第28回 一番熱の入る学校祭!部活と学級の狭間で その6  〜前編〜 

※まず最初に断っておきますが、私が気合いが入っているのは「部活」であり「クラス展示」ではありません。

 昨日の担任との大喧嘩により、もう学級展示はノータッチを決め込んだ私は、翌日には6時に起床し7時の登校を目指す。何せまだ装飾がきっちりおわっていないのだ。その上クラスの合唱練習として、7時30分に呼び出しをかけられている。となると必然的に朝を早くせざるを得ない訳だが・・・。勉強中心主義の高校の悲しいかな、午前7時の用務員さんの出校時刻より早くくるな、と顧問に云われてしまう。苦渋の決断で7時ちょうどに到着し、それから時間も忘れて30分フルに使ってかざりましたとも。

 それでも仕事が終わらず、渋々持ち場を離れ、教室の「早朝声だし練習」会場に滑り込むようにして侵入。遅れたなんて事は微塵も感じさせずに紛れ込む(私の立ち位置の隣にいる「彼」の存在感の大きさの賜物である)。普通なら本番に向けての軽い足(声?)慣らし程度で済ますモノなのに、バカ担任がやってきて、当日なのにあれがだめ、これがだめ、とクレームをものすごーくつけてきやがる。男連中が聞く耳持たずに直してやらないから担任も維持でダメだしする・・・という悪循環。「いー加減そのことに気付け莫迦者!」と思いを募らせ、爆発させる寸前、私は担任に呼ばれ廊下に。なんかイヤーな予感が。そこで云われた一言。
「お前、合唱の舞台挨拶やらんでよし。」
こっちもイロイロ用意周到な作戦を立てて来たんですよ。舞台挨拶は、いかに合唱に、舞台に皆を惹きつけるか。堅苦しい挨拶では誰も見向きもしないし、かといって無駄にウケだけを狙った挨拶をしてもスベるし・・・。結果3パターンくらい頭に描いてきて、その舞台の様子で使い分けよう・・・とまで考えてきたのに、この男の気まぐれな一言でお釈迦に。よっぽど「イヤだ」と行って反抗してやろうかと思ったが、丁度のタイミングで呼び出し放送をかけられ、みごと脱出に成功。ついでの感じで「はいそうですか。なんとなくそう思ってましたから」と皮肉を一発カマしておく。

 ちなみにその呼び出しは、昨年同様私に対しての写真撮影協力の依頼。フィルムを渡されるだけの用事にも関わらず、そのまま暫く職員室に滞在し、「脱走」をし続ける。あんなくだらんこと、やっとれるか!
 8時30分に体育館集合という、いつもと違うスタイルの点呼のお陰で、別段糾弾されることもなく(そりゃそうだ、カメラ持参で体育館まで行っているんだから)開会式がはじまる。「つどい」であって「祭」でない、というのがポリシーの学校長の堅苦しい挨拶と、その合間にわずかに入る、生徒の挨拶、司会進行を聞きつつ、何かむなしくなってきた。PTAも今の時代に即した高校生活を送らせるように、この「文化」の祭典の何たるかに対して改革を推進させろよ・・・と思いながらもうちの親にはそんな権限もないし(自営業者は強いよ、やはり)・・・結局居眠り。
 気が付くと最初のプログラム『合唱コンクール』がスタート。どしょっぱつは2年5組(理系・男子限定クラス)の「宇宙戦艦ヤマト」だったかと記憶しているが、後の覚えがまるでない。かけらもない。きっとあまりのくだらなさに再び夢の中へ行ってしまったのだろう・・・。

 さて、我々のクラスの発表順は、丁度真ん中あたりの13番目。従って中間にある小休止の時間からスタンバらなければならないのである。そんなわけで皆が休憩中にあっちゃこっちゃ出掛けられるというのに、私らは大人しく南側通路に整然と並ぶ。何か寂しいねえ、私みたいな行動派からすると。

 かくして後半戦がスタートし、トップバッターの我々のクラスが壇上に上がりました。クビになった後がまの挨拶をしたのは、担任と妙に仲のよい女子生徒。クソッ、事前に共謀しやがったな。オレの「独(毒)演(スピーチ)」をずーっと楽しみにしていた先輩方もいらっしゃったというのに!内容は、私の考えを全く無視した、堅苦しくて暗い内容であった。案の定と言うべきか、合唱のほうも中途半端な完成度のせいで、あまり「歌いごたえ」はなかった・・・。これならメジャーな曲で完成度の高い方が成績がいいだろう・・・というのは、指揮経験者の私の弁である。でもなぜか、担任シンパの女子生徒たちは、妙に「やった!」と盛り上がっていたがね。

 あとは余所のクラスの歌をボケーッと聴いているだけ。昨年の私のスピーチの真似だろうか、3年生2学級ほどのスピーチがギャグを取りに来たが、ありゃダメだね。自分がウけているだけで、客がウけないのはもちろんのこと、クラスの合唱との「調和」がない。スピーチから合唱は始まって居るんだよ。なんて、考えているうちに12時ちかくになり、午前中「拷問」の部は終了。昼食タイムに。

 本来は「控え室」での食事が原則なのだが(もちろんキツく言明されている)が、そんなことに構っていられないのが我が部の現状。なにせ装飾が完成していないせいで、清掃がおぼついて居ないのである。これでは来客する状況でない。したがって朝から部室に持ち込んでいる鞄の中から菓子パンを取り出し、かぶりつきながら彼方此方の作業をてきぱきこなす。独り言しているヒマはない。とにかく全てを完成させねばならない。まずパソコンの移設と起動、写真の展示、磁力で浮くコマの器具一式設置と、パンフ設置。廊下には本校唯一の「落書きボード」の張り付け(前日に張るとフライングする輩が絶対居るんだよね)などなど。隣の物理地学室でも、なにやら実験の準備をしているようだが、こっちはそれどころではない。人手不足ゆえ、ほとんどの「展示作業」を1人でこなす状態なのである。さらにこれを昼食の40分強で・・・なのだから、案の定というか、間に合わずに、最初に来た生徒を隣に誘導してしまった。しまったなあ。

 出だしはしくじったものの、なんとか5分オーバーで飾り付けを終え、そこからは集客開始。うちの部(=班)は、騒音けたたましいものが妙に多いので、それが校舎にこだますることから、とりあえずの集客が予想され(というのは表向き、ウラ向きには「つまらない展示が多いので、初日はとりあえず全部眺めてみる」のである。2日目?そりゃ、控え室でダベリング、でしょう)、最初から騒音道具フル稼働で行く。そのうちの1つ、「アルコール鉄砲」の発砲音の直後、血相を変えた生徒指導の教員が3名、部屋に飛び込んできた。曰く、
「おい、今この部屋で爆竹ならさなかったか?!」
もちろん、物理的、化学的根拠を説明して、不承不承しか納得していない教師に実物を発砲させ、ストレス発散のはけ口として使って貰うことで、一応の事態の収拾を得る。うちの騒音が酷すぎるゆえの出来事であった。

 その後も客足は途絶えることなくまさに「千客万来」の有様(いや、千人も生徒はいないけどね)。初期トラブルもなく、順調な滑り出しを見せたので、とりあえず1アトラクションにこだわらず、全アトラクションを眺めて、空いている所で手招き&説明大作戦を試みてみる。これをやれば、とりあえずその「もの」にもヒトが集まって、みんなで交代しながら遊んでくれた。残念ながら詳しい概念は説明できなかったが(何せ理系なので)。その間、隙を見て頼まれものの写真撮影の旅に出発。私は写真屋さんや、写真担当の教員が狙う「展示で遊ぶ連中」を撮るのではなく、あくまで「展示を真剣に眺める生徒」を求めて、あえて普通の視線の写真を1枚は撮らせて貰っていた。もちろん意識写真も撮らせていただきましたけどね。それと、もう一つの問題は「(エセ)ライブ会場」昨年は暗幕+締め切り窓で「蒸し風呂」になり、レンズも内側から曇ってしまう失態をやらかしたわけだが、果たして今年は・・・(その辺の情報は入ってこないのである)。

 今年はさいわいにも、窓は開けられていて多少の換気は出来ているようだった。しかしながら、その窓にはポリ袋(黒)がびっちりと据え付けられていて、部屋の中には熱気が充満(いや、十二満)していた。ただでさえこう言うところは熱気が籠もるというのに、これじゃあ、出演者も、観客も、撮影者も「必死」じゃないか・・・と、入口(比較的涼しい)の「審査員 兼 入場整理係」の教諭に直訴してみる、熱中症でぶっ倒れる輩が出ても知らないよ、と。しかしながら返答は、「近所への配慮、特に南隣の小学校へ騒音が漏れないようにしている」であった。ヲイヲイ、後者はともかく、前者は誰のことを指して居るんだ?教えてくれよ(※1)。顔パスで入場をし、この日導入していた「部室のズームレンズ付き一眼レフ」で反則ズーム撮影(一番前まで行ったらカメラ曇るもん)で誤魔化し(「今年は一番前まで行かないのか?」と言われてしまった)、演奏も適当に聞き流し(これは「余興芸?」本気で取り組んできたとは思えんお粗末さ)、学級の様子を覗くにした。
 抜き足差し足で近づき、後扉からこっそり入ってみると、部屋の中央には腕組みをしたクソ野郎が立って居るではないか!「学級展示」とは、「クラスの生徒が作る展示」じゃないのか?オレは、お前の出世の点数稼ぎのために粉骨砕身してきたのか?!とにかく無性に腹立たしくなった。これは「高校生の文化祭」ではない。小学生の学芸会並ではないか。もうやってられない、その場を速攻後にした。これによって、私のカメラには己のクラスの展示の模様が、1枚も撮影されなかったのである。
 その後、部の方の仕事に追われ続け、午後3時、初日の終了時刻がやってきた。構内一斉放送の指示に従い、部の展示に携わっている者も、今さっきまで演劇をしていて、舞台の後かたづけをしていた者も、一旦控え教室に戻り、終礼を受けねばならない。私もそこへ向かわねばならない。嫌々ながらも部屋に戻り、担任のヤローの目に付かない所に隠れるように座ったのだが、この終礼は私に対してのイヤガラセの様な終礼になったのであった・・・。(続く)


さて次回は、第28回 一番熱の入る学校祭!部活と学級の狭間で その6〜後編〜 をお送りいたしいたします。