第1話 「カスミ、霞家に来る」

「カスミ、パパがいなくても毎朝ちゃんと起きるんだぞ」
「私が毎朝パパのこと起こしてたのよ?」
「カスミ、大変だと思うけど御世話になるお家の御手伝い…してね」
「ママ達の世話をするより大変じゃないよ」

心配性の学者を両親に持つ、しっかり者の少女春野カスミ。アフリカでの研究という念願が叶った両親を、カスミは「1年経ったらまた会えるんだから」と気丈に送り出す。

「こんじょ、こんじょおっ!」

いきなりパスポートを忘れてしまう両親。彼らが乗ったタクシーを、自転車で必死に追いかけるカスミ。近道と根性(笑)で何とかタクシーに追い付き、今度こそ本当の「行ってらっしゃい」で別れを告げる。

 

両親と別れ、これから1年間御世話になる霞家へと向かうカスミ。

「ここから結構あるわね…でも、タクシーなんて勿体ない、歩け歩け!」

通りがかった近所のおばさんに霞家の場所を聞くが…「私、これから霞家に御世話になるんです」と言った瞬間、おばさんは表情を変え足早に立ち去ってしまった。

「近所の人の印象が良くない家なのかな…
やめやめ、心配したってしょうがない。当たって砕けろよね!」

小高い丘の上にある霞家。当然辿り付くまでには少々歩かなければならないのだが…そこは庭というよりはどう考えても森という雰囲気。途中、道端の木に何か気配を感じるが…

「木だけに…気のせい。
なーんちゃって、お後がよろしいようで…
何て一人でやってる場合じゃないか」

ふと、木の根元に鍵を見つけるカスミ。不思議に思っていると突然竜之介という名の小さな子供が現われ、カスミンというあだなでカスミを勝手に呼び始める。「預かっている子供なので甘やかしてしまって…」と竜之介をかばう桜女に案内され、カスミは霞家に辿り付く。

「家の中に滝、水車もあったりして…」
「いいお水が涌き出てくるんですのよ」
「はは…そうでしょうね」

秋に桜が咲き誇り、大きな水車がぐるぐる回り、大樹と共にそびえたつ不思議な霞家。

「ホントに変わったお家、でもすっごいステキ!」

ステキな家に感動し、くつろぐカスミの目の前に…駆け足で通りすぎるポット、自ら掃除する雑巾、甲羅を背負ったカメラ…が現われては去っていく。

「この頃の電化製品ってみんな喋るの…?歩く電子レンジ、
便利よね…便利だと思う…便利な気がする…便利かもしれない…」

これから御世話になる霞家一家に挨拶をするカスミだが、そこで家長の仙左右衛門は「お前の力を見せてみろ」と言い放つ。

「お前はどんな力がある?」
「…力?」
「力を見せてみろ」
「…あ、はい。割と力はある方なんですけど…!」

訳が判らず物を持ち上げてみたカスミの目の前で、一家は様々な変化そして不思議な能力を見せていく。

「変化も出来ずなんの力も無い…お前は本当にヘナモンか?」
「ヘナモン?何それ?変なもん…?」
「違う!ヘナモンとは、古くなったものや
自然界に存在するものが変化したものじゃ!」
「あ、もしかして…皆さんヘナモン?」

そう、何とそこは長く年月を重ねた物が命を持った存在…変化した物体すなわちヘナモンが住む家だったのだ。

「はぁ…」
「ま、まさか…お前はヘナモンじゃ無いのか!?」
「何よ、何よ、何よ…!あたしが悪いわけじゃないのに、
そんなに怒鳴る事ないじゃない!」

「とてもこんな家にはいられない」と家から逃げ出そうとするカスミ、他の人間にヘナモンの存在を知られたくない為にカスミを追いかける仙左右衛門。

「いかないでカスミン、僕カスミンと一緒にいたいんだ!」
「…ごめん、行かなくちゃ…」
「行かせないもん!」

カスミのことを慕って「カスミン」と呼んでくれる竜之介。カスミは彼の願いを反故にして、この家を出ていくことに後ろめたさを憶えるが、竜之介が起こした大波に飲まれ意識を失ってしまう。

目が覚め部屋から出てみると、そこは丁度風車の下に位置する場所だった。小高い丘から見える美しい夕日、そして大きな風車…風景に感動したものの、これからのことを考えると暗くならざる得ないカスミだった。

そこに現われた恋するハニワおハニさん。この度愛するダーリンとの結婚が決まり、御手伝いさんとして使えていた霞家から御暇を貰った彼女は、一家の食事を作る御手伝いさんとしてかわりにカスミを厨房に連れていく。

「カスミとやら、我々のこと決して人間に話してはならぬぞ。
もし喋ったならば…その時はカスミに変える。判ったらさあ出ていけ!」
「言われなくても出てくわよ!」

厨房に再び現われた仙右左衛門。先程と全く変わらぬ強い口調に、カスミの語気も当然荒くなる。

「だったら誰が今日の晩御飯を作るのだわ?」
「でしたら私が。成せば成る、成さねば成らぬ何事も。
成らぬは人の成さぬなりけり、やぁー」
「もうその格好が間違ってるのだわ」

名乗り出たはいいが、薙刀を振りまわすあまりにも…な桜女。結局おハニさんの見守る中、晩御飯を作ることになったカスミ。「まずいまずい」と言いながら箸を進める仙左右衛門、カスミの料理の腕前を褒める桜女や竜之介。結局「もう遅いし…」というわけで、カスミは今日1日泊まっていくことになった。

「でも明日からどうしよう…
ううん、しっかりしなきゃ。パパとママが心配するもんね。
何とかなる!かなぁ…」

寝る前に髪をとかしながら必死に元気を振り絞るカスミ。丁度その頃、カスミのいる部屋の前ではポット、ぞうきん、たわし、デジカメ、電子レンジ達が集まり、彼女を心配していた。突然そこに現われ「お主ら何をしておる!」と大きな声で一喝する仙左右衛門。「家長として、明日は必ず出ていくように言わねばな」という独り言は、当然カスミにも聞こえており…突然開いた部屋のドアが仙左右衛門を直撃する。

「まさか、寝てる間に霞に変えようってんじゃないでしょうね!
カスミが霞になるなんてシャレにならないわ」
「何を!」
「あー、夜もおちおち安心して眠れないんだ。可哀想な私」
「だったら今すぐ出ていけ!」
「行くわよ、もう1秒でもこんな家いたくない!」

既に日も暮れ帰り道は森の中。カスミは道に迷ってしまい、森の中であったヘナモンに驚き逃げ惑う。しかし先程はムキになっていたが、心の底では彼女を心配していた仙左右衛門によって、カスミは一応霞家へと戻ることになった。

「あ、ちょっと何処行くの?屋敷に戻ってんじゃない!」
「今日は屋敷で泊まるのが良かろう。また騒がれては迷惑じゃ」
「あたしだってあのウチにまた戻るなんて迷惑よ!」
「何だと?」
「何よ!」
「何だと?」
「何よ!」
「何だと?」
「何よ!」
「あたし、明日は絶対出ていくから!」

とりあえず霞家に帰ってはきたが…これからの事を考えると色々複雑なカスミであった。


カスミンハイライト

横に並べると絵の差が歴然(笑)

「何よ、何よ、何よ…!あたしが悪いわけじゃないのに、
そんなに怒鳴る事ないじゃない!」

仙左右衛門に「お前はヘナモンじゃないのか!?」と怒鳴りつけられたカスミ。
とはいえここで怯えっぱなしにならない辺りがカスミの強いところ。
怒鳴りつけた相手に向かって怒鳴り返す…いい度胸してます(笑)

他にも色々面白い顔を見せてくれたんですけど、
少しずつ変わっていく表情が良かったんでこれにしました。
第1話から表情が崩れっぱなしなのは良いことなのか悪いことなのか…(笑)


第1話感想
というわけで素晴らしい出来の第1話です。主人公のカスミンことカスミがグイグイ動くわ表情がクルクル変わるわ…これだけ見れば性格が一発で判るっていうぐらいに、もうはつらつと動き回ってます。明るくしっかり者で気が強く、物怖じしない上に料理もこなす…と、僕的にはかなりツボ入ってます(笑)

OP・EDは由紀さおり・安田祥子。コレクターユイではそれなりにタイアップしてましたけど…この2人を起用する辺りに制作側の気合をヒシヒシと感じます。OPは歌詞・雰囲気・仕草…もう色んな意味で良過ぎです。悲しげなEDも、なんだか本当に寂しくなってくる感じが凄くいいです。

小学生の女の子が主人公、新しい環境で色々学んでいく…今の時点でこの番組を一言でいうならば、子供向け「千と千尋の神隠し」NHK版って所でしょうか。まあこれから先の展開がどうなるかはまだ判りませんから、大それたことを言うときっと後で後悔するでしょうけど(笑)

「とっとこハム太郎」「デジタル所さん」でも判る通り、最近は母親役が非常に多くなった佐久間レイ様(様付けなんです)ですが、僕としてはカスミを佐久間レイ様に演じて欲しかったです。もうあの小生意気な声が聞ける日は来ないんでしょうか…(泣)

NHK教育の土曜アニメといえば「YAT安心!宇宙旅行」「飛べ!イサミ」「あずきちゃん」等など、民放では見られないまさに“NHKらしい”秀作ぞろいですけど、第1話を見る限り「カスミン」もかなりいい感じです。嫌が応でもこれから先が楽しみになってきますね、ホントに。

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