそしむのだが、部長クラスの連中にはこのあとに重大なプレゼンテーションが待ち構えているのだ。そう、新入生呼び込み作戦第1弾、「部活動紹介」である。2年生の部長連中を放課後、体育館に集合させて、同じく午前中から延々学校のシステムについて、洗脳されている1年生を相手に説明会をさせるのである。自分たちが説明を受ける立場の時には、正直「真面目でくだらない」説明会であったため、私は、いかにして1年生を楽しませるかに主眼を置いて2月からずーっと考えていた。結果、当日のプログラムは、

  1. アルコール鉄砲で祝福のクラッカー代わり
  2. カメラのストロボで目くらませ攻撃
  3. ちょっとは真面目にブーメラン実演
 を、画策したのだった。なにせ与えられた時間は、たったの3分!当初計画では、「ホバークラフト」を走らせよう!と思ったのだが、電源の関係で却下。同様に「エアホッケー」も駄目。ついでに重いし。そこで、残りは私の「マシンガントーク」でごまかすことにした。例によって原稿は、なし。全ては頭の中で構想を練り、アドリブでいく。このほうが雛鳥ちゃんたちの顔が見えるので反応を見やすいのだ。
 かくして説明会も、学校側(特別活動課教員)の司会・進行にて、体育系部活(陸上部)よりスタート。連中はせいぜい、部で購入したユニフォーム(というかジャージ・ウインドブレーカーの類)を着込んで説明をするのが関の山。持ち込み物件も、派手なパフォーマンスもなし。当然、観客はボーっと見ている聞いているだけで、果たして彼らの心の中にどれだけ響いたのかは謎であった。

 はてさて、幸か不幸か、体育系部活動、述べ20ケの紹介も終わり、次は文化部の番である。先陣切るのは私の科学部物理班である(その後、化学班・物理班・吹奏楽・美術・ESS・JRC・コンピュータの各部)。文系の先陣として、この後ろの部活動のためにも「勉強ばかりの学校の文科系部活動なんて、ネクラだぁ!」と、思われないよう、気合120%で講演(?)会場となっているマイクの前に立った。

(この先太字は私の演説・細字はいわゆるト書き)
 『さて皆さん、一昨日の入学式から散々言われて、聞き飽きたとは思いますが、ご入学おめでとうございます!祝砲をあげますのでひょっとすると鼓膜を傷つけるかもしれませんので、気の小さい方は耳栓をして下さいねぇ(私が耳栓のジェスチャー)。さ、ではカウント3つしたら祝砲をあげますよぉん。3・2・1・ご入学おめでとうございまぁす!』
と、ここで伝説の騒音アイテム「アルコール鉄砲」を、私と木工課長の二人で(物理班と物理班は助手を連れている)鳴らす。
『(SE:発砲音2発)はーい、ご協力ありがとうございましたぁ。我々は先ほど司会の(実名)先生にご紹介賜りました文化部のトップバッター、科学部物理班でございます。名前を聞いて分かるように、科学部は物理班のほかに化学班・生物班と3つに分かれております。別々に分かれていて別個の部活というわけではないので、あらかじめ覚えておいてくださいね。さて、わたしたちの物理班では、さっき爆竹のように鳴らしたアルコール鉄砲とか、重たくてここまで運んでこれなかったもので、エアホッケーとかホバークラフトなど、木工を行ったりします。そのほかにも文化祭の時にはシャボン玉を作ったり、コンピュータを使ったゲームを作ったり・・まぁこれは最後に紹介があるコンピュータ部さんにかぶるんですけど、向こうはWindows3.1、こっちはMs-DOS3.0マシンなので、全然活動分野は違うんですけど・・・って、ちょっとマニアックな話になってしまいましたね。話を本題に戻しましょう。で、とにかく物理班では、化学班・生物班とかぶらない範囲でのその他全範囲を取り扱っております。あと、私の首にぶら下がっているコレからちょっとは想像できるかと思いますが、そうなんです。この学校の「写真部」は、うちが兼ねているのです。物理室の隣に暗室がありますので、そこを使って白黒写真を撮ったり焼いたりしています。あっと、カラーは諸般の事情で出来ませんよ、そこん事はご理解くださいね。たとえば今もここにフィルムが入ってますの。はい、チーズ』
ここで中央4か5組の生徒の子達を集めて写真撮影(当然フラッシュつき)。
 『え?もう時間?とにかく、こんな感じでいろんな活動をしてますので、興味がちょっとでも出てきましたら1棟4階物理室までお越しください。』
(ここで、木工課長のアトラクション「ブーメラン」を紹介し忘れていたことに気づいた私)
『そうそうごめんなさい。うちに入部の際には言ってくれればどんな事でも自分のペースでやれます。たとえばこれ。彼が3ヶ月間研究した成果です。それでは見てくださいよ。どうぞ!』 (木工班長:おもむろにポケットから「ブーメラン」を取り出し、飛ばす。半径3mほどの円を描いて飛び、手元に戻ってくる)会場内、「ををっ」と、沸く。)
 『と、言うわけで科学部物理班でしたぁ!入部希望の人もそうでない人も遊びに来てください。待ってまーす。この後も科学部が2つ続きますので、楽しく聞いてくださいね。ではっ、ご静聴有難うございましたぁ!!』・・・ということで、うちのプレゼンは終了。機械的にプログラムを消化する司会教員の一言「何か大道芸を見ていたみたいだなぁ」に、とりあえずのアトラクションとしては成功した、という確信を得た。(条件別書き分け、ここまで)

 説明会当日は、1年生の訪問はなしなので、この後はあわてず他所の見物。次の化学班のアトラクションも見物していくことにする。はてさてどんなアトラクションが飛び出すか・・・。と思った瞬間に会場内に煙と焦げ臭いにおいが充満っ!!前年に「交通信号反応」といわれる実験の実演をしたのだが、後ろの方の生徒が全く見えないという現象に陥ったため、今年は趣向を変えて、「誰にでも見える実験」を目指したとの事。確かに後ろのほうでも見えるのだが・・・。とにかく煙たくてくさい!ということで、結局身内にも不評な実験であった。その後は吹奏楽部のお試し演奏会という、ミニアトラクションが準備され、残りは口だけ説明にとどまっていた。ま、そんなものかな。

 と、言うことで翌日からがついに本格的な「新入生勧誘」の解禁日。ま、ありがちな企画で、小汚いイラストの「新歓ポスター」を昇降口前に2枚(サイズ:A4・白黒)掲示し、とりあえず印象付けた名前を忘れさせないようにする布石を張る。休憩時間ごとに昇降口に張り出したイラストの反応をチェックしに行ったり(もっとも、誰かが立ち止まってイラストを見ていることなど見たこともなかったが・・・)、意味もなく昼休みに体育系の勧誘の連中をチェックしたり(彼らが誘っている後輩が文科系に進んでくれるなんてことはまずないだろうに・・・無駄なことを)したものだった。
 当然放課後になれば、職員室に直行し、部室の鍵を借用し、部室へ直行!白衣を着込み(意味はない)、首からカメラ(ストロボつき)をぶら下げ、窓も全開にしてお客さんの来訪を待った。更に「取らぬ狸の皮算用」とでもいうか、2人しか先輩として説明係がいないのに、多数の1年生が「万が一」やって来た時に、読んでもらえれば活動内容がわかるようにした文字だけのパンフレットがを作って印刷して持参してきたり(これは私の寄贈品・無償奉仕)してみたのである・・・。

が、たいして忙しくならない。あまりの暇さに隣の美術部や化学班、下の階の生物班やコンピュータ部へと偵察に行っているが状況は同じようなものらしい。やはり、新入生は最初からある程度どこの部活に入るか決め込んでいるらしい。2日目の昼には既に新入生が部活動に参加した、という体育会系の部活話を聞いたりして、正直ヤバイかもっ!という感想を抱きながらも、新入生勧誘期間の1週間は瞬く間に過ぎていくのであった・・・。

 もう選り好みなんてしていられない!手当たり次第物理室前の廊下を通りかかる新入生をとっ捕まえて「入部しなくてもいいから話だけでも聞いていってぇぇぇぇ!」と、教室から呼びかけるのだが、みんな様々なリアクションで逃げていってしまうのだった。

一例:

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「きゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


・・・何が「うわぁ・・・」で何が「きゃぁ・・・」なのかは全然分からないが、どうもプレゼンが裏目に出てしまったのは確かなようだった。   教訓:『地味すぎる部活紹介も問題なら、派手すぎる部活紹介も問題になってしまう』
とにかくこのような調子で、私が1週間の間に自分の部活について説明をぶっかましたのは述べ10回もあっただろうか?逆に先に書いたような他所の部活へ遊びに行って、そこの説明をしてやることも度々。化学班で実験の説明をしたり(結局違った説明をして逆ツッコミをいれられたけど)、美術部ではくつろいでいる所を突撃されてしまい、やむなく「物理班とは隣通しだから仲良しで、よーく遊びにきているのよねぇ。ブツも融通しあっているんだよ」とか、下のコンピュータ部で思わず遊びこんでいるところに1年生が来たので思わずとっ捕まえてしまったりと、とにかく他所の勧誘まで手伝ってしまった。
 で、結局のところ、物理班の新入生は2人ということで落ち着いたのであった。ただ、「面白そうだ」ということで同級生が2人ほど入部してくれるというおいしい事態にも相成ったのであった。


次回は、第16回:最悪の災厄(その1)・春のスポーツ大会(2年生)から修学旅行のしたしらべまでをお送りいたします。