戦国忍者くん(UPL/NMK)
さて、件のニンジャキッドといえばアクションゲームにおいて「敵と接触すること」を否ではなく却って有益と為したということが当時のエポックメイキングであった「忍者くん 魔城の冒険」、及び高難易度スクロールアクションとしての「忍者くん 阿修羅の章」(以上、共にUPL)が人口に膾炙しているところではありますが、アクションロールプレイングゲームたるこの「戦国忍者くん」はあまり知られていないように思われます。とは申しましてもこの本作、実のところその開発元は比類なきアーケードゲームとしての「アーガス」「バルトリック」「サイキック5」(以上、全て販売はジャレコ)などを編み出されたNMKであるということらしいです。…とまあ敢えて伝聞形で書かせて頂いたのは「クリア後のスタッフロールが存在しない」ため、明確にその事実を視認することが出来ないという現状に因る所が大きいのですが、「RPGといっても経験値などはなく、マップの各所にあるアイテムを取ることで、武器の攻撃力が上がったり体力の上限が増えたりする」というゲームシステムの一部が、同じくゲームボーイにおいて発売されて、また同じくNMKの開発であるといわれる「ベリウス」(販売はサミー工業)と同様であるので恐らくは間違いのないところであると言えましょうか。そういえばPCE「麻雀覇王伝カイザーズクエスト」も販売はUPLながらその開発はNMKが担当していたという話ですが…流石にこれ以上は本題から大幅に逸脱致しかねないので今宵は此処までに致しとう御座います。
…時は戦国、天下統一の野望に燃える織田信長の最大の敵たる甲斐国の大名・武田信玄が死去したという噂が流れる。…所変わって飛騨国、此処には稀代の幻術師・果心居士と、その元で修行に励む我らが忍者くんがいた。この物語は、命を受けてはみたものの何分結構な歳である師匠・果心居士の代わりに、弟子としての忍者くんが信長の住まう岐阜城へと向かうところから始まる…と書いてみれば「最初からお前が老体に鞭打って行けよ」と師匠に対してノリツッコミの一つや二つも入れたくもなるのですが其処は其処、最初の武器としての「忍一文字」と「星の手裏剣」を授けてくれるので有難く頂戴すると致しませう。そして如何にも説明的でゲームチックな装備品回りの説明も終わっていざ信長の元で手柄を立てんと歩み出してみれば…!
「…遅いッ!遅すぎるッ!」
…そう、我らが忍者くんは日夜を分かたず修行に明け暮れる身であります。故に普段の一挙手一投足においても日々是鍛錬の場であり、彼は常に現代の度量衡制度にして数十キロに値する重石を身につけているのでありました!…と書いてみれば「いずれ訪れるであろう強敵とのバトルの際には『そろそろ本気を出すかッ!(凡その意訳)』という余裕綽々の発言と共にハンディキャッパーとしてのその枷を解き放ち、敵は動揺の色を隠せない」といった少年漫画的な数ページが炙り出しで浮かび上がってきそうなものですが其処は其処、そんなことはありゃしないので大層難儀です。っつーか家庭用機としてのみんなのファミコンに送り出された初期のRPG(…と呼ぶのも烏滸がましいようなブツも御座いましたが!)に引けを取らないその遅々たる歩みにはただ時間に流されて齷齪するばかりの現代人に対するアンチテーゼのようなものが込められているような気もしなくもないです。…絶対にしませン。
そしてそれに輪をかけるのが「ノーヒントでの謎解き」の頻発。この二つが分量自体は当時のゲームボーイにおけるRPGと然程変わらない本作の攻略を梃子摺らせる要因であると言えます。時には距離がかなり離れているような場所を行ったり来たりさせられる羽目になったり、わざわざスタート地点の近くまで戻らされたり…そして此処でこそ先の「移動速度の遅さ」の煩わしさが最大級に感じられてしまうのです。せめてこれが通常の2倍…或いは1.5倍でも構いませぬが…その程度のスピードがあれば其処まで問題にはならなかったのでしょうが…。終盤においてはアイテムの「お供え」を一部の地蔵に捧げることでワープが可能だったりもするのですが、はっきり言ってそれはクリア直前の話です。更にボス戦は回復アイテムがある程度あればごり押しもできてしまうなど(寧ろ道中の雑魚敵から受けるダメージのほうが多い)、「全体的にバランスが取れていない」という印象が漂うばかりです。…っつーか「障害物の中にさりげなく通り抜けられる壁があり、その殆どはノーヒント、更には外見上では全く見分けがつかない」というのは流石にどうかと思います。
…いや、随分と厳しい感想ではありますが、全ては「あと少しだけでも移動速度が速ければ…!」という一念に基づくものですのでどうかご容赦を。
逆説的に言えば、「其れにさえ我慢できるのならば、本作は十分遊べる出来に仕上がっている」とも申せるのですから…。
<TIPS>
- 各画面にいる各々の敵が落とすアイテムは、大抵の場合決まっています。必要なアイテムが足りなくなってしまった時のために、どの画面のどの敵がどういうアイテムを落とすかを覚えておいても損はありません(特に回復アイテム)。また、水蜘蛛・忍びばしごなどのアイテムが必要不可欠な場面においては、付近の敵がそのアイテムを落とすと考えて殆ど間違いないので、足りなければ其処で補充できます。
- 宝箱の中にあるアイテムを取って体力の上限値が増えても、防御力が上がるわけではないので、終盤に登場する雑魚敵などには大ダメージを受けたりすることがあります。半分以上の体力が失われていたら、いつでもアイテムを使って回復できるように装備を変更しておきましょう。
- ボス戦は本文中でも述べた通りに「回復アイテムを使ってごり押し」で構いません。ただ、ボスはワープするものが多く、もし重なられてしまうと大ダメージを受ける(所謂救済措置としての「ダメージ後の無敵時間」は本作では非常に短いです)ことがあるので注意が必要です。
- 往々にして、全くのノーヒントで攻略しなければならない場所があります。何処に進めば良いのかが判らなくなった場合は、一度今まで来た道を戻って、これまでに出会った重要人物に話を聞きましょう。…抜け道の場合は、兎に角体当たりして探してください。ただ場所によっては敵キャラクターが出現して、通り抜けられることが判別できるような仕様になっているところもあるので、注意深く観察することが大切です。