第3話 「カスミ、学校へ行く」
「さっさと朝ごはん作るのだわ」
「薔薇風呂に入るから花びらを一枚一枚むしってね」
「カスミーン、大変だね」
「あんたが言うな!」
霞家+オハニさん分の朝御飯を作るならまだしも、わがまま蘭子の朝風呂の仕度にもこき使われるカスミ。働いている所を邪魔しにくる龍之介に同情された所で、カスミの負担は減るわけも無く…
「学校行く前にもうくたくた。やっと普通の人達に会える…」
「そんな所へは行くな!荷物が届くまでは置いてやってもいいが、学校へなんぞ…」
「心配しなくても皆がヘナモンだなんて言いふらしたりしないわよ」
ようやくひと仕事を終え、朝食の席で学校への期待に胸膨らませるカスミに、仙左右衛門は危機感からか釘をさす。「こき使う相手がいなくなるから」と同調する蘭子と共に、仙左右衛門はカスミを学校へ行かせまいとするが、議論を打ち切ったのは桜女の唐突な一言だった。
「行こうかしらわたくしも、学校」
「転校するのに保護者が付いて行かないって言うのも…」と主張する桜女。カスミは「わたし一人でいけますから」と断わるが、まったく聞く耳持たずで「何だか楽しそう」とやる気満々の桜女。
「よいか、あの娘が我々の秘密を漏らさぬ様に見張るのだ」
「あの…誰か他のヘナモンに…私、ぞうきんですし…」
さすがに心配になった仙左右衛門は、監視役としてカスミのカバンにぬれぞうきんを忍びこませる。準備を整えたカスミは学校へと向かうも、あまりにマイペースな桜女に振り回され、完全に遅刻となってしまうが…
「あーなーたー!」
「…どうした!?」
桜女の一声で駆けつけた仙左右衛門は、「何でわしがこんな事をせねばならんのだ」と言いながらも、雲に変化し2人を遅刻ギリギリセーフで送り届ける。
「担任の大河原まさえです。よろしくね、春野さん」
「はい!」
「桜女でございます」
「あ、春野さんのおばあさまですか」
「そのようなものです、カスミンさんは人間ですが、私どもは…」
危うく自分達の秘密を暴露しそうになる桜女をカスミは必死にフォローする。担任との挨拶を終え、桜女は何とか帰ったのだが…カスミのカバンの中にはまだ一匹のヘナモンが。
「春野カスミです、よろしくお願いしまーす」
これから1年共に学ぶ4年3組の仲間に、元気良く自己紹介するカスミ。休み時間に声をかけてきたかえでとユリは、霞家に住んでいるカスミのことを心配する。
「大丈夫?あの霞家で暮らすなんて…
だってあの家何か出るって言うし…」
「そ、そうなんだ…でも別に何も出ないよ」
(ヘナモンのこと、ばれてる?)と思ったカスミは一瞬ドキッとし、必死に平静を装うが…そのカスミの背後から再び声が。
「でもやっぱり怪しいんだよなあの家、
あの家には妖気が漂っているんだよ…!」
「はははは…それって陽気な家ってこと…って失礼しました…」
「こんなつまんないギャグで笑わないでよ」とかえでに評されるほどのダジャレで、必死に話題を逸らそうとするカスミ。ギャグは冴えなかったがユリに与えた印象は思いの他よく、「春野さんって何だか面白い」と言われ…
「春野カスミか…カスミンって呼んでいい?」
「…ここでもカスミン?」
クラスメートと話している最中、突然カバンからぬれぞうきんが飛び出してくる。カスミは「いつもぞうきんを持ち歩いてるんだ」と苦しい言い訳で誤魔化すものの、当のぞうきんは授業中いつの間にか姿を消してしまう。
「ああ、あっちもこっちも汚れてる…
我慢できない…したい、御掃除したい!」
ぞうきんを自由自在に操り、ぬれぞうきんは学校中をピカピカに掃除していくが…掃除の時間でも無いのに学校がピカピカになっていく様は、当然怪事件として騒がれてしまう。ヘナモンの存在が学校中に知れ渡ることを恐れたカスミは、学校を掃除して回るぬれぞうきんを追いかけまわし、ようやく理科室で捕まえることに成功する。
「だって、あたしぞうきんなんです。
ぞうきんは、掃除をしてこそぞうきんなんです」
「わかったわよ。なんでついてきたのか知らないけど、もううちに帰りなさい」
「一人で帰るの怖い」
「あんたが怖いんだって!」
カスミはこれ以上騒ぎを起こさないようぬれぞうきんに諭し、ドアの外で聞き耳をたてていたシカオを即興腹話術でごまかし、何とかその場をやり過ごすも…またもぬれぞうきんには逃げられてしまう。そうこうしているうちに休み時間が終わり、カスミは次の授業へ向かう途中の廊下で、エリとかえでに出会う。
「あ、次理科室だっけ」
「やっぱり変だよね…」
「なんたって霞家にいるんだもんね…」
“ぞうきん手に学校中掃除してるらしい”という話は彼女達の耳にも届いており、2人は廊下で出会ったカスミと距離をとり、カスミを残し先に理科室へと入ってしまう。「もうすぐ授業が始まる」という先生の言葉を背に、うつむいたままのカスミは一人トイレに駆け込む。
「平気だもん、皆に変に思われたって大丈夫。
…そうだよね、パパ、ママ…」
カスミはたった一人、鏡の中で泣いている自分に向かって言い聞かせ、涙を拭い気合を入れなおす。
「よし、これ以上怪奇現象を起こさないためにも、
あのぞうきんを捕まえちゃる!こんじょだこんじょ!」
カスミは墨汁を垂らしてぬれぞうきんをおびき寄せ、校長室では大捕物を繰り広げる。出張中の校長室から響く音に不信感を抱き、部屋に入ってきたかえでとユリを襲う段ボールの山。身を挺してクラスメートを助けようとするカスミ、そして人間を助けようとするぬれぞうきん。カスミ達は間一髪で助かったものの、ぬれぞうきんが身代わりに下敷きになってしまった。
「ぞうきん、ぬれぞうきん!?
…ぬれぞうきん、大丈夫…?」
「大丈夫です、ぞうきんで助かった…」
ぬれぞうきんの無事を確認し、ホッとするカスミ。そこでいきなり背後から聞こえて来た「カスミン!」の声。「変な子」と思われていた自分に引け目を感じるカスミだが…
「カスミン、ありがとう助けてくれて」
「変な子なんて言ってごめんね…」
「これからも仲良くしてね…!」
「…うん」
カスミに謝るかえでとユリ、カスミが流した涙を拭くぞうきん…ようやくカスミに笑顔が戻る。
「はい、これで綺麗になった。
…もう付いてきちゃ駄目だからね」
夕方。ようやく洗濯を終え、ぬれぞうきんを霞家ベランダに干すカスミ。カスミが去ったのを見計らって現われ、カスミの学校での言動を問い詰める仙左右衛門に対し、「はあ…」と答えたぬれぞうきんは、いつもよりも申し訳無そうな恥ずかしそうな口調で話を続ける。
「仙左右衛門様…」
「なんだ?」
「あたし、カスミンちょっと好きになりました…」
その頃…夕ごはんの仕度に蘭子のマッサージ、必死に働くカスミをまたも龍ちゃんボンバーが強襲、カスミの顔面に見事に直撃する。
「…こんなとこ、絶対出てってやる!」
カスミンハイライト
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「ふふふ…探すのなんてわけないわよ! あんた達の通った所は皆ピカピカだ!」 クラスメートにヘナモンの存在がばれるわけにはいかない…ということで、学校中を掃除して回るぬれぞうきんを捕まえようとするカスミ。 逃げ回るぬれぞうきんを捕まえそこね、壁に顔面を打ちつけダウンするが…おもむろに起き上がり拳を握り締め、誰に言うとでもなくこう呟く。 今回は何といっても涙を流すシーンかな…と思ったんですけど、多分描ききれないので、少々気合の入れ方を間違えているこのシーンを選んだ次第です。 確かにぬれぞうきんが掃除モードに入ってしまったってのもありますけど、僕としてはカスミのフォローが節々で間違っていたのではないかと(笑) 本当は壁に顔をぶつけたせいで顔が真っ赤になっているんですけど、その辺はまあお見逃し下さいませ。 |
第3話感想 |
やんちゃだけど可愛い龍之介、頑固で口うるさいが憎めない仙左右衛門、わがままで人使いは荒いものの弱い一面を見せる蘭子。「変だけど悪い存在では無い」、ヘナモンに対するカスミの認識はこんな感じだったと思います。今回はカスミ以外の人間が霞家…つまりヘナモンに対してどのような印象を持っているか、それをテーマにした話でした。 いざふたを開けてみると、そこに待っていたのは厳しい現実。これまでどんな状況にあっても決して見せなかったカスミの涙…ヘナモンと人間の隔たりを表現する上で、これほど効果的な方法があるかと言うくらいでした。強がりとはいえ、涙を拭いて気合を入れるカスミの健気なこと健気なこと。 とまあ厳しい所だけ見ていっても面白くないので、チェックポイントを色々と。カスミ的には前回に続いてひどい寝相、既にポトポット達と仲良くなっている所、“学校”という言葉に見せる普通の女の子っぽさ、あとは涙と「こんじょ!」…今回も表情がくるくる変わって面白いことこの上なし。 今回は威厳あふれる霞家家長、じつはヘナモン保育園園長の仙左右衛門様が素敵でした。桜女に呼ばれすぐに馳せ参じる所は愛妻家ってことで良しとしても、番組ラストで風車にしがみついて現われる所は…おそらく風車のてっぺんで張り付いたと思うんですけど、あの姿のまま回っている絵を想像するだけでもう面白すぎて(笑) あとはクラスメート。これまでひとりボケツッコミだったカスミのダジャレにウケる男の子、ヘナモンの存在を調べようとする男の子、男子2人はしっかりと役割があるのでいい感じです。そういう意味では大人しいけど可愛い女の子に比べ、髪型が特徴的な方のキャラが少々弱いかと。とはいってもまだ3話目、これからどうにでもなりますね(笑) いつも「しがないぞうきんですから…」と呟いてるぬれぞうきんですが、見事にぞうきんを操る所は中々のものでした。僕はてっきり一人で掃除するのかと思ってたんですけど、考えてみたら彼もヘナモン、九十九神とまではいかずとも他のぞうきんとはキャリアが違うと。ってことはポトポットもポットを操って物凄い量のカップラーメンを一気に作ったり…する必要は無いですね。 |