第5話 「マサエ先生、家庭訪問する」

「家庭訪問!?」
「そう、出来れば明日にでも伺いたいんだけど…」

カスミのクラス4年3組の担任、大河原マサエ先生から突然家庭訪問の申し出が。霞家がヘナモンの住む家だと知られたら…と最初はやんわりと拒否したカスミだが、結局断わり切れず…

 

「何?人間が家に来る?ならん!絶対に駄目だ、家庭訪問など!」
「そんなこと言ったって普通はするんだもん」
「じゃあワシがそのマサエ先生とやらに断わってやる!
とにかく、ウチには一歩も入れんからな!」

カスミに家庭訪問の話を聞き、夕食の席で一人息巻く仙左右衛門。

「そんなことするとあたくし達、ここに住めなくなるかもしれませんわよ?
ただでさえ、霞町の皆さんは得体の知れない家だと思ってらっしゃるのに、
家庭訪問を断われば、『あの家には絶対に何かある』…ウワサがウワサを呼んで
警察やらマスコミが押しかけて、ヘナモンであることが知られ、
嗚呼…住みなれた霞家を追われる霞家の運命やいかに」

息巻いてはみたものの、桜女の鬼気迫る言葉に少し怯える仙左右衛門。

「でもなぁ…家庭訪問に来てもらっても、先生に変な家って思われちゃうだけかも…」
「何が変な家じゃ、どこが変だと言うんじゃ!」
この霞家、誰に見せても恥ずかしい所などあろう筈がない!
由緒正しいヘナモン一族の名誉にかけて、家庭訪問とやら…受けて立ってやる!
来るなら来い!マサエ先生とやら…!」

カスミの何気ない一言にムキになり、夕食の席で一人燃える仙左右衛門。

「みんなで明日のカスミンの家庭訪問、成功させようね!」
「オー!」

台所では先生なる人間の訪問に、一抹の恐怖を感じながらも胸を震わせるポトポット達。

 

「私はこの春から霞町小学校に転任して来たから良く知らないんだけど、
霞家ってほら、色々ウワサのある御宅でしょ?」
「え?」
「あ、ううん。私はそんなこと信じてないわよ、オバケ屋敷だとかー、何か出るとかー
この間学校にいらした桜女さんって方も、とっても品のいい方だったものね。
だから伺うの楽しみだなー」

そして翌日。学校が終わってから家庭訪問を行なう為、カスミは先生を霞家へ案内することに。霞家の入口から家屋までは広い庭こと森を延々と歩かねばならず、いつヘナモンが出て来るか…とドキドキしているカスミの前に、森に住むヘナモン白樺まり子が現われる。

「木に目なんかあるわけないじゃないですか、
気のせいです気のせい…木だけに」

 

(あー神様、どうか無事に終わりますように)

何とか白樺まり子をやり過ごし、カスミとマサエ先生はようやく霞家に到着する。家庭訪問の成功を神様に願うカスミだが、玄関ではいきなりくす玉の御出迎え。影で喜んでいるポトポット達を睨み付けるカスミだが…

「ありがとう!こんなに歓迎してくれて!
家庭訪問に来て、くす玉割ってもらったのって先生始めて!」
「は、はぁ…喜んで頂けてよかった…」

一人ハラハラドキドキしているカスミをよそに、先生は出会った仙太郎そして蘭子に挨拶し、玄関まで出迎えに来てくれた桜女と共にリビングへ。

「主人の霞仙左右衛門ですの」
「春野さんの担任の、大河原マサエです」
「………(仙左右衛門、一礼)」

挨拶を終え、カスミ・桜女・仙左右衛門そして先生でリビングのテーブルを囲む。昨日の威勢は何処へやら、先生とは目線を合わさずに黙りこくる仙左右衛門。

「本当に春野さんの事、いつも感心しているんです。
御両親と離れて暮らしているのに、いつも明るくて元気で…」
「わたくし共もカスミンさんが来て下さったお陰で
家の中が賑やかになって…ねぇあなた?」
「………(仙左右衛門、頷く)」

と、突然リビングのテーブルの上に、レンズの付いた亀らしき物体…ことデジ亀が姿を現す。

「マサエ先生、訪問記念に1枚御写真をお撮りします!」

動き回るならまだしも、喋った挙句に写真を撮り、プリン太次郎でプリントアウトまでする始末。カスミは慌ててデジ亀とプリン太次郎を抱え込み、誤魔化そうとするが…

「凄いわー、近頃のカメラって良く出来てるわね。
動いたり喋ったり、ホントに凄いわ」
「ははは…ホントによく出来てますよね」
「それに、可愛い!」
「可愛い…ですね…え!?」

喋るデジカメを何とかやり過ごせたと思ったら、次にテーブルの上に現われたのは歩く電子レンジ。ことチン太郎はマサエ先生の目の前で暖めたケーキを差し出す。

「…でもリビングに電子レンジがあるのも便利かもしれませんね」
「よかった…マサエ先生が細かいこと気にしない先生で」

 

「あ、それではそろそろ…すっかり長居してしまって」
「お、終わりですか?家庭訪問?」
「ええ、これで失礼するわね。あ…すみません、
帰る前に御手洗いをお借りしてよろしいですか?」

ようやく家庭訪問が終わりになる…ホッとしたカスミはマサエ先生を御手洗いへと案内する。途中廊下に点在する不思議なオブジェを見て、先生は口を開く。

「ま、ユニークなオブジェ」
「長男の仙太郎さんが作ったんです」
「あ、玄関でお会いした方ね」
「壁が壊れたりすると直してくれるのはいいんですが…必ずこんなになってて」
「あら、素敵よすごく。先生はこういうの好きだなー」

「私には判らないなぁ…」とカスミ。丁度作成者の仙太郎はその場を通りかかっており、先生の素直な感想に顔を少し赤らめる。

「終わった…何とか終わった…終わったー♪」

先生をトイレに案内し終えたカスミは、家庭訪問を無事に終えた達成感からか小走りでリビングへと戻っていく。

「あれ…やっぱりこっちよね、確か…」

用を足しトイレから出て来た先生だが、来た方向とは逆の方向へと逆の方向へと…リビングどころか霞家の奥へと進んでいってしまう。

 

「どうしたんだろう先生…」
「粗忽者そうだから屋敷の中で迷ったんじゃないか?」
「先生がいる時は何も言えないくせに、いなくなると強気になるんですね」
「でも…いくら何でも遅いですわ」

トイレに行っただけにしては、あまりにも帰りが遅いマサエ先生。痺れを切らし先生を探しに出たカスミ達の前に、ポトポット達が駆け付ける。

「カスミーン!大変、先生がナマコの間に!」
「ナマコの間!?」

ナマコの間に消えた先生の悲鳴を聞いた、というポトポット達の言葉に従いナマコの間に向かうカスミ達。駆け足でナマコの間の入口に辿り付いたその時、ナマコの間から聞こえて来たのは…先にマサエ先生を助けに来ていた仙太郎の悲鳴だった。

「仙太郎さーん!」

悲鳴に驚き、急いでナマコの間へと進んだカスミ達が見たものは…

「大きなぬいぐるみねぇ、棚から落ちてきたの?
あ、それより先生の眼鏡知らないかな?この辺に落っこちてると思うんだけど」
「先生…わたしより力持ち…」

いくら眼鏡を落としているとはいえ、足首までの深さの川の中で…巨大なナマコを持ち上げている先生の姿だった。

 

「長い間御引止めしてしまって、ごめんなさい」
「いいえ、こちらこそ…御邪魔しました。
春野さん、楽しい家庭訪問だったわ、どうもありがとう」

ようやく家庭訪問+建物探訪を終え、帰っていくマサエ先生の後姿を見ながらホッとするカスミ。デジ亀からナマコまで…普通だったらフォロー不可能な出来事を、しっかり受け流してくれた先生のことを思い、しみじみと呟く。

「ほんとに先生が担任でよかった…」
「ええ、いい方ですわね」
「あんなおっちょこちょいで良く教師が勤まるわい」
「だけど、ステキじゃありません?おっちょこちょいも」

家庭訪問も終わり夜もふけた頃。自室でゆっくりとくつろぐ桜女と仙左右衛門の耳に、今度はカスミの悲鳴が聞こえてくる。急いで駆け付けた仙左右衛門が見たものは…ナマコの間から溢れ出す大量の巨大ナマコ、そしてナマコの間から飛び出して来たカスミだった。

「だって、ナマコの間ってどんなのかもう一度見たかったんだもん!」
「何?」
「やっぱりこんなとこ、出てくー!」


カスミンハイライト

「やだ先生、木に目なんか
あるわけないじゃないですか。
気のせいです気のせい…木だけに」
「違うの、白いハンカチ忘れてきちゃった…」
「白!?」

というわけで霞家の庭、広い森の色白美人(ヘナモン?)こと白樺マリ子を、必死に先生から隠そうとするカスミです。

森の中でのマサエ先生とカスミのやり取りは結構面白かったんですけど、ただでさえ長いあらすじとしてはカットせざるを得ないので…ここに描いた次第であります。

あまりのピンチに目が点になり、しかも鼻まで無くなる…という徹底ぶりが中々素敵です(笑)それに比べて後ろの白樺マリ子の顔が濃いやら怖いやら描きにくいやら。

それにしてもほんのチョイ役かと思いきや、結構な頻度で出てくるんですよ白樺マリ子。佐久間さん一体何役やってるんだろうこと白樺マリ子。

っていうか人間怖いんじゃないのか白樺マリ子。


第5話感想
いきなりあらすじとキャラ紹介が入ってたのにはビックリしましたが(笑)、今回はさほど深刻にならずに全編ドタバタ話でした。その証拠に「こんじょだ、こんじょ!」って言ってませんし、特別カスミが落ちこんでもいませんし。健気に頑張るカスミも好きですが、僕的にはこういう話も大好きです。

内弁慶な仙左右衛門、やる気満々の桜女、褒められて赤くなる仙太郎、若い先生に対抗心を見せる蘭子、人間は怖いけど会ってみたいポトポット達…いつもの霞家にマサエ先生という人間をひとり入れるだけで、ここまで各キャラの特徴が引き立つとは驚きです。冒頭ではヘナモンの存在がばれないように…と皆で騒いでいるのに、結局焦っているのはカスミ。皆舞い上がってたんでしょうか?

それにしても今回はマサエ先生に尽きます。教育熱心でやさしく生徒思い、だけどマイペースでどこか抜けていて、挙句の果てに力持ち…もう幾らでもエピソードが出てきそうな見事なキャラです。服装やオシャレには無頓着なのに何気に眼鏡っ子(子かどうかは疑問ですけど)ですし。また霞家に来ることはあるんでしょうか?仙太郎とはこれからどうにかなるんでしょうか?ううむ。

しかし霞家には色々不思議な場所があるようです。そもそも非常に変わった作りなので、霞家探検記だけで丸々1話作れそうな勢いなんですけど…誰か霞家の間取りや構造を分析してくれません?っていうかナマコの部屋って一体…他にも色んな部屋があるんでしょうか、例えばカツオノエボシの部屋とか。まあさすがにクラゲを家の中で飼うのは無理がありますけど(笑)

とりあえず霞家と先生の対面は好印象。いきなり人間とヘナモン…とまではいきませんが、いつか霞家は霞町の皆さんと仲良くしていけるのでしょうか?それもこれも内弁慶改め仙左右衛門様次第なんですけど(笑)

何気に第1話で使ったダジャレを使い回すカスミンが素敵だったり。

 

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