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style No 1:


大きな独歩の古時計。


style No 2:


ヤンママお得意料理其の一。

「チンピラゴボウ」


style No 3:


連続放火犯が警察に捕まり、
書類送検確定後、
何か言いたい事はないかといわれ一言。





「マッチ一本火事の友」



style No 4:



 ほら、そんな寒いところに立ってないで、こっちに入ってくれば良い
じゃないですか。
寒いでしょう?
寒いはずですよね。

だから、ホラ、障子の後ろから顔を半分出してないで、おこたにでも入って一緒にみかんでも食べましょうよ。
おこたは暖かいですよ?

…。

 んー、強情ですね。よし、じゃあわかりました。みかんの他に、この牡丹餅も差し上げましょう。
甘くて、おいしいですよ。
だから、ホラ、そんな、項垂れてないで、可愛いお顔を見せてごらんなさいよ。

いやいや、疚しい気持ちで言っているんじゃありません。
あまりにも貴方が寒そうだから、わは、そんな君を放っておけるはず無いでしょう?
男の面子ってものが、わにもあるのですよ。
だから、ホラ、こっちに来なさいって。

ぽてぽてぽて。

よしよし、良い子ですね。みかん、食べます?

プイッ。

あら、みかんは、お好みでない、と。
したらば、牡丹餅はいかがですか?

プイプイッ。

あいや。これもダメですか。じゃあ、なにが良いのでしょうね。

ガサガサ。

え。これですか?こんなもので、良いんです?

ニャー。

貴方、かわいいお顔をしているのに、変わってますね。キャットフードが良いだなんて。
貴方、人間でしょう?だのに、なんでキャットフードをお食べになるんです?

にゃー。

あ。そうなんですか。それで合点がいきました。
万国びっくりショーに出たいのですね。
でも、キャットフードを食べるだけで、びっくり人間とは言えませんねぇ。
せめて、ガラスとか、鉄を食べないと。
そんなにかわいいお顔をお持ちなんですから、アイドルとか目指せば良いのじゃないですか。
やはり、人として生まれたからには、人として生きるのが当然のことでしょう?

にゃーん。

ああ。理解してもらえましたか。有難う御座います。
ところで、貴方、名前はなんと仰るのですか?

にゃ。

かおり、さんですか。あいやこりゃ参った。これ、見てくださいよ。貴方とわの相性、抜群に良いじゃないですか。あいやこりゃ参った。
いきなり失礼なことをお聞きしますけれど、貴方、独身ですか?

ごろごろ。

奇遇ですねぇ。わも、結婚してないのですよ。気が合いますねぇ。
どうです。ここらで思い切って、わと結婚しませんか。

にゅー。

ああ!了承して下さって有難う御座います。
善は急げと故人も言っておりますので、早速、婚姻届を出しにいきましょう。そうしましょう。

にゃー。

嗚呼、わは、なんて幸せ者なんだ。

にゃーん。


style No 5:


 唐突ですがここでなぞなぞです。
 主人公はみち子17歳。彼女は高校生。青春ど真ん中です。遊び盛りのみち子は考えてました。 小さな子供から大人のうち、どの世代のキスが一番幸福を感じるのかと。そう、別に考えなくても良いことに頭を悩ませていたのです。 悩みに悩んだみち子ちゃん。お父さんに思いの丈をガチコンしました。

 みち子ちゃんのお父さんは、 北のほうの朝がすばらしく鮮やかな地方で働いています。お父さんは娘の願いを聞くと、部下に、こう、言い放ちました。

拉致ってこい。

 お父さんの一言でこの勝負勝ったも同然。さあ、舞台は整いました。みち子ちゃんの前には6人の老若男が覆面を着けて並んでいます。左から順に、

雅夫8歳
忠志14歳
政次18歳
清27歳
紀夫45歳
公彦67歳

 この6人が並んでいます。期待と羨望の眼差しで彼らを見つめるみち子ちゃん。悩みの種を発芽させようと6人全員にキスをしました。腕を組み辺りをウロウロしながら数分考え込んだ後、みち子ちゃんの口からはこの言葉が飛び出したのです。

「あー。あれね。どれが良いって訳じゃないんだけど、○×□?とのキスだけは勘弁できないわね。公開処刑」

さて、○×□?に当てはまる人は誰でしょう。


style No 6:


ミツ子の魂百まで。


style No 7:


「これ?」
「これ」
「マジで?」
「まじで」
「透明人間になれるの?」
「透明人間になれるの」
「嘘だろ」
「嘘じゃないよ」
「誓うか?」
「なにに」
「神様」
「誓う」
「じゃあ飲ませてよその薬」
「嫌だ」
「なんで」
「あと一つしかないから」
「頼む」
「だめ」
「お願いします」
「お願いされてもだめです」
「ケチケチすんなよ」
「最後の一つは俺が使うの」
「えーっ」
「だからだめ」
「じゃあさ、半分こ」
「半分?」
「ああ。それでおそらく透明人間になれる時間が半分になるだけだと思うんだ」
「なるほど」
「だからはんぶんこ」
「それならば良いでしょう」
「よっしゃ」
「じゃあ二つに割ってっと。はい、半分」
「ありがとう」
「じゃあ飲む?」
「飲もう」
「せーので飲もうか」
「よし」
「せーの」「せーの」

パクッ

……。

「透明?おれ透明?」
「透明って言うか……なんか、優しい…」
「は?」
「すごく、優しいよ」
「なにそれ」
「なんか、こう、優しさアクセル踏みっぱなしだよ君」
「だからなにそれ」
「優しさバロメータも、それとなく、レッドゾーン」
「や、透明かって聞いてるのよ俺は」
「透明じゃない。優しいだけ」
「なんだ。透明になるなんて嘘じゃないか」
「そんなはずは無いよ」
「でも現にこうして透明になってないじゃないか」
「それはそうだけど。ん?んんん!?」
「どうしたよ」
「あ。なーるほど」
「なにがなーるほどなんだ」
「ほら、この包装紙の裏を見てよ」
「ん?」






―この薬の半分は、優しさでできています―






「なーるほど」



style No 8:

回虫電灯。


style No 9:


武士は喰わねど糸楊枝。


style No 10:


「そもさん!」

「でっぱ!」


style No 11:


脂とり神。


style No 12:


ウオぉーーーーーー!

「みんなーーーー!ほんとーーーーっに、ありがとーーーー!ミキたんは、いま、とーーーーーってもハッピーでっす☆ これも、今日会場に足を運んでくれたみんなのお陰ダヨ!ありがとネ!」

ウオぉーーーーーー!ミギダーーーーーーン!

「ミキタンは、今日という日を一生忘れませんっ!今日この会場に来てくれたみんなの顔は全員覚えたから、街とかで会ったら”ミキターン!”って気軽に声をかけてね☆約束ダョ!」

ウオぉーーーーーー!ミキタンモエーーーーーーー!

「……シュン…」

ウオぉーーーーーー!ミキタンドウジダノーーーーーーー?!

「……だって、だって…。もうすぐみんなと別れなくちゃいけないから……。ミキタンプチロンリーなにょ……」

ウオぉーーーーーー!ミキタンナガナイデーーーーーーー!

「……うん!そーだよネ!元気が一番ミキタンだもんネ!よーっし、ミキタンスペシャル元気ビーーーーームッ!ビービー!」

ウオぉーーーーーー!ヤラレダーーーーーーー!

「それじゃあみんな元気でネ!ミキタンのライブにまた来てネーーーーー!」

ウオぉーーーーーー!ミギダーーーーーーン!






「ふぅ」
「お疲れ様でしたー」
「おつかれさまー」
「おつかれっしたー」
「おつかれさまー」
「っしたー」
「おつかれさまー」
「お疲れ様でした!」
「あーもうなんのなのよ!お疲れ様お疲れ様五月蝿いわね!こっちは疲れてるんだっつーの!」

ガチャ

バタン!

「あー疲れた疲れた。どっこいしょっと。ふー。それにしても最前列のヲタ臭い奴等はなんなのよ。趣味の悪いピンクのトレーナーを全員で着ちゃってさ。後ろには”ミキタンラヴ”だって。 なんなの、それ。ラヴて。今時ラヴはないでしょ。ヴはないでしょ。はー馬鹿らしい。あと右から二番目な。あれ最悪。そもそも人間なのかが問題だよ。あの黒ぶちメガネ。あのボサボサな髪。 あのぶっとい眉毛。あの並びの悪い歯。あの臭そうな口。超ゲロゲロー。思い出しただけでも腹が立つ。はー。よいしょ、っと……ウゲー!足超クセー!なんなのこれー!ゲロゲロー!あー、あいつ等って私がこんなに足が臭いなんて思ってないだろうな。 アハハ!思い込みって超滑稽だよね!はー。超ゲロゲロウケルー。爆裂ウケルー。あー喉乾いた。お茶飲でも飲もう。って、お茶ねぇじゃん!おい!マネージャー!お茶がねぇぞ!ダッシュで持って来い!1分以内な!遅れたら私のくせぇ足を嗅がせたまわせるぞコラ! アハハ!ジャーマネダッシュ!ゲロダッシュ!」

コンコン

「あーどうぞー」

「失礼します。あのーそろそろアンコールの方宜しいでしょうか?」
「うわーアンコールとかあんの?」
「はい…」
「しょーがねぇな。どっこいしょっと…」

ウオぉーーーーーー!アンゴールッ!アンゴールッ!アンゴールッ!アンゴールッ!

「みんなーーーーー!アンコールありがとー☆ミキタン、とーーーーーってもハッピーでっす☆」

ウオぉーーーーーー!ミギダーーーーーーン!


style No 13:


ガタガタッ

「…むっ、曲者!助清!助清は居らぬかー!」
「はっ、ここに」
「天井裏に鼠が居る。直ちに捕らえて参れ!」
「はっ。今しばらくお待ちを」

ガラッ

「者供であえであえー!曲者じゃー!」

ダダダダダダダダ…

「であえであえー!運命の人と出遭え出遭えー!」

ダダダダダダダダ…

「であえであえー!初恋の人と出遭え出遭えー!」

ダダダダダダダダ…

「であえであえー!遅刻しそうになってパンを口にくわえてダッシュで四つ角を曲がろうとして曲がる瞬間に唾を飲み込む程の美少女と出会え出会えー!」

ダダダダダダダダ…

「であえであえー!出会い系サイトでチョー可愛い子に出会え出会えー!」

ダダダダダダダダ…

「であえであえー!兎にも角にも出会え出会えー!」

ダダダダダダダダ…

「であえであえー!生き別れた父と出会え出会えー!」

ダダダダダダダダ…

「であえであえー!!」


style No 14:


ガキンチョファイトクラブ。


style No 15:


「今日未明、世田谷の住宅地でひきこもり事件が発生しました。 警察の調べによると、容疑者は斎藤和夫25歳無職と判明。警察では対策本部を設置し、近隣住民の安全を十分に考慮した上での事件の早期解決を目指す模様です」
「いやー最近多いですねひきこもり事件」
「ええ、日本の将来は一体どうなってしまうのでしょうか、不安でなりません」
「全く」
「えー、では、次のニュースをお知らせします…」



style No 16:


 メルセデスパンツ。


style No 17:


 確立は1/6。ガチャリ。撃鉄が空を切る。次の確立は1/5。ガチャリ。またもや空振る。よし、次こそは。ガチャリ。1/4の確立でも駄目か。 1/3。ガチャリ。駄目か。1/2。ガチャリ。次が最後だ。1/1。ガチャリ。撃鉄が空を切る。
 ああ、僕が持つこの銃には弾が入ってなかったんだ。ガチャリ。ガチャリ。 銃弾はポケットの中にあるのに。ガチャリ。ガチャリ。僕はそれを込められないでいる。ガチャリ。ガチャリ。結局は僕の責任なんだ。ガチャリ。ガチャリ。



style No 18:


「なあ」
「はい」
「俺って必要なの」
「さあ、どうでしょう」
「はっきり言ってくれよ」
「やー、それが僕にもさっぱりでして」
「そりゃ君はさ、すごく立派だと思うよ。ちゃんとした役割もあるし、ちゃんとした名前もある。さぞかし生きるのが 楽しいことだろう」
「ええ、まあ確かにそうですね」
「それに比べて俺は、俺は一体なんなんだ」
「なにって言われても」
「ただブラブラするだけの毎日。生きている張り合いが無いじゃないか」
「そうですねぇ」
「そうですねぇじゃなく、君も打開策を考えたまえ」
「打開策ですか。…えーっと、改名するなんてどうですか?」
「改名か…。例えばどんな名前だね」
「えーっと…」
「うーん。何が良いだろうか」
「なんて言うか、横文字とか良くないですか?」
「横文字!良いねぇ」
「ノドリーナ・ヘルパチョス。とか」
「おーおーおー」
「プリンス・オブ・ノディ。とか」
「いーねいーねーいーね。その調子だ」
「ロード・トゥ・ストマック。とか」
「良い良い。う〜ん、迷うなぁ」
「どれにしましょう」
「んー」
「んー」
「……よし。ノドリーナ・ヘルパチョスに決定」
「決心しましたか」
「ああ。心は決まった」
「でも名前変えたところでやることはないんですよね」
「それを言うなって、舌君」
「本当の事じゃないですか、喉ちんこさん」
「喉ちんこ言うなって。ノドリーナ・ヘルパチョスに改名したんだからさ」
「そうでしたね、ノドリーナ☆ヘルパチョスさん」
「その星はなんだ」


style No 18:

今日も僕は普段通り変わり映えの無い生活を送り、12時をまわったので寝ようと思い布団に入ると寝室の天井に女の人が貼り付いていた。

まあ、いつものことだ。

 一番初めに彼女を見たときはかなり驚いていたが、ここ2年近く毎日見ていると流石に見慣れてしまい、その光景が当たり前の様になってしまった。 第一印象はオドロオドロしていかにもオバケだなぁ、という風な印象しか受け取れなかったけれど、最近、彼女の顔をよく観察してみると以外に奇麗だということと毎日表情が微妙に変化していることが判ったのだ。
 布団に入り、さて、姫の今日のご機嫌はいかがかな。なんてことを冗談混じりに考えながら彼女の顔を見てみると……あ。微笑んでる。彼女の機嫌の良い日には僕の気持ちも上向きになるので、明日は良い一日になるぞ。なんてことを考えながら、今日も僕は安らかな眠りにつく。

まあ、いつものことだ。

 明日は彼女と出会ってからちょうど3年目の日。今日の夕方、心なしかウキウキしていた僕は詰まっていた仕事を適当に済ませ、どこにも寄り道をせず真っ直ぐ家に帰った。こんなことを言ったら僕が変人扱いされるかもしれないけど、彼女のことが気になって仕方が無いんだ。僕の問いかけには全然答えてくれない彼女。でも、彼女の考えていることが解る様な気がするのは僕の気のせいだろうか。帰宅途中の電車の中、なんだか嬉しくてニヤニヤしながら今日も彼女の機嫌が良かったらいいな、と、いつもの様に考えながら家路を急いだ。

 家に着くと夕飯も食べるのを忘れて、僕はすぐにパジャマに着替えた。早速布団に入る。彼女の機嫌はどうだろう。少しドキドキしながら彼女の顔を覗き込んだ瞬間、僕は血の気がひいた。いつも血色の良い彼女の顔が、今日はものすごく青ざめていたんだ。それになんだか寂しげな表情を浮かべている。彼女になにがあったのだろう。それだけが気になって仕方が無い。僕がオロオロとしていると、彼女は最後の力を振り絞るかの様に、微笑んだ。その、彼女の微笑んだ顔が凄く印象的で、愛くるしくて、抱きしめたくて、でも僕の手は届かなくて、僕には何も出来なかった。そして、その日以来彼女は僕の前に現れなくなったんだ。

----------------------------------------

 一ヶ月後、僕はいつもと変わらない生活を送っていた。いつもの様に朝早くに起き、2時間電車に揺られて会社に行く。嫌な上司にへこへこ頭を下げ、くたくたになって誰もいない部屋に帰宅する。いつもと同じ生活。もちろんそこに彼女はいない。天井に貼り付いている女を好きになるなんて、誰が考えるだろう。僕も普通に有り得ないと思う。でも、どんなに自分に言い聞かせても、彼女は人間じゃないんだからと納得しようとしても、忘れられない。考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃして、正常な判断が出来なくなって往く自分が手にとる様に解る。気持ちの整理が全くつかない。

 そんな気持ちが少しでも晴れれば、と、僕は屋上に上ってみた。夜景でも見て、夜風にあたれば少しはこの気持ちも収まるかな。なんて、安直なことを考えながら、屋上への非常階段をゆっくり上がっていった。

 屋上の入り口のドアの前に立ち、ドアノブを掴んだ瞬間、僕はふと考えた。もしかしたら彼女がそこにいて僕のことを待ってくれているかもな。と、そんなことを考えている自分が妙に可笑しくて、馬鹿らしくて、フフフと含み笑いをしながらドアを開けると、勿論そこに彼女はいなかった。

 屋上は、まだ2月が始まったばかりなので冷たい風が吹き、身震いするほどだったが今の僕には丁度良かった。屋上のベンチに座り、タバコをくゆらせる。少しは気持ちが落ち着いたがそれも少しの間のことで、また頭が混乱してくる。その繰り返しだ。頭を抱え、髪をガリガリと掻きむしりながら自分の馬鹿さ加減に呆れながらも彼女への想いを募らせる。一体どうしたらいいのか僕には判らなかった。そして、ぼんやりとしていてハッ!と我に返ると、僕は屋上のへりに立っていた。

 自殺防止の為に設置された3mもあるフェンスをどうやって越えたのかは解らない。気が付くと、目の前は夜の闇。今にも吸い込まれそうだった。なんだか、これ以上考えるが馬鹿馬鹿しくて、面倒くさくて、いっそ死んでしまおうか、などと考えた瞬間、僕の2本の足は屋上のへりを蹴り、僕のちっぽけな体はその闇に飲み込まれて往った。

 飛んでいる最中はふわふわとして気持ちが良かった。今までグジグジと考えていたことがちっぽけに思えるほど、気持ちが良かった。ああ、僕は死ぬんだ。と、案外冷静に考えることができ、父の顔、母の顔、知人の顔が頭をよぎり、最後に彼女の顔が浮かんできた。

今から、君の傍に往くから。

そう呟くと、僕の意識は夜の闇に飲み込まれ、
僕の体は冷たいコンクリートに打ちつけられた。

----------------------------------------

 何日経ったのかは判らないが、僕は激しい頭痛と吐き気に襲われ目を覚ました。ぼんやりとした視界に映るのは、今にも泣き出しそうな母の顔。生き延びてしまった。と、朦朧とした意識の中考えていると、母親が僕に必死な顔で何かを訴えている。ああ、僕が目を覚ましたことに驚いているんだろう、と、ぼーっとしながら天井を見上げると、そこには彼女が、いた。それも嫌悪な表情で。今までに僕が見たことも無い険悪な表情で、

彼女は、天井にいた。

 僕を連れて逝くことができなくて悔しいのだろうか。その目にはうっすらと涙が見える。それから数分して彼女の体はまるでそこに存在しなかったかのようにいきなり消えた。険悪な表情を僕の記憶に、一粒の涙を病院のシーツに残し彼女は消えたんだ。

 それから3ヶ月、体のほうも順調に回復し僕は今普通の生活を送っている。これまでの気持ちが全て嘘だったかの様に彼女のことは考えなくなり、仕事に恋愛にと忙しい毎日だ。僕は夢を見ていたのではないか、と、本気で思う。そんなことを考えながら今日もいつものベットでいつもの時間に眠りにつく。

もちろんそこに彼女はいない。



style No 19:


ねぇ、ちょっと。

 誰も僕の言葉に反応しない。無視されるようになったのはいつからかな。いつだって誰も僕の言葉を聞いちゃくれないんだ。みんな聞こえないフリをする。僕がまるでそこに存在しないかのように振舞うみんな。前みたいに話し掛けても誰も相手にしてくれない。これが虐めなんだね。こんな気持ち初めて体験したよ。今日はもう家に帰るよ。

 家に着くとすぐに母さんにただいま。

「おかえりなさい」

 あ、母さんは僕のこと無視しないんだね。ねえ、覚えてる?僕が幼稚園のころ、小学生のイジメっ子と喧嘩して泣きべそかきながら帰ってきた時、母さんは男の子は喧嘩で泣いちゃ駄目って、優しく頭を撫でてくれた時のこと。今でも母さんの柔らかい手の感触は覚えてるよ。

 なんだか最近頭がモヤモヤして眠いや。僕は寝るとするよ。あ、父さんにオヤスミって言わなきゃ。

「おやすみ」

 あ、父さんも僕のこと無視しないんだね。だから父さんは好きだよ。ねえ、覚えてる?僕がまだ小学校の低学年のころ、河川敷で一輪車の練習をしたこと。父さんは、よーし、手本を見せるぞー、とか言ってはりきってたけど、全然上手く乗れなくて僕に教えるのを忘れて一人で一輪車に乗っていたね。そんな、父さんの子供っぽいところが大好きだよ。

 なんだかもう生きてるのが辛いや。なんで僕が無視されなきゃいけないの?なんで僕だけ?僕がなにか悪いことでもした?してないでしょ?だったらなんで?わからないよ。わかりたくないよ。もう、生きてるのが辛いや。明日になればこの辛い現実から逃れられるかな。多分変わらないんだろうな。嫌だな。朝なんてこなければいいのにな。ずっとこのまま夜でいいのにな。そうしたら大好きな父さんと母さんと一緒にいられるのに。ずっとずっと一緒にいられるのに。苦しい事なんて、無くなるのに。こんな現実なんてもう、いらないや。いっそ首を吊って死んでしまおうかな。僕を無視した奴等の名前を書き連ねた遺書を残して。そしたら奴等びっくりするだろうな。死んだんだからね。そりゃびっくりするよね。当たり前だよね。でも、ニュースとかで同じようなことがあったって言ってたけど、いじめていた人達は全然反省の色なしって言ってたな。これじゃ駄目だな。いっそのこと僕を無視した人達全員殺して僕も死のうかな。これがいいや。人殺しなんて世間ではたくさんおこってるし、僕がすることなんて多分ニュースになったとしても2ヵ月くらいで忘れられるし、大丈夫だよね。全然心配ないよね。でも、僕が殺そうとしてる時に返り討ちにあいそうだな。僕は背もちびっこくて痩せてるから力もないしね。んー。これじゃ駄目だ。もっといい方法がないかな。んー。思いつかない。まあ、いいや。今日はなんか頭がモヤモヤするからもう寝ようっと。

父さん、母さん、おやすみー。

「おやすみ」

「おやすみ」

「ねえ。タカシが死んでから何年になるかな」

「もう、5年になるな」

「もうそんなに経つんだ」

「あぁ、でも未だにタカシが死んだって信じられないよな」

「ね。突然の事故だったからしょうがないよ」

「タカシはちゃんと成仏してるのかな」

「してると思うよ。だってあんなに素直な子だったじゃない」

「そうだよね。」

「でも、毎日タカシの部屋にむかって話し掛けるのはやめた方がいかもね」

「どうして?」

「だってもしタカシが成仏してなかったら困るじゃない」

「なにが困るの?」

「だって、私達がちゃんとタカシの死を認めてあげないとタカシも天国に逝きにくいと思うし」

「そっか。そーだよね」

「そうそう」

「じゃあ、明日からはタカシの部屋にむかって話し掛けるのはやめようか」

「それがいいと思う」

「わかったよ」

「そろそろ寝ようか」

「そうだな」

「おやすみ」

「おやすみ」







チュン…チュンチュンチュン…

 んー。良く寝た。あ、母さんだ。おはよう、母さん。

「…」

 あれ。どうしたの母さん。いつもはおはようって言ってくれてたじゃない。どうして今日は言ってくれないの?あ、今日は機嫌が悪いのかな。それならしょうがないな。あ、父さんだ。おはよう、父さん。

「…」

 あれ。どうしたの父さん。父さんも無視?なんでなの?父さんと母さんがいてくれてたからこそ、僕はいままで生きてこれたのに。自殺とかしなくてすんだのに。母さんや父さんまで僕のことを無視したら僕はこれからどうやって生きていけばいいの?わからないよ。考えたくないよ。どうしていいかわからないよ。もう、死ぬしかないのかな。うん。死ぬしかないよね。だってこの世の中で僕に味方してくれる人がいなくなったんだから、もう、死ぬしかないよね。

もう、死ぬしかないよね。



style No 20:


「わたしとの事は遊びだったのね」

「遊びじゃないよ。なんて言うのかな、故意に恋してたって感じかな」

「やっぱり遊びだったんだ!」












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