第2話 「蘭子、帰る」
「よかった…カスミにされてなかった…」
翌日。「今日こそ出てこう」と意気込むカスミだが、おハニさんはいきなり朝ご飯を作れという。「何で私が…」と一旦は断わるが、さすがに薙刀を装備した桜女に任せるわけにもいかず、結局またもカスミが作ることに。
「何でヘナモンなんかとご飯食べてるんだろ、私…」
「まずい」
「じゃ、食べなきゃいいでしょ…」
全員揃って朝食を食べているまさにその時。突然玄関の戸が開き、飛んで来た蘭の花びらが玄関に花道をつくりあげる。花道を通って家に入って来た若い女性は、カスミを見て即座に一言。
「何?このべちゃぽんてん」
「べちゃぽんてん…?」
「そういうヘナモンがいるんですの」
「え?どういうヘナモン?」
現われたのは霞家長女、蘭子だった。
「そんな事よりなんで帰ってきた?
こんな朝っぱらから亭主を放っておいていいのか?」
「別れたの…聞こえなかった?あたし離婚したの。」
仙左右衛門と蘭子が言い争っているところに、玄関に「荷物が届いた」という報せが入る。すっかり頭にきた仙左右衛門は、届いた荷物を霞に変えて嫁ぎ先に送り返してしまう。仙左右衛門の勝手な行動に怒り蘭の花びらを飛ばす蘭子、それに雲で対抗する仙左右衛門。
「…いい加減にして!
あれはあたしの荷物だったのよ!?」
あまりの騒ぎに耐えかねたカスミが2人を一喝する。「あの中に大切なものが入ってたのに…!」とカスミが自分の部屋に戻って悔しがり、両親の写真を見つめていると…後から蘭子の声が聞こえて来た。
「ちょっと、何であんたが私のベッド使ってるの?
嫁に行ったからって、ここはあたしの部屋よ。
人間なんかに使ってもらいたくないわね」
「………」
「あたし達ヘナモンがひっそり世の中の片隅で暮らしてんのは、
あんた達人間が、あたし達を封じこめたり怖がったりしたせいなのよ!」
おもむろに荷物を片付け、そそくさと蘭子の部屋を出て行くカスミ。部屋を出た先の廊下でふと立ち止まり、たまったうっぷんを吐き出すかのように口を開いた。
「何勝手なこと言ってんのよ、どいつもこいつも…!
決めた。荷物が無事戻ってくるまであたし意地でもここにいる。
それまで朝ご飯だって夕ご飯だって、作って作って作りまくってやる!」
力をこめてスーツケースを床に置き、その上にどっかりと座って気合を入れ、カスミは声を張り上げる。
「こんじょだこんじょ!」
「一番気に入ってたんです」、カスミは先日意識を失った時に寝かされていた部屋に案内された。ドアの向こうではポットやデジカメ、電子レンジ達ヘナモンがカスミを心配し集まっていたが、合いも変わらず会話は筒抜け。部屋から出て来たカスミの前で、デジカメは精一杯の努力を見せ…
「あんた達、あたしのこと慰めに来てくれたんだ…」
ようやくカスミに笑顔が戻る。ヘナモン達と打ち解け、竜之介の必殺技“竜ちゃんボンバー”をも見事に破ったカスミだが、再び蘭子が現われカスミに部屋掃除を言い付ける。「何であたしが」と突っぱねるカスミだが、蘭子の操る蘭の花びらに掴まり“弱点”右のわき腹をくすぐられ、結局蘭子の部屋掃除をする事に。
「なーにがブランチよ。
蘭子が食うんでランチ…なんつって。
…おもろないっちゅーに」
右わき腹を人質に取られたカスミは、結局部屋掃除だけではなくマニキュア塗り、おにぎり作りまでもやらされてしまう。カスミに百個ものおにぎりを作らせておいて、おもむろに「まずい」と言う蘭子。
「そういうとこそっくりですね、御父さんに」
「あんなガンコ親父と一緒にしないで。
まったくちょっと離婚したくらいで」
「…何で別れたんですか?性格の不一致ってやつ?」
パクパクとおにぎりを食べていた蘭子の手が止まる。
「…いつもあたしは厄介者なのよね…」
「蘭子さん…」
突然轟く雷鳴、吹き荒れる暴風。それは蘭子を迎えにきた風と雷をつかさどるヘナモン、風神と雷神だった。暴走族のような風体でバイクに乗ってきた彼らと一緒に行こうとする蘭子。仙左右衛門はヘナモンをまとめる一族としての姿勢を求めるが、蘭子は「あたしにまで押し付けないで」と反発し去ってしまう。
「竜ちゃんニンジン嫌い」
「そう、じゃあこれから三食ニンジンね」
竜之介の注文通りにハンバーグが並ぶ夕食風景。蘭子の分まで用意された夕食に難癖を付ける仙左右衛門、「あたしの勝手でしょ」と反論するカスミ。そこに突然風神から「蘭子を迎えに来てほしい」と電話が入る。「あんな娘迎えに行く必要は無い」と言い放つ仙左右衛門、業を煮やしたカスミは「判った、あたしが行く!」と風神のバイクに乗って蘭子を迎えに向かう…が。
「…飛んでる…飛んでるよぉ…止めてぇ…!」
「バイクは急に止まらない」
「じゃあ道を走って、道を!」
「人間がビックリしちまうだろう?」
「あたしも人間だってば…!」
「おやおや今日は珍しい、小さいレディーがお越しだ」
ついた先はBAR“ストレンジャー”、蘭子は奥で酔いつぶれていた。
「蘭子さん蘭子さん、迎えに来たよ」
「カスミーン、ありがとう〜迎えに来てくれて蘭子嬉しい」
「何これ〜?」
「酔うといい人になっちゃうんだよな…」
カスミに抱き付き、「もうこき使ったりしない、行く場所が無いならずっと家にいてもいい」とカスミに暖かい言葉をかける蘭子。カスミも「…ありがとう」と感謝するが、すでに蘭子は完全に眠りこんでしまい、カスミは蘭子に潰されてしまう。
「余計なことをしおって。
こんな娘に家の敷居は2度とまたがせん!」
酔いつぶれた蘭子を連れ、霞家に帰ってきたカスミ。玄関で待っていた仙左右衛門は蘭子を心配するどころか、再び彼女を叱り付ける。蘭子のことを思うあまりカスミは仙左右衛門に反発し、「人間もヘナモンも関係無いでしょ!」と叫ぶ。
「あたし…ちょっとだけ蘭子さんの気持ちわかる。
ウチのパパとママはいつも優しかったけど…あたし、
自分がいるとパパとママの邪魔なんじゃないかってずっと思ってた。
パパもママも夢があって、一生懸命研究してて…
そんなパパ達にあたしがいると、かえって迷惑じゃないかって。
だからアフリカにも付いて行かずに残ったの。
…だけど、あたしがいじけずに済んだのは、
いつでもパパとママが『おかえり』って言ってくれたからだよ。
だから蘭子さんに言ってあげて、『おかえり』って言ってあげて!」
そして仙太郎が「おかえり」と声をかけ、蘭子は自分の部屋へ帰り付いたのだった。
「右わき腹。」
「もうこき使わないって言ったじゃないですか」
「ぜーんぜん覚えてない」
愚痴りながら蘭子にマッサージをするカスミ。そこに2度目の竜ちゃんボンバーが直撃する。
「や、やっぱ…明日こそ…出てく!」
カスミンハイライト
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「竜ちゃんニンジン嫌い…」 竜之介の「明日はハンバーグがいい!」というリクエストにちゃんと答えてあげたものの…好き嫌いに関しては断固として譲らないカスミ。 ここまでカスミがしっかりしているとなると、春野家の一般的な食事風景ってやっぱりカスミ中心に動いていたんでしょうか…? 「ママピーマン食べられないの…」 こんな感じでしょうか(笑) |
第2話感想 |
良く考えてみれば、カスミは前回のラストで「こんなオバケ屋敷出て行ってやる」と叫んでいたわけで。どのような形でカスミが“霞家で暮らしていく”という決意をするか、それがポイントだったんですけど…あれよあれよという間に霞家での位置を確立しちゃいました。 とはいえ、なし崩し的に話が進んでいるわけではなく。まず霞家に残る一番の理由だったカスミの荷物を手違いで再び遠くへ送り、そして蘭子のワガママな言動や家族との関係をカスミの性格や思いと絡めることで、見事にカスミを霞家に溶けこませてます。普通だったらあそこで泣くんでしょうけど…やっぱり強いですね、カスミは。 他にも書きたい事は色々あるんですけど…細かく書いていったらキリが無いので、まずメインキャラについて少々。竜之介の必殺技、破壊力はまずまずですけど問題は如何にしてクリーンヒットさせるか。最初の一撃はカスミに軽がると破られましたから…ってどうでもいい事を(笑)ただわがままな竜之介でも蘭子と仙左右衛門が怖い、ってのはいい感じです。影の薄い仙太郎も蘭子に「おかえり」を言う渋さ。あとは相変わらず薙刀を振りまわす桜女、「料理少年Kタロー」のおばあちゃんじゃないんだから…ってまた判りにくいですね。 メインキャラ以外にも結局明かされなかった蘭子の結婚相手、小粋なバーのマスター、イカした奴らこと風神雷神。各キャラにしっかり個性が刻まれているので、話を掘り下げようと思えばいくらでも話を掘り下げることが出来そうです。 それでいて来週の舞台は学校。先生は勿論のことクラスメイトも出てくるわけですから…ヘナモン世界ならぬカスミン世界は広がりっぱなしです。 |